「もし、さいとーくんと話す機会があったら、『ガンダムで好きなキャラは誰?』って聞いてみたい」

 と、言ったら、kineさんにウケた。

 『ガンダム』はヲタクの共通言語。とりあえず話題にしておけば、沈黙が流れることはないっつーくらいな。

 そして、「あなたが誰かはあなたがなにを愛するかでわかる♪」(ポルキア@暁のローマ)というよーに、『ガンダム』のどのキャラを好きかで、その人の性格が見えてきたりもする。
 kineさん、腐女子ぢゃないだけで、ヲタク度はわたしと同じくらい深く歴史を重ねているから、この会話がなんの解説もナシで成立する。

「さいとーくんだったら、クワトロって言いそうな気がする……」

 と言ったらさらに、「シャアじゃなくてクワトロですか!!」とkineさんはウケてくれた。

 うん。
 あくまでイメージだけど。
 シャアではなく、クワトロ。

 ……そして、オトコでクワトロファンって、微妙だと思う。や、いろいろと。
 女でクワトロファンならまちがいなく腐女子ですがな(にやり)。

 あ、わたしはブライトファンです、ファーストのころから一貫して。子どものころから地味な脇役が好きだった……。

 さて。

 そのさいとーくんの新作、雪組『Young Bloods!! −魔夏の吹雪−』を観に行った。千秋楽の日の午前公演。

 そして、思った。

 お願いです、世の良識ある人々。

 オタクというものは、非常識で悪趣味で善悪の区別がつかない変態ばかり、だと思わないでください。
 オタクの中にも常識ない人はいますが、全部がそうではありません。一般人の中にも常識のない人がいる、それと同じです。
 オタクだからといって、常識ない人ばかりじゃないんです!!

 同じヲタクとして、声を大にして訴えたい。

 雪組『ヤンブラ』を観て、オタクというものに憤りや嫌悪感を持った人、世の中のオタク全部がさいとーくんみたいぢゃないんです! 信じてください!!

 いやー……。

 すごかったよ、雪『ヤンブラ』。

 芝居を見終わったあと、真剣に、思った。

 齋藤吉正は、もうダメかもしれない。

 わたしは、さいとーくんのヲタクっぷりを支持していたひとりだ。相当アレだと思いつつも、ヲタクならではのおもしろいものを作るクリエイターだったからだ。
 しかし。
 やっていいことと、悪いことがあるだろう?
 こだまっちが「盗作」と「インスパイア」の区別がついていないのと、同じやばさだ。

「雪『ヤンブラ』ってどうだったの?」
「えーと、野球萌えと軍服萌え、それと兄弟萌えで兄受萌え、ついでに兄弟心中萌え話だったよ」
「……えー、それは、いったいどういう……?」
「舞台は、太平洋戦争と、東京裁判」
「ええっ?!」


 「萌え」部分の説明と、「舞台」部分がつながらなさすぎて、聞いた人が混乱していたぞ。

 さいとーくんが常識ない人だってことは、わかっていたつもりだったが……まさか、ここまでだったとは。

 さいとーくんにとって、「宮本武蔵」と「太平洋戦争」は、同じくらいファンタジーなんだな。
 武蔵ならね、もうナニをどうしたってかまわないよ。ファンタジーとしてアリさ。しかし、太平洋戦争と極東国際軍事裁判はファンタジーぢゃないだろ。現実と陸続きだろ。
 数年前、小林公平が「9・11」をネタにショーを作って実に賛否両論、後味の悪いことになった。フィクションなんだからなにをしたってかまわないが、最低限「やってはいけないこと」、それでもやるなら、「細心の注意を払わなければならないこと」が存在する。
 小林公平は単なる浅慮と売名目的で同時多発テロをネタにしたと、わたしは思った。ホットなネタだからいただき!程度の。それも大概だと思ったが。
 さいとーくんてば、それすらない。
 彼にとっては取り扱い注意のデリケートな問題すら、「萌え〜〜」のネタでしかないんだ。

 なにも考えてないだろ。
 「軍服萌え〜」だから、太平洋戦争なんだろ? 「兄弟萌え〜」だから、東京裁判なんだろ?

 そんなもんは、趣味でだけやっておけ。常識があるなら、仕事でやるな。

 いやはや。
 ほんっとーに、脱力したというか、とほほというか。

 なにがよくて、なにがいけないか。
 これはバランス感覚なのかなあ?
 こだまっちだって絶対、「何故『月夜歌聲』が盗作でアウト、『龍星』がセーフ」なのか、根本からわかってないよね?

 実在の国へのあてこすりを盛大にしていた『スサノオ』や、実在の宗教をネタにしていた『炎にくちづけを』がOKで、どうして『ON THE 5th』や『魔夏の吹雪』がダメなのか。
 さいとーくんは、わかっていないんじゃないかと思う。

 その事実に、震撼する。

 たのむよ……オタクの看板背負ってそーゆー非常識ぶりをさらされると、オタク全部が非常識だと疑われかねないよお。ただでさえ日陰の身なのに。

 もちろん、どれほど常識を欠いていても、太平洋戦争・二世問題・東京裁判を扱ったこの『魔夏の吹雪』が追従を許さないほどの名作なら、もうアリだと思う。
 良識派の文句を押さえ込んで、「芸術ですから!」とか「エンタメですから!」とか言い抜けることは可能だと思う。

 だが、現実は。

 目眩がするほど、稚拙で陳腐。

 素人が「萌え〜萌え〜」と言いながら描いた同人誌みたいだ。
 それも二次創作系の。
 ジャンプに載ってる人気マンガのキャラを使って、太平洋戦争と東京裁判やりましたー。軍服萌えで兄弟萌えです〜〜。
 ストーリーも時代考証もテーマもなにもかもめちゃくちゃだけど、ジャンプの人気マンガのファンは買ってね♪ **くんが軍服着てるんだよぉ、かっこいいよぉ。
 ……ジャンプマンガのファン以外はまず、買わないし、見向きもしない。キミの同人誌が好きなんでも読みたいんでもなく、ただキミが勝手に使ったジャンプマンガを好きだから読むんだ。

 パロ系同人なんてそんなもんだけど、同人誌だからそれはいい。(著作権問題は今は置く)
 さいとーくんが同人誌でやってるなら、なにも言わないさ。わたしはさいとー作品好きだから、コミケまでいそいそ買いに行くだろうよ。

 ただ。
 商業誌でやっていいことぢゃないだろ。

 某ジャンプマンガのパロディからスタートしたのに、オリジナルマンガとしての立場を確立した作品だってある。
 シビアな世界だからこそ、作品にほんとーの「力」があれば、「常識」を覆すことは可能なんだ。

 『魔夏の吹雪』の問題点はソレ。

 ひとつ。
 「やっていいこと」と「わるいこと」の判断をして描く。
 「フィクション」「ファンタジー」で言い訳が聞かない事柄だって世の中にはいくらでもある。

 ふたつめ。
 それでもあえて、「常識で考えて『フィクションだから』『所詮タカラヅカだから』で言い訳できないくらいやばい題材」を使って創作したいというなら、誰が観ても口を出せないほどの高クオリティを叩き出す。

 ……それができないなら、最初からやるな。

 
 や、ほんとのとこ。
 なにより嫌なのは、さいとーくんがほんと、なにも考えていないんだろうなってことですよ。
 ここまで常識的にも作品的にも酷いものを作ったのに、本人はきっと、なんの危機感もないんだろうなってこと。
 『青春花模様』と『魔夏の吹雪』と、なんの意識の差もなく作っているんだろうなってこと。

 人間としてやばいよ、ソレ……。

 
 まあどのみち。

 悪のりして作った、ギャグテイストでの本気作品『青春花模様』があのレベルで、シリアス作品として本気で作った『魔夏の吹雪』がコレだもん、作家としても、終わってるだろうから、もうなにか言うだけ無駄なのかもしれん。

 
 これからどうなるのかなあ、齋藤吉正。
 すべてが終わっているわけではないので、なんとか人間になってほしい。今のままじゃ、ただのドーブツだよ。


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