まおポコW主演バウ『アルカサル~王城~』初日に行ってきました。

 いろんな人にバウ主演の機会があるのはいい。いろんな子にやらせるべきだー。
 しかし、脚本は熟慮求む。初主演でいっぱいいっぱい、技術も経験も不足している子の足を引っ張る作品はやめてあげてーー!

 演出は中村A。まあぶっちゃけ、オリジナルは二度と書かなくていいよ的な脚本力と、平板でどんくさい演出する先生、という印象の人です。
 わたしの中の「駄作ランキング」でかなり上位を占める『お笑いの果てに』……もとい、『さすらいの果てに』を作った人です。あれほど突っ込みまくった作品は、そうそうない。『あの日みた夢に』もひどかった……。『永遠の祈り』はキャストファンがトラウマのひとつに数えてたっけ。
 や、ほんと、オリジナルは勘弁してほしい。
 かといって、原作あり作品をうまく舞台化できる人かというと、それも疑問。
 演出がどーにもこうにもどんくさい。暗転だらけ、人の配置が変、立ち位置ひとつにしても何故そこで立たせる、おかげでそのあとへのつながりが不自然、とか……枚挙に暇がない。
 わたしは柴田信者の「柴田作品はすべて神! なのに再演された柴田作品がしょーもなく見えるのは、すべて演出した者が無能だからだ!!」という意見が苦手だし強く異議を唱えるけれど、かといって中村Aの演出のどんくささは否定できない。いつもいつも、もっとなんとかできんのか、と肩を落とす。

 そんな中村Aの、4年ぶりの新作舞台です。

 原作付きなので、ぶっ壊れすぎててそもそもこれ話になってないよね、という「中村Aオリジナル危機」は回避できた。
 だから懸念は、つまんないよこの演出、という面に留まる。

 で、「つまんないよ」とか「どんくさいよ」程度なら、力のあるスターさん主演なら、吹っ飛ばせるんだ。
 4年前の『麗しのサブリナ』は確かにどんくさくて冗長な演出だったけれど、それでもまとぶん・えりたんの力技で、なんとか成り立っていたもの。

 てゆーかえりたんって、実は中村Aのミューズだったのかな……(笑)。
 『さすらいの果てに』『あの日みた夢に』『麗しのサブリナ』と、数少ない中村A作品で主役orある意味主役より重要な役をやりまくってますがな……!!
 キムシンといい、えりたんって(笑)。
 『麗しのサブリナ』が著作権絡みで放映されないのが残念で仕方ない。えりたんの魅力爆発なのよあの作品!! 演出はともかく、えりたんがステキ過ぎてたまらんのよ!!

 ……話が逸れた。

 実力者なら、なんとでもなる。
 その程度の作品はタカラヅカでは当たり前のことで、むしろ、その程度の作品を名作・人気作へとねじ伏せてこそスターの証。
 だから中村Aはヅカの演出家として、ぜんぜんふつーにアリな人だと思う。

 問題は、下級生バウであるということ。

 「スターならねじ伏せられる」……つまり、スターでなくてはどうにもならない。
 で、新公学年の初バウ主演作、ということは、最初から「力技は無理」とわかっている。
 わかっているのに、中村A……。

 きつい……。

 や、学年がどうあれ、経験値がどうあれ、実力があれば問題ないんだけどね。
 実際、『さすらいの果てに』を、つい2ヶ月前まで新公の舞台に立っていたキムくんは、ねじ伏せましたから。同じ作品の役替わり公演にて、えりたんだと抱腹絶倒だったのに、キムだとふつーに「いい話」になっていた。
 実力ってのはこういうことだと、知らしめた。

 キムくんレベルの実力者ならともかく。
 まおくんポコちゃんに、それを求めるのは……。
 当時のえりたんに『さすらいの果てに』をねじ伏せろと言うくらい無茶振りですよ。

 てことで。

 中村A作『アルカサル~王城~』の、作品への感想は、別の人主演で観たかった。です。

 ふつーの中村Aだったと思う。
 いや、1幕とかは中村Aにしてはいい出来だと思う。2幕はいつもの中村Aだったけど。

 観ながら何度も何度も遠い目になった。
 別の人ならコレ、もっともっと楽しいんだろうなあ。力のあるスターさんが演じたら、きっと盛り上がるんだろうなあ。
 つーか、スターさんなら、これくらい隙間があるというか、薄くて内容少ない方が、行間を自分で埋めて膨らませて、ガチガチに決められてたり語り尽くされてるより、盛り上げやすいんじゃなかろうか。
 隙間を自由に色づけできて、爆発できて、本人も観客もすげー楽しめそう。

 トップスターとか、乗りに乗ってる2番手あたりのスターさん主演だったら。
 歌ウマだとなおヨシ。歌って場を圧倒できる人なら、鬼に金棒。

 だってこの作品、芝居の密度低いよね?
 あらすじ的に出来事羅列して、人の心の動きや深みには、一切触れられてない。
 豪華衣装と繰り返される主題歌、わいわいがやがやどーんばーんで、進んでいく。
 演技力は問わない。舞台人としての基本スキルがあればいい。
 必要なのは、歌唱力とスター力。
 センターで歌い、場を征することが出来ること。
 芝居というより、ショーに近い。作品をねじ伏せる要素のメインが、芝居ではないんだもの。

 そんな作品を何故、ショーの新公をやって客席を震撼させたまおポコにやらせるかな……。

 苦手分野を磨けと? バウ公演はお勉強の場ですと?
 それも必要だと思うけど、ほんとうに、わざと、あえて、この作品なの?

 ことちゃんのバウもそうだったけど、劇団は若手にあえて苦手分野を与え、鍛えているのかもしれない。
 キャストファンは、ご贔屓が主演ってだけでどんな作品でもうれしいし通うし、贔屓がやる以上すべて肯定だし、バウなんてファンしか観ないから評価もふつー「絶賛」のみになるし。
 やることに意義がある、作品クオリティ無視、ファン以外の観客は想定していない、てことかもなあ。
 そこまで割り切って、未来のタカラヅカのために設計図書いて演目や抜擢をしているならいいんだけど。

 劇団を信じ切れないわたし(笑)。

 とりあえずこの『アルカサル~王城~』は、別の人……実力のあるスターさんが主演していたら、盛り上がる作品ではあったと思う。

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