「今日のデザートはソレよ」
 と、母は言う。

 ソレって……かしわ餅、ですかい。

 緑野家の夕食には、デザートが必須アイテム。必ず出る。
 主に季節のフルーツ。あとはプリン、ヨーグルト、ゼリーなどの「つるっと」系。
 夏にはわらび餅が出ることも多い。
 たまにケーキや和菓子も出る。

 しかし。

 かしわ餅、てのはどうよ?

「なんでかしわ餅がいけないの? 端午の節句よ?」
「端午の節句はいい。問題は、“デザート”ってことだ」
「4月はさくら餅や三色団子も出したじゃない」
「さくら餅や三色団子との大きなちがいを、何故理解しないんだ?」
 ママにいくら言っても無駄だ。わかってはいるが。

 ふつー、かしわ餅ってのは「デザート」には適さない。
 なんでかってそりゃ、「ヘヴィ」だからだ。

 さくら餅や三色団子は、「小さい」のよ。1個とか1串食べるぶんには、まだかろうじてセーフ。
 だがな、かしわ餅ってのは、めちゃ腹持ちいいんだよ。ヘヴィな食べ物なんだよ。
 しかも出されたかしわ餅、めちゃでかいんですが。

「ふつーにごはん食べたあとで、かしわ餅なんか入らないってば!」

「あたし、夕方にかしわ餅1個食べたんだけど、そりゃーもー、腹持ち良くてねえ。晩ごはんの量を減らしちゃったわ」
 と、母はころころ笑って言う。
 わかってるなら、ふつーの量を食べたあとに出すんじゃねええ。

 それでも、食べました。
 とりあえず、1個。
 ……げっぷ……。

 1個をちまちま食べるわたしの横で、「デザートに出すもんじゃないよな」と言いながらも、弟は2個ぺろりと食ってました。……甘党め……。

          ☆

 某オークションで、終了時刻寸前の戦いを手に汗握って観戦しました。
 自動延長につぐ自動延長。
 リロードするたびに上がっていく金額。
 どきどき。
 戦っているのは2人。
 わたしは片方の人を応援していました。
 がんばれ、**さん。負けるな**さん。ぜんぜん知らない人だけど、がんばれー。
 あっ、ライバルさんがまた高値更新しちゃったよ、**さんどうするの? 敗北を認めるの? 1分前、キター!! **さん高値更新!!

 何故、知らない人の戦いを応援していたか。

 そのオークションにかけられているのは、今公演中のとあるチケットで、「数量3」出品だったのです。
 **さんは「2枚希望」。
 ライバルさんは「3枚希望」。

 そしてわたしは、「1枚希望」でエントリーしておりました。

 ライバルさんが勝った場合、チケットは3枚ともライバルさんが落札。
 しかし、**さんが勝った場合、3枚あるチケットのうち2枚が**さんの落札となり、残り1枚は、「1枚希望」であるわたしが落札することになっちゃうのです。
 ライバルさんは、なにがなんでも「3枚」欲しい人で、他の枚数ならいらない人なんです。

 わたしは早々に「この席にこれ以上の値段は出せないわ」と脱落していたんですが。
 2枚希望の**さんが最高金額入札者になるたびに、唯一1枚希望でエントリーしているわたしも、**さんの隣に名前が並んじゃうのです。
 あの、わたし、めっちゃささやかな値段しか入れてないんですけど。

 **さんとライバルさんの戦いはつづく。
 ふたりでどんどん金額を上げていく。

 そして、**さんの横にはいつも、彼らより何割か少ない金額のわたしが、ちょこん、とおまけのようにくっついている。
 そう。
 わたし個人の値段ならば、お話にもならない額。
 だけど**さんが勝利すれば、そのお話にもならない金額で、落札できちゃうのよお客さん!

 がんばれ**さん!! ライバルさんに勝ってくれ。そしてわたしにこの定価以下価格でチケットを落札させてくれえ。

 手に汗握る30分。
 ……ええ、30分も延長しました。

 勝者、**さん!!
 拍手拍手、パフパプ〜〜!!

 見知らぬ**さんのおかげで、わたしは愉快な金額で、もう一度『ドン・ファン』を観に行けます。

 オークション・マジック。落札のエアポケット。
 連番席なのに、わたしは**さんよりずっと少ない金額で落札。負けたライバルさんの方が、わたしよりずっと高い金額で入札している。

 実際WHITEちゃんが先日、同じ目にあったと聞いていた。彼女は明日からはじまる某公演のチケットを、2枚落札者の人の半額くらいの値段で1枚落札したそうな。
 3連番出品で、「複数購入者優先」と謳っていないオークションは、エアポケット出現率高し。

 つーことで、たのしい30分でした。
 そして、また月組を観に行くことが決定しました。

 

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