『日のあたる方へ ―私という名の他者―』の、いてもいなくても問題なし、な脇役のジュリア@はるこちゃんについて、あれこれゆーてますが。

 ヒロインのマリア@風ちゃんはどうなのよ、っていうと。
 もちろん風ちゃんは、うまかったです。
 ただ。

 作品的に、マリアヒロインは難しいよなあと。
 風ちゃんがどうこうではなく、役として。作品の作り方として。

 てゆーかこれ、ジュリアヒロインにした方が、面白くなったんじゃあ……? マリアは、キーパーソンとして使って。

 まあその、わたしの好みもある。
 医者が、公私混同で患者に接するのって、好きじゃないんだわ。
 ジキル博士@マカゼは命懸けで患者のマリアを治療するわけだけど、そこにどんな大義があったとしても、所詮は我欲、恋人だから。彼女が治れば自分が得をする、だからがんばってるんです、てのがなー。
 仕事は真面目にしろっていうか。仕事にかこつけて、色恋やられるのは好きじゃないっつーか。
 マリアの治療と医学への探究心と、色恋は分けて欲しかった。
 マリアにのめり込むけれど、本当の愛は別、彼女への依存と事件の重さでボロボロになった心に、本当に自分が必要としているものがなんなのか、愛がなんなのかに気づく、てな話の方が好み。
 この場合、ジキルのために泣く泣く身を引いたジュリアをクローズアップして、最後は彼女とハッピーエンドな。


 なまじ風ちゃんが芸達者な人だから、彼女に精神疾患ヒロインをやらせたくて、そこからいろいろと間違って出来上がっちゃった結果かなあと思う。

 でも、風ちゃんはたしかに芸達者だけど、「タカラヅカ的な精神病ヒロイン」には、ならないと思うよ……。

 心を病んだ美しい女性、というのは、現実の病気の人とはまったく無関係な、タカラヅカや少女マンガにはありがちな美しいモチーフ。
 濁った現実とは別の、美しい精神世界に生きる人、という、ファンタジーな設定。
 魔法のない世界で妖精や天使を出したかったら、精神病ってことにすればヨシ、てな、「妖精」「天使」を描く上での記号。
 まったく別モノだから、現実の病気の人を貶めるとか、そんな意図はない。表現上のお約束みたいなもんだ。
 だから、精神病ヒロインはアリなんだけど……。

 タカラジェンヌは存在自体ファンタジーだけど、風ちゃんはタカラヅカっぽくない個性の持ち主。
 そんな彼女に「タカラヅカならではの妖精役」をやらせるっていうのは……。

 そして、相手役がこれまたタカラヅカ的ハッタリの苦手な、堅実で骨太なマカゼだし。

 キムシンはアテ書きの人、脚本がトンデモでも、キャラのハマリ具合で満足度を上げる人だったのに、なんで今回はこんなことになってるんだ。


 わたしがマカゼにアテ書きするなら、テレビ局がわいわい言うようなスター医師ではなく、堅実な研究者ってことにするなあ。派手なパフォーマンスをして衆目を集めるあざとさなんかなく、ひたすら誠実に自分の道を行く人。
 それこそ、髪に寝癖がついていも気づかない、不器用な男。
 といっても変人ではなく、家族を大切にしているし、友人もいる。そんな、「真面目ないい人」。
 派手なパフォーマンス担当は、別人格のイデー氏。常夏の国で毛皮のコートを着用するくらい、自己顕示欲旺盛。
 真面目ないい人、ちょっと不器用でかわいい男、って、マカゼまんまじゃん。せっかくの主演で、見慣れたいつものマカゼってのもなあ……と思っている観客に、ずどんと一発カマす!
 いつものマカゼと、オラオラマカゼ。ふたつの魅力でファンをメロメロに。

 で、その真面目なだけが取り柄の冴えない男に、何故か市長の娘の派手な美女ジュリアが惚れている。上から目線で「パパのおかげで研究資金が得られてるのよ」てな、物言い。
 真面目なジキルくんは、ジュリアが苦手。なんとか遠ざけようとする。親友たちは「お前に気があるんだよ」と言うけど、まさか。姉のマリアの主治医だから、なにかと絡まれてるだけだろ。
 ジュリアは、ジキルの興味も愛情も患者のマリアにだけ注がれていることを、苦しく思っている。天使のマリアに、世俗に生きるジュリアは絶対敵わない。だから余計に、「天使」とはかけ離れた態度を取ってしまう。
 彼女が素直に心のままをジキルにぶつけるとき、……それはもちろん、あの事件絡み、そしてイデーの罪を知った上でのことだ……それでもジキルを愛し、守ろうとするジュリアに、ジキルは自分がマリアに求めていたのが虚像だと依存だと、気づくわけだ。

 マリアはひたすら美しく、神秘的に。
 この世のモノではない歌を歌い、白いワンピース姿で象徴的に登場する。
 彼女の病気や存在に、わざわざ「答え」を出す必要はないと思うんだ。クライマックスではそこだけ正気に戻って、ジキルと初恋のデュエットしていいからさー、でも最後まで世俗に足を落とさず、「天使」のままいてもいいと思うんだ。
 ヒロインだから、わざわざご都合主義的に正気に戻っちゃうけど。
 要は、ヒロインでなければ、オープニングのイメージのまま通せる。

 この公演のヒロインは風ちゃんでなければならないのなら、風ちゃんがジュリアで、マリアがはるこちゃんで。
 風ちゃんはリアルなヒロインであるジュリアも出来るだろうし、ここで華やかなお嬢様キャラスキルを磨くことになるし、はるこちゃんは天使マリアもできるはず……あっ、歌は……その、はるこが歌える音域とか長さに変更して。

 それから、親友は、ひとりでいい。
 ブルーノ@みっきぃとジョアン@ポコちゃん。ふたりいて、ジキルくんと3人組なのは別に良いけど、そのうちひとりだけを、明確に区別する。
 役割が分かれてしまっているので、友情も弱くなってるのな。いや、ポコちゃんがもう少しうまければ、今のままでもいいのかもしれんが、彼の実力ではマカゼ氏の支えにはなってないっす。
 医師仲間のジョアンを明確に親友ポジ、2番手として確立し、ジキルとの関係をきちんと描く。ブルーノは明るいにぎやかし担当。
 テレビ出演大好きなブルーノは、みっきぃに似合っているけど、実力的な意味でいうと、2番手役相当のジョアンの方が良かった。
 新公主演しているポコちゃんと、学年が上で実力もあるみっきぃの、扱いに困っての「同格の親友役」に見えた。作品的に必要なのはジョアンだから、そっちが新公主演経験者。でも、あきらかに差も付けられないから役割分担、結果、どっちも薄くなり作品的にも、主演を支える意味でも、うまく作用しなかった、と。

 初日のカテコで、なにかあるたびみっきぃの方ばかり振り返って、ヒロインの風ちゃんをまったく見ないマカゼくんに、「なんでこのふたりを裂いたんだ」と思った(笑)。や、ヒロインは風ちゃんで良いけど、2番手の親友役は、みっきぃでいいじゃん。素直にマカゼ×みっきぃで(笑)。
 マカゼくんの顔立ちから、強烈なデジャヴも感じました。……『天の鼓』の千秋楽カテコがこんな感じだったっけ……オサ様はヒロインを一度も見ずに、隣にいるゆみこばっか見て喋ってたっけ。
 や、素の彼らの人間関係は知りませんが、舞台の相性からいって、マカゼさんにはみっきぃの方がいいなと。

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