美しい世界に生まれた。@『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』千秋楽
2013年2月27日 タカラヅカ 千秋楽の日は、雨だった。
晴れ男まっつのおかげで、彼の主演公演中は傘いらずが当たり前。
なのにこの日だけ雨が降る、しかも午後からは晴れそうな予報、ってことは。
誰もが思った通り、楽日の昼公演は天下の雨男・キムくんが、みみちゃんと一緒にご観劇でした。
キムみみ、2ヶ月前とまったく印象変わらない。妖精さんのままの美しさと透明感。
終演後のカーテンコール、まっつがキムくんの話をしたくて待ちきれない風なのが、見ていておかしかった。
「我が愛する同期……」って、決まり文句を言おうとしているのに、途中で笑い出しちゃって。
音月桂さん、舞羽美海さん、って、ちゃんとさん付けする律儀さ。タカラヅカって、たとえトップスターでも特別出演の専科さんでも、下級生は呼び捨てするのにね。(あれ、つねづね不思議だ)
キムくんの雨男ぶりを、素で「すごいね」とコメントするあたりもまた。
キムくんが行ってしまえば、もちろん雨はやむ。つか、空は晴れていく。まっつは晴れ男ですから。青空がお友だちですから。
友だちとランチして、わりとぎりぎりに劇場へ戻る。
千秋楽。
最後の公演。
もう二度と、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』には会えない。
まっつは憑依型の役者ではなく、理性と技術で距離感を持って役を作り、演じる。
そのまっつをして、「BJが自分なのか、自分がBJなのか、わからなくなる」と言わしめた公演。
前楽の雨について、カテコで雨男キムに触れ、また「『BJ』と別れたくない私の涙雨」とまで言った公演。
その、最後の幕が上がった。
月曜日の公演で、今まで声が聞こえなかった1幕ラストで、まっつの声が響いた。
このまま声はさらに出るようになるのかも、と期待したが、その翌日はまた、いつものコーラスに戻っていた。
前日のトークショーであれだけ喋っていたし、コンディションは悪くないのだろう。快方に向かっているのだろう。
だけど一朝一夕にぽーんと治るわけじゃなく、一進一退をくり返しているのかもしれない。
キムくんが客席にいる前楽だって、演出はそのままだった。
たぶんこのまま行くんだろう。
BJ@まっつから、強い意志を、オーラを感じる。
熱量を感じる。
最後の公演である、という決意、覚悟のようなもの。
だけど歌はやはり、カゲコ付きだし、ピノコへの歌はラストが台詞のままだ。
歌も芝居も、演出は青年館版のまま通すんだろう。今さらDC版に戻すなんて、混乱のもとってもん。
やたらと怒鳴らないBJはカッコイイし、ソロを盛り立てるカゲコのハモりもきれい。
このまま青年館演出の集大成として、進み、終わるのだと思った。
それが。
1幕、ラスト。
物語が一旦区切りを迎え、中詰めのショー場面になる。
アツいアツいバイロン侯爵@ともみんのソロ。
ずっとあきらめてきた、ただ嘆くだけだった、だが今、彼女への愛のために立ち上がる……! そう決意を歌う。
それを受けて、影たちが現れ、振り返るとセンターにBJ@まっつがいる。
ここでカゲコーラスによるテーマ曲……「からわぬ思い」が『BJ』全体の主題歌なら、今回の『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』のテーマ曲ポジはこの曲なんだろうな、という、フィナーレでも使われているあの曲。
カゲコーラスのなか、BJが身振り手振りだけするのが青年館演出。
ここで、BJが、歌った。
歌まるまるカットだった部分を、まっつが歌った。
カゲコのフォローもなく、完全にひとりで。
まさかの、DC演出版……!!
ぞわぞわと、肌が粟立った。
鳥肌立った。
その、力強さ。
動き出した物語を、BJが歌の力で収束する、中心としてそびえ立つ、その演出。
それに応えきった瞬間。
そのあとの、青年館ではコーラス付きになっていた部分も、まっつはソロで歌いきった。
それに呼応して、コーラスがはじまる。
全員の合唱になってなお、まっつの歌声が耳に届く。響く。
『BJ』だ。『BJ』が、還ってきた!!
1幕ラストの変更が残念だ、と常々もらしていたわたしは、まさか最後の最後になって完璧なモノを見せられ、息が止まるかと思った。
しかも、その熱量たるや、半端ナイ。
今までこらえてきたモノ、熟成されてきたモノを、一気にぶつけてきた感じ。
ナニが起こっているんだ、この舞台……。
歌カットだったところが復活しているってことは、2幕もそうなのか? それとも1幕で無理をしたから2幕はセーブするの?
予測が付かないまま、2幕。
2幕がまた、すごかった……!
BJ@まっつの、やわらかさ。
彼が、この「世界」を愛していることが、わかる。伝わる。
この空気を吸い、この空間で、自在に存在している。
怒りも苛立ちも、喜びも安心も、全部全部、自然にある。
やわらかい。
それが、自然だから。あるがままだから。
舞台に満ちる空気は密度を増し、研ぎ澄まされていく。
目に見える大きさを超え、ブラックホールでも形成しそうな密度を深めている。
舞台は、イキモノだ。
今ここで、目の前で、呼吸している。
肺が、心臓が、動いている。
それがわかる。
伝わる。
生きている。
『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』というイキモノが、いる。
まっつの歌声は力強く復活した。
美しくあれ この世のすべて……響き渡る、祈り。
あの日以来歌えていなかった夜明けの歌を、台詞に変更されていた歌いあげの部分を、堂々と、歌いきった。
あるがままに立ち向かい めぐるままに悔しがり
過ぎるままに失って 打ちのめされて つまずきながらひとり
あるがままに。
ただ、あるがままに。
祈りが高まり、爆発するように。
BJひとりの祈りじゃない。
ただのDC版じゃない。
カゲコも入る。か細い声を支えるためではなく、曲を多層的に盛り上げるためのコーラス、ハーモニーだ。
まっつひとりじゃない。
みんなが。
出演者みんなが、声を上げている。
高まり、祈っている。
この世界に。
美しい世界に。
愛しい人々に。
DCからアクシデントにより演出変更され、新しく青年館版になり、そして。
DC版でも青年館版でもない、新たなものが、ここで生まれた。
未涼亜希、完全復活。
それは奇しくも、「指が動かなくなる」と絶望を口にしたBJが、復活するように。作中には描かれていないけれど、明言はされていないけれど、想像させる作りになっている……BJの復活……まさに、そのままに。
最後の、最後に。
いや、最後だからこそ。
今まで「主演として、公演をやり遂げる」ためにセーブしてきたもの全部、ここで解放した。
画面が集約し、ひとりしか見えなくなる。
オーラが出る、って、こういうこと?
フレームが動いた。
空気が動いた。
そこからラストまで、高密度なまま舞台は走る。
ざわざわと鳥肌が立ち、治まらない。
舞台が動く。
舞台がイキモノとして、立ち上がる。
そのさまを、見た。
すごかった。
ただもお、すごかった。
自分の感情をもてあまして、逃げるように劇場を出た。
外はすっかり晴れていて、夕暮れになっていた。
BJが「美しくあれ」と歌ったような、空。
世界は、美しい。
泣きながら、思った。
世界は、美しいよ、BJ先生。
わたしはこの世界に、生まれて良かったよ。
晴れ男まっつのおかげで、彼の主演公演中は傘いらずが当たり前。
なのにこの日だけ雨が降る、しかも午後からは晴れそうな予報、ってことは。
誰もが思った通り、楽日の昼公演は天下の雨男・キムくんが、みみちゃんと一緒にご観劇でした。
キムみみ、2ヶ月前とまったく印象変わらない。妖精さんのままの美しさと透明感。
終演後のカーテンコール、まっつがキムくんの話をしたくて待ちきれない風なのが、見ていておかしかった。
「我が愛する同期……」って、決まり文句を言おうとしているのに、途中で笑い出しちゃって。
音月桂さん、舞羽美海さん、って、ちゃんとさん付けする律儀さ。タカラヅカって、たとえトップスターでも特別出演の専科さんでも、下級生は呼び捨てするのにね。(あれ、つねづね不思議だ)
キムくんの雨男ぶりを、素で「すごいね」とコメントするあたりもまた。
キムくんが行ってしまえば、もちろん雨はやむ。つか、空は晴れていく。まっつは晴れ男ですから。青空がお友だちですから。
友だちとランチして、わりとぎりぎりに劇場へ戻る。
千秋楽。
最後の公演。
もう二度と、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』には会えない。
まっつは憑依型の役者ではなく、理性と技術で距離感を持って役を作り、演じる。
そのまっつをして、「BJが自分なのか、自分がBJなのか、わからなくなる」と言わしめた公演。
前楽の雨について、カテコで雨男キムに触れ、また「『BJ』と別れたくない私の涙雨」とまで言った公演。
その、最後の幕が上がった。
月曜日の公演で、今まで声が聞こえなかった1幕ラストで、まっつの声が響いた。
このまま声はさらに出るようになるのかも、と期待したが、その翌日はまた、いつものコーラスに戻っていた。
前日のトークショーであれだけ喋っていたし、コンディションは悪くないのだろう。快方に向かっているのだろう。
だけど一朝一夕にぽーんと治るわけじゃなく、一進一退をくり返しているのかもしれない。
キムくんが客席にいる前楽だって、演出はそのままだった。
たぶんこのまま行くんだろう。
BJ@まっつから、強い意志を、オーラを感じる。
熱量を感じる。
最後の公演である、という決意、覚悟のようなもの。
だけど歌はやはり、カゲコ付きだし、ピノコへの歌はラストが台詞のままだ。
歌も芝居も、演出は青年館版のまま通すんだろう。今さらDC版に戻すなんて、混乱のもとってもん。
やたらと怒鳴らないBJはカッコイイし、ソロを盛り立てるカゲコのハモりもきれい。
このまま青年館演出の集大成として、進み、終わるのだと思った。
それが。
1幕、ラスト。
物語が一旦区切りを迎え、中詰めのショー場面になる。
アツいアツいバイロン侯爵@ともみんのソロ。
ずっとあきらめてきた、ただ嘆くだけだった、だが今、彼女への愛のために立ち上がる……! そう決意を歌う。
それを受けて、影たちが現れ、振り返るとセンターにBJ@まっつがいる。
ここでカゲコーラスによるテーマ曲……「からわぬ思い」が『BJ』全体の主題歌なら、今回の『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』のテーマ曲ポジはこの曲なんだろうな、という、フィナーレでも使われているあの曲。
カゲコーラスのなか、BJが身振り手振りだけするのが青年館演出。
ここで、BJが、歌った。
歌まるまるカットだった部分を、まっつが歌った。
カゲコのフォローもなく、完全にひとりで。
まさかの、DC演出版……!!
ぞわぞわと、肌が粟立った。
鳥肌立った。
その、力強さ。
動き出した物語を、BJが歌の力で収束する、中心としてそびえ立つ、その演出。
それに応えきった瞬間。
そのあとの、青年館ではコーラス付きになっていた部分も、まっつはソロで歌いきった。
それに呼応して、コーラスがはじまる。
全員の合唱になってなお、まっつの歌声が耳に届く。響く。
『BJ』だ。『BJ』が、還ってきた!!
1幕ラストの変更が残念だ、と常々もらしていたわたしは、まさか最後の最後になって完璧なモノを見せられ、息が止まるかと思った。
しかも、その熱量たるや、半端ナイ。
今までこらえてきたモノ、熟成されてきたモノを、一気にぶつけてきた感じ。
ナニが起こっているんだ、この舞台……。
歌カットだったところが復活しているってことは、2幕もそうなのか? それとも1幕で無理をしたから2幕はセーブするの?
予測が付かないまま、2幕。
2幕がまた、すごかった……!
BJ@まっつの、やわらかさ。
彼が、この「世界」を愛していることが、わかる。伝わる。
この空気を吸い、この空間で、自在に存在している。
怒りも苛立ちも、喜びも安心も、全部全部、自然にある。
やわらかい。
それが、自然だから。あるがままだから。
舞台に満ちる空気は密度を増し、研ぎ澄まされていく。
目に見える大きさを超え、ブラックホールでも形成しそうな密度を深めている。
舞台は、イキモノだ。
今ここで、目の前で、呼吸している。
肺が、心臓が、動いている。
それがわかる。
伝わる。
生きている。
『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』というイキモノが、いる。
まっつの歌声は力強く復活した。
美しくあれ この世のすべて……響き渡る、祈り。
あの日以来歌えていなかった夜明けの歌を、台詞に変更されていた歌いあげの部分を、堂々と、歌いきった。
あるがままに立ち向かい めぐるままに悔しがり
過ぎるままに失って 打ちのめされて つまずきながらひとり
あるがままに。
ただ、あるがままに。
祈りが高まり、爆発するように。
BJひとりの祈りじゃない。
ただのDC版じゃない。
カゲコも入る。か細い声を支えるためではなく、曲を多層的に盛り上げるためのコーラス、ハーモニーだ。
まっつひとりじゃない。
みんなが。
出演者みんなが、声を上げている。
高まり、祈っている。
この世界に。
美しい世界に。
愛しい人々に。
DCからアクシデントにより演出変更され、新しく青年館版になり、そして。
DC版でも青年館版でもない、新たなものが、ここで生まれた。
未涼亜希、完全復活。
それは奇しくも、「指が動かなくなる」と絶望を口にしたBJが、復活するように。作中には描かれていないけれど、明言はされていないけれど、想像させる作りになっている……BJの復活……まさに、そのままに。
最後の、最後に。
いや、最後だからこそ。
今まで「主演として、公演をやり遂げる」ためにセーブしてきたもの全部、ここで解放した。
画面が集約し、ひとりしか見えなくなる。
オーラが出る、って、こういうこと?
フレームが動いた。
空気が動いた。
そこからラストまで、高密度なまま舞台は走る。
ざわざわと鳥肌が立ち、治まらない。
舞台が動く。
舞台がイキモノとして、立ち上がる。
そのさまを、見た。
すごかった。
ただもお、すごかった。
自分の感情をもてあまして、逃げるように劇場を出た。
外はすっかり晴れていて、夕暮れになっていた。
BJが「美しくあれ」と歌ったような、空。
世界は、美しい。
泣きながら、思った。
世界は、美しいよ、BJ先生。
わたしはこの世界に、生まれて良かったよ。
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