初演は観た。が、「観た」というだけのこと。
 「初演は神、再演は『初演とチガウ』というだけですべてカス」と思うような初演厨ではない。駄作押し付けられて大変やなあ、と、初演も今回も思う程度の熱量。
 また、初演キャストに満足していたわけでもナイ。駄作なのは確かだが、それにしたってここまで手こずるのは、キャストの不向きとか力不足とかも原因だろう、と思う。

 が。
 初演のエドガー@ワタさんってやっぱ、力があったんだなあ、と今頃思った。

 星組全国ツアー『大海賊』
 エドガー役は、まさこ様。
 あー……。

 まさこ様は美しく、とても「タカラヅカ」なスターさんで、ガタイがいい分、悪役も親父役も出来るんだけど……2番手役は、やめておこうよ……。人には向き不向きというモノがあってだね……。
 脇にいるときはほんと、素晴らしいスターさんなんだけどなあ。
 重要な役をやると、自爆する……。

 まさこ様はほんとフェアリーなのだと思う。
 存在に重みがない。ふわふわ軽く、かわいらしい。それは研17、もう17年も舞台に立ってきてなお、損なわれることない、彼の魅力なのだ。
 瞬間風速というか、短い出番でインパクトを出すことは出来る。なにしろ彼は美しい。その「美しさ」という武器でもって、「登場した、美貌を振りまいた! 退場した!」だと、「おおっ、今すげー役者が出たぞー! 忘れられないぞー!」となるんだけど、じっくりと大きな重い役をやるとなると、……技術のなさやセンスのなさがばれてしまう。
 ほんと、芝居苦手だよねえ……。変わらないねえ……。
 や、まさこ様本人のキャラでやれる役は、得意なんだけど。それ以外は苦手なまま17年来ちゃったなと。
 『The Lost Glory』みたいな役も出来るようになったんだねえ、って感心しきりだったけど、あれも「瞬間風速」な役だからなあ。ちょろっと出て半ばで自殺していなくなっちゃう役だからハマッたのであって、比重が上がるとえーらいこっちゃになる。『The Lost Glory』が全ツで再演されたとして、組を半分に割っての興行だからって、2番手役をまさこ様でやれるとは思わないっしょ……?
 キーパーソン役だった『黒豹の如く』もひどかった……。

 きれいだから、いっか……。
 そう思う。
 そう思うのと同時に、初演を思う。
 初演のときも、思ったんだ。
 きれいだから、いっか……。

 初演のワタさん、へたっぴで「ワタルに2番手やらせんな」と思ったもんだけど、それでもワタさんはまだ「2番手出ました!」「悪役です、ラスボスです」感はあったよなあ。
 ひどい脚本のひどい役だけど、華と存在感で、踏みとどまってたんだなあ。

 たかが全ツ、と劇団は思っているのかもしれないけれど、全ツの芝居2番手は、路線スターか、あるいは脇の芝居巧者にするべきだと思うっす。
 芝居とショーの2本立ての場合、芝居は演技力、ショーはスター性と、別のスキルが必要だから、キャリアを積んだ2番手スターがいない場合は、芝居を路線外でも実力派に任せ、ショーに技術の足りない路線スター(キラキラ担当)を配するのがセオリーだったはず。芝居で2番手やったって、最後のパレードで2番手羽根を背負うのは、芝居では脇役だった路線スター様だもの。
 ……まさこ様はキラキラ担当の人だと思うんだけどな。芝居と歌は苦手だけど、ショーで栄える「タカラヅカ」らしいスターさん。
 なのになんで、なにかと不向きな役割を課せられるのだろう……。

 一度、うまい人でエドガー役が観てみたいっす。
 そしたらこの芝居、もう少しマシに見えるのかな?


 初演は初演、今回の公演とはチガウ。
 というだけのことかもしれないが。

 初演ではエドガーが2番手、キッドが3番手だったのに。

 今回は、キッド@ことちゃんが2番手だった。

 ショーでもことちゃんが2番手だから、芝居も比重を変えてことちゃん2番手仕様にしていたのかもしれない。キッドにソロがあったし。
 でも、劇団的には、「芝居2番手は脇の上級生、ショー2番手は劇団推しの若手路線スター」という、いつもの全ツ配役をしたつもりなのかもしれない。
 が、劇団の意図に反して、まさこ様はキャリアは十分だが華担当キャラで、ことちゃんは実力派だった。
 芝居でも、ことちゃんが余裕で2番手だ……。エドガー薄い……弱い……キッドあざやか……強い……。

 キッドが、別人。

 初演のキッドってね、おバカキャラだったんだよ……カンチガイキャラっていうか、空気読めないで、いつもひとりで空回りしてる可哀想な男でね……。
 いいシーンで観客に笑われちゃうよーな人だったんだよ……。

 うわー、ふつーにかっこいい……。
 キッドなのに……。

 てゆーか、キッドってね、主人公のエミリオより年上なんだよ。
 ことちゃんが、みっちゃんより、年上の役。
 だから『大海賊』やるってわかったときには、ことちゃんは若手キャラの聞き耳あたりをやるのかと思ってた。エミリオ役がみっちゃんだからね。
 研18のトップスター、しかも実年齢や学年よりはるかに大人びて見えるみちこ様だ。そのみちこ様を相手に、研7で実年齢や学年よりも幼く見えることちゃんが、兄貴風吹かせる役。
 ……ひでーなー……。
 さすが中村Aだよな。そのへん考えないっていうか、テキトーだよな。
 そう思いましたよ。

 それが。
 フタを開けてみたら、みっちゃんはちゃんと少年やってて、ことちゃんは青年やってた。
 声がいいのは強いな、しっかりした男役声だから、よく見りゃそりゃほっぺぷっくりお肌つるつるの若者なんだけど、若手にありがちな「オンナノコ声」じゃない。キャリアのある男役に聞こえる。

 悪役と親友なら、悪役の方がおいしいし、2番手らしくなる。
 実際、初演は悪役が2番手役だった。
 なのにことちゃんは、実力で3番手の親友役で、2番手としてやりきってしまった。

 ほんとに実力あるんだ……すげえな。

 ことちゃんの弱点はビジュアルと、その幼さ。
 だからいっそのこと、フルコスチューム物なら、底上げしやすいのかもしれない、と思った。
 キッドはかっこよかったーー。

 記憶にあるモノと違いすぎて……。
 いやあ、舞台ってほんと、面白いよなあ。

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