宙組『王家に捧ぐ歌』についてあれこれ。

 伝説のスゴツヨが、すごくなかった。

 あそこはビジュアル最強な美少女ふたりが、歌唱力最凶の怪音波を発してドヤるのが醍醐味なのに。

 ビジュアル微妙な歌ウマさんと、ビジュアルそこそこ歌もそこそこのお嬢さんが、そこそこのデキで済ませる場面じゃない……。
 しょぼん。

 現宙組でいえば、やっぱうらら様ソロでスゴツヨするのが最も初演再現だったと思う。美貌と歌唱力ゆえに。
 うらら様を禁じられたら、あとはもう別路線を狙うしかなかったのかな……でも、もったいないなー。あんな珍妙な場面、他にないのに、その破壊力を削ぐなんて。


 演出変更でいちばん良かったのは、もちろん凱旋。

 初演では不評の嵐だったもん。
 つまらないわ長いわ……。
 当時のわたしは、みやるり探しがブームだったわね……あの全員同じ格好の残念なマスゲームみたいな中から、特徴ある顔立ちの彼を探してガン見するという。(すみれ売りで写真を撮らせてもらったのがみやちゃんとみりおくんだけ、という偏った嗜好により、ファンというほど強い感情もないまま、なんとなく追い続けていた頃)

 宙組版の凱旋、カッコイイよねー! 全改訂されてよかったーー!
 ここでも愛ちゃんの張り切りぶりがツボに入る。わかったわかった、と(笑)。

 あー、あと、2幕でケペルたちが銀橋出て来たのは良かったと思う。なにごとも派手になるのはいいことだ。
 でも、エジプトトリオのターンも銀橋になっちゃうと、エチオピアトリオとの差が埋まって残念かなというか、埋まるどころか追い越された感があってエチオピア思い入れ隊としてはちと残念かなという。(どんなんや)


 あちこちささやかな変更が、耳に馴染んでいるモノと「チガウ」たび、かくんとなる。あるべきところにあるものがなくて、肩すかしされる感じ。
 今回は平和ではなく愛をテーマにしているそうだが、あんまし差異は感じないなあ。
 そんなん最初からそうやん!的な。
 つか、それよりも「名もなき群衆」に対する悪意というか攻撃性が減ったかなあ、という印象。キムシンの変化なの? 受け取るわたしの変化なの?

 『王家』初演の頃は、わたしキムシンの演出力にいたく感動していたので。
 テーマを叫びまくる、うるさい作風が大好きだった。
 でも、どんどん彼は丸く薄くなっていって、最近はもうあまり叫ばず、痛烈なモノは書かなくなった。
 キムシンが変わったのか、それともわたしが変わり、そんな風にしか感じなくなったのかは、わからない。
 キムシンブームだった頃の『王家』は大好きだけど、今見ると当時ほどの熱狂的感覚はない。わたしには。

 それが寂しい。

 今も、楽しいし、今も、大好きだけど。
 時は流れる。 

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