『ベルサイユのばら-フェルゼン編-』という作品・脚本の嫌いなところだけを記すシリーズです、はい。演じているジェンヌには無関係、植爺だけの話。
 ……なんだけど。

 今回の脚本で、よかったと思う点がある。
 植爺は加筆するたび、改稿するたびに作品を破壊していっているが、唯一正しい変更があった。

 それが、オスカルの、フェルゼンに対する二人称だ。

2006年の『フェルゼンとアントワネット編』
オスカル「フェルゼン…私は誰になじられるよりあなたになじられるのが辛い。フェルゼン…私にだって女の血は流れている。この軍服を着ているときは男でもこの体の中には…忘れもしない… 一七七四年一月三十日。王妃様がまだ王太子妃のとき、ベルサイユからパリのオペラ座の仮面舞踏会に身分を隠して出席された。そこで私はあなたに初めて逢った…しかし‥その時あなたは王妃様を王妃様と知らずに愛していた‥そして私もあなたに…ああ神よ。何故に遠き異国に生を受けた我ら二人を、このフランスの地に結び合わせ給うたのか…」

 とまあ、ありえないほどの無駄な説明台詞なんだけど、その前の場面でオスカルはフェルゼンに帰国するように言っている。そこでの二人称は「君」。
オスカル「この動乱の原因は君にもある! それが分からぬ君ではあるまい!」
 てなふーに。

 なのに、ひとりになると途端に「女」としてくねくねしはじめる。

オスカル「フェルゼン…よく決心して呉れた。どんなに辛いことだったか。(思わず手を握る)でもこれはあなたが心から愛した王妃様のためなんだ‥そしてあなたの名誉のためでもあるんだ。(悲しみで声が震え)でも…でも…これでお別れなんだな…」
フェルゼン「(ふと疑念が生まれる)オスカル?もしかして…君はぼくを…?」
オスカル「(ハッとして) フェルゼン…」
フェルゼン「そうだったのか…君はぼくに…」
オスカル「違う…違います…」
フェルゼン「知らなかった‥その瞳に…その言葉の一つ一つに…君の胸の奥深く揺れる心を…どうしてぼくは…」
オスカル「フェルゼン… (恥じらう)」
フェルゼン「もしも…もしも…初めて逢ったとき…君が女だと分かっていたら…あるいは…」
オスカル「云わないで下さい…私は近衛隊の軍人です。この軍服を着ているときは、自分の心に封印をしています
フエルゼン「オスカル」

 なんでいきなり敬語?!!
 植爺の男尊女卑感炸裂。
 女は愛する男に対し、敬語で話さなければならない。妻が夫に対して敬語を使うように。

 オスカルのこのカンチガイしまくりの女々しさが、大嫌いだった。
 ふだんは威張っているくせに、好きな男の前ではくねくね上目遣い。同性の前では横柄で男の前だと態度を変える、ぶりっこ女と同じ。

 それが今回は正されている。

今回の『フェルゼン編』
オスカル「フェルゼン…よく決心してくれた(思わず手を握る)。どんなに辛いことだったか。でもこれはが心から愛した王妃さまのためなんだ…そしての名誉のためでも…。(フェルゼンの肩に縋る。悲しみで声が震え)でも…でも、これでお別れなんだな…」
フェルゼン「(ふと疑念が生まれる)オスカル? もしかして…君はぼくを…?」
オスカル「(ハッとして) フェルゼン…」
フェルゼン「そうだったのか…君はぼくに…」
オスカル「違う…違うんだ…」
フェルゼン「知らなかった その瞳に…その言葉の一つ一つに…君の胸の奥深く揺れる心を…どうしてぼくは…」
オスカル「フェルゼン… (恥じらう)」
フェルゼン「もしも…もしも…初めて逢ったとき君が女だと分かっていたら…あるいは…」
オスカル「言わないでくれ…私は近術隊の軍人だ。この軍服を若ているときは、自分の心に封印をしている

 最初から最後まで「君」「ため口」「男言葉」で統一。
 この変更はスズキくんかなと思う。植爺なら思いつかないだろう。なにしろくねくねオスカルで40年通してきた人だし。
 しかし、脚本ちゃんと読むのはじめてなんだけど、オスカル「フェルゼン… (恥じらう)」って、最悪だな! 気色わりぃー。さすが植爺。

 オスカルがちゃんと「男装の麗人」である。
 男の前で態度を変えたりしない。
 そんな当たり前のことに、感動した。

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