コミケ2日目。わたしのメインジャンルの日。
 自分のサークルそっちのけで、お買い物に走り回る。わたしはコミケが好きで、同人誌が好きなのだ。
 ああそして。
 わたしは「そのひと」と出会ったのだ。

 出会いは一瞬だった。

「えっ、ゆうひ?」

 コミケの人混みの中、わたしは良く知る顔を見つけて振り向いた。
 今すれちがった女性が、ゆーひくんに見えたのだ。
 ゆーひ、って、おーぞらゆーひ? えええっ、なんでゆーひがこんなとこに?! でも今のゆーひだったよーな。つか、変装してたぞ?! 眼鏡かけて、スカートはいてた。マフラーで顎から下隠して、女装してたよ。
 あああ、落ち着けわたし。ゆーひがこんなとこにいるわけないじゃん!!
 見間違いだ、他人のそら似だ。
 しかしタカラジェンヌにだってオタクはいるだろうに、彼女たちはコミケに来ることができないんだ、気の毒に。コミケでやほひ本買ってるとことか誰かに見られたら、ものすげーイメージダウンだもんな。夢の世界の住人は大変だ、同人誌も買えないなんて。ああわたしは一般人でよかった。
 それにしても、さっきの子はゆーひくんに似てたなあ。もっとちゃんと眺めたかったなあ。
 と、思いつつ、某大手サークルさんの最後尾に並んだ。
 大手サークルさんには、「最後尾プラカード」というものが存在する。サークル名と「最後尾」という文字の書かれた紙を、列の最後に並んだ人が持つのだ。そーすれば係員がいなくてもどこが最後尾かが一目でわかる。
 わたしも、「***最後尾」と書かれた紙を掲げているお嬢さんに声を掛けた。「それ、次は私が持ちます」という意味で。

 再会は突然。

「ええっ、ゆうひ?!」

 わたしに最後尾プラカードを渡したのは、さきほどすれ違った、おーぞらゆーひくんだった。
 うわわわわ。
 運命? 神様コレ、運命ですかっ?!

 もちろん、赤の他人です。本物のおーぞらゆーひさんではありません。
 しかし。 
 しかしだ。
 似てるんだよ〜〜っ。
 どどどどどうしよう。
 ゆーひのそっくりさんが、隣にいるよお。
 一瞬間違えたくらい、似てるよお。
 背はたぶん、わたしより高いです。なのに、体重は確実に、わたしより少ないです。
 丸いやわらかそうな顔の輪郭に、本物のゆーひとほぼ同じ髪型。ちょいと離れた目。横から見える唇の形。
 薄い、少年のような細長いカラダ。長い手足。
 どどどどどうしよう。
 うれしい。うれしいぞ。ゆーひそっくりの美しいお嬢さんがわたしの隣に。
 いや、よく見ると本物のゆーひくんほど美形ではありませんでしたが、とにかく似ていた。この子を何割か美形にしたらゆーひになる、という、「アンドロイドゆうひ」の租型みたいなお嬢さんでした。年齢は本物のゆーひくんより少し若いかな。
 あまりにうれしくて、目をはなせない。どきどきどき。
 お友だちになりたい。ああしかし、話しかけるなんて、できないわっ。なんて話しかければいいの?!
「好きな男の子にそっくりなの」
 ……って、それは失礼だろう。わたしが長い間背が高いことをコンプレックスにしていたよーに(そう、マジに深刻に劣等感だったことがあった。今はさすがに、半分ネタにしているが・笑)、このお嬢さんだって「男に似ている」なんて言われたら「それってアタシがこの体型だからっ?!」とか思うよな。傷つくよな。つーかふつーの女の子は「男に似ている」と言われた段階でショックだろう。
 いくら、「でもその男の子、ドレス着ても似合っちゃうくらい美形なのよっ」と言っても、フォローにはなんねーよなあ。
 正直に言うか。
「好きなタカラヅカの男役にそっくりなの」
 ……って、ふつーの人って、「ヅカの男役」に偏見持ってる……かも? ヅカを好きじゃない人ってみんな、「気持ち悪い」って言うよな。「生理的にダメ」とか。「バカみたい」とか。
 てか、タカラヅカを好きだと言った途端、「緑野さんって、レズなんですか」と真顔で言われたこともあったな。一般人のヅカに対する認識ってそんなの?!
 うわあああぁん、言えない、言えないよう!
 てゆーか、ゆーひくんそっくりの友だちなんて、心臓に悪くてダメだよう。いつもうっとり顔ばかり眺めちゃうよう。そんな気味の悪い関係は、嫌だよう。

 結論。
 今、この瞬間の幸福を噛みしめていよう。

 長い長い行列の、建物の外に並ばされたんだけど、直射日光きつくて「真冬なのに日焼けしちまうよコンチクショオ」だったことも、ぜんぜん苦にならず。
 だって、ゆーひくんと一緒なんだもの!
 列が長ければ長いほど、ゆーひくんを眺めていられるんだもの。
 るるる、ららら、幸福なひととき。
 わたしのゆーひくんは、並んでいる間ずーっと、きれいに三等分されたコミケカタログを読んでいました。そっかあ、ハガレン好きなのかぁ(笑)。でも、この列(ラノベのプロ作家のオリジナル番外編が買えるサークルだ!)に並んでるってことは、ここの作家さんが好きなのよね。わたしと同じねっ。
 さりげなくもしつこく、ずーっと彼女の顔を眺めていました。列が進んで、微妙に並ぶ位置が離れてしまったときは、彼女の全身のスタイルの良さを堪能。ああ、七頭身。いいなあ、かっこいいなあ。

 緑野の、ささやかなしあわせ。
 でも、アタマの中ではエンドレスで『王家に捧ぐ歌』の女官たちの「すごっすごっ、つよっつよっ」が流れている……(ヅカサークルですてきな女官たちのポスカを買ったのだ。あと、アモちゃんとファラオの缶バッジと)。

 自分のサークルに戻るなり、店番のWHITEちゃんに、
「聞いて聞いて! ゆーひのそっくりさんがいたのーっ!!」
 と、鼻息荒く報告。
 上記の心の流れを事細かに説明したんだけど……。

「よかったね。……としか、言えないわ」

 と、冷たく言われて、それでおしまいでした。
 彼女の目は、「バカだなオマエ」という憐憫と、「なにか気の利いた受け答えをしてやるべきかしら」という困惑に満ちておりましたさ……。てか、単に引かれたのか……?
 ふふふ……ごめんね、WHITEちゃん……。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

          
 コミケ2日目。わたしのメインジャンルの日。
 自分のサークルそっちのけで、お買い物に走り回る。わたしはコミケが好きで、同人誌が好きなのだ。
 ああそして。
 わたしは「そのひと」と出会ったのだ。

 出会いは一瞬だった。

「えっ、ゆうひ?」

 コミケの人混みの中、わたしは良く知る顔を見つけて振り向いた。
 今すれちがった女性が、ゆーひくんに見えたのだ。
 ゆーひ、って、おーぞらゆーひ? えええっ、なんでゆーひがこんなとこに?! でも今のゆーひだったよーな。つか、変装してたぞ?! 眼鏡かけて、スカートはいてた。マフラーで顎から下隠して、女装してたよ。
 あああ、落ち着けわたし。ゆーひがこんなとこにいるわけないじゃん!!
 見間違いだ、他人のそら似だ。
 しかしタカラジェンヌにだってオタクはいるだろうに、彼女たちはコミケに来ることができないんだ、気の毒に。コミケでやほひ本買ってるとことか誰かに見られたら、ものすげーイメージダウンだもんな。夢の世界の住人は大変だ、同人誌も買えないなんて。ああわたしは一般人でよかった。
 それにしても、さっきの子はゆーひくんに似てたなあ。もっとちゃんと眺めたかったなあ。
 と、思いつつ、某大手サークルさんの最後尾に並んだ。
 大手サークルさんには、「最後尾プラカード」というものが存在する。サークル名と「最後尾」という文字の書かれた紙を、列の最後に並んだ人が持つのだ。そーすれば係員がいなくてもどこが最後尾かが一目でわかる。
 わたしも、「***最後尾」と書かれた紙を掲げているお嬢さんに声を掛けた。「それ、次は私が持ちます」という意味で。

 再会は突然。

「ええっ、ゆうひ?!」

 わたしに最後尾プラカードを渡したのは、さきほどすれ違った、おーぞらゆーひくんだった。
 うわわわわ。
 運命? 神様コレ、運命ですかっ?!

 もちろん、赤の他人です。本物のおーぞらゆーひさんではありません。
 しかし。 
 しかしだ。
 似てるんだよ〜〜っ。
 どどどどどうしよう。
 ゆーひのそっくりさんが、隣にいるよお。
 一瞬間違えたくらい、似てるよお。
 背はたぶん、わたしより高いです。なのに、体重は確実に、わたしより少ないです。
 丸いやわらかそうな顔の輪郭に、本物のゆーひとほぼ同じ髪型。ちょいと離れた目。横から見える唇の形。
 薄い、少年のような細長いカラダ。長い手足。
 どどどどどうしよう。
 うれしい。うれしいぞ。ゆーひそっくりの美しいお嬢さんがわたしの隣に。
 いや、よく見ると本物のゆーひくんほど美形ではありませんでしたが、とにかく似ていた。この子を何割か美形にしたらゆーひになる、という、「アンドロイドゆうひ」の租型みたいなお嬢さんでした。年齢は本物のゆーひくんより少し若いかな。
 あまりにうれしくて、目をはなせない。どきどきどき。
 お友だちになりたい。ああしかし、話しかけるなんて、できないわっ。なんて話しかければいいの?!
「好きな男の子にそっくりなの」
 ……って、それは失礼だろう。わたしが長い間背が高いことをコンプレックスにしていたよーに(そう、マジに深刻に劣等感だったことがあった。今はさすがに、半分ネタにしているが・笑)、このお嬢さんだって「男に似ている」なんて言われたら「それってアタシがこの体型だからっ?!」とか思うよな。傷つくよな。つーかふつーの女の子は「男に似ている」と言われた段階でショックだろう。
 いくら、「でもその男の子、ドレス着ても似合っちゃうくらい美形なのよっ」と言っても、フォローにはなんねーよなあ。
 正直に言うか。
「好きなタカラヅカの男役にそっくりなの」
 ……って、ふつーの人って、「ヅカの男役」に偏見持ってる……かも? ヅカを好きじゃない人ってみんな、「気持ち悪い」って言うよな。「生理的にダメ」とか。「バカみたい」とか。
 てか、タカラヅカを好きだと言った途端、「緑野さんって、レズなんですか」と真顔で言われたこともあったな。一般人のヅカに対する認識ってそんなの?!
 うわあああぁん、言えない、言えないよう!
 てゆーか、ゆーひくんそっくりの友だちなんて、心臓に悪くてダメだよう。いつもうっとり顔ばかり眺めちゃうよう。そんな気味の悪い関係は、嫌だよう。

 結論。
 今、この瞬間の幸福を噛みしめていよう。

 長い長い行列の、建物の外に並ばされたんだけど、直射日光きつくて「真冬なのに日焼けしちまうよコンチクショオ」だったことも、ぜんぜん苦にならず。
 だって、ゆーひくんと一緒なんだもの!
 列が長ければ長いほど、ゆーひくんを眺めていられるんだもの。
 るるる、ららら、幸福なひととき。
 わたしのゆーひくんは、並んでいる間ずーっと、きれいに三等分されたコミケカタログを読んでいました。そっかあ、ハガレン好きなのかぁ(笑)。でも、この列(ラノベのプロ作家のオリジナル番外編が買えるサークルだ!)に並んでるってことは、ここの作家さんが好きなのよね。わたしと同じねっ。
 さりげなくもしつこく、ずーっと彼女の顔を眺めていました。列が進んで、微妙に並ぶ位置が離れてしまったときは、彼女の全身のスタイルの良さを堪能。ああ、七頭身。いいなあ、かっこいいなあ。

 緑野の、ささやかなしあわせ。
 でも、アタマの中ではエンドレスで『王家に捧ぐ歌』の女官たちの「すごっすごっ、つよっつよっ」が流れている……(ヅカサークルですてきな女官たちのポスカを買ったのだ。あと、アモちゃんとファラオの缶バッジと)。

 自分のサークルに戻るなり、店番のWHITEちゃんに、
「聞いて聞いて! ゆーひのそっくりさんがいたのーっ!!」
 と、鼻息荒く報告。
 上記の心の流れを事細かに説明したんだけど……。

「よかったね。……としか、言えないわ」

 と、冷たく言われて、それでおしまいでした。
 彼女の目は、「バカだなオマエ」という憐憫と、「なにか気の利いた受け答えをしてやるべきかしら」という困惑に満ちておりましたさ……。てか、単に引かれたのか……?
 ふふふ……ごめんね、WHITEちゃん……。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

          
 その昔、わたしがまだぴちぴちの若い娘さんだったころ。
 某社の某賞(正式名称は忘却の彼方)に応募して、入選だか佳作だかになった(それすら忘却の彼方)。賞品は、「ペアで北海道旅行」だった。
 タダで北海道! わたしは大喜びで、当時いちばんの仲良しだったぺーちゃん(女の子)を誘い、北海道へ旅立った。秋の北海道はそりゃー美しかったさ。
 問題は、その旅行でのあるホテルで起こった。
 露天風呂で雪景色を堪能したわたしとぺーちゃん。
 浴衣に丹前を着込み、部屋でくつろいでいた。ふたりで使うのがもったいないよーな広い和室だ。
 そこへ、布団係のおじさんが現れた。
 ぺーちゃんは鏡台に向かって、髪のお手入れに余念がない。だもんで係のおじさんは、ぼーっと暇そーにしているわたしに、聞いてきた。
「布団は、くっつけて敷いていいですか?」
 質問の意味が、よくわからなかった。ので、まんまの意味に取った。
「はい、お願いします」
 こんな広い部屋で、隅と隅に離れて布団を敷かれても、寂しいしな。ふつーにふたつ並べて敷いてくれれば、それでいい。
 てな気持ちだった。わたしは。
 だが。
 係のおじさんが仕事を終えて部屋を出ていったとき。
 わたしたちは、唖然とした。

 広い大きな布団が、部屋の真ん中にひとつ。
 ひとつだけ。
 そしてその広い布団には、枕がふたつ。

 ダブルベッドならぬ、ダブル布団が敷かれていた。

 さあ、この広い布団で抱き合って眠りなさい。てゆーかどーぞえっちしてください。
 という布団が、スタンバイ完了でわたしたちを待ちかまえていた。

 なんで、女の子ふたりで泊まってて、ダブル布団なの?! えっちOK状態なのっ?!

「ねえねえ、緑野。アンタさあ、男とまちがえられたんじゃない?」

 そーゆーことなんですか、布団係のおじさんっ?!
 だからあたしに聞いたんですか、「今日えっちすんの? するならソレ用に布団セットするよ」と? 女の子のぺーちゃんではなく、男のあたしにっ?!

 20代前半のぴちぴちの若い娘を捕まえて、男とまちがえただとうっ?!
 風呂上がりですっぴんで浴衣を着たわたしは、そんなに性別不明ですかっ?!
 たしかにカラダはでかいし、チチもないけどなっ。髪も短かったけど! つーかあのころはベリーショートだったよーな気もするが、襟足刈り上げていたよーな気もするが、それにしたって風呂上がりで浴衣だよ? 女の色気が出ててもいいよーなもんじゃないか。たしかに色気なんかまったく持ち合わせてなかったよーな気もするが……えーとえーと。

 とにかく。
 わたしたちの目の前に、ダブル布団。

 ぺーちゃん、大ウケ。畳に突っ伏してひーひー笑う。
「緑野が、緑野が男にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。どーしよー、アタシ、緑野に襲われるー」
 襲わねえよ。怒。

「ちょっと待ってよ、べつに、男とまちがえられたとは限らないじゃない。レズだと思ったのかも!」
 と、わたしは反論。
 一旦笑い止んだぺーちゃんは、また新たに吹き出した。

「緑野が、レズの男役にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。アタシ、緑野に襲われるー」
 だからなんで、あたしが男役なんだっ。
 てゆーか、わたしが男だろうと男役だろうと、アンタはわたしの「カノジョ」という設定なのよ? それに関して異論はないの?

「どっちにしろ、アタシは『女の子』ってことだもん。男だとか男役にまちがえられたわけじゃないからいいもん」
 どーゆー理屈だー。
 いや、たしかに、この場合立場がないのはわたしだ。
 てゆーか失礼だぞ、布団係!

 みなさん、女同士でふたり旅も危険ですよ。
 ふたりでホテルに泊まったら即カップル認定されちゃうんですよ! 温泉だとかカニ食い放題ツアーだとかもダメですよ。ふたりでいたら、イコール恋人同士なんだもん! あのときわたしたちは、そーゆー扱いを受けたんだもん!
 みなさんも気をつけてくださいねっ。

 とゆー昔話を何故今するのか。

 『巌流』千秋楽と冬コミ旅行。
 わたしとWHITEちゃんは、ついうっかり、ホテルを取るのを忘れていたのだわ……。
 気がついたのは、12月も半ば。
 とーぜん、そんな時期では、いつも使っているホテルは全室満員、お断り。
 1からホテルを探さなくてはならない。

 安くてきれいで、交通の便がよくて、青年館にも有明にもたやすく行けること。
 ネットで検索して、候補を探す。
 すると。
 ……検索条件の「大人2人で1部屋」というのと、「安い値段」がいけなかったのだと思う。
 ヒットするのはひたすら、「シティホテル」だった……。

「WHITEちゃん、こーなったらふたりでダブルベッドで眠るかい?」
 と、わたしがメールをすると、
「ベッドはひとつでもいいけど、掛け布団はふたつないとこまるわ。私は寝相悪いから布団取っちゃうよ」
 と、返事が来た。

 WHITEちゃん……。
 本気で返さないでください……わたしゃ、冗談で言ったんだよ。女ふたりでシティホテルなんてごめんだよ。ひとつのベッドはべつにかまわないが、カップルしかいねーロビーやエレベータを女ふたりで使うのが嫌だ。それに、チェックインもアウトもわたしがすることになるんだろーから、男たちの間にひとりまじって(女は後ろで待っているからな)チェックインするの嫌だよ。
 てか。レズのカップルだと思われたら、もっといやだ。
 性嗜好は個人の自由だから他人様がどうであってもかまわないが、わたし個人がチガウのにソウだと思われるのは嫌だぞ。

 なまじ昔、男だか男役だかに間違えられた過去があるだけにな。

 WHITEちゃんの返事は待たずに、わたしは勝手にてきとーなビジネスホテルを予約した。あー、やれやれ。無事に取れて良かった。
 もちろん、ベッドはふたつだよ。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

        
 その昔、わたしがまだぴちぴちの若い娘さんだったころ。
 某社の某賞(正式名称は忘却の彼方)に応募して、入選だか佳作だかになった(それすら忘却の彼方)。賞品は、「ペアで北海道旅行」だった。
 タダで北海道! わたしは大喜びで、当時いちばんの仲良しだったぺーちゃん(女の子)を誘い、北海道へ旅立った。秋の北海道はそりゃー美しかったさ。
 問題は、その旅行でのあるホテルで起こった。
 露天風呂で雪景色を堪能したわたしとぺーちゃん。
 浴衣に丹前を着込み、部屋でくつろいでいた。ふたりで使うのがもったいないよーな広い和室だ。
 そこへ、布団係のおじさんが現れた。
 ぺーちゃんは鏡台に向かって、髪のお手入れに余念がない。だもんで係のおじさんは、ぼーっと暇そーにしているわたしに、聞いてきた。
「布団は、くっつけて敷いていいですか?」
 質問の意味が、よくわからなかった。ので、まんまの意味に取った。
「はい、お願いします」
 こんな広い部屋で、隅と隅に離れて布団を敷かれても、寂しいしな。ふつーにふたつ並べて敷いてくれれば、それでいい。
 てな気持ちだった。わたしは。
 だが。
 係のおじさんが仕事を終えて部屋を出ていったとき。
 わたしたちは、唖然とした。

 広い大きな布団が、部屋の真ん中にひとつ。
 ひとつだけ。
 そしてその広い布団には、枕がふたつ。

 ダブルベッドならぬ、ダブル布団が敷かれていた。

 さあ、この広い布団で抱き合って眠りなさい。てゆーかどーぞえっちしてください。
 という布団が、スタンバイ完了でわたしたちを待ちかまえていた。

 なんで、女の子ふたりで泊まってて、ダブル布団なの?! えっちOK状態なのっ?!

「ねえねえ、緑野。アンタさあ、男とまちがえられたんじゃない?」

 そーゆーことなんですか、布団係のおじさんっ?!
 だからあたしに聞いたんですか、「今日えっちすんの? するならソレ用に布団セットするよ」と? 女の子のぺーちゃんではなく、男のあたしにっ?!

 20代前半のぴちぴちの若い娘を捕まえて、男とまちがえただとうっ?!
 風呂上がりですっぴんで浴衣を着たわたしは、そんなに性別不明ですかっ?!
 たしかにカラダはでかいし、チチもないけどなっ。髪も短かったけど! つーかあのころはベリーショートだったよーな気もするが、襟足刈り上げていたよーな気もするが、それにしたって風呂上がりで浴衣だよ? 女の色気が出ててもいいよーなもんじゃないか。たしかに色気なんかまったく持ち合わせてなかったよーな気もするが……えーとえーと。

 とにかく。
 わたしたちの目の前に、ダブル布団。

 ぺーちゃん、大ウケ。畳に突っ伏してひーひー笑う。
「緑野が、緑野が男にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。どーしよー、アタシ、緑野に襲われるー」
 襲わねえよ。怒。

「ちょっと待ってよ、べつに、男とまちがえられたとは限らないじゃない。レズだと思ったのかも!」
 と、わたしは反論。
 一旦笑い止んだぺーちゃんは、また新たに吹き出した。

「緑野が、レズの男役にまちがえられたー。えっち用の布団敷かれたー。アタシ、緑野に襲われるー」
 だからなんで、あたしが男役なんだっ。
 てゆーか、わたしが男だろうと男役だろうと、アンタはわたしの「カノジョ」という設定なのよ? それに関して異論はないの?

「どっちにしろ、アタシは『女の子』ってことだもん。男だとか男役にまちがえられたわけじゃないからいいもん」
 どーゆー理屈だー。
 いや、たしかに、この場合立場がないのはわたしだ。
 てゆーか失礼だぞ、布団係!

 みなさん、女同士でふたり旅も危険ですよ。
 ふたりでホテルに泊まったら即カップル認定されちゃうんですよ! 温泉だとかカニ食い放題ツアーだとかもダメですよ。ふたりでいたら、イコール恋人同士なんだもん! あのときわたしたちは、そーゆー扱いを受けたんだもん!
 みなさんも気をつけてくださいねっ。

 とゆー昔話を何故今するのか。

 『巌流』千秋楽と冬コミ旅行。
 わたしとWHITEちゃんは、ついうっかり、ホテルを取るのを忘れていたのだわ……。
 気がついたのは、12月も半ば。
 とーぜん、そんな時期では、いつも使っているホテルは全室満員、お断り。
 1からホテルを探さなくてはならない。

 安くてきれいで、交通の便がよくて、青年館にも有明にもたやすく行けること。
 ネットで検索して、候補を探す。
 すると。
 ……検索条件の「大人2人で1部屋」というのと、「安い値段」がいけなかったのだと思う。
 ヒットするのはひたすら、「シティホテル」だった……。

「WHITEちゃん、こーなったらふたりでダブルベッドで眠るかい?」
 と、わたしがメールをすると、
「ベッドはひとつでもいいけど、掛け布団はふたつないとこまるわ。私は寝相悪いから布団取っちゃうよ」
 と、返事が来た。

 WHITEちゃん……。
 本気で返さないでください……わたしゃ、冗談で言ったんだよ。女ふたりでシティホテルなんてごめんだよ。ひとつのベッドはべつにかまわないが、カップルしかいねーロビーやエレベータを女ふたりで使うのが嫌だ。それに、チェックインもアウトもわたしがすることになるんだろーから、男たちの間にひとりまじって(女は後ろで待っているからな)チェックインするの嫌だよ。
 てか。レズのカップルだと思われたら、もっといやだ。
 性嗜好は個人の自由だから他人様がどうであってもかまわないが、わたし個人がチガウのにソウだと思われるのは嫌だぞ。

 なまじ昔、男だか男役だかに間違えられた過去があるだけにな。

 WHITEちゃんの返事は待たずに、わたしは勝手にてきとーなビジネスホテルを予約した。あー、やれやれ。無事に取れて良かった。
 もちろん、ベッドはふたつだよ。

 文字数足りないので、次の欄につづく。

        
「萌えがない」
 と、オレンジは嘆く。

 東京のオレンジの部屋で、わたしたちがくっちゃべっていたときのことだ。
 オレンジは仕事中、わたしにはずっと背中を向けている。わたしはお菓子をつまんだり、寝転がったりしながら勝手にくつろいでいる。
 仕事中ではあるが、お喋りはできる。まだオレンジが大阪にいたときも、わたしはよく喋りに行っていた。
 わたしはのーなしなので、マンガの仕事は手伝えない。仕事をする彼女の後ろで勝手に喋るのみ。
 オレンジの言葉を信じるならば、そうやって部屋に誰かがいる方が仕事がはかどるのだそうだ。ひとりだと、仕事以外のことをしてしまったりするから。
 見張りみたいなもん? まあ、彼女がわたしに気を遣わせないために、そう言っていない保証はないが。

 とにかく、そーやってわたしたちはえんえん喋っていた。

「萌えがないよー。次のジャンルが決まらないよー」
 と、オレンジが嘆くので、わたしはいろいろと例を挙げてみる。

「ねえねえ、『いでじゅう』は?」
「『いでじゅう』?! どーやってヤるのよ、そんなもん!」
「だから東×部長でー。ほら、ヲトメが大好きなパターンじゃない、受のことを大好きで強引な美形の攻と、かわいい受の、えっちアリのラヴラヴがデフォルトで描けるぞ」
「無理だーっ、『いでじゅう』は無理だー。つーか、原作からすでにアレなものをどーしろと」
「えー、だって部長はえっちの最中の記憶がないんだからさあ。わたしならせつない系のラブストーリー書けると思うけどなあ」
「アタシの絵で、どうしろと……」
「あっ、それなら『勝手に改蔵』は?」
「ますますできるかいっ、不可能じゃ! つーか、どんなカップリングがあるっていうのよ」
「んー、やっぱ砂丹×改蔵? 作者も狙っているよーだし? ほら今、砂丹くん、山田さんとふたりで地球を守って戦ってるし」
「コミックス読者にわからん話をするな! オレの読んでる時点では、そんな話出てない!」
「そーいや大昔に買った『勝手に改蔵』の同人誌は、改蔵×地丹だったなあ」
「えっ、どーやんのソレ。可能なの??」
「せつない系のロマンスだったよ、バリシリアスの」
「改蔵と地丹で何故?!」
「改蔵が地丹に片思いしてるの。オレにないものを持つオマエ……みたいな感じで」
「改蔵と地丹で……。人間の想像力って……」
「それならいっそ、『クロマティ高校』は?」
「『クロ高』かよっ?! 誰と誰でっ?!」
「いや、とくに思いつかないけど……でもアレ、男しか出てこないし。『テニプリ』以上に、カップリングし放題じゃん?」
「確かに野郎しか出てこないけど。やほひになり得るのか?」
「誰かが受かどうかってことで、レギュラーメンバーたちが、会議を開いて相談すると思うわ!」
「そんでもって、名前忘れたけど、あのものすごーく影の薄い、いつもいちばんマトモなこと言ってる彼は、やっばりマトモなことを言うけど、影が薄いから無視されるのね?」
「そうよ。あーでもないこーでもないと真面目に相談したあげく、話が脱線して戻ってこなくなるのよ。そして翌週に『先週のつづきだが……』ってまだ、会議PART.2をやるのよ」
「それでも建設的な話はまったくできず、結局受も攻も決まらないまま……」
「次週では別の話になってるわね……アレ?」
「やほひになってねーよ」
「マンガは無理かなあ。アニメとかは? わたし今、『カレイドスター』のユーリ様の乳首に萌えてるけど!」
「『カレイドスター』は1話を見て、見捨てたよ。で、なによその乳首って」
「いや、ユーリってさあ、カレイドステージのトップスターなわけよ。金髪碧眼の王子様キャラ。ヒロインが落ち込んだときにさりげなくはげましちゃったりする、こそばゆいキャラ。
 ただのツラだけキャラかと思ってたら、突然復讐に燃える悪のプリンスに変身して、今はヒロインたちの敵になってるの。んで、王子様だったときは一切脱がなかったのに、悪役になってからは、露出度高し。裸の胸には、わざわざ乳首が、色をかえて描いてあるの。男の乳首を、いちいち色かえて描くか、ふつー?!」
「……変なアニメ」
「ユーリ様が出てくるたびに笑えるよ。スタッフはたぶん、ユーリのことを“セクスィ〜”だと思って描いてるんだろうな、ってとこが……いや、それはともかく『カレイドスター』って早い話が『ガラスの仮面』だから、ヒロイン・マヤとトップスター亜弓さんとのレズ萌えがたのしいぞ」
「いらん。そんなレズはいらん。それくらいなら、『すいか』を描くわっ。馬場@小泉今日子×早川@小林聡美で!」
「早川受?! アンタのことだから、馬場ちゃん受かと思ってた。片思いする受が好きなはずでしょ?」
「受のことを愛している攻の話よ。女の子の好きなパターンじゃない!」
「馬場×早川を、女の子はよろこぶだろーか……ってゆーかそもそも、『すいか』なんて地味なドラマ、誰が見ているというんだ」
「でももし『すいか』本出して、表紙に『注・やおいです』って書いたらみんな、誤解するだろうねえ」
「やほひ、っていうとふつー、男×男を想像するからね」
「女×女も、アタシ的にはやほひなんだけど。ハートが同じだから」
「しかし、『すいか』で男×男っつったら……」
「男キャラいないもんな、『すいか』。間々田さんと……ほら、北海道に行った男と……あとバーテン? ぐらいしか」
「どうあがいても、間々田さん絡みになるよ」
「間々田さんのやほひ! み、見たくねーっ」
「見たくねーっ」

 萌えがなくては、オタクは生きていけません。
 息をするように、萌えは必要なのです。

 わたし?
 わたしはホラ、ヅカがあるから。オレンジほど萌えに飢えてません。

 飢えてるのは、ヅカホモパロよ。
 いわゆる妄想系じゃなくて、作品パロ。
 『王家…』のパロとか、誰か書いてくれよお。

 
 同人誌の整理をしていたら、昔のコミケカタログが出てきたよ……。

 コミック・マーケット30。1986年夏。表紙・乙田基。

 コミケカタログを保存する趣味はないんだが、これだけは取ってあったんだ。
 はじめて行ったコミケだったから。
 それに、当時大好きだった乙田基の表紙だし。

 愉快だったので、思わず全ページ読んでしまったわ、カタログ。
 広告あわせて、160ページしかないんだもん。

 場所は今は亡き晴海。そして、使用しているのは西館と新館のみ、サークル数4000、一般参加者3万人だそうだ。

 17年、という歳月の重みを感じる。
 というのも、カルチャー・ショックに満ちているからだ。

 サークルカットのページの最初、なんだと思う?
 「創作漫画」なのよ?
 ええっ?!
 オリジナルですか。
 しかもオリジナルが、えんえんえんえん続きます。
 違和感を押さえきれず、ジャンル配分のチェックをしたら、なんと、オリジナル・サークルの方がパロディ・サークルより多いのよ。
 オリジがパロより上?! うわー、こんな時代があったんだ。いや、大昔はそうだろうけど、きゃぷ翼全盛期の86年でさえ、オリジナルが上だったのか。

 そして、読んでいるとわからない概念がそこかしこにある。

 「マンガ」ってなに?
 「アニメ」ってなに?
 どうやらジャンルのことなんだけど、サークルはほぼこのふたつに分類できるらしい。
 読み進むウチに、理解したよ。
 「マンガ」ってのは、「創作系」「オリジナル系」のことらしい。
 「アニメ」ってのは「パロディ」のことらしい。
 オリジナル小説サークルも、「マンガ」なの。
 小説のパロディ・サークルも「アニメ」なの。
 「オリジナル」と「パロディ」という言葉や概念が確立される前だったのね。

 「学生サークル」「社会人サークル」というジャンル分けも存在するらしいし。
 職業で配置が変わるの?? すごいなー。

 あと、目に付く「特集」「会員募集中」「会誌」の文字。
 どうやらサークルとは正しくサークルで、同好の志が集まり、年に何回か会誌を発行しているらしい。会誌には特集ページがあり、執筆会員や購読会員がいる。
 オリジナルだけならまだわかるが、アニパロでもそうなんだよなあ。

 巻末のアンケート・ページに「サークルの形態」という集計結果がある。
 そこにある項目がすごい。
 「会員制」「編集制」「個人誌」「学校・大学」だよ。
 「マンガ」のほとんどは「会員制」で、「アニメ」にしたって「編集制」がいちばんで、僅差で「会員制」だよ。
 今、会員制のアニパロ・サークルなんて、どれくらいあるのかなあ。
 当時の同人誌は、10人以上で原稿を持ち寄って作るのが常識だったからなー。ひとり4ページぐらいでさ。執筆者が多いほど「豪華な同人誌」だったよ……今と感覚が逆。
 たったひとりの好きな作家の2ページだの4ページだののマンガが欲しくて、何十人もの人が書いている本を、高い金を出して買うのが普通だった。

 サークルカットのページを見ていると、その画力の低さにも感心するし。
 今の人たちってほんと、絵うまくなってるよね。
 現在のサークルカットで「うわ、下手やな」と思うレベルが、86年では「ふつう?」くらいの感覚。とくに「マンガ」系はものすげーや。
 そしてその下手絵たちのなかで、やたら目に付く「ペロリと舌を出したかわいこちゃん」の絵。
 かわいいキャラのかわいい表情、ってのはコレが定番なんですか? 現実問題、舌を出した顔ってのはみっともないものであって、かわいくもなんともないのに。大昔の少女マンガでは、たしかに定番だったけど、この時代でもまだ通用していたの? 70年代の感覚じゃないのか、ソレって。

 言葉の感覚のちがいで大きいのが、もうひとつ。
 ジャンル分けに「ロリコン」が存在すること。
 ブロックのジャンル分けページに、堂々と「新館2Fロリコン系」と書いてあるのよ。
 現在では、「男性向き」とか微妙な表現になってるよね。それが正々堂々と「ロリコン」。
 このままの感覚で発展していけば、いずれ「ホモ」というジャンル表記もアリになったかも? あ、「JUNE」があるか、女性向きには。
 ちなみに86年夏の時点では「JUNE」というジャンル表記は存在せず、「マンガ>少女漫画>特に耽美系中心」というブロック配置ナリ。

 この「ロリコン」サークルカットのページも、全部眺めたんだけど、「巨乳」がほとんどないのよ!
 確認したのは、ふたつだけ。
 あとは全部、常識内のおっぱいか、貧乳。
 そっかー、巨乳は流行だったんだ。普遍的な感覚じゃないのね。
 じゃあいつか、萌えキャラのおっぱいが常識の範囲に落ち着く時代や、貧乳の時代もくるのかしら。

 いやあ、おもしろいなあ、17年前のコミケカタログ。
 この世界に足を踏み入れたばかりだったので、なにもわかってなかったしな、当時は。
 だから、たしかに経験してきたはずの多くのことが、「知らない文化」として現在のわたしの目に映る。
 もっとちゃんと理解して過ごしていたなら、「ああ、昔はこうで、こんなふうに変化してきたのよね」とか思うんだろうけど。

 そーいや巻末のアンケート、「売り上げベスト40」まで表記されてるんですけど。
 売れているサークルがひとめでわかるの。
 コレ、いいの……?
 現在でこんなことやったら、変な競争意識を煽って、えらいことになりそーな……。
 のどかな時代だったのかしらね?

 裏表紙は味の素フーズの「天空の城ラピュタ」。
 ああっ、なつかしい。
 大好きでよく飲んでいたわ。
 コミケ会場でもあちこちで販売されていて、シトラスミックス味の瓶を片手に大手さんに並んだもんだわ。この時代、まだペットボトルがないんだよね。

 なつかしさついでに、乙田基のイラスト集も発掘。
 たしかにこの人、当時ではケタ違いの画力とセンスを持っていたよなあ。
 しかし、こんなにきれいでオシャレなイラスト集なのに、ポエムの書き間違えた文字を、くちゃくちゃっとペンで塗りつぶしただけ、ってのは、なんなんだろう? ホワイトで修正して上から書けばいいだけなのに。書道家みたいに、1回勝負の芸術だったのかな?

 
 今、わたしの部屋には高層ビルが林立している。

 ……本の整理をはじめちゃったんだわ……しかも、主に同人誌の。
 大きさ別、ジャンル別におおざっぱに積み重ねてみたんだけど、これがまあ、高層ビル状態。どうしてくれよう。

 部屋に収納するのは不可能だから、1階の祖父母の部屋に下ろすかな……。
 亡き祖母の和箪笥なんか、すでにわたしの本やビデオ入れと化してるもんなあ。用途を無視した使い方だから(重すぎだっつーの)、引き出しの滑りが悪いのなんのって。

 でもなんか、本って捨てられないんだよなあ。

 ううう。
 ベッドの上まで積み上がってるから、片づけ終わるまで寝られないよ……。

 
 わああぁぁぁん。

 プチ・ショックなことが。

 わたしの今のブームは、前にも書いたと思うが「FROG STYLE」っちゅーカエルのシリーズ。
 こいつがちまたでひそかに人気で、次々と新商品が発売されているんだ。
 しかし、地域性があるのか、大阪では手に入らないこともしばしば。
 7月発売済みのグミなんて、大阪ではまだ一度も売っているところを見たことがないぞ? わたしだけでなく、他の子もそう言っていたぞ。
 なのに、東京ではあったりまえに、とっくに売られているんだよねえ。コミケ旅行のときに買ったけどさっ。
 そんなふうに、手に入らないことだって、あるわけさ。

 そして今、「FROG STYLE」ファンの間で熱く語られているのが、「FROG STYLE CANNED FROG」。
 シリーズ最新作、しかも今回はセブンイレブン限定商品ときた。
 行動範囲にセブンイレブンかないわたしなんぞは、ネットがなかったら存在を知らないままにいたよ。

 製造が追いついていないのか、入荷が遅れているだけなのか、まだまだレアらしい、この「FROG STYLE CANNED FROG」。
 公式HPのBBSでも、捜索情報と捕獲報告が錯綜している。
 昨日の段階ではまだ、大阪での捕獲報告はなかった。
 大阪では未発売? そんなバカな。たしかに、大阪はローソンのお膝元、セブンイレブンはほとんど存在しないが……どこかにはあるはずだ。

 つーことでわたしは、「FROG STYLE CANNED FROG」捜索の旅に出た。
 まずはセブンイレブンの公式HPで、店舗を検索する。何軒かをチェックし、日が陰ってから(紫外線はばばあの大敵)さあ出発だ!!

「どこへ行くの? 菓子パンを買ってきてちょうだい」
 颯爽と自転車にまたがると、ちょーど通りかかった母におつかいを言い渡される。
 いいよ、パンだね。コンビニに行くわけだから、ぜんぜんOKさ。
 自転車を漕ぎ出すと、親の家の前、玄関ドアを開けて父が顔を出している。
「これを頼む」
 父はハガキの束を差し出した。わかったよ、ポストを経由して行くよ。
 堤防まで来たときに、電話が鳴った。
「ついでに東急ハンズに行って、封筒を買ってきてちょうだい!!」
 ……母だった。
「さっきは咄嗟だったから、思いつかなくて。でもせっかくだから、ついでに買ってきてもらおうと思って!!」
 ついでってなんだ?
 わざわざ用事を作って、わざわざ電話をしてくるわけ?
 アンタら、外出する人間にはなにがなんでもおつかいを課せるのねっ?! そーしないと損だと思ってるわねっ?!

 仕方がないので、ポストを経由したあと、ハンズに行きました。
 ……ハンズは、ものすごいことになってました。
 そーいや毎年やってるよな、「ハンズ・メッセ」。年に何回か、東急ハンズが社をあげてやるお祭り。イベントやったり、セールをやったりで、人口密度は最高になる日々。
 今日はその、お祭りの最終日でした。
 ……ママ。こんな日に、ふつーの封筒買いに来るバカはわたしだけかも?
 人混みをかき分け、封筒売り場にたどり着き、「で、どんなのがいいって?」と、電話でママと話しながら選ぶ。
 買い物額、210円。チーン。

 人混みに疲れたカラダで、見知らぬ街を自転車で走る。
 セブンイレブンはどこ?

 RPGじゃないんだからさー、目的地にたどり着くまでに、いろいろ他の用事言いつけられて、回り道して、って、なんだかなあ。
 またしても電話が鳴って「あ、ついでに**も買ってきて!」と、用事が増えないことを祈りましたさ。

 そして。
 2軒目のセブンイレブンで、ついに見つけましたよ、「FROG STYLE CANNED FROG」!!
 かわいいー。
 白い不透明カプセルにいつものロゴとイラストの付いた帯がつけてある。
 大人買いしそうになる自分を、制御する。
 コンプリートにこだわっちゃいけない。キリがなくなる。いくつか買えば気は済むんだから、少しだけ買えばいいわ。

 と、自制の結果、ふたつだけ買った。

 「FROG STYLE CANNED FROG」は全10種類。まだひとつも持っていないわたしは、ダブる心配がないからとても気楽。ママに言いつかった買い物もして、幸福な気分で帰路につく。

 頼まれたモノを届けに親の家に行くと、ちょうど弟も帰宅しており、家族がぞろりと茶の間にそろっていた。
 よーし、ここでわたしの「FROG STYLE CANNED FROG」を自慢しちゃうぞっ。

 簡単に商品説明をしながら、白いカプセルを開ける。
 中から出てきたのは、大きな肉をかじっているピンクの王様カエルの絵の付いた、小さな缶。
「MEAT FROGだ!」
 現物を見るのははじめてだが、すでに知識だけはあるわたし。
 ああ、なんてかわいいのかしら。
 うっとりと缶を眺めたあとに、その缶を開ける。
 中には、おなかに肉の絵の描いてある、白い骨を片手に持ったピンクのカエルのフィギュアと、葉っぱのカタチのタグ。
 ああ、なんてかわいいのかしら〜〜。
 この絶妙のライン、色、デザイン。
 見ているとしあわせな気持ちになるわ。

 そして、しあわせはもうひとつある。
 ふたつ買ったんだもの。
 次はナニが出るかしら、と、もうひとつのカプセルを開ける。

 ええ。
 わたしのプチ・ショックは、これよ。

 わああぁぁぁん。

 またしても、まーたーしてーも、「MEAT FROG」だったのよおおお。

 どうして?
 10種類もあるのに。
 ダブる確率の方が、はてしなく少ないのに。
 どーしてダブるのよおおお。

「なんだ、同じモノを買ってどうするんだ」
 父にわたしの悲しみは通じない。
「中身がわからないから、同じモノが出る可能性があるんだ」
 プチ・ショックなわたしのかわりに、弟が答える。
「どうして中がわからないんだ。返品できないのか」
「……いるんだ、こーゆーことを言うバカな客が」
 販売業の弟は溜息をつく。
 そう。ガチャガチャを置いている店とかにはよく、手書きで「商品の性質上、同じ商品が出ることや、希望の商品が出ないことがありますが、交換・返品はできません」と書いて貼ってある。
 手書きってことは、店員が書いたんだ。
 おそらく、そーゆークレームがあったから。
 こーゆーカプセル系のおもちゃは、なにが出るかわからない。そーゆールールのゲームなんだ。子どもたちはそれを理解して買い、欲しいものは友だち同士で交換したりして、コミュニケートする。
 そうやって彼らは社会を広げ、また学習するわけだ。
 だが、大人はそれがわからない。「俺様は客だぞ」とふんぞり返り、クレームを出す。
「ダブったからって、子どもは文句を言ってきたりしない。ルールを知った上でたのしんでいるわけだから。でも、その子の親が勝手に難癖をつけてきたりするんだ。子ども社会を理解する気もなく」
 と、弟。
「なにを言ってるんだ? 同じモノを買わされるなんて、変だろう?」
 父にはこーゆー文化があることが、理解できない。わたしも弟も、理解できない人に説明する気にならない。もー、いいよ。ダブったやつは、いつか誰かと交換するために保管しておくよ。
 わたしはばばあだが、ルールは知っている。この悲しみも、値段のうちさ。それをたのしんでこその娯楽なのさ。

 今日のわたしのしあわせと、プチ・ショック。

 なんてかわいい「MEAT FROG」。
 でも他のカエルも欲しいの。誰か交換してえぇぇ。

 
 2003年夏コミ2日目。
 本日はサークル参加。

 へんだな、と思ったのは、周りが花組サークルだったこと。
 わたしたちの机の上の本は、1冊だけ雪組で、残りは全部月組の本だ。
 なんで花組に分類されてんの?

「……ひょっとして、サークル名が『花』だからか?」

 真実はどうなんだろう?

 とりあえず、わたしのビッグ・ジュールのペットボトルカバーを、机の上に飾ってみました。
 わかる人にはわかってもらえるようで。何人かのお客さんにはウケていただけました。

 本は……売れないね(笑)。
 やほひすきーのヅカファンって、そんなに人口少ないのかなあ?
 孤独だなあ。
 今回も言われたよ、「すごいですね」って。
 ヅカでやほひ本作るなんて変なことをして、すごい、って。
 そうか、すごいのか……存在自体を珍妙がられてしまうのか……そこまで少数派なのか……。しょぼん。

 やほひすきーのみなさん、カミングアウトしてください。
 ひとさまの書いたやほひが読みたいです。
 今は『野風の笛』とか『王家に捧ぐ歌』とかが、ものすごーく読みたいです。
 同志の方、よければ緑野こあらにメールください……めそめそ。

          ☆

 さて、この日はわたしもWHITEちゃんも疲れ切っていた。
 ホテルに帰り着く早々、わたしは風呂だけ済まして爆睡。カタログ・チェックをしていたWHITEちゃんも、それに続くように爆睡したらしい。

 わたしたちの泊まるホテルは、安さ重視の変則的なところで、ふつーのビルの7階だけがホテルになっていたりする。外から見れば、そこがホテルだなんてわからない。だからけっこう穴場。
 ツインルームでひとり4130円(税サ込み)のくせに、何故か朝食のルームサービスが付いている。
 朝になってもさもさ起き出したわたしたち。ふたりとも、まともにベッド使ってない……。
 WHITEちゃんはワンピースのままパンツ丸出しで寝ていたし、わたしは買ってきた同人誌にまみれて、ショートキャミとショーツのまま寝ていた。……よく風邪引かなかったな、わしら……。
 WHITEちゃんがシャワーをあびている間に、ドアがノックされた。あー、もうそんな時間か、フロントのオヤジが朝食を運んできたんだわ。
 わたしはいちおー着替えを済ませてはいたが、バスルームを使えないので寝癖のついた髪のまま、部屋のドアを開けた。
 予想通り、そこにはフロントのオヤジが朝食のトレイを載せたワゴンと共に立っていた。
「おはようございます」
「あー、おはよーございます」
 とりあえず、挨拶をかわすわたしたち。
 フロントのオヤジは、とてもなまあたたかい目で苦笑していた。

「あのー、お客様。ドアに鍵が、刺さったままなんですけど……」

 はい?
 わたしは言われるままに、部屋のドアを見た。

 そこにはたしかに、鍵が刺さっていた。
 鍵穴に、鍵。

 昨日、疲れ切って帰宅した。よろよろと鍵を開けて、それから……。

 鍵を抜いた記憶が、ない。

「危ないですから、鍵はきちんと抜いておく方がいいと思いますよ」
「そ、そうっすね……」

 朝食を受け取り、ドアを閉めて。オートロックだから、ドアは閉めるだけでOK。
 でも、鍵穴に鍵を刺したまんまじゃ、ロックはかかってないのと同じ。

 ゆうべ一晩、鍵はドアに刺さったまんまだったってか?!

 ジーザス!!
 なにやってんだ、わたしら!!

「無事でよかったね、わたしら……」
「つーか……泥棒でも痴漢でも、入ってきたら驚いたんじゃない? あたしら、ベッドも使わず服のままでオチてたじゃん」
「最悪っす」
「バカ? あたしらって、バカ?」

 いいトシして、なにやってんだろうねえええ。

 
 2003年夏コミ1日目。大雨。

 荷物をホテルに預け、とっとと有明へ。
 しかし一般参加の列に並ぶ気はまったくなく、パナソニックのネットカフェで優雅にお茶をしながらインターネット。
 3時間くらい、遊んでたよ……。

 午後になってから、よーやく腰を上げ、入場。

 トシを取ったな、と思うのは、ジャンプ・ジャンルがわからなくなったとき。
 昔はジャンプ系好きだったし、少し昔は興味がなくても知識くらいはあった。
 ところが今は、まったくなにもわからないもんなあ。
 少年ジャンプがおもしろくなくなってから、もう10年くらい経っている。まったく読まなくなってから、5年くらいは経ってるよな?
 アレを理解できる若さは、もうわたしにはない……。

 つーことで、ジャンプの日である本日は、回るところがとても少ないのだ。
 『ときメガ』はなんで、やほひが少ないのだろう……。やほひが読みたいのにー。

 帰りははじめて水上バスに乗った。
 まあ、夜景がきれいですこと。
 バスというより、観光船だなこりゃ……。

 
 せっかく試写会が当たっていたのだが、見に行くのをあきらめた。
 ……行くつもりで着替えて、駅まで行ったんだけどな。
 脱落。
 このまま出かけたら、きっと人様に迷惑をかけてしまう。梅田で倒れて救急車はいやー(苦い過去。しばらくは恥ずかしくてその周辺に行けなかった)。

 手ぶらで帰るのは寂しかったので、ローソンに寄って『踊る大捜査線』の前売りチケットを引き替えてきた。
 ローソン限定のグッズ付きのヤツだ。ストラップとポストカードのセット。

 グッズ付き、はいいけど、4種類あるうちから選べない、てのはどうよ。

 劇場前売りのプレミアは、ポスターだった。こちらも4種類あり、そこから好きなモノを1枚選べた。
 選べるのはありがたいけど、ポスターは勘弁。いらねー。せめてポストカードなら、劇場前売りにしたのに。

 だけどわたしは、かつて『踊る』モノだった。『踊る大捜査線』がブレイクする前から、踊り狂っていたひとりだった。(変な日本語だが、解説はしない。わかる人にだけわかってくれ)
 再度の映画化に、記念品のひとつも欲しかった。
 記念品……ポスターがいやなら、ストラップ(+ポストカード)しかない。

 ローソン限定の、グッズ付き前売り券。4種類のロシアンルーレット、どれが当たるかはわからない。
 いちばん欲しいのは、なんといっても「カエル急便」。かつての『踊る』モノならば、コレでしょう。
 次の希望は、今回の映画のいちばんメジャーなロゴ付き、「He’s back.」。青島のシルエットがかっこいい。
 3つめの「WPS」はふつー。良くもなく悪くもなく。
 最後の「湾岸くん」は、絶対イヤ。かつての『踊る』モノであるわたしは、この新しいキャラクタに拒絶反応。だってこんなの、知らないもん。

 『踊る大捜査線』はすばらしい作品。
 そして、数ある物語の中で、もっとも完成度が高いのは、もちろん最初のテレビシリーズだと思っている。
 毎週どれだけたのしみに見、終わった後に友人のオレンジとFAX文通し、また電話で語りあったか。
 こんなにいいドラマなのに、視聴率はふるわず、周囲は誰も見ていない。ビデオ化もされない。
 歯がみしながら、布教につとめた。
 ふつーのドラマなら、最終回あたりにビデオ化のお知らせがあるのにね。『踊る』がビデオ化されたのは、放映終了から半年近く経ってからだったんだよ(DVD化なんて、さらにそのはるか後)。ファンの地道な声が届くまで、それだけかかったんだ。
 そのあとに、まさかのブレイクが待っているとは露知らず。

 わたしは最古ファンのひとり。
 ブレイクしたあとは、よくあることだが『踊る』はわたしの手の届かないところに行ってしまった。
 「湾岸くん」というキャラクタは、その最たるモノ。
 テレビシリーズ本放送ファンはそんなもん、知りません。だっていなかったもの。
 HPでだけ盛り上がっていたって、知りませんよ。
 わたしは心が狭いばばあなのだ。年寄りは、自分の知らない新しいモノに拒絶反応を起こすのだ。

 ローソンのグッズ付き前売り券に手を出すのをとまどっていたのは、ひとえにこの「湾岸くん」のせい。
 残りの3種類だけなら、迷わず申し込んでいたのに。
 万が一にも「湾岸くん」が当たったら、泣くに泣けない。
 わたし、くじ運ないのよー。いつだって欲しいモノは当たらず、「これだけは嫌」が当たるのよー。

 だけどありがたいことに、メル友のかめたさんがわたしとまったく逆の希望を持つ人だった。
「第一希望は湾岸くん。カエル急便が来たら嫌だなあ」
 うれしいよ、かめたさん。もしもわたしが「湾岸くん」を引き当ててしまったら、ぜひ交換してくれー。
 かめたさんの快諾を得て、少しは希望を持ってローソン限定前売り券を申し込むことができた。
 完全な希望じゃないよ? だって、わたしもかめたさんも「湾岸くん」だった場合は、どーしよーもないからね。つくづく運のないわたしは、それくらいありそうな気がしていたし。

 とまあ、これくらい長々と文句を書き連ね。
 本日引き替えてみたグッズは、「He’s back.」でした。

 ひとまず、ほっ。

 ぜんぜん悪くないよ、「He’s back.」。かっこいいよ。
 ただ、わたしの携帯電話には合わないデザインだけどな(笑。それでもつける)。
 かめたさんは「WPS」だったそうな。

 やはり『踊る大捜査線』は初日に見に行こうと決めた、2日連続映画を見損ねた日。

 
 なんとなく、昔好きだったマンガを引っ張り出して読んだ。

 あああああ、ごめんなさい、ごめんなさい、わたしが悪いです。ごめんなさい。

 という、いたたまれない気持ちになった。

 つーのもだ、そのマンガには「読者からのおたよりコーナー」というのがあってだな。
 マンガにはたまにそういうの、あるよね? 有名どころでは『ONE-PIECE』とかさ。空きページの穴埋めとか巻末とかに、おまけとして読者の交流ページがあったりする。
 その、「昔好きだったマンガ」にもソレがあって。

 わたしはそこの、常連だった。

 ごめんなさい、ごめんなさい、わたしが悪いです。ごめんなさい。うわあ〜〜んっ。

 そのマンガを読むのは、ほんとに久しぶりだったのよ。
 改めて、今、ばばあになってからその「おたよりページ」を読むとだな……逃げ出したい思いにひとりでじたばたしてしまった。

 若かったんだよ、あのころはまだ。
 だからあんな、イタイはがきをうれしげに出しつづけてたんだ。

 何枚出したかなあ。
 一度も、ボツになったことなかったんだ。マンガ家の先生にも名前をおぼえてもらえてさ。舞い上がって投稿してたよ。
 連続で載りつづけるもんだから、見知らぬ人からの、わたしへの応援はがきとかも載るようになってさ。
 あら、あたしったらファンがいるんだわ、もっとがんばってナイスな投稿しなきゃ!! と勝手に張り切って……。

 イタイ。
 イタイよママン。
 厨房の典型だよ。すでにリアル厨房ではない年齢だったのがまた、さらにイタイよ。号泣。

 過去の悪行ってのは、ほんと、ハートに悪いですな。

 昔の自分の投稿が載っているページを見ないようにマンガ本編を読み、わかっているくせに、禁断のページをちらりとめくって「はぐうっ」な気持ちで胸を押さえる。
 マ、マゾ?
 いつかこの羞恥な痛みが快感に変わる日が?

 
 アニメの『ベルばら』を数話一気に見ました。
 ほら今、BSで放送してるから。
 アレをDVDに焼こうと思ってね。全40話だから、10話で1枚のRにすることにしたの。先週で10話溜まったから、いらないところを削り落として、改めてRにダビング。

 わたし、このアニメ版『ベルばら』のサントラCD持ってるの。
 もともとは「LP」だったのを、何年か前に「限定発売」と銘打って「CD化」してたんだよね。通販ONLYだってちらしに書いてあったけど、ほんとかな。
 わたしはLP時代もファンだったので、CDも迷わず注文しましたとも。

 サントラCDには、不思議な挿入歌も何曲か入ってて、とても香ばしかったですわよ。
 今咄嗟に出てこないんですが。アニメのCDなんて、さすがにこのトシになるとどこかへしまいこんでいて、日記のために引っ張り出してくることが不可能なのよ……。
 たしか、フランス人ですか?みたいな舌っ足らずな歌手が歌ってたなあ。アニメ中にこの歌が流れることがなかったのも、そりゃうなずけるわ、てな出来の歌だった。

 愉快だったのは、インスト曲には声優の語りが入っていたこと。
 アントワネットとか、オスカルとか。
 アニメの音を使っているわけじゃなくて、たぶんCDのための別録音だと思う。アニメでは存在しない語りだったから。

 と、ゆーのも。

 アニメの『ベルばら』を見た人は知ってるだろうけど、アレ、原作とは相当ちがってたよね?
 オスカルの解釈が微妙にちがってたし、それゆえにアンドレも別の人になっていた。ま、いちばん別人だったのはアランだけど。
 原作ファンとしては、あちこち「はぁ?」と首を傾げていたもんさ。
 原作の名台詞もことごとく無視されていたし。
 アニメはアニメとして、好きなんだけどね。アンドレの死に方(笑)以外は、「別物」として好意を持っている。

 サントラは、たぶんアニメ制作前に作られていると思う。
 アニメがあんなことになるとは、誰も思っていなかったときに作られたはず(途中で監督が替わるなんて、誰が思うよ?)。
 だから、原作に忠実なの。

 オスカルの、原作の台詞があるんだよー。

 オスカルがアンドレに愛を告白するシーン。
「わたしの存在など巨大な歴史の歯車の前には……以下略」
「千の誓いがいるか、万の誓いが欲しいか……以下略」
 が、田島令子と志垣太郎の声で入ってるのですよー。

 アニメにはなかったあのシーンが。

 ……CD聴きたくなってきたなー。探すか……。

 アニメ『ベルばら』を見てDVDのスイッチを切った途端、テレビでただいまやたら放送中の『聖闘士星矢』のDVDのCMなんか見ちゃった日には、「ギャフン!!」って感じですが(笑)。

 
 ライバルはあの女たちだ。
 そのときわたしは、そう思った。

 あれはわたしが18か19のころ。
 友人たちと、あるクイズ番組の予選に参加した。

 たしか『MR.ロンリー』とかいう名前の番組だった。
 クイズに答えるのはひとりの男性で、3人ひと組で参加している女性グループが彼を応援し、彼の成否によって得られる賞金が変わってくる、という内容だったと思う。
 ……実はわたし、その番組見たことなかったんだわ。でも、友人のヤマダさんから、予選に出る資格を得たから一緒に出る仲間を捜していると持ちかけられ、一も二もなく承諾した。たんに、おもしろそうだったから。

 ヤマダさんと光田さんとわたしの3人で、いざ予選へ。なんとか勝ち残って、テレビ出演するんだ!!

 当時某テレビ局でサクラのバイトをしていたが、「客」としてテレビ局へ行くのははじめてだったので、とても神妙な気分だったのをおぼえている。バイト先とはちがう局だったしな。
 会議室のよーなところに集められた大勢の女たち。千差万別。
 そこからランダムに分けられたグループによって、予選が行われたわけだ。

 10組ぐらいがひとつの部屋に集められた。
 選考課題は3つ。自己PRと、男性への激励の言葉を言うこと、問題文の朗読。
 わたしは喋ることは大好きだし、朗読は子どものころからいちばんの得意分野だった。男性への激励とやらも、照れを廃して情感たっぷりに言うだけの覚悟を決めていた。

 1組ずつ代表ひとりがみんなの前で喋らされるのだが、わたしの目には取るに足らない人々に見えた。
 だってみんな、おもしろくないんだもん。なんてふつーなの。彼女たちの話には、ユーモアも自己主張もなにもない。新しいクラスになったときの自己紹介みたい。名前と以前のクラスをぼそぼそ言うだけで席に着いてしまうような。
 聞いているだけであきてしまう。

 そんななか、1組だけ個性を持ったグループがいた。
 その人たちは、ひとめで「変」だと思えた。
 どこから見ても完璧に「おばさん」なのだが、格好が妙なのだ。
 マンガの絵のついたトレーナーを着ている。ディズニーとかじゃなくて、ロボットアニメのキャラクターとかだ。子ども向きじゃなく、いわゆる「美形キャラ」ってやつ。かまっていない髪型に、眼鏡。小太り。
 他のひとたちはみんな、テレビ出演の予選である、ということを意識してきれいな格好で来ているのに、そのグループだけはどっから見ても普段着だった。
 会場に入ったときから「なんか変な人たちがいる」と思ってはいたが。

 いざ予選になると、その変なおばさんたちは、ものすごいアピール力を発揮した!!

 喋る喋る。
 プロデューサーだかなんだか役職は忘れたが、試験官の男性を笑わせまくる。

 強敵だ。
 てきとーにきれいで、てきとーに澄ましているふつーの人たちとは、明らかにチガウ。

 ライバルはあの女たちだ。
 そのときわたしは、そう思った。

 さて、わたしたちの番が来た。
 わたしはグループの代表として、立ち上がってグループの紹介をする。女子大生であること、同じクラブに入っていること。
 そして。
 ここからが本番だ。

 いかに笑いを取るか。

 わたしは自分が「ぶさいく」であることを知っていた。
 だから、ネタには最適だった。
 わたしは自分の顔をネタにして、一気に笑いの世界へ突入した!!
 笑わせてやる! わたしの言葉のひとつひとつで、ひとの気分を操ってやる!!
 かかってきな!
 ……てなもんで。
 場内を笑いの渦に落としました。

 いやあ、一世一代の喋りでしたよ。自画自賛。……自分のぶさいくぶりがネタってのが、かなしーですが。

 自分の役割を全部果たし、着席したわたしのあとに、愛想のいいぽっちゃり美人のヤマダさんが問題文の朗読をする。彼女にはなんの問題もない。
 最後に問題文を読む光田さん。この子は完璧に美人でプロポーションも抜群なのだが、人間嫌いの男嫌い。このときも眉間にシワを刻み、世の中すべてを呪っているよーな不機嫌な顔で立ち上がった。
 ……ここはひとつ、ネタを仕込むか。
 不機嫌に問題文を朗読する光田さんの背中を、指でいたずらした。
 彼女は背中がウイークポイント。背中を触られると、ミステリドラマの被害者のような悲鳴をあげてうずくまるのだ。
 このときも、見事な金切り声をあげてうずくまった。
 おかげでまた、場内爆笑。
 光田さんには涙をためた目でにらまれたが、わたしゃ知らん顔。
「背中が弱いんです」
 と光田さんはわたしにいたずらされたことを試験官に訴え、さらに周囲にウケられていた。真面目だからこそ、おかしい姿だったのよね。彼女が完璧な美人なだけに。

 わたしはそのとき、勝利を確信した。

 人好きのする美人とクール系美人(背中が弱点)と、お笑い担当のブスのトリオだ。キャラが立っていていいじゃん? しかも現役女子大生だ。

 マンガ絵のトレーナーを着た変なおばさんたちになんか、負けるもんかっ。

 さて、結果は。

 勝利も敗北もありませんでした。
 番組が、打ち切りになったのです。

 ははははは。

 もしあのまま番組がつづいていたら、出演できたんじゃないかなあ、と、捕らぬタヌキは皮算用。勝手にうぬぼれております。
 いや、笑いを取れればそれでOKな番組だったかどうかは知りませんが。なんせわたし、ついに一度も番組を見ることがなかったもんで(をい)。

 そして。
 あのときはわからなかったけれど、わたしが勝手にライバル視していたおばさんたちは、いわゆる「オタク」だったのだと思います。
 たぶん、今のわたしと同じくらいの年齢でしょう。18のわたしの目にはものすげーおばさんに見えたけど。

 でもな。
 当時のわたしは、30過ぎた「オタク」がいるなんて知らなかったのよ。
 オタクってのは、大人になったら卒業するものだと思ってたの。
 だからあの「どっから見てもコミケでカートを引きずっていそうなおばさん」を見ても、オタクだと思わなかったの。
 …………幼かったわ、あのころのわたしって。

 まさか自分が、あのとき辟易した「オタクなおばさん」になるとは思わずにな。

 ああ、人を呪わば穴二つ。
 厨房笑うな来た道だ、オバ厨笑うな行く道だ。
 ……いや、少なくとも見た目だけは、「終わっている」おばさんになりたくないんだが。くうぅ。

 昨日に引き続き、体調悪し。
 寝たきりで陽が暮れる。

 ベッドでえんえん本を読んで過ごしたもんで。
 そっからの連想で、昔の記憶が蘇ってきたのよ。そうそう、こんなことがあったっけ、と。

 
 わたしが唯一定期購読している雑誌は、『TV Bros.』だ。
 タイトルからわかるように、テレビ情報誌。

 だが、テレビ情報誌としては、ほとんど役に立たない。

 テレビのことなんか、言い訳程度にしか載ってないんだもんよ。
 肝心の2週間番組表だって、新聞の方が見やすいくらいだし。

 んじゃなんでこんなに役に立たない雑誌を買っているか。

 おもしろいからだ。

 テレビ情報以外のページが。

 つーかこれ、ほんとになんの雑誌かわからないもんなあ。
 今週号の表紙なんか、アカレンジャーのアップだし。真面目にキャストやスタッフのインタビュー載せて、特集組んでるし。
 『真珠夫人』特集のときはすごかったよ。「半世紀前?」みたいなタカラヅカばりの時代錯誤な「ロマンチック劇画」な表紙……。
 弟に、「なんの雑誌?」ってマジに聞かれたなー。そしてテレビ情報誌だと答えると、「男が買えない表紙だ……」と絶句されたわ。

 『TV Bros.』は、変だ。
 記事部分が、相当変。
 そして、変であることをウリにしている。

 ノリとしては『ファミ通』に近い。
 『ファミ通』はタイトルからわかるように、ゲーム情報誌。だが、ゲームとは関係ない記事も多い。つーか、ゲームとは関係ないあたりにあるノリこそが、いちばんのウリだと思ってるんですが。

 20代30代の人間が、「共通言語を持った人間が、とにかくたのしめるモノ」を作ったらこうなった、って感じかなあ。
 一般人なんか置き去りでヨシ。わたしたちだけがたのしければいいの。わたしたちが興味を持ち、たのしいと思えるものならなんでもいいの。

 『TV Bros.』の番組欄、『ファミ通』の攻略記事などが唯一、一般人への言い訳で、その他の部分は趣味全開! つーかそっちこそがメインだろ?的な作りが、愉快なんだよなあ。

 まあ、『TV Bros.』と一緒にしたら『ファミ通』に失礼か。あちらは『TV Bros.』なんかよりはるかに、本筋も大切にしているし、また売れてるもんなあ。

「ええっ、今日も『一歩』ってあったけ?」
「あるよ。2時23分から」
「わたし『TV Bros.』しか見てないから、わかんないよー」
「ほんと役立たないよね、『TV Bros.』……。あたしももう、買わなくていいかとも思っちゃうんだけど……あまりに役に立たないから」
「でも、おもしろいしなー」
 とゆー会話を今日も、WHITEちゃんとしました。

 わたし最近、テレビの番組欄は『TV Bros.』じゃなく、Yahooに頼ってるよ……。

 いつか『TV Bros.』でヅカの特集してくんないかなー。
 めちゃ笑えるものになると思うんだけど。表紙がどんなものすごいものになるか、それだけでもたのしみだし。
 ……真面目なヅカファンは、頭から湯気立てて怒りそうだが。

 
 1日ズレてるので、7日の日記ナリ。

 2003年4月7日。
 宝塚ファミリーランド最後の日。

 ファミリーランドは、わたしにとって特別な場所だった。
 思い出が詰まっていた。

 それに浸るために、ひとりででかけた。

 昔、遊園地が夢の空間だったころ。
 わたしにいちばん夢を見せてくれたのは、ファミリーランドだったんだ。

 何故緑野家は、なにかっちゃーファミリーランドに行っていたのだろう。
 いちばん近い遊園地ではなかったのに。
 冷静に分析すれば、かつてのファミリーランドは3世代家族が一度にたのしめる場所だったということだ。

 我が家は3世代がひとつの船に乗る家庭だった。
 明治生まれの祖父、大正生まれの祖母、昭和ヒト桁生まれの父、満州育ちの母、そして千里万博の記憶のあるわたし、万博の年に生まれた弟。
 この「日本の現代史を語る」って感じの顔ぶれが、一度にたのしめる場所なんて、そうそうないよ。

 宝塚ファミリーランドには、それがあった。
 緑野家のばらばらな世代の人間がすべて、たのしめたんだ。

 まず、温泉があった。
 おしゃれなスパではなく、大衆温泉。畳敷きの大広間があり、誰でも自由に過ごすことができた。
 父と祖父はよく、温泉に入ったあと大広間でビールを飲み、そのまま昼寝をしていた。
 その間女子どもたちは動物園へ。決して広くない動物エリアは、老人と子連れの母親にはちょうどいい。
 子どもが少し大きくなれば、遊園地に行くことができた。わたしは動物園より遊園地が好きで、弟と祖母を動物エリアに残し、母とふたりで遊園地で遊んだ。
 帰りは花の道の脇にある商店で、おみやげを買ってもらう。たいてい炭酸せんべいだ。宝塚歌劇のスターの写真が缶に印刷されていた。
 わたしが宝塚歌劇に出会ったのは、小学校も高学年になってからだ。それ以前は興味もなかった。

 家族全員で遊びに行ける場所。
 だからファミリーランドは、特別な場所だった。

 幼かったころ。
 まだわたしが、心の底から怒ることも、憎むことも、泣くことも知らなかったころ。
 ただしあわせで、たのしくて、わらっていたころ。
 現実も知らず、失望することも知らず、世界が夢と希望に満ちあふれていたころ。
 そーゆー幼い記憶が残っている場所。

 
 そして、ハタチを過ぎてからわたしは、宝塚歌劇にハマった。
 当時の親友がハマったために、引きずられたんだ。……いちばんの仲良しが、ヅカの話しかしなくなるんだよ? ハマるしかないじゃない。彼女との共通言語欲しさに。

 歌劇にハマったがゆえに、さらにファミリーランドは特別な場所になる。なにかっちゃー出掛けていく、とても近しい場所になる。

 20代前半という、いちばんたのしく美しい時期を過ごした場所。
 今はもう、会うこともなくなってしまった人たちと、過ごした場所。
 幼くて、カンチガイしていて、ひたすらイタかったあのころだ。
 10代のころのイタさとは、またチガウんだよな。20代のイタさってのは。なまじ社会に出て給料もらってたりするしな。時間と金と若さと体力、すべて持ち合わせているイタさだ。それゆえの暴走だ。……ああ、こわい。

 ひたすら恥ずかしいばかりの時期だが……それゆえ余計に、なつかしい記憶であったりもする。

 みんなそれぞれ大人になって、別の人生を歩んでいる。
 失ったわけではないから、会おうと思えばいつでも会えるし、会えばたのしく過ごせるけれど、もうたぶんそうそう会うことはない。
 歩く道が重なり合わなくなってしまったから。

 時間が流れる、大人になる、とはそういうことだ。
 モラトリアムだからこそ許されていた、ただ無邪気に若さを満喫できた日々。
 本来は別の道にいるはずの人たちが、まだみんな同じトコロにいた。分岐点の手前。

 
 と。
 幼いころと、青春期という2大せつない記憶を抱いて、わたしはファミリーランド最後の日にそこにいた。

 DJが当時の流行歌を流しながらカウントダウンするんだよ。
 最初は60年代で、坂本九の『上を向いて歩こう』とかがかかっていた。さすがにこのあたりはわからない。
 70年代に入り、ピンクレディーや山口百恵がかかるようになってはじめて「なつかしい」と思えた。
 流行歌をBGMに、DJが当時の世の中の出来事と、ファミリーランドの出来事を語る。

 「大人形館」は祖母が大好きだった。いつも身を乗り出すようにして見ていた。
 わたしは正直なとこ、あまり好きじゃなかった。人形が不気味だったから。……今見ても、かなりセンス悪いと思うんだけど……なんであのデザイン?
 人形は不気味だし、退屈でおもしろくない。なのに人気アトラクションで、いつも並ばないと入れなかった。並ぶのがウザかった。でも、スポンサーには逆らえない。わたしはおとなしく祖母に連れられて並んで入っていた。

 いちばん好きだったのは、「スペースコースター」だ。
 暗闇の中を走る、屋内型ジェットコースター。
 ただの暗闇ではなく、宇宙空間に見立てた星々が瞬いている。
 できた当初はものすごい人気。何時間並んだかな。入口のエスカレータのところでかかっていた電子音楽がお気に入りだった。

 「妖精の館」には、どれほど感動しただろう。当時マンガを描いていたわたしは、わざわざ内部の様子をマンガにしていた。主人公たちがファミリーランドに行くという設定で。
 美しい妖精の人形に見送られ、地下5000メートルにある妖精の国へ。5000メートルを一瞬で降りるエレベータから出たあとは、動く椅子に乗り、妖精たちの世界へ入る。
 喋る石像、踊る妖精たち。そして最後には、鏡に映った自分たちの背後に、妖精がいるのを見ることができる。妖精と一緒に館を出ることになるわけだ。あの一体感。

 18歳のときにはじめて東京ディズニーランドへ行き、真実を知ったよ。
 「大人形館」は「イッツ・ア・スモール・ワールド」、「スペースコースター」は「スペース・マウンテン」、「妖精の館」は「ホーンテッド・マンション」のパクリだって。
 コンセプトは全部同じ、だけど当然本家よりもファミリーランドはちゃちでダサかった。
 ディズニーランドがまだアメリカにしかなかったころに、人気アトラクションをパクってたんだね。あのころはまさか、ディズニーランドが日本にもできるとは思ってなかったんだろうなあ。
 本物を知ったあとでは、とてもまがい物に足を運ぶ気にはなれなかった。

 それでも。
 たとえまがい物であろうとも、それらで受けた感動は本物だ。
 どんなにちゃちでダサくて恥ずかしくても、ファミリーランドは大切な場所だ。

 立体動物園が好きだった。
 迷路になったお城のよう。
 夜行動物エリアに入るときは、いつも足がすくんだ。本能的に、闇がこわかった。
 その向こうにある、緑のドーム、亜熱帯の温室と鳥の楽園。空気の重さ、臭い、奇妙な鳴き声、濃密な空間。異世界がそこにあった。

 
 改めてファミリーランドを歩き、痛切に感じた。
 愛しいのは記憶であって、場所ではないのだということ。

 ファミリーランドはもう、わたしの愛したファミリーランドではなかった。

 ここ10年、わたしは取材以外でまともにファミリーランドを歩いていない。
 何故ならば、ファミリーランドは変わってしまったからだ。
 DJのおかげでよくわかった。94年の「改悪」。あれですっかり変わってしまったんだ。
 異世界感覚が際立っていた立体動物園の緑のドームが、あのときになくなったんだ。
 動物園は縮小、動物たちは信じられないような小さな檻に入れられた。
 ガラスケースだ。水族館のようなガラスの檻に入れられたんだ。空も見えない、外の空気も吸えない。
 ガラスの檻の中に閉じこめられたわずかな動物たちと、エサにたかったたくさんのゴキプリ。……動物よりゴキブリの数の方が多かったな。
 あれは、ショックな光景だった。

 えんえん工事して、なにをやってるのかと思えば、こんなかなしいことに……。

 見るに忍びなくて、そして実際たのしいとも思えない場所に成り果てていたので、それ以来二度と行かなくなった。
 

 実際にファミリーランドを歩きながら、わたしはもうここにはないファミリーランドを懐かしんでいた。

 なくなるのも仕方ない。
 てゆーか、すでになくなっていたんだ。

 記憶とかなしみと、失ってしまったもの。
 年を取った自分。

 せつなくて、懐メロを聴きながら涙が浮かんでくる。

 
 それにしても、いい天気だ。
 快晴、空は青。
 桜は満開。

 今日でよかった。

 たくさんの人。
 家族連れ、カップル、グループ。

 小さな小さな子どもたち、ここでの記憶はいつか、大人になった君たちの胸を熱くするのかな?

 
 得たモノを大切にするように、失ったモノを抱きしめて生きていきたい。
 ウエットなのはわたしの芸風なのよ。
 たくさん泣いて、わたしはわたしになるの。

 とゆー、特別な日。特別な場所。
 わたしは宝塚ファミリーランドが大好きだった。


 本日は前の職場の仲間たちと、某牢獄酒場へ行って来ました。
 すっかり忘れてたけど、松竹ちゃんのお誕生日でした。牢獄に取り憑いているらしい悪霊さんにも祝ってもらいました。
 ……いろいろがんばって差別化するよね、飲み屋も。

 しかし、今回はしみじみとしてしまったよ。

 わたしはオタクである。
 だからたぶん、ふつーの人とはチガウのだろう。
 小心者ゆえ、「ふつうとチガウ」と言われるとひどく傷つくのだが。そうわたしは、「緑野さんって、ふつーの人ですよね」と言われるとほっとしたりする外面第一人間なのだ。
 しかし、このトシで結婚もせず、のほほんと生きているだけでも、もう「ふつう」ではないのだから、認めざるを得ない。残念ながら。むむ。
 まあとにかく、わたしはオタクであり、人生に「オンリーワン」を持っている。

 30過ぎて独身で、この満ち足りた現代日本でのうのうと生きている女で。
 ……そんなやつは自然と、「オンリーワン」を見つけてしまうのではないか。

 そう思ったのよ。

 とゆーのも、わたしより年上の松竹ちゃん。
 松竹ちゃんは某オヤジ歌うたい三人組のボーカルの大ファンである。全国各地にいる仲間たちとともにツアーを追いかける人生を送っている。
 彼女はとてもたのしそうだ。

 そして、わたしよりは年下だが、やはり30過ぎのテルちゃん。
 テルちゃんは某おっさんアーティストにハマり、やはり全国各地にいる仲間たちとともにファン人生が花開いているらしい。
 彼女もとてもたのしそうだ。

 ……そうだよなあ。
 このトシで。なにもなしに生きてはいないよなあ。
 なにか、ものすっげー大好きな、情熱と金と時間をすべて費やして悔いのないナニカを持っていなきゃ、ひとりで生きてないよなあ。
 とっくに結婚して家庭つくってるよなあ。

 松竹ちゃんは昔からそーゆー人だったけど、今回、クールなテルちゃんまでもがそーゆー人になっていたのを見て、愕然としましたのよ。
 そうか、こいつも「こっち側」へ来たか。

 感慨深いわ。

 最年少で唯一既婚者のジュンちゃんが「そーゆーの、よくわかんない」と心底不思議そうにしているのがまた、感慨深さに拍車を掛ける。
 いいんだよ、君はわからなくても。君は「そっち側」で、夫を愛して子どもを愛して、築いて、伝えて、生活していってくれ。君こそが、正しい姿なんだから。
 君になれなかったわたしたちは、君の持つモノ以外に「オンリーワン」を見つけているだけのことなんだ。

 それにしても、インターネットは罪深いなあ。
 松竹ちゃんもテルちゃんも、ネットがなければ道を踏み外してなかったと思うよ。
 同行の志と出会えてしまうことで、後戻りできないところまで進んじゃうんだよねええ。
 人はひとりでは生きられないのだ。

 なんてことを考えた日。

 
 
 長電話してたら、病院に行きそびれた……へっくしょん!!

          ☆

 彼は、生まれつき他の誰ともちがっていた。カラダに障害があったのだ。
 彼はそのことを恥じていた。みんなと同じ姿をしていないことを、かなしんでいた。
 自分を愛することのできない彼は、いつもひとりで機械いじりをしていた。
 そんな彼の前に、あるアクシデントが起こった。
 彼の住む町へ悪人がやってきて、ひどいことをはじめたのだ。
 彼はなにもできなかった。
 なにかしたい、と思ったのに、なにもできなかった。しようとしなかった。
 どうせボクなんて……そんな思いが、彼をすくませていた。

 そんな彼の目の前を、あざやかに走っていった者がいる。

 知らない少年だ。彼よりも、少し年上。
 「どうせボクなんて」と彼があきらめたアクシデントに向かって、まっすぐに疾走していく。たったひとりで、悪人と戦う。

 誰?

 彼は走り出す。その少年のあとを追って。
 彼があきらめていたもの、渇望していたものを、その少年は当たり前に見せつける。
 その勇気で。その強さで。

 彼は考える。
 ボクも、あの人のようになれるだろうか。
 戦う前からあきらめて、言い訳ばかり考えているボクでも。
 ボクは、変われるだろうか。
 いや、変わりたい。
 あの人のように。

 その日から、彼は少年を追いかけることにした。
 少年は彼を邪険に扱う。どんなに一緒にいたいと言っても、無視されてしまう。それでも彼はあきらめない。一生懸命、あこがれの少年の背中を追いかける。
 どうせボクなんかなにもできない。……そう思うのではなく、ボクにできることはなんだろう、と考えることにした。あこがれの少年にふさわしい存在になりたかったのだ。そうやって、彼は必死に少年のあとを追う。
 そして彼は気づいた。彼のことをいつも無視している少年が、ときおり横目で彼の様子を見ていることを。彼が転んだときは、立ち上がって走り出すまで、立ち止まって待っていてくれていることを。

 こうして彼と少年は出会い、今もふたりで走り続けているのだ。

 
 ……知らなかったんだけど、『ソニック・ザ・ヘッジホック』テレビアニメ化なのね。
 ソニックが人間界に来てしまう、というストーリー解説を読んでちょっと首を傾げる。うーむ?
 第一、大阪では放映するのかしら? 大阪はアニメ不毛地帯だから、放映されないものも多いんだよねえ。

 わたしはゲームショップで働くようになるまで、ゲームというものをまったく知らなかった。
 ゲームショップで働きだしたのだって、わたしの意志じゃない。配置転換で否応なく担当になったんだもん。
 CDタイプのゲームソフトを売りに来たお客さんに、「CDの買い取りは2階のCDフロアで承っております」とか言っちゃうくらい、無知だった。ゲームってのは、カセットしかないって信じてたんだもん。
 そしてそれは、プレステとセガサターンが発売される前の年だった。
 わたしはゲーム機に触ったこともないまま、ゲーム売り場担当として、悪戦苦闘していた。知識がゼロだったもんでな。
 そんなわたしでも毎日ゲームソフトの中で働いているうちに、いろいろおぼえてくる。ゲームをしたことがなくても、商品知識だけは増えてくる。タイトルを言われたらどんなゲームであるか答えられる、店のどの棚のどこに陳列してあるか答えられる、てなふーに。
 気になるタイトルも出てくる。
 そのなかのひとつが、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』だった。
 絵と色とデザインが、なんともわたし好みだったんだ。
 とくに、シリーズの2本目が気になった。
 青いかっこいい系のキャラと、黄色いかわいいキャラが一緒に描いてある。どっちも動物らしいが、なんの動物かはわからない。
 青いキャラが主人公の「ソニック」だということはわかった。じゃあ一緒にいる黄色いかわいいのはなんだろう。
 ミッキーとミニーみたいなもんで、主人公とそのガールフレンドだろうな、と思う。ミニーはぶさいくだけど、ソニックのガールフレンドはめちゃかわいいなあ、と。
 そのかわいいキャラの名は「テイルス」というらしい。ちょうど中古品を買い取ったので、チェックがてら説明書を読んでみた。
 ソニックがハリネズミで、テイルスはキツネかあ。ふーん。え? ……え?

 テイルスって、男の子?!

 あんまりかわいいんで、女の子だと信じ切っていた。ミッキーとミニーだと思いこんでた。
 男ふたりだったのか!!

 途端、興味が湧いた(笑)。
 説明書をはじめから読む。
 『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』の説明書は、最初の部分が絵本のようになっていた。
 ソニックとテイルスの出会いがイラスト入りで描いてある。

 生まれつきしっぽが2本あるマイルスは「テイルス(しっぽの複数形)」という渾名で呼ばれ、周囲からからかわれていた。彼はコンプレックスのかたまりだ。
 そんな彼の前に現れた男、ソニック。
 …………すごいっす。
 テイルスがソニックに一目惚れする物語が、ちゃーんと書いてあるっす。

 ソニックは走る。
 輝く太陽に向かって。

 ソニックは走る。
 胸を張って正々堂々と。

 ソニックは走る。
 立ち止まらずに力いっぱい走り続ける。
(パッケージの宣伝文句ナリ)

 そんなソニックのあとを、テイルスは追いかけはじめる。
 コンプレックスだった2本のしっぽを使って。欠点を武器にすることをおぼえたんだ。コンプレックスを克服したんだ。
 ソニックに出会って、テイルスは生まれ変わったんだ。

 ソニックはクールな男なので、自分にあこがれて追いかけてくる男の子のことなんか、構ってやらない。……でも、ちゃんと目の端で様子を見ている。
 と、説明書に書いてある。……書いてあるんですよ。キャラ紹介に。テイルスのとこには「ソニックが好き」、ソニックのところには「でも、ちゃんとついてきているか横目で見ている」と。
 なんなんすか、これ。
 どこのBLですか?! ラヴラヴですがな!!

 ……プレイしましたよ、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2』。メガドライブ本体借りて。
 テイルス、めちゃかわ。
 プレイヤーが操作するのはソニックだけ。
 走り回り、戦うソニックのそばに、テイルスがいる。ただ、いる。いるだけ。彼はなにもしないし、できない。でも、いるの。勝手に動き回ってるの。あとを追ってくるの。ソニックが立ち止まるとテイルスも止まるし、フェイントかけて急に立ち止まったりしたら、通り過ぎたあとにあわてて戻ってくるの。
 か、かわいい……。
 つーか、なんなのこのラヴラヴぶり。
 意味なく、プレーヤー・キャラに美少年がくっついてくるのよ? なにもしないのに、ただいつも一緒にいるのよ?
 制作者はなに考えてこんな愉快なものを作ったんだ??

 以来、ずーーっとずーっと、ソニックシリーズのファンです。

 あ、テイルスは攻ね。
 どんなにかわいこちゃんでも、彼は攻。
 テイルス×ソニック。
 だが、シリーズ3で出てきたナックルズ。彼は受です。ソニック界の、総受。ナックルズ相手なら、ソニックも攻だわ(笑)。

 わたしの愛用しているマグカップは、テイルス×ソニックのイラスト入りです。セガのオフィシャルグッズです。
 テイルスは2本のしっぽをプロペラにして、空が飛べるの。でも、ソニックはふつーのネズミなんで飛べない。では、ソニックが空を飛ぶにはどうするか。

 テイルスがソニックを抱えるの。

「ジェットがジョーを抱いて飛ぶよーなものなのよっ(byサイボーグ009)」
 と萌え解説するわたしに、友人ズは、
「でもネズミじゃん……?」
 と、冷たく言い放ってくれました。むきーっ。

 わたしのマグカップは、テイルスとソニックがふたりで手を握り合って飛んでいるイラストなのよー。宝物よー。
 かの大震災で割れたから、あわててもう一度買いに行ったんだもん。

「ソニックでやおい、って、ソレ、擬人化よね……?」
 なんて、おそるおそる聞かないでよ。
「擬人化してもべつにかまわないけどさー。でもわたし、ネズミのままでもぜんぜんOKよっ。ヤってくれてヨシ! つーか読みたいっっ」

 と、正直に言って、引かれましたわね……盛大に。

 だって、やおひはファンタジーでしょ? 想像力でしょ?
 なんか問題ある?


 思った通り、体調を崩して寝込む。
 死兆星を見てたからなあ。そりゃ寝込むわなあ。
 つーか、仕事が終わったあとはいつも寝込むのだわ。

 さて。
 ネット書店で注文していた本が届いた。

 大人になってしまったわたしは、少女マンガが読めない。
 昔の少女マンガなら読めるけれど、今の少女マンガは読めない。
 それが「時代」というものだろう。
 わかっているけど、せつないことよ。

 昔、わたしが少女だったころの少女マンガは、
「片想いのAくんと両想いになりたい」
 だった。
 ところが今の少女マンガは、
「片想いのAくんとえっちがしたい」
 なんだもんよ。

 片想いのAくんに、ついに告白した! Aくんも「じつは君のことが好きだったんだ」と答えた。やった、両想いだ!!
 と、思った次のページでは、ふたりは裸でもつれあい。
 お花と点描が飛ぶ中で、ヒロイン喘ぎまくり。

 ……わたしはもう少女ではないので、この感性にはついてゆけません。
 ばばあなので、カラダのえっちよりも、精神的なときめきを重視します。

 少女マンガもエロで売る時代がやってきた。
 出版不況の最中、少女マンガは売れなくなった。わたしの少女時代に有名だった漫画誌が次々廃刊になった。
 えっちなら売れるそうだ。
 読者アンケートでは、「もっとえっちにしてください」「もっと過激なものが読みたい」と、小中学生がかわいい文字で書いてくるそうな。
 そしてかわいいきらきらした絵の、しかし汁率が異様に高い少女マンガが跋扈する。
 汁か……わたしの若いころには、たとえ少年マンガのえっち系でさえ描写されることはなかったよ。
 時代は変わるのだ。

 ところが盟友オレンジの作品が、この少女えっちマンガ雑誌に載ることになった。オレンジ自身はエロにはほど遠い作風のマンガ家なんだが、いろいろあって、そこに漂着。
 マンガ家にはアンケートが命。わたしは絶対アンケートを出して援護射撃をしたい。
 だが。
 敵は少女えっちマンガ雑誌ナリ。
 しかも、性欲だけ剥き出しなガキ共のために、とてもわかりやすいこっ恥ずかしいタイトルだのあおり文句だのがついている。
 か、買うのが恥ずかしい……。
 とてもじゃないが、書店で口に出して言えない。

 わたしがガキならいいよ。
 今の半分の年齢なら、堂々と買えるさ。えっちな本を買う、という気恥ずかしさはあると思うが、それでも少女マンガなわけだから、男向け実用雑誌を買うわけじゃないから、大丈夫だろうよ。
 しかしわたしは、おばさんである。
 このトシで、10代のメスガキ用……失礼、少女向けえっち雑誌を買うのは、とてつもなく恥ずかしい。
 年相応なエロ本なら、いくらでも売っている。レディコミだってホモエロだって。それなら平気さ、ぜんぜん恥ずかしくなんかない。だってわたし、大人だもの。おばさんだもの。おばさんがおばさん向けエロ本買ってなにが悪いってなもんだ。
 しかしだ、よりによって、10代の女の子があんあん言ってる少女マンガを買うのは、めちゃくちゃ恥ずかしいってゆーのよっ!
 いいトシしてフリルぶりぶりの服着て歩くおばさんみたいな、気恥ずかしさ。似合ってればいいだろうけど、おばさんソレ目の暴力だよ、てな。

 書店で買うのが恥ずかしいときは、迷わずネット書店です。

 わたしの他にも同じ思いの人がいたようで、オレンジは自分のHPに某有名ネット書店のリンクを貼ってくれてました。ここで買えば恥ずかしくないよ、と。

 送られてきた本を見て、「ネットで注文して良かった」と再確認。
 思っていたのと、ぜんぜんちがう装丁だった。これじゃ書店では見つけられなかった。

 んで、読んでみました。そのえっち本。

 ははは。
 汁がいっぱい。

 ま、それは覚悟してたからいいさ。

 はじめから、えっち系だってわかってたからかな。昔、某有名老舗少女マンガ雑誌の増刊を読んだときほどの絶望感はなかった。
 そのときは、「自分が知っている少女マンガというジャンル」だと信じて読んだから、顎が落ちたもんな。
 告白した次のコマではベッドがぎしぎしだもんよ。それが当たり前なんだもんよ。そんなマンガばっかりが何本も、合計500pもつづいてて、とても読めなかったんだよ。
 みんな情緒とか持ってなさそーな宇宙人ばかりに見えたから。……そりゃあな、アニメにもなった某快感少女マンガが売れる時代だからな……仕方ないんだけどな……あまりにも、衝撃的でさ……おばさんにはさ……。

 それに比べ、「えっち」が目的だけに描かれた少女マンガは、潔かったです。
 ホモエロ……つーか、ボーイズラブ雑誌と同じ作りでした。
 ネタも展開もみんな一緒。汁率の高さも一緒(笑)。そして、なにがどうあれ、「愛」があるのも一緒。
 男向けエロとちがって、女の子向けは絶対に「愛」がある。たとえ監禁調教ものであったとしてもな。すべては「愛」が動機。
 ただ、ヤられてるのが美少年か女の子かだけのちがいだった。
 なるほどなー。
 勉強になりました。
 実際、ボーイズで有名な作家さんもいろいろ描いてたし。ノウハウがここまで同じじゃ、当然か。

 ボーイズも少女マンガも、根っこは同じだからねえ。

 そしてそんな雑誌の中で、オレンジのマンガはひとりだけ「ギャグ」で「エロなし」でした(笑)。

 
 ぼちぼちと『仮面ライダー龍騎』のテレビデータの整理をしている。
 CMをカットして、10本くらいまとめてDVD1枚に焼こう。
 萩野崇目当てだったので、彼が登場したあとしかデータは残っていない。彼が出ていない回も残っていない。

 それにしてもこの物語ってさあ、真司と蓮が「出会って恋に落ちる」っつー、それだけのための物語だったんだねええ。
 あのものすげえ最終回見て、あまりの「運命」っぷりに顎が落ちたもんなあ。1年掛けて、いっぱいつらい目に遭って、悩んで泣いて、それで君らが手に入れたことっつーと、ソレかいっ?!
 運命の恋ですか……いやー、おばさん、赤面しちゃいましたわ。

 同人界のことはよく知らないので、なにが流行っているのか、どーゆー解釈がポピュラーなのかは、まったく知りませんがな。

 あのカップル自由自在の世界の中で、いちばん好みだったのは、スーパー弁護士と秘書のカップルですから。しかも弁護士×秘書という茨道。
 一見ラヴラヴでいながら、秘書がかなり片想いハートなのがツボなのよ……それってケロゆーひにも通じる……ゲフンゲフン。

 なんか最近、人生やり直したい、とか思います。
 煮詰まってますなあ。

 

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