大ちゃん、かっこい~~!!

 いやはや、ここで大ちゃんとは。……と、自分で自分に驚く。
 わたしの中の大ちゃん観は宙組時代のネタキャラ……というか、その、実力は置いておいて、そのキャラを愛でる、というものだった。
 大ちゃんが美形であることもスタイル抜群であることも知っている。ショーでキザりまくり、客席を釣りまくる人だということも知っている。そういう意味でとても「タカラヅカ・スタァ」な人で、きゃーきゃー言える対象だと思っている。
 が。
 舞台人として、芝居で、「かっこいい」と思ったことはなかった。
 ごめん。
 その、どうしても、基本スキルが低すぎて。
 美貌とかスタイルとか、持って生まれたモノは素晴らしいけれど、技術が備わっていないために、「愛でるモノ」としてはアリだったけれど、舞台人としてはときめきの対象にはならなかった。や、おばちゃん、男役としての技術を持った人が好きでなあ。若さだけとか生来の外見だけとかは、ふつーに「きれいね」と思うだけで、ときめかないのよ。
 タカラヅカにおいて、ビジュアルだけっつーのは魅力としてぜんぜんアリだと思っている。わたしの琴線に触れないだけで、世間的にはアリでしょう。
 だから大ちゃんもそういうスターさんのひとりとして、愛らしいキャラクタを眺めていました。

 そ・れ・が、まさかのトキメキ(笑)。
 アルベルト@大ちゃんの最後の台詞に、きゅーーんっ!! と、しました。

 『春雷』 初日観劇。
 美しい出演者たち、美しいポスター。
 プログラムなんかもー、1ページめくったところで、「はうっ」となったよ、翔くんが美しすぎて。

 主人公もヒロインも2番手も、みんなみんな美しい。こんだけビジュアル特化した公演もめずらしい。
 バウの薄いプログラムを傷めたくなくて、薄手のファイルに挟み、さらに鞄の中じゃ万が一ってこともあるかもとわざわざ手提げに入れて半日完璧ガード、傷ひとつつけずに帰宅! やったぜ、美しいプログラムが美しいままだ! とガッツポーズした目の前で、デブ猫にぐしゃぐしゃに折り目を付けられ膝を付いて嘆いた人がここにいますよ。←
 ショックのあまり、プログラムをファイルから取り出すことができていません……。ちくしょー、猫め! なんで紙をかじるのが好きなんだ?!

 プログラムのショックさはさておき。

 本当に美しい舞台でした。

 出演者の美貌もさることながら、舞台セットの美しさ。

 田舎の村ワールハイムでは、舞台いっぱいの巨木。
 都会のワイマールでは、毒々しい赤い花?の吊り物。

 ワールハイムの人々は淡い色の衣装、ワイマールの人々は強い色。
 ワイマールからやって来たウェルテル@翔くんは強い色の上着を着ている。

 目で「美しさ」を楽しむだけで、なんと価値ある舞台。

 準貴族とかゆー、半端な身分の法学生ウェルテル@翔は、叔母の遺産整理のためにワールハイムへやって来た。そこで彼は、村の貴族の娘ロッテ@せしこと恋に落ちる。しかしロッテにはアルベルト@大ちゃんという親の決めた婚約者がいた。家のためにアルベルトとの結婚が必要。
 お互いに心を残したまま、いったんは別れるウェルテルとロッテ。ごたつくなら独身時代にやってりゃーいいものを、アルベルトと結婚したあとで、「やっぱり忘れられない♪」とまたしても盛り上がるウェルテルとロッテ。銃のある世界は大変よね、三角関係に銃を持ち出すしね。
 一方、ウェルテルんちの使用人ロルフ@まなはるも、身分違いの貴族の娘サビーネ@あゆみちゃんと恋仲だった。ふたりは駆け落ちを企てるが失敗、サビーネは事故死、ロルフは殺人犯として裁かれることになる。貴族の娘が平民と駆け落ちするはずないので、ロルフが不埒な目的で誘拐、あげく殺害したのだっつーことで。
 ウェルテルはいちおー法学生。ロルフのために弁護人として法廷に立つが、あっけなく敗北。愛も真実も、なんて無力。
 ロルフの禁断の恋の終焉に連動して、ウェルテルの恋もクライマックス。
 ウェルテルはロッテに別れを告げ、自殺する。

 原作は未読ですが、ロルフがしあわせそうに身分違いの恋を語り出した瞬間から、嫌な予感しかしません(笑)。
 絶対こいつら、ひどいことになるよなと。

 ストーリーはとてもシンプルにありがちで、おかげで、ただ状況説明だけに明け暮れる1幕は眠くて仕方なかった。
 ほんとにきれいでなあ……ただ、きれいでなあ……。
 きれいなだけだと、体調によっては睡魔との戦いになるんだよなあ。このまま、きれいなだけで終始したらどうしよう、と幕間に溜息をついた。
 2幕では展開があったので、睡魔とは無縁でしたよ、はい。

 ただひたすらきれいで……そして、意外にも(ごめんよ)大ちゃんがかっこよくて、十分入り込んで観ていたので。

 ラストシーンで、盛大に肩すかしを食らった。

 美しい主人公たちの愛のドラマに集中していた分、とつぜんの夢オチ……ならぬ、「小説(嘘)だったんだよ」オチに、心が冷える。
 最後に、「なーんて、全部嘘だっぴょーん!!」とやる意味はどこにあるんだ??

 きっとなにかしら大きな意味があるんだろう、そーいや冒頭でゲーテ@翔くん2役は恋に仕事に傷ついていた。ウェルテル=ゲーテなのはわかるし、2時間かけてウェルテルの恋の物語を見せてきたんだ、ここでゲーテ登場、恋の物語にさらなる展開が、どんでん返しがあるのか……!!
 と、思いきや。

「忘れててごめん、大昔に受け取った作品、すごくよかったから舞台化するよ! あと最新作も読ませてね!」
 という、めちゃくちゃ俗っぽい手紙を受け取り、落ち込んでいたゲーテくん「人生勝った!!」と復活。
 今書き上げたばかりの『若きウェルテルの悩み』を上梓し、スターダムを駆け上がるぜ人生薔薇色!! イヤッホウ~~!!
 で、希望に満ちて、幕。

 えええええっ。
 なにそのラスト! ウェルテルは? 愛は?
 欲しかったものは名声と富ですか?? いやその、仕事で認められることがいっちゃんうれしいのは、よくわかります、わかるけど、この流れでこれはひどい。

 原田くんが相変わらず人の心を理解してないっぽいのがわかって、安心というか、「さすが原田くん、安定してるわ」と、あとから腑に落ちました(笑)。

 ゲーテ部分は全カットで、力のあるスターさん主役で上演したら、いい作品になるかも。
 きれいなだけの脚本と演出だから、あとはキャストの力業。浅い描写を、演技力とスター力、歌唱力などでねじ伏せるのよ。深みと濃さを出すの。

 翔くんはとてもきれいだし、若々しいので「青臭く悩む役」は似合っているのだけど、基本的なスキルがいろいろいろいろ足りていないので、「若々しいキャラ」と「美貌」だけだと……このきれいなだけの脚本だと、わたしにはどうもいろいろと残念で。
 ほんとに、きれいなんだけどなあ。
 声かなあ、彼のネック。女の子のまま、しかも舌足らずな女の子のままだから、芝居に説得力がなくて。声が甲高くても演技力や舞台力があればまたちがってくると思うんだけどな、他組の彼とか彼とか思い浮かべて。

 うまくなってくれることを、心から祈る。
 ある日突然声変わりするとか、なにか降臨して演技力や歌唱力が格段に跳ね上がるとか、あるといいな。
 スターさんって、突然変わったりするから、それを期待する。
 新公主演していたころの大ちゃんを見て、「きれいなんだけど、ああっ、きれいなんだけど、それだけって……!!」と頭を抱えていた、その記憶があるように。
 いつか翔くんのことも、同じように「かっけーーっ!!」と目からウロコを落として叫びたい。

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