最近わたしは、うまい娘役に出会うと、感動する。

 娘役ってのは、女の子だ。
 や、タカラジェンヌは全員女の子だよ、わかってるよ。
 でもさ、そのなかでも、娘役は、女の子が演じる女の子の役だ。
 つまり、それだけならば、「あたりまえ」だ。タカラヅカでなくていい、どこの演劇でも芸能界でも、同じだ。

 そしたタカラヅカは、男役社会だ。
 「トップスター」と呼ばれるのは男役のみ。娘役は、その相手役。娘役さんたちはインタビューで必ず言う、「男役さんを輝かせられるような娘役になりたいと思っています」「男役さんをもっともっと素敵に見せられるような娘役に……」あくまでも、男役主体、娘役はその引き立て役。
 娘役は「タカラヅカの娘役」という高いスキルを必要とされるのに、傍目からは「女が女を演じるんだから、誰でも出来る」と軽んじられ、「女は若い方がいい」という現実社会と同じ価値観でくくられていたりする。研1の素人に大劇場でヒロインを演じさせておかしいと思わないくらい、どーでもいい役割だと、劇団自身が思っていたりする。

 そんな、軽んじられて、見返りの少ない「娘役」に、わざわざなりたいと思う人は、年々減っているんじゃないか?
 そう危惧する。

 世の中には、いくらでも魅力的な世界がある。
 今はふつーの女の子でも、アイドルになれる。テレビで活躍するトップアイドル以外にも、いろんなジャンルのいろんな華やかな芸能業が存在する。
 かわいくて、歌えて踊れる女の子なら、おいしい思いの出来る業界が、他にいくらでもあるだろう。どの業界も、上を目指すなら、向上心を持つなら、等しく苦労があるとか甘くないとか、そういうことではなくて。
 タレントの女の子たちは、「女の子である」ことがそもそも武器になるわけで、「女の子だから」軽んじられる男役社会のタカラヅカとは苦労の意味が違う。

 世の芸能界がどれだけ魅力的でも、男役を目指す子はそれほど変動しないと思う。
 だって「男役」があるのはタカラヅカだけで、他の業界では男役になれないのだから、タカラヅカに集まるしかない。
 しかし、娘役は……。

 かわいくて、歌えて踊れるなら、よそ行った方がよくないかい?
 同じレベルの才能と立ち位置なら、よその方がちやほやされるし、儲かるんじゃないかい?

 昔なら、お姫様衣装で歌って踊りたい子はタカラヅカを目指すしかなかったかもだけど、今なら他に山ほどあるもんねえ。
 なにもわざわざ、タカラヅカでなくても。

 そうやって、昔ならタカラヅカに入っていたかもしれない子たちが、タカラヅカには来なくて。
 劇団は音楽学校の選考基準を変えたりして、なんとか人員確保しようと苦労する時代となった。

 とまあ、他にいくらでもおいしいパイがあるのに。
 わざわざ、苦い古いタカラヅカへやって来て、制約多くて割に合わない娘役を、それでも楽しそうに一生懸命やってる若いお嬢さんたち……ってもう、それだけでもいじらしくて仕方ないんだけど。

 どんだけ「タカラヅカ」好きなん? って、胸が熱くなるんだけど。

 その上さらに。

 かわいくて、うまい、って、どういうこと?

 そんだけかわいくて、そんだけうまかったら、なにもこんなとこで苦労しなくても、他にいくらでも(以下略)……!


 えー、長々語りましたが。
 宙組新人公演『王家に捧ぐ歌』を観て、またしても思いましたの。
 雪組『伯爵令嬢』観たときに思ったのと同じことを。

 星風まどかちゃん、マジにうまいんですけど?!

 外見がかわいいことは、すでに知ってた。でも、実力はわからない。

 ビジュアルがいい子は、実力が、残念。
 実力がある子は、ビジュアルが、残念。
 これはもう、お約束。
 だって、美貌で卓越した歌唱力を持ってたら、そもそもタカラヅカなんかにいないわよね、よそでさっさと成功してるわよね。

 なのになのに、まどかちゃん、歌うまい。歌える。
 すげえええ。

 感動しました。
 かわいくて歌うまいのに、よくぞタカラヅカに入ってくれた!

 や、かわいいったって、絶世の美貌ってわけじゃない。
 課題はいろいろ。

 若さゆえのぷっくりほっぺは、ヒロインを目指すにはマイナス。かわいさ売りの若い少女役ならアリだけど、お姫様にはそぐわない。
 中学生っぽいロリータ系の顔立ちなのに、スタイルも声も大人っぽい。ゆえに、ビジュアルの落ち着きが悪い。前作のような子役なら気にならなかったけれど、ドレスを着ると微妙。
 ……って、まだ研2だもの!! 舞台踏んで1年半の女の子が、ここまで出来ちゃうってすげえよ!!

 きれいな大人の女性の声で、歌って演技してるのよ、違和感なく。
 顔が子どもだから、終始違和感ハンパなかったけど!(笑) あのロリ顔なら、もっときんきんしたアニメ声でも不思議じゃないのに、しっかりしたヒロイン声で芝居してますがな!

 わたしは『王家に捧ぐ歌』=アイーダの人。『王家』というと、問答無用でアイーダ見ちゃう人。
 だからもう、習慣として宿命的に、アイーダ@まどかちゃん見てた。
 外見の違和感はハンパなかったが、この違和感は彼女が学年を重ねれば改善されるだろうと思えるので問題なし、歌えて芝居が出来ることにひたすら感動。

 うまい、というなら月組『1789』の新公アントワネット@美園さくらちゃんもうまかった。……けど彼女は、ヒロインタイプに見えなかった。月組のみくちゃんや宙組のありさちゃんがうまかったのと同じに思えた。

 まどかちゃんは、ヒロインタイプに見えた。なのにうまい、って、なにソレすげえ……!!

 ねねちゃんに似てる、ってのもまた、ヒロインっぽいよなあ。
 そして、新公ヒロインやってたころのねねちゃんより、ずっとうまいし……(笑)。
 雪組のあんりちゃんにも似てるけど……新公ヒロやってたころのあんりちゃんの実力ときたら、もうね……ビジュアルいい子は実力皆無、というお約束を体現する勢いだったもんなあ。

 欠点皆無の完璧天才スター現る……、というわけじゃない。
 課題はある。でも、それも含めて、将来有望なスターの出現に、心からわくわくした。
 うれしかった。

 彼女の成長が、楽しみだ。
 子どもっぽいむっちりぷっくりから、どんどん垢抜けて美しくなっていくんだろうな……わくわく。

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