前日の日記の、この世に駄作は限りなくあるけれど、の例のところに、肝心要なものが抜けていました。
 『春ふたたび』。

 ストーリーはあるけれど、主役の設定はまちがっているし、見た目にも美しくないので駄作ランクの最高峰に位置する1作です。
 いや、他の駄作たちも甲乙付けがたいんだけどね。あっ、『皇帝』とかゆーのもあったな。『国境のない地図』とかゆーのもあったか。『紫禁城の落日』とか。考えてたらいくらでも思い出しそうだ。……思い出したくもないのに。

          ☆

 さて、星組全国ツアーの話のつづき。
 芝居は語るだけ精神衛生上悪いので、ショーの話。
 何回焼き直ししたら気が済むんだ? そんなにコレ名作か??と、作者を(笑顔で胸ぐら掴んで)問い詰めたい気持ちが満々だったりする、『サザンクロス・レビュー3』。

 痛烈に思ったことは。

「ケロに歌手をさせんぢゃねえ(怒)」

 
 そりゃわたしはケロファンだ。ケロがいるからこそ、はるばる名古屋くんだりまで行ったさ。ケロが2番手だー、と浮かれていたさ。
 しかしな。
 ファンでも知ってるんだよ、ケロちゃんの歌は、そのー、なんだ、かなり不自由だってことはな。

 その昔。
 雪組『エリザベート』の新人公演でのことだ。
 わたしはそりゃー、はらはらしながら見守ったさ。歌がアレなケロちゃんが難役フランツ・ヨーゼフをやるっつーんで。
 たまたまチケ取りのとき前後に並んでいたおばさまが同じくケロファンで、ふたりで盛り上がって観劇したさ。
 ケロ演じるフランツ・ヨーゼフはそりゃー「いい人」で、そのあたたかい演技に感動し、手に汗握っていた歌も、演技の一環として聴くとなかなか味があったてよかったのだわ。
 だからわたしは「やったわ江上さん、素敵!!」と瞳をきらきらさせておりましたよ。当時はわたし、ケロちゃんのことを「江上さん」って呼んでたからな。
 隣の席のおばさまと、感動を分かち合おうとしたら、彼女はすっぱり言ったさ。

「汐美真帆ちゃん、歌下手だし、声が変だからファンやめるわ。これから未来優希ちゃんのファンになる!!」

 ちゅどーーーん。
 わたしは一撃で吹っ飛びましたさ。
 そ、そうか……。下手か……変か……。そうだよな、その通りだよな。言い返せないよ、ママン。
 それまで好意を持っていた人さえ見放してしまうよーな歌声。
 それがケロだということは、よーっくわかっている。

 ヅカのおそろしいところは、下にはいくらでも下がいて、相対的に見るとケロはべつに「すごく下手っぴ」とまではいかないことなんだがな。しかし、「決してうまくない」し、まかりまちがっても、「歌手なんぞをしてはイカン」のだ!!

 つーことで、あちこちつらかったわ、『サザクロ3』。

 わたしはファンだから、ケロちゃんの声を聴けるだけでうれしいので、歌ってくれるのは歓迎だ。
 ショーの一部分、踊りながらとかならな。
 しかしな。

 踊るトップコンビの横でひとりで歌う、ちゅーのはどうよ?
 それって「歌手」の役目だよね?
 月組で言えばきりやんとかちずさんの役目だよね?

 つ、つらい……愛があってもつらいわ、その歌……。

 歌の得意な下級生抜擢すればいいのに。
 これほどまでにケロちゃんの歌を下手だと思ったのははじめてのことよ。
 ……まあ、エトワールが檀ちゃんなんだから、ケロが歌手でもぜんぜんOKか。不思議な組になったな、星組。

 ケロを中心に観ていたので、ケロの印象ばかりっす。
 だってケロちゃん、たのしそーなんだもん……。
 そうだよね、ショーってのはそういうもんだよね。
 ショーと芝居通して1度しか笑わない(芝居の最後、1回きり!)どっかの誰かさんになんか言ってやってくれよ。ふてくされたよーな顔で扇振り回してるクールビューチーの彼だよ。
 大劇場で笑わない男ばかり見ているせいか、ケロちゃんの全開の笑顔がまぶしくてまぶしくて。
 ケロちゃんのたのしそーな顔を見ていると、こちらもほっこり癒されますわ……。

 しかし。

 ワタ×ケロ萌えなわたしとしては、黒燕尾でワタルくんとエロエロに絡むシーンは今回のいちばんの期待だったのだよ。
 CANちゃん曰く。
「ケロちゃんがワタルを腕の中で“転がして”たよ。見た瞬間、ああ緑野の好きそーなシーンだ、と思ったわ」
 転がしてた? く、黒燕尾でですかっ。
 わくわくっ。

 ええ、CANちゃんがスカステで見た通りの、わたし向けなシーンがありました。
 トップと2番手の男同士のエロダンスです。
 双方端正な黒燕尾に身を包み、ふたりっきりでライトをあびて絡んで踊るのです。
 知っての通りワタルはガタイが良すぎて、そしてケロは小さすぎて、ワタルの後ろにケロが立つと、完全に隠れてしまいます……(笑)。
 どーやらケロが攻のよーです。腕の中にワタルを抱いて、くるくる相手役として回してます。転がしてます。
 いいなあ、野郎臭い男役ふたりで。

 問題は、ケロの「表情」です。

 ケロちゃん……なんであんた、そんなにうれしそーなの……。

 耽美なのよっ?! イケない、アヴないシーンなのよっ?! エロエロなのよっ?!
 なのになんであんたそう、うれしそーに笑ってんのよーっ。

「うれしいからじゃない?」
 と、CANちゃんはめーっちゃ素で答えてくれました。
 ……うん。
 うれしいんだと思う、わたしも。
 ワタルくんとエロエロに絡めて、うれしいのよね? つーかそもそも、舞台に立つことがうれしくて仕方ないのよね? わかるよ。わかるけど。
 いちおー、ワタルっちと絡むところはマジな顔してるんだけど、離れて踊るときはまた全開で笑ってたり、うれしそーに口角が上がってるのよねえ。

 黒燕尾くらい、歯を見せずに着ろ。

 いや、そーゆーとこも好きだけどな(笑)。

 
 ワタルくんは堂々たるトップぶりでした。
 今の路線を崩さずに、いい男でいてくれ。男臭い男でいてくれ。いつまでも大漁旗とふんどしの似合う男でいてくれ。

 檀ちゃんもきれーでした。歌はありゃありゃだけど、声質がいいからまだヨシ。
 でも黒塗りよりも、ふつーに美女を見たかったなあ。

 おどろいたのは、すずみんが完全3番手だったこと。
 ……そっか、ねったんもかよちゃんもいないんだもんな。まとぶんが日生だからって、すずみんがいきなり3番手だよ。センターでがしがし踊ってるよ。
 すっげー違和感……。
 つーか、すずみんだけでなく、他のキャスティングにもいちいち驚かされた。
 組長、あなたなんでそんな位置で踊ってんですか? んでもって、そのものすげー拍手はなんなんですか? 観客がカンチガイするよーなポジションにいるのはどうかと思いますが……。
 高央りおにもおどろいた。「スター!!」って感じに登場するから、目を疑ったよ。

 人、いないんかい、星組……と、マジで思いました。ごめんね、古くからの星ファンの方々。

 でもそれくらいなら、れおんくんの露出を増やして欲しかったわ。
 あと、嶺恵斗くん! ショーでのめっけもんは彼だー。

 
 名古屋市民会館は、とてつもないホールでした。
 客席、4階まであるんだもん。
 うれしがって4階まで上がってみたんだけど(エスカレータもなし! 古いエレベータが1機のみ)、1階席の人々が蟻のようでした。高いわ……。
 高所恐怖症の人は使えない座席だわよ。
 1階もやたら広くて、30列以上ある。すげえ。
 1階後方席は段になっているのだけど、前方席ほど傾斜がゆるやか。なので、わりに前の方にいたわたしたちは、前の人の頭が微妙に視界を遮ってくれました。

 
 ここは星組。今観ているのは星組。
 わかっているけど、なんか変な感じ。

 真ん中にいるのがワタルだし。横にいるのが檀ちゃんだし。
 なにより、ケロがいるし。

 そして……。

 ケロの周囲に、「スタイルの悪いゆーひ」と「スタイルのいいきりやん」がいるしさ。

 なんか、不思議だ……。


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