わたしってもう、どんだけ鈍感になっていたんだろう。

 宝塚大劇場の活気、「祭りだ!!」という雰囲気の中で、改めて思った。

 今回の、『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』のポスターって、めちゃくちゃキャッチーじゃん。

 『ベルばら』の本来の主人公は、アントワネットだろう。作者自身がいちばん最初に書こうとしていたのは「悲劇の王妃・マリー・アントワネット」だ。彼女を彩るサブキャラとして、男装の麗人オスカルが誕生した。
 しかし、オスカルの人気が出すぎてしまったために、連載途中で軌道変更、それに伴いまったくの脇キャラだったアンドレが主要キャラに格上げされる。
 いちばんの盛り上がりはオスカルとアンドレの恋、そしてその死になってしまい、肝心のアントワネットは「本編が終わったあとのおまけ」みたいな扱いになって、終了した。

 読者人気ゆえに作品が変わった。作者が読者のニーズに応えた。
 つまり、それくらい「市井の人々」が求めているのはオスカルだ。
 『ベルサイユのばら』を名前しか知らない人が、唯一キャラクタ名を知っているとしたら「オスカル」で、高い認知度を持っているのも「オスカル」だろう。

 アントワネットはオスカル人気にはまったく及ばないし、フェルゼンに至っては、知名度ほとんどナイのでは? 原作ファンやヅカファンにではなく、「タカラヅカといえば、『ベルばら』でしょ?」「『ベルばら』って名前しか知らない」という人々にとって。

 一般人がタカラヅカに求めるモノ。
 それは、オスカル。

 タカラヅカが「男役」のいる世界だから。
 タカラヅカ=『ベルばら』、タカラヅカ=オスカル。

 外部でヅカがパロられるとき、大抵オスカルもどきが登場するくらい、オスカルこそがタカラヅカであり『ベルばら』だ。

 ……そんな最低認識を、すっかり忘れていた。

 ヅカヲタとしてしかポスターを眺められないから、「トップ娘役がこの扱いってどうなのよ」とか「すっきりしてるけど、なんかサミシイなあ」とか「みりおくんきれーだなあ」とか「らんとむとえりたんアンドレにワクテカ」とか別なことを考えていましたよ。
 や、わたしまさおスキーなので、彼がオスカルコスプレしている段階で、なんかニヤニヤが止まらないしな(笑)。

 そうじゃなくて、わたしがまだヅカヲタじゃなくて、「タカラヅカと言えば『ベルばら』」としか知らなくて、原作やアニメの『ベルばら』が好きな、ふつーの女の子、……つか、ふつーのおばさんだとして。

 『ベルばら』=オスカル。
 タカラヅカ=オスカル。

 そんな認識しかない状態で、このオスカルとアンドレだけが立っている『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』というポスターを見たら。

 たぎる。

 むちゃたぎるわー、あらぶるわー。

 わたしが漠然とイメージしているモノ、「機会があったら体験してみたいな」と思っているもの、そーゆーモノが詰まってるじゃん? 凝縮されてるじゃん?

 うわ、このポスターいいわー。
 観てみたい!! と思うわー。

 アントワネットには出て欲しい、だって豪華なドレスが見たいから。「これぞタカラヅカ!」な華やかな宮廷シーンが見たい。でも、フェルゼンはどうでもいい。オスカルとアンドレさえ出ていれば。
 それくらいの感覚。

 今はヲタだから、主要キャラみんな出て欲しいとか、どんだけキャッチーでも植爺作品嫌いだし、ストーリーとキャラの人格破綻してたら新規顧客開拓につながらないし意味薄いんじゃ、とか、「フェルゼンというキャラの難しさ、どうするよウチの組はフェルゼン編だよ」とかアタマ抱えることはいろいろあるけれど。
 そうじゃない、一般人だったらほんと、今回のポスターはいいよなー。


 『ベルばら』は、ヅカファンのためにあるんじゃない。
 宝塚歌劇のためにあるんだな。

 キャトルレーヴのにぎわい、そして。
 在庫一掃処分市会場めいた品揃えに、震撼した。

 過去の『ベルばら』関連商品、お蔵出し!!
 2001年からあるんじゃないか? 作るだけ作って売れ残ったままの、数々のグッズ!!
 「『ベルばら』ならなんでもいい」「どーせスターの見分けなんかついてない」「オスカルやアンドレの扮装さえしてれば、顔も名前も関係ない」と言わんばかりの、ひどい内容。

 うわー……。
 これはひどい(笑)。

 一般客を騙して売りつける気、満々(笑)。

 だって、現在の公演グッズと同列に並べてあるの、あさこアンドレとかわたるフェルゼンとか。
 「これは何年の公演のものです」という注意書きはナシ。
 なにも知らない、はじめてタカラヅカを、『ベルばら』を観る客が、「『ベルばら』のグッズを記念に買って帰りましょう」と間違って買うのを期待して、一緒に並べているの。

 彼らが求めているのは「今、自分が体験した『ベルばら』の記念品」であって、何年も前のすでにいない人々の写真ではないと思うんだけどなあ。
 「タカラヅカなんてどれも同じ、演じている人だって誰でも同じ、『ベルばら』の扮装さえ映っていればそれでいいのよ」って人も多くいるかもしれないけれど、だとしても、「これは2006年の売れ残りですよ」とか正確な情報を告知した上で、あとは客の判断に任せるべきじゃないのかなあ。

 『ベルばら』の経済効果はすごいんだなあ。
 もう売れることはほとんどないだろう、大昔のグッズまでこうやって、ふつーに売り場に並ぶ、不良在庫処分まで出来ちゃうんだもんなあ。
 そりゃ劇団は伝家の宝刀認識だよなあ。
 や、退団した過去の偉大なるスターさんたちのグッズを不良在庫呼ばわりして申し訳ないけど、彼らの功績とは別の話だから。


 みんなが求めるモノ、を具現化したまさみりと劇団はすげえなと思う。
 この「祭りだ!」状態を創り上げた、今回の公演を、すごいと思う。

 そしてわたしは祭り好きで、大好きなタカラヅカがたくさんの人に観てもらえるのがうれしいので、とりあえず、うれしいのだ。テンション上がるのだ。

 注・こあらは、月組公演『ベルサイユのばら-オスカルとアンドレ編-』をまだ観ていません。

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