で、原田くん新作『白夜の誓い ―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』についてなんだけど。

 知りたいのは、何故にこうなった?かなあ。

 強く感じたのは、骨組みのバラバラさ。
 ふつうに「物語を構築する」だけなら、こんなとっ散らかり方はしないと思うんだ。や、わたしの思う常識において、だから、世間様的にどうなのかは知らんけど。
 グスタフが主人公で、彼の社会的立場・人生での愛憎のメインはヤコブ、恋愛はイザベルだよね。ふつーにこの3人メインで書けば、なんの問題もない。
 イザベルが実際にグスタフに絡むのが最初と最後だけだとしても、あちこちでイメージだーの「遠く離れて想い合うふたり」だーので出番を増やし、フォローできる。
 んで、あとは現実世界で政敵と闘ったりヤコブとあーだこーだやってりゃあいい。
 どうエピソードを組んでどう見せるかはいろいろあるだうけど、まず基本の骨組み、グスタフを中心とした三角関係は鉄板だろう。

 なのに何故か、ヒロインのひとりであるはずのイザベルが、「エピソードのひとつ」でしかない脇役扱いで、ストーリーに無関係な正妻ソフィアが無意味に尺を取って登場する。

 もちろん、ここが「タカラヅカ」である以上、トップ娘役が演じるソフィアに出番が多く、現段階で脇の下級生でしかない一娘役が演じているイザベルに出番が少ないのはわかる。「タカラヅカ」のピラミッド的に正しいのはわかる。
 わからないのは、そうやって無関係なキャラクタをトップ娘役に演じさせ、無意味に登場させるんだ? その結果、ストーリーが意味不明になる。

 重要な役は3つ。主人公と、ヒロインふたり。ヒロインのうち、ひとりは女性。……なら、そのたったひとりの女性役を、いちばん大きな役をつけなければならない、出番を確保しなければいけないトップ娘役にさせるよな? 常識で考えてそうだよな?
 何故、重要なヒロイン役を脇の娘役にさせて、いなくても支障ない役をトップ娘役にさせて、作品を壊さなくてはならないんだ? 自分の作品が大切じゃないのか??

 ごくふつーにモノを作るだけなら、こうはならないと思うんだ。
 だから、いったいナニがあったのだろうと。
 ナニか、やんどころない事情があり、トップ娘役をヒロインには出来なかった。いなくてもいい役を「女性キャラでいちばん出番を多くしなければならない」必要があった。
 や、それならそれでも、書きようはあったと思う。古い話で恐縮だが、それまで歴史ドラマで重要視されていなかった妻の存在をクローズアップして描いた『おんな太閤記』が大ヒットしたみたいに、それ以降やたら女性キャラ持ち上げた大河ドラマが乱発されるよーになったように、描き方ひとつでフィクションはいくらでも面白く出来る。
 不仲で有名な正妻ソフィアをヒロインにして、グスタフ三世を描くことは可能だ。
 出来てないだけで。

 んでわたしは、シンプルに思う。
 出来ないなら、やるな。

 いなくてもいい役を「女性キャラでいちばん出番を多く」して、たった90分で70人とかの人数使って起承転結するって、至難の業だよ? 相当難しいよ?
 出来もしないのに、なんでわざわざこんな難しいことをやったの?

 ふつーに、イザベルがヒロインで、それでも原田くんだからつまらないモノになっていたとしても、「あー、はいはい、予想の範囲内」で済んだ。
 でも、根っこから間違った作りで、それで結局失敗してる、って、ナニ? 意味わかんない。
 予想の斜め上を行くなあ。
 いくら原田くんだからって、こんなみょーちくりんな失敗はしないと思うの。基本じゃん? 『伯爵令嬢』をアラン主役にして舞台化するのに、ヒロインがアンナで、コリンヌは脇役、最初と最後しか出してはいけません、てな縛りで舞台化する? するわけないよね??
 や、アンナだって「伯爵令嬢」を名乗り、アランに恋するんだから、ヒロインで書けないことはないけど、難しいよ? わざわざそんな変化球投げる必要ないよね?

 だから、なにかしら事情があったのかなあ。
 原田くんは被害者? 「オレだって好きに書かせてもらったら、こんなことにはなってねーよ」と思ってるのかも?

 『ブルボンの封印』を思い出したなあ。
 強引なヒロイン変更。
 原作のヒロインを別の下級生娘役にさせて、悪役をトップ娘役にさせた。ヒロインはもちろん主人公と愛し合う設定で、悪役女は横恋慕してもちろん振られて死亡エンド。
 脇役をトップ娘役にやらせたため、ストーリーは破綻。話の主軸が「下級生娘役」にあることが、原作を知らなくてもわかるから、そして主軸である彼女よりも、「ストーリーないよね?」なトップ娘役の役を底上げするから、本筋がわからなくて観客はストレス。結局最後までわけわからんままトップ娘役死亡で幕が下りる。
 ひどい作品だった。
 前述の『伯爵令嬢』のアンナをトップ娘役がやるよーなもん。そもそも原作の主人公はコリンヌで、コリンヌの相手役でしかないアランをトップスター演じる主人公に据える変更だけでも大変なのに、悪役がヒロインって……。そりゃストーリーもなにもぐちゃぐちゃになるわ、てな。
 『白夜の誓い』はまだ、イサベル主人公の原作があるわけじゃないから、『ブルボンの封印』ほど壊れておらず、ただ「盛り上がらない」作品になってる。

 だから、いちばん強く思った。
 何故にこうなった?

 や、どんな制約があり、どんなところからどんな無茶振りなオーダーがあったにしろ。
 原田くんに実力があれば、問題なかったんだけどね。
 商業作品だもん、クライアントの注文に沿って書くのは基本っすよ。だから、横やりがいろいろあってこの結果なら気の毒だなとは思うけど、それでも、評価されるのは裏事情云々ではなく、表に出た「作品」だけだから。
 過去のいろんな駄作と比べればマシだけど。下を見ればキリがないのがタカラヅカ(笑)。アレよりマシ、コレよりマシ、そう言って慰められるけど。
 とても残念な作品だと思うよ。

 なんの制約も横やりもなく、原田くんが物語の骨組み構築の基本を知らない人だった、てなオチだったら、そっちの方がホラーだから、考えない。
 だって、『伯爵令嬢』読んで「アンナがヒロインだよね、コリンヌは出番ほとんどナシの脇役だよね」と思う認識力の人が演出家としてこれから何十年もヅカに関わるとか、考えたくないっす(笑)。


 あ。
 グスタフ主人公の物語で、ヒロインはふたり、そしてひとりは女性と書いた。
 もうひとりのヒロインってのはもちろん、ヤコブ@ヲヅキだけどなっ。
 原田くん作品のヲヅキさんはホモ限定だな。

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