まだしつこく『白夜の誓い ―グスタフIII世、誇り高き王の戦い―』の話。

 グスタフがアホの子に見える。
 もともとそのつもりで描いているなら仕方ないが、そうでない場合。

 台詞のチョイスを間違えていると思うんだよなあ。
 同じ場面、同じ流れの会話で、グスタフを卑怯者やアホの子にしないことは出来ると思うんだ。
 昔よく植爺作品を俎上に載せて語った「※※(キャラ名)救出案」を久しぶりにやってみる。自分的頭の体操。あくまでも個人的な楽しみですよん。(と言い訳してみる・笑)

 ということで、ここではグスタフをアホの子にしないための変更案を書く。

 わたしがいちばん「間違ってるやろ!」と思う、パリ・イザベルの家での場面。
 グスタフが「軍事は素人」「人間は血筋で判断」していると、観客に示してしまう。それまでの彼の言動、そのあとの彼のなすことすべてを「口先だけの偽善者」に貶める会話がなされている。
 ここを、場面も流れもそのままで、グスタフをアホの子にしないように、台詞を変えてみる。

 その際、ここで語られるパーツ、
1.グスタフが戦術の本を読んでいる。
2.グスタフの先祖は偉大な軍人=冒頭の英雄ヴァーサ
3.グスタフはヴァーサを尊敬している。
4.グスタフの優しげな風貌から、戦術の本を読むのは意外と思える。
 これらすべてを盛り込む。

 イザベルの家で、戦術の本を読んでいるグスタフ。そこへイザベルが現れ、「また戦術の本をお読みになっていらっしゃるのですね」と、声をかける。
 また、です。グスタフは軍を率いる将来を見据え、日々勉強しているのです。
 ルソー他、新しい思想の本も読むし、戦術の本も読む。驚くことじゃない、それがグスタフの日常。

 そして、「私も本国では軍人だったのですよ(軍籍に身を置いていたことがある)」とか「自分の」ことを語る。先祖は関係ない。史実絡みでそれを言えないとか縛りがあるなら、「いずれ軍を率いることがあるかもしれませんからね」とか、未来のことにすればいい。
 まず自分のことを語った上で、自分の能力とは関係なく、「私の先祖には、偉大な軍人だった人がいるんですよ。私は子どもの頃から彼に憧れていて……彼のようになりたいと」という使い方をする。
 この流れなら、「なれますわ、きっと」とか「もうなってらっしゃいますわ」とか、肯定の言葉につながる。先祖が偉大なのではなく、今ここにいるグスタフが優秀なのだ、それは彼が素質だけの問題でなく、勤勉で努力家だからなのだ、と示すことになるよね。

 イザベルはグスタフの、パリでのいちばんの理解者だ。スウェーデン皇太子だということだけは伏せてあるが、それ以外の「心」部分では深く結ばれている。だから彼女は、グスタフの本当の顔を知っている。
「社交界の人々は夢にも思わないでしょうね。そんなやさしげなお顔をしてらっしゃるのに、思いのほか芯のお強い方なのだと」
 知らないのは、パリの貴族界の人々。グスタフの美貌や気品ある振る舞いなど、外側だけを見ているのだ。
 この「わたしたちだけの秘密」的なやりとりで、ふたりの親密さ、心の絆を表現。


 同じ場面を、同じパーツと会話の流れで、まったく逆に描けるよ?


 ここの場面が正しく機能すれば、あとの展開がすごく楽。
 ヤコブから父王崩御を知らされ、イザベルにプロポーズするのも、またイザベルがそれを辞退するのも。ふたりの理解と絆があるゆえだとわかる。
 軍事の勉強をしっかりしていたから、ロシアとの戦争も強気でOKだし、その下地がある上で「今は軍事力より文化面に力を注ぐ必要がある」と語っているのだと思える。

 もちろん、おかしいところは山ほどあるので、すべて正されるわけじゃないけど、全体としてマシになるよ。
 グスタフの人格と知性という点で。


 こんな風に、あちこちの脚本を「同じ場面を、同じパーツと会話の流れ」で、変更していきたいなー。
 いろいろ改善可能だと思うんだけど。
 や、今はそこまでやらないよ。担当組だったらフタ桁軽く観るから、書かずにはいられなくなってたろうけど(笑)。

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