タカラヅカの愉しみ方のひとつは、「成長を見守る」ことだ。

 同じ衣装、同じ髪型、性別女子の脚上げラインダンスで初舞台を踏んだひよっこたちが、経験を積むことで舞台人として変わってくる。性別が男女に分かれ、個性が出てくる。その人自身の「顔」が出来上がっていく。
 その変化の過程、成長する姿を眺めるのもまた、まぎれもないタカラヅカの醍醐味。

 最初から完成されたモノじゃない。
 タカラジェンヌは変わっていく。成長していく。
 それを見守ることが、楽しい。

 舞台は生もの、常に変化し続け、幕が下りればみな消えていく。
 未熟な下級生はもとより、経験を積んだベテランだって、変化する。
 たぶん、わたし自身が人生を重ね、変わっていくように。
 タカラヅカを、タカラジェンヌを好きでいることは、人生そのものの追体験でもあるんだ。

 わたしはまっつのファンになって、その「タカラヅカの醍醐味」を体感しているのだなと思う。

 『MISUZU 未涼亜希~My style~』は、解説通り“「未涼亜希の流儀(スタイル)」をさまざまな角度から紐解くスペシャルな一冊です。”という、内容。

 オフ写真、インタビュー、キムくんとのツーショ写真、稲葉せんせとの対談、組子(花組含む・笑)からの質問、過去の舞台写真など、内容は多岐に亘り、ボリューム満点。

 前もって阪急ブックスHPにコンテンツ紹介が上がっていたので、「そこにナニが載っているか」は、ある程度理解していた。

 どの写真、企画も実にツボを突いたニクいもので、愛情とこだわりのあるステキな本になっている。
 それぞれうれしくてきゃーきゃー。
 なんて素晴らしい本だろう……と、ページを繰りつつ。

 あるページで、心臓を鷲掴みにされた。

 スカステのSKY MOOK press gallery「未涼亜希」で、まっつ自ら語っていたけれど、「過去に演じた役を、今演じたらどうなるか」という企画。
 放送ではルイ@『琥珀色の雨にぬれて』のみが映っていたけれど、実は全部で3つ、あとのふたつは見てのお楽しみ、だった。

 過去の役を3つ、そのうちひとつはルイ、たぶんもうひとつはフランツ・ヨーゼフ@『エリザベート』だろうなと見当が付く。
 3つめが、わからなかった。

 企画ページの最初がルイ、次にフランツ・ヨーゼフ……ああやっぱり、ここまでは想定内。
 ページをめくって、息を飲む。

 ジオラモ@『アデュー・マルセイユ』!!


 あれは5年前。
 オサ様退団公演『アデュー・マルセイユ』初日、幕が開いて30分は優に経つのに、まったく舞台上に登場しないまっつに焦りまくった。どういうことなの、わたし、まっつを見逃したの?!と。
 そして、登場するなり……爆笑した。
 http://koalatta.blog48.fc2.com/blog-entry-1478.html ←当時の日記。

 わたしだけじゃない、友人たちみんな大ウケしていた。
 まっつはすごくがんばってた。がんばってたけど……柄違い、格違いの役に、なんともむず痒い、組ファンなら大ウケしてしまうよーなみょーなキャラクタになっていた。

 「まっつ、がんばってたね」と、みんな口々に言うけれど、「まっつ、かっこよかったね」とは、誰も言わない。努力を誉めはしても、出来映えを誉めてはくれない。
 「まっつが面白かった」とは言うけれど、「まっつがセクシーだった」とは、誰も言わない。……セクスィな役なのに……。面白がられちゃ、いかんやろ……面白いけどさ……。

 研10で、その前の公演でも、その前の公演でも、台詞3~4つしかもらえていない、そんな扱いの脇の中堅スターだった。
 薄幸キャラで、泣きそうな表情のヘタレキャラだった。頼りない若者役が、任だと思われていた。

 そんなまっつが、いきなり大人の男の役。
 星原先輩よりも、はっち組長よりも、格上の悪役。

 わたしは大笑いして、ウケまくって、そして、そして。
 うわああぁぁあん、まっつ好きだーーっ!! と、叫んでいた。

 あのカユさごと、足りなさごと、大好きだった。


 あれから、5年。

 今のまっつなら、ジオラモ役を笑う人はひとりもいないだろう。「まっつらしい」役だと言われるだろう。

 この5年で、まっつは変わった。


 「今」のまっつが演じるジオラモの写真に、心臓を鷲掴みにされた。

 5年前、見るなり爆笑した、あの役が。
 大好きだったけど、こそばゆくて笑えたあのうさんくさいおっさんが。

 本物の、「大人の男」として、ここに在る。

 タカラヅカって、こういうことなんだ。
 「成長を見守る」愉しみ。変化していくタカラジェンヌを愛し、彼らの人生を自分の人生と同じように愛しむ。

 わたしは今、「タカラヅカの醍醐味」を味わっているんだ。

 うわあああ。
 もお、もお、まっつ大好きだーーっ!!


 ヅカヲタでよかった。
 まっつファンでよかった。

 そう思える本だ、『MISUZU 未涼亜希~My style~』。

 サイズ感も好き。
 きゅっと詰まった小さな本。
 カバー付きなのがうれしい。
 タカラヅカのムック本って大抵カバーないんだもの。トップスターの写真集くらい?

 中身もなにもかも、うれしいけど。
 好きだけど。

 特に、カバーを取ったあとの、「裏表紙の内側」に、撃ち抜かれた。

 ありがとう。
 この本を作ってくれた人、ほんとにありがとう。
 うれしすぎて泣けた。

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