未だもってだらだらと、『ブラック・ジャック 許されざる者への挽歌』の話。
 『BJ』の話を出し切ってしまわないと、他の文章が書けそうにない。
 どんだけ溜め込んでたんだ自分。


 2幕のはじまり方の、地味さは半端ナイ。

 えーとえーと、ふつーバウやDCなど、2幕モノの芝居のとき、2幕の最初って「ショー」になってるよね?
 歌や踊りになってるよね?

 なのに……。

 舞台奥中央に、ピノコ@ももちゃんが登場。
 転ぶことを想定しての、プロテクター姿。
 うまく歩けないので、よたよたころん、幼児歩きしてテーブルのクッキーを見つけ、ぱくつく。

 これが、2幕のスタート……。

 1幕のラストとリンクしているの。
 ピノコの登場が、1幕ラストと同じ。……衣装チガウけど。1幕の白衣装の上に、黒い無骨なプロテクター。
 1幕ラストは妖精っぽかったのに、プロテクターがあるだけで、すっごく「現実」味を帯びる……。

 たしかDCで1回だけ、セットがちゃんと定位置に来ず、ももちゃんが無茶な位置で転んでたときがあったなあ……あれって1幕ラストだっけ? 2幕最初だっけ? 同じ登場の仕方だから、記憶が混ざってわかんなくなっちゃってるわ……。

 一心不乱にクッキーを食べるピノコ、奥の部屋からBJ@まっつ、下手からバイロン侯爵@ともみんが登場。

 ピノコを見つめるBJの瞳は慈愛にあふれ……ることは、ない。
 すっごく無感動に、ニュートラルにピノコを見つめている。
 そっか。これはすでに「日常」なんだ。

 どれくらい時間が経っているのか、さっぱりわからない。
 バイロンさんは、とっても元気そう。
 ニクだの皮膚だの移植したんだよね? 切り刻んで女の子1個分、提供したんだよね?
 カテリーナ@せしこの例があるから、1日で回復するのかもしんないけど、いちおー、何日か経過してるんだよね?

 マンガ『BJ』は子どもの頃読んでいたけど、ピノコはいつの間にかピノコで、どうしてピノコなのかわからなかった。その生まれは知っていても、名前の由来は知らなかった。

 ピノキオだから、ピノコなのか!!

 BJ先生、センスわ……ゲフンゲフン。

 バイロン侯爵もその奇妙な音の名前に疑問を持ったようで、「キャサリン、シモーヌ、サクラ……」と「美しい」女性の名前を挙げる。
 このときのバイロンさんが無駄に流暢な「ガイジン発音」で、毎回笑いを誘っていた。

 だけどBJ先生は、自慢顔。「ピノキオみたいな生まれだから、ピノコです」って。
 センス悪いけど、かわいいなあ、BJ先生……。

 そこで「ああ(笑)」と納得するバイロンさんもかわいい。

 かわいいと言えば、ピノコが「バイバイロン」と言ったときの、BJのリアクション。
 がくっとなる、とてもマンガ的な表現……。
 BJはときどきコレをやる。
 クールで渋い姿で、大真面目に。
 か、かわいい……。


 ここでDC版と青年館版で、ちょっと変更があったんだよね。
「お迎えでゴンス!!」
 とやってきたゴンチャフ@ザッキー、随行してきたトラヴィス@ホタテ。
 礼を尽くし、別れるバイロンとBJ。

 台詞や流れなどは、なにも変わらない。
 変わったのは、ピノコの寝転がるタイミング。

 DC版では、BJとバイロンが下手側に移動すると同時くらいに、ピノコがソファーの上に寝転がっていたんだ。

 ピノコの魅力は絶大で、観客の多くはピノコに注目している。
 主人公のBJが下手に移動しているのに、観客は上手のピノコを見ているんだ。

 で、ピノコがソファーの上に寝転がると、その愛らしい姿に笑いが起こる。

 下手で、BJとトラヴィスが芝居をしているのに、本筋を展開しているのに、フレーム外にいるはずのピノコを、観客が見ている。

 バイロンに対し、やたらかしこまっているトラヴィス、それを「どうしたんだ」と問うBJ。
 このやり取りに、何故か客席からどっと笑いが起こる。

 BJとトラヴィスが笑われたわけじゃない。
 観客は、寝転がるピノコを見て笑っているんだ。

 笑い声で、BJたちの会話が聞こえにくい。

 ピノコがかわいいのはわかるけど、ふつーにBJを目で追っているわたしには、この笑い声は不快だった。


 ふつーに、キャストにも演出家にも、不快だったんだろう。
 青年館では変更されていた。

 BJとトラヴィスが会話をはじめる。
 そのあとで、ピノコは寝転がる。

 主人公たちが「会話」をはじめれば、そこが舞台の中心になる。
 BJが移動したあとも、ピノコに動きはなく、BJが会話をしているんだから、観客の目は自然とBJを追う。

 BJがトラヴィスとふたりして、玄関から居間へ戻ってきた……そのタイミングで、ピノコはソファーに寝転がる。
 これならもう、ピノコは「芝居」の邪魔にならない。


 おー、うまいな!
 青年館で、不要な笑いが芝居を壊さなくなったことに、心の中で拍手した。
 本筋を損なう小芝居は邪道だもの。

 寝転がりながらクッキーを食べるピノコに「行儀悪いぞ」と注意して、坐り直させるBJ。
 「アッチョンブリケ」しか言わないピノコ。

 まっつの動きって独特のリズムがあるというか、コミカルな動きをさせると際立つよな。
 前述の「がくっ」にしてもそうだけど、マンガ的な表現が妙にハマる。
 背中に不穏な空気を感じ取ったBJが「待て、それは使うな」とピノコを振り返って言う……その動作のコミカルさ。

 「それ」というのは、超能力。
 ピノコは言葉を喋れなくても、テレパシーで直接他人のアタマに働きかけられる。

 その傍迷惑な力を使うんじゃないと言うBJ、BJのただならぬ様子に、反射的にジャケットの下のピストルに手をやるトラヴィス。
 「それは使うな」と言われ、わけがわからないまま「それ=ピストル」かと、ジャケットから手を戻しかけるトラヴィス。

 うろたえているトラヴィスがかわいいし、トラヴィスの存在が目に入ってないBJが、ひどくて、かわいい(笑)。

 「なんのことですか?」と、トラヴィスひとり蚊帳の外。
 バイロンさんもカイト@咲ちゃんも、ピノコの超能力のことは知っている。
 なのに、一緒に暮らしている……あ、暮らしてないのか……過ごしている、トラヴィスだけはナニも知らされていない。
 BJ先生、ひどい(笑)。

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