さて、星組ショー『ネオ・ダンディズム!』

 えーっと、とりあえず。

 つかみはOK。

 オープニングは秀逸。かっこいー。
 大階段を埋め尽くすように並んだ、チャイナスーツの男たち。彼らを従えてひとりずつ登場する色ちがい柄ちがいチャイナスーツのワタさん、トウコ、となみちゃん。ポスターの衣装ですな。ものすげーハッタリ具合。
 3人とも、とことんかっこいー。
 うさんくさいまでの色悪っぷりが似合う似合う。ワタさんやトウコは男だからいいよ、女の子のとなみちゃんまで負けてないんだからすげーよ。

 このすばらしーオープニングにわくわくしたあと。

 どーんっ、と落とされる(笑)。

 なんぢゃこりゃあ(笑)。
 大階段を片づける間の時間稼ぎに、ひとり登場したトウコちゃん。古い古い時代(昭和とかな)の王子様ルックに身を包み、自慢の滑舌で歯切れ良くもうさんくさく、「ダンディズムとはなにか」を語る。

 興ざめ。

 わくわくした、ときめいた気持ちが、みるみるうちにしぼんでいく。
 ダサ……。
 かっこわる……。
 うざ……。

 トウコちゃんのせいじゃない。むしろトウコだからこの程度ですんでいる。もっと「スター力」だとか「ハッタリ力」の少ない人がやっていたら、さらにさらに悲惨なことになっていただろう。

 またこれが長いんだわ……。まだ語るの? と、ほとほとうんざりしたところで、よーやく幕が上がる。

 で、幕が開いて。

 超絶ダサい主題歌だらだらスタート!!

 盆にひしめいたドレスの娘役たちが「ダンディ〜ダンディ〜」とカラダを揺らすだけのみょーな踊りを踊り、昭和の香り漂う古い古い王子様ルックのワタさんが中央で「ダンディ〜」と歌う。

 う・わー。
 なんぢゃこりゃあ。
 椅子からずり落ちそうになった(笑)。

 キムシンの「すごつよ」にも「カエサルはえーらいー」にもおののかなかったこのわたし(笑)が、言葉のひどさにひっくり返った。

 えー、タイトルが「ダンディズム」なわけよ。
 で、タイトルまんまに、「ダンディとはなにか」を表現するのがテーマなわけよ。
 で、やっていることが。

 「言葉でダンディとはナニかを語る」という、ダンディとは対極のかっこわるさ!
 しかも、その言葉が美しかったりかっこよかったりすりゃいいが、ダンディとは対極のセンスのなさ!

「ぼうや、道ばたにゴミを捨てはいけませんよ」と教える母親が、そう言いながら噛んでいたチューインガムを道ばたに吐き捨てるよーな行為。
 お前が言うなーっ! 説得力のカケラもねーっ! てゆーか逆効果だっつーのっ!

 次々登場する、昭和スターたち。
 女の子のとなみはまだマシだけど、しい・すずみん・れおんもそりゃー素敵に悪趣味。
 なんなんだこのシーン。
 最悪な主題歌とビジュアルとダンスのダサさがコンボを決めて、素晴らしい破壊力。

 かえってツボに入り、笑ってしまう。

 星男たちの、昭和スターぶりがまた素敵でね。
 ワタさん、トウコ、しいちゃん、すずみん、れおんと5人がそれぞれ、王子様ルックをキメていて、そのダサ……いやその、タカラヅカらしい似合いっぷりが素晴らしいの。みんな個性出てるわ。
 個人的にはすずみんのストレートロン毛が好き。すずみんってこーゆー、時代錯誤なセンスの王子様、似合うわー。

 ここで充分ドン引きしていたのに、追い打ちを掛けるように、ダサシーンが続く。

 シルクハットのヒゲ紳士たちが銀橋に登場、またしても「ダンディとはナニか」を口で説明する。

 3連発。
 3シーン続けて、言葉で「ダンディとはナニか」を語り続けるの。
 ショーなのよ。
 芝居ぢゃないのよ?
 なのに、「口で」言い続けるの。ダンスや演出で見せるのではなく、言葉で。

 キムシンもビックリだ。なんなの、このアタマの悪さ。

 そしてまた、ここで「歌詞」としてあげられる「ダンディの化身」である男たちも、「あー、そうね、昭和時代はそれがかっこよかったのね」って感じの「前時代的」な人選。
 価値観が多様化している今、そんなふうに「これがダンディ」と決めつけて、現代の若者が知りもしないだろう名前をありがたがって連呼する行為自体、かっこわるい。

 若手男役にわざとらしいヒゲをつけさせ、滑稽にしょーもない歌を歌わせることのどこが「ダンディ」なのか。

 ……まあ、その「ダンディの化身」とされる男たちの中に湖月わたるが入ってなくてよかった。
 いやあ、びくびくしたよ、植爺たち年寄りが大好きな内輪受けってやつを、ここでやられたらどうしようって!!

 たしか、初演の『ダンディズム』では、同じよーな運びのシーンで、ハリウッド俳優だのなんだのと並べて、「真矢みき」の名前も出てたからな。
 しかもわざわざ肖像画付きで。
 音楽室のベートーヴェンだのバッハだののノリの絵の中に、真矢みき。親父ども並べて、真矢みき。

 ……よかった。
 初演まんまぢゃなくて。
 あのノリで写真付きで、ワタさんが出なくてよかった。

 この3連発がすごくてねえええ。

 オープニングがすばらしかっただけに、一気に萎えてしまって、ドン引きしてしまって、戻ってくるのに大変だった(笑)。

 この3シーンさえ「なかったこと」にしてしまえば、あとはたのしいショーですよ。

 アルゼンチンタンゴは粋にたのしく、中詰めのキャリオカはタカラヅカらしい華やかさで。
 しい&すずみの客席降りもわくわくする。いやあ、前方通路際席欲しいわ〜〜。すずみんのウインク率の高さも堪能(笑)。

 そして、後半の目玉、謝振付のシーン。これも解説台詞がうざいんだけど、そんなことは忘れさせるくらいにドラマティックで美しい。
 トウコの熱唱、ワタさんを中心にした星組メンバーたちのダンス。うおお、かっこいー!!
 人数は多いわ、みんながみんなかっこいいわで、どこを見ていいか迷う。あかしかっこいー!(そこか!) ざんばら髪のウメちゃんかっこいー!(そこか!)

 オープニングの大階段シーンと、このポラリスのシーンだけで、このショーはすべてを許せる。
 ダサさにドン引きもしたし、腹を立てたりそれすら超えて笑えたりもしたけれど、それもどーでもいー。
 大好きなシーンがあれば、それだけのために通えるのがショーの醍醐味だ。

 ロケットの謎の人選にクラクラしつつ(ウメはいいんだ、問題は他のふたりだ。……何故あんなにしぶい人選?・笑)、さらに、赤いミニワンピでかわいらしくロケットガールを務める水夏希にクラクラしつつ。
 大階段から銀橋という破格の扱いでトウコのソロがまるまる1曲、退団者のソロパート有りコーラス付きで披露されることにびびり、ワタさんととなみの力技リフトにびびりきる。……こ、こわかったんですけど、初日。落とすかと思ったよ……ワタさん、力技で持ちこたえてたけど。
 コロちゃんエトワールにもびっくりする。おお、そうきたかー。がんばれー。

 で。
 初日だっつーに花組千秋楽よりはるかにアツい盛り上がりっぷりに、星組クオリティを実感する(笑)。
 いやあ、いいよなあ星組。無駄にアツくて。お祭り上等で。

 これが、ワタさんの退団公演か。

 よかった。
 これなら、通える。
 芝居は素敵だし、ショーも及第点。
 退団公演が好みの作品と好みの役だなんて、タカラヅカにおいては奇跡のような幸運だもの。(『NEVER SAY GOODBYE』とジョルジュが相当つらかったらしい)

 ワタさんをきちんと、見送れるよ。
 それが、うれしい。
 星組万歳。

 
 ……はっ。今気づいた。わたし、花楽の感想、書いてないよねええ?
 なにやってんだー、自称花担!


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