『Young Bloods!! −魔夏の吹雪−』においてさいとーくんは、タカラヅカがやってはいけないものをいろいろと例をあげて教えてくれた。その点、石田昌也と同じだな(チャーリーファンの友人は、未だに「ライト兄弟最悪!」と恨んでるぞ。なんでそんなもんをヅカでやる必要があったんだ?)。

 デリケートな問題、とか一般常識の話ではなく、「タカラヅカ」としての「ビジュアル」の話。

 太平洋戦争とその時代。……ヅカでやるにはあまりにも、美しくない。モンペと坊主頭の時代だよ……。江戸時代の青天以上にひどいな。明治の散切りとどっちがマシだろう……明治の方が女性が華やかだから、そっちのがマシか……。
 日本兵せしるの「長髪」(坊主頭以外は長髪、しかも前髪アリ)が違和感ありまくり。

 野球。……野球のユニフォームって、問答無用でかっこわるいよね……古くさいよね……。ジェンヌが着て痛々しいもののトップ5に入りそうな勢いで無惨な姿をさらしてくれた。かなめとせしるが気の毒っす。

 終戦後の描き方も、オシャレにまとめあげるセンスを持たない人がやると、ものすごーくダサい昭和歌謡な世界になる……。
 レトロ、という魔法のフィルタをかけないと、とんでもなくアレな世界になるんだなぁ。いやその、外部の演歌歌手主演の芝居なら、それでいいんだけど。観客の平均年齢と求めているものに合わせてさ。でもヅカではなー……きっついなー。

 「タカラヅカでコレはないだろ」をしこたま詰め込んで、萌えでコーティングしたトンデモ芝居。
 とにかくみんな、話に詰まると死んでいく素敵展開。

 でもってさいとーくん、W主演でないと、話を描けなくなっている?
 さいとーくんの萌えは「男同士の愛憎」(女は飾り)だから、愛し合い憎み合う男ふたりが同等でないと成り立たないのね。
 かなめとせしる、W主演だよねコレ?
 てゆーか、せしる主役でかなめは狂言回し?
 さいとーくんいつも、受を主役に物語を回すよね?
 それは正しいんだけどね。観客が女性だから、受視点で描くのは。BLでも受視点が基本だし。でもさいとーくん、オトコだもんな、たぶん。オトコでニュートラルが受視点ってすげえ。

 女が飾りだとか言い訳だとか、実体を持たない聖女だったり母親だったりするのは、さいとー作品の常だが。
 それにしても今回、女の子の扱い、ひどすぎるだろ。

 ヒロイン小百合@さゆちゃん、見事に人格ナシ。
 「ヒロイン」と書いたお面つけて突っ立ってるだけのお人形。ありえないパーソナリティ。

 なにもかもにアゴが落ち続けたが、小百合の死にっぷりと、かなめの後追い心中にはマジでアゴが落ちた。
 死ぬ必要はまったくないふたりだが、萌えのためには、死ぬしかなかったのだ。女は邪魔だから無理矢理殺して、後腐れなく兄弟心中GOGO!

 そらくんがあまりにたのしそうに演じている、「ヲイヲイ、いくらなんでもコレはないだろ」米兵とか、書き割りみたいな「お約束」キャラだけでできあがった戦後日本とか、展開のトンデモぶりにセンスの悪さを加えて大暴走!!

 こんなにヤバイ題材を使っていなかったら、わたしはきっと腹を抱えて笑っていたと思うよ。トンデモすぎておもしろい!って。
「ソコで死ぬのかよヲイ!」とか、「心中キターーーーッ!!」とか。
 笑えなかったけどね、今回は。あきれたっちゅーか、途方に暮れた。

「こまった……」
「こまったね」
「どうしよう、コレ」
「どうしよう」
「雪組、大変だ……」
「かなめくん、大変……」

 芝居の幕が下りるなり、わたしとnanakoさんは途方に暮れてそんな会話をしたさ(笑)。

 がんばれ雪組。
 それでもとりあえずは熱演だ。

 キャストが熱演しているだけで、そしてどんな脚本でも人が死ぬだけで、泣く人は泣くから、えーっととにかく、がんばれ。

 にしても。

 圧倒的熱量を放っているのは、せしるだよねえ?

 かなめくんの「壮一帆化」はどこまで進行するんだろう。それが、心から心配だ。


コメント

日記内を検索