で、また『カリスタの海に抱かれて』の話に戻りますが。

 この作品で、いちばんびっくりしたのって、やっぱなんつってもナポレオン@カレーくんですよ!

 わたし、カレーくんのことなんにも知らなかったんだね。
 今まで花組けっこう観てきたし、新公もバウも観てきたし、ご贔屓が花組にいたときはそれこそ毎公演わりと数観てたし、耽美が似合うとかダンサーだとか、入団当初から注目の的だった美貌だとか、そういう表面的なことは知っていたけれど。

 ほんとのとこ、なんにも知らなかったんだな。
 そう思い知りました。

 なんというか。

 破壊力、パネェ。


 最初の銀橋ソロは、感心した。
 もちろんぜんぜんうまくないんだけど(笑)、こんだけ長い間出て来なくて、もういい加減出来上がった状態の物語の中に突然ぽんっと出て来て、スター来ました! 重要人物来ました! と瞬時に客席を納得させる力すごい。

 『Victorian Jazz』初日を思い出していた。
 めっちゃへなちょこなんだけど、彼が登場するなり「スター、キターーッ!」と思わせる力。
 ああそうだ、こういう子だ、こういう天賦の才を持った子だ、そう改めて思い出した。

 そこまでは、いい。
 問題は、ナポレオン氏が喋り出した……芝居をしだした、とき。

 えっと。
 …………。
 一瞬、アタマ空白になった(笑)。

 それくらい、インパクト強い。

 なんとも、処理しにくいモノが、展開されていた。

 瑞々しい美貌の若者が、なんかとてもバンカラな無神経キャラを演じている。
 見た目は青年なのに、中年以降のおっさんのような演技。板に付いてないから、盛大にうわっすべり。
 しかも。ヘタ。

 えーと。
 なんだこれ。
 ヘタ……だよね?
 なんかいろいろと、ムリしてるというか壊れているというか、自爆しているというか。

 どうしよう!!

 なんか、焦る。
 客席で、手に汗握る。
 見てはいけないモノを見てしまったような、いたたまれないキモチ。

 なんでこんなことに??
 いやその、おもしろいけど!
 でもこれ、おもしろがっていいの? ドン引きするのが正しい鑑賞法? 笑うとこなの?

 いやあ……舞台の上で展開されている場面の情報を処理しきれなくて、盛大にフリーズしましたねー。

 どうも、「豪快で型破りな英雄」というのがこの作品のナポレオンのキャラ付けらしい。幕末でいうところの坂本龍馬系。ラストで狡猾さも垣間見せるから、ただの無神経キャラじゃないぞ、と。切れ者ゆえの豪快さなんだぞと。
 脚本と演出から、そう読み解く。
 が。
 目に映るカレーくんの、すべりっぷりがすごい。

 豪快さも大物さも、かなしいほど感じられない。
 ただの、変な人に見える。

 黙って踊ってたらかっこいいのに……スター!!なのに……。

 びっくりした。
 その、明るい破壊力に。

 まさに、どっかーーん!! って感じなの。
 みりおくんがちまちま細心に並べた街のジオラマを、端からちょこちょこ遠慮しいしい壊していくんじゃなくて。
 どっかーーん!!
 テーブルごとひっくり返しましたーー! みたいな。もしくは、真ん中にボーリング玉落としましたーー! みたいな。
 一発で、木っ端微塵。
 しかもそれが、明るいの。変な陽気さ、屈託なさがあるの。
 あのそれ、みりおくんが時間かけて、眉間に縦皺寄せて苦悩して脂汗流しながら並べたのに、彼の周囲に暗雲立ちこめてたのに。
 一瞬で、ぴかーー! てかーー! どっかーーん!!

 あー……スターなんだね……。
 しかも、タニちゃん系ですか……。

 知らなかった……。

 その爆弾力が、キラキラ。
 突き抜けた無頓着な存在感。

 ヘタだよ。ヘタなんだけど……彼がどうしてこの役をやっているのか、どうしてこのポジションにいるのかを、納得、させられてしまう。

 柚香光おそるべし!!


 あんなに耽美な美貌と色香を持ちながら、色気皆無のタニちゃん系スター力を持つ、って、アンバランスすぎてすごい。

 知らなかったっす。
 美貌ばっか見てたからなー。

 花担友人に言わせると、驚くことでもなんでもない、カレーらしいキャラだそうですよ。


 でも終演後に話してたんだけどさ。

 この作品、だいもん組替えを知らされずに大石せんせが書き下ろしちゃったんじゃないの?
 カルロ@みりお、ロベルト@だいもん、ナポレオン@キキ、って、すっげーしっくりくるんですが。

 ロベルトは熱と闇を持つキャラ。陽性のキキくんだと、彼がなにを悩んでいるのかわからない。や、キミ、そんなことで別に悩まないよね的な。
 ロベルトって作品の粗をすべて押し付けられたひどいキャラなんだけど、だいもんならその濁りと闇を、圧倒的な熱でもってねじ伏せたんじゃないかな。

 ナポレオンは陽性の英雄キャラ。キキくんなら持って生まれたトップ路線オーラで、おおらかに発散しまくったろうなと。演技しなくても、地のままでOK!てな。

 別々の組で、片や超路線育ち、片や叩き上げとして育ち、今同じ組でトップと2番手として並び立つ同期が、「同じ日に生まれた親友同士の光と影」を演じる……って、想像するだけでわくわくですがな。
 みりおとだいもんアテ書き設定なんじゃ……?

 プログラムに、いろいろあったっぽいことが、書いてあるようですが……このへんのことかなー、と勝手に思ってみたり。


 なんにせよ、今のナポレオンはカレーくんで、おかげでなんとも素敵なことになってます(笑)。
 いいよなー、柚カレー。

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