星組ドラマシティ公演『日のあたる方へ ―私という名の他者―』初日観劇。

 あくまでも、初日。

 先入観なしで観たいし、はまったらリピートしたいし。変化していく様を見るのも楽しいし。だから、初日。

 あくまでも、初日の感想です。

 なんの先入観もないまま、「マカゼ主演! キムシン新作!」とよろこんで席に着いた。
 マカゼ氏は好きだ。あの手の顔は、好みなんだ。なにかと不自由な……というか、うまくない人なのは知ってるけど、それでも舞台が楽しみな人でもある。
 そしてわたしは、キムシンスキー。キムシン作品が、好き。濃度の差はあれ、ほとんどの作品を楽しめる。
 好きな顔のスターさんが主演で、キムシン新作オリジナル。ひとさまの意見や世間の評価は関係ない、わたしがツボったら、楽しくリピートしちゃうもんね。チケットレートも低いし、あとからいくらでも追加可能。

 そして、第1幕。

 アタマを、抱えた。

 どうしよう……。
 どうしよう、これ……。

 どうなるんだろう……。

 そして、第2幕。

 さらに、アタマを抱えた。

 いや、もお……なんというか……。

 キムシン……何故これを、マカゼにやらせたし。


 えーと、いわゆる『ジキルとハイド』を下敷きにしているけれど、ふつーに現代(少し前?)を舞台にした、オリジナル作品。

 若き精神科医ジキル博士@マカゼは、精神疾患のマリア@風ちゃんの治療に必死。
 なんでかっつーと、マリアはジキルくんの初恋の人なんだってさ。彼女を治すために、ジキルくんは新薬を自らの身体で試す。
 精神の時間が遡り、ジキルくんは自らの記憶の底に封印されていた恐ろしい記憶……両親が殺害されたことを、思い出す。
 殺人事件のショックで、幼いジキルくんは記憶を失い、大人になってからこうやって薬の力で無理矢理甦らせたことで分裂、彼の心の奥深くに巣くっていた復讐の鬼イデー氏が登場、両親の仇討ちに手段選ばず。
 ちなみに、マリアもその殺人事件がきっかけで、心を病んでしまったのね。
 事件解決が、すべてを解き放つことになる、と。


 なんというか、すげーバランスの悪い配役。

 主役の比重高すぎ。
 わずかな上級生と、あとは下級生たちという布陣。実力の差が歴然。

 うまい人はめちゃくちゃうまい。
 が、うまくない人たちが大半なので、うまい人たちだけが、みょーに浮く。

 そして、いちばんの問題は……その、「うまくない人」の中に、めちゃくちゃ比重の高い主役も、含まれていることだ。

 これ、きつい……。

 1幕後半は、マカゼのひとり舞台だ。
 しかも、ひとりで、複数の人格を次々と演じ分けなければならない。

 これが……もお……。

 何故これをマカゼにやらせたんだ、キムシン……。

 がんばってる。
 がんばってるのはわかる。マカゼくん、めちゃくちゃがんばってる。
 でも。
 でもさ……別人に、見えない。

 身をよじって大声で叫んでる、幼児プレイをしている、いろんなことをいろいろしている……でも別に、全部ふつーに、マカゼくんだよね……?

 彼が一生懸命であること、すげーがんばっていることがわかるだけに……いたたまれない。

 観ながら、途方に暮れた。
 どうしよう、これ……。

 幕間に、アタマを抱えた。
 なんか久々に、すごいもん観た。
 困る、と思うモノを、観た。

 2幕でなにか、救いはあるんだろうか……ありますように……あってくれ……。

 救いはないまま、終わった。

 やっぱりマカゼは熱演で、すげーがんばっていて、一生懸命で、ただただ一生懸命でがんばっていて……でもぜんぜん、うまくなかった。

 観ながら、「すごいなあ、きっとこの役とこの公演を経験することで、マカゼはいい勉強になるんだろうな」と思った。
 そして。

 勉強しているところ、を見せられてもな……。
 と、困惑した。

 叫んだからって、熱演したからって、それが「いい芝居」ではないんだよなあ。
 声の大きさを変えたって、「演じ分けている」ことにはならないんだよなあ。

 マカゼくんが、ちっとも二重人格や別の年齢を演じ分けられておらず、台詞から「ああ、これはこういうことなんだな」と推理して眺めている状態なのに。
 刑事役の美城れんくんは容赦なく「巧い芝居」を吹っ掛けてくるし。
 市長@一樹さんは、ひとりで自分の世界を繰り広げているし。
 マカゼを支えなきゃなんないポコちゃんは、マカゼと同じくらいうまくなくて、ふたりして自爆しているし。
 マカゼと合うみっきぃ、空気を読んで芝居出来るはるこちゃんは肝心なところで絡んで来ないし。
 ヒロインのはずの風ちゃんは、実はぜんぜんマカゼ氏と合ってないし。役割的にもなんだかなあだし。

 どうしよう。
 どうしよう、この芝居。

 みんなうまくないなら、新公状態なら、それはそれでバランス取れて観ることが出来たと思う。
 でも、肝心な真ん中はうまくないし、その周囲の濃いところで、巧い人たちが暴走しているし、それ以外は学年やキャリア的にも新公だし。

 途方に暮れた……。

 話が面白いのかどうか、わたしにはわからない。
 別の人で観たかった、としか。巧い人が真ん中なら、多重人格を演じわけ出来る人なら、面白い物語だったのかもしれない。

 脚本演出から読み取れる「作者はこうしたかったんだな」と、実際に目に映っているモノの乖離っぷりを、アタマの中で組み立て直して観ることだけで、疲れてしまった。


 芝居は好みの問題がいちば大きいので、マカゼ氏の芝居を「うまくない」「演じられていない」と思ったのは、あくまでもわたしの感覚でしかない。
 他の人には「素晴らしい名演!!」だったのかもしれない。
 でもわたしには、残念ながら、至らない芝居に見えた。

 それにこれは、初日の感想だ。
 これから公演を重ねることで、きっと変わっていく、うまくなっていくのだと思う。
 わたしがマカゼくんのガチファンなら、彼の変化を見守ることも楽しいだろう。組ファンでも、下級生の多いこの舞台を、楽しくリピート出来るのかも。

 ファンにとっては、ジェンヌさんの「いろんな顔」を見られるだけでたのしいんだもの。
 今まで見たこともナイ役をやっている、1作の中でふたつの役を見られる……それだけで、楽しめるし、うれしい。
 体当たりの熱演、ってだけで感動するし。

 今回は、わたしの好みではなかった、というだけのこと。

 この公演を、この役を演じきり、ひとまわりも二回りも大きく成長したマカゼくんと、次の公演で再会出来ることを楽しみにする。


 初日のカテコで、マカゼくん、『REON!!II』に出たかったのかなあ、と思ったなぁ。

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