なんだかんだ言っても、終わってしまうのが寂しかった。

 わたしが求めているものとはチガウけれど、それでも好きだったんだ『ファントム』
 再演に耐えられるレベルの脚本でも演出でもないこの作品を、力尽くで「感動」まで押し上げたキャストに拍手。

 花組公演千秋楽の話を書いていないことに、今ごろ気づいた。もー、他のことでいっぱいいっぱいだからなあ。
 千秋楽だからといって、アドリブはとくにナシ。アラン・ショレ@はっちさんが、カルロッタ@タキさんのことを、「春のようだね」からはじまってエスカレートし、「春のすみれだ!!」と叫んだことぐらい。

 あとわたしは、最初のパリのシーンで3兄弟をガン見していた(いつものことですが)ので、まっつのビスコの行方に涙したぐらいのもんですね、アドリブ?としては。

 千秋楽だからといって、「いちばんクオリティの高い演技」になるとは限らない。とくに寿美礼サマのよーな気まぐれな人は(笑)。『マラケシュ』のときも、『パレルモ』のときも、楽とは関係ないふつーの日に「こっ、これはっ!」てなものすごい密度の演技をしてくれたなー。
 だから、クオリティとかゆーんじゃなく、思い入れの問題で、「千秋楽」はあるんだよな。もちろん、この公演で卒業する人を見送るという意味でも。組替えしてしまう人を見送るという意味でも。

 東宝楽を観ることの出来ないわたしにとって、『ファントム』楽と言えば、この日だけだ。や、チケット取れないもん、東宝なんて。
 だから、組替えするふたりの挨拶があったのが、とてもうれしかった。

 てゆーか、そのか。

 舞台であれほどオトコマエなのに。目ヂカラぎんぎんで踊っている色男なのに。
 いざ挨拶となると、ヘタレ全開!
 なんなの、そのうわずった女の子声。直立不動なのに挙動不審な目線。言ってることもたどたどしいわで、とても大人の挨拶だとは思えない。
 あああもー、かわいいっ!!(笑)

 そのあとのゆみこの挨拶が「あー、ふつーに大人の挨拶だー」と思えましたよ。
 花組に組替えして8年、それからまた雪組に戻るんだね。
 雪組時代のキラキラした若手スターだったころを、ついこの間のことのよーに、思い出すよ。そーか、あれから8年も経つのか……。雪にいたころは派手だったのに、花に行くとすげー地味に見えて、雪ファンとしては微妙な気持ちになったのもまたいい思い出さ……。
 雪に戻れば、相対的に派手に……見える……かな?

 組替えはさみしい。
 そのまつ大好き、オサゆみ大好きなのに、もう並びで観られないなんてさみしーよー。

 だけど「タカラヅカ」を好きだから、変わらずに彼らを好きだから、これからも見守っていくんだ。

 雪組からの組替え、といえば退団者の橘梨矢くん。わたしが雪組しかちゃんと観ていなかったころの雪っ子だから、花に組替えしたあとも彼のことはあたりまえに目の端に止めていた。顔、濃いし(笑)。モブにいても目立つって。
 思い出の博多座『パッサージュ』で、キムの役をやっていたのが忘れられないなぁ……。キムとはチガウ毒、チガウ角度の鋭さを感じさせてくれたっけ。
 タイガースファンだとは知らなかったがな……ははは。

 花担になって日が浅いので、もうひとりの退団者紫万新くんのことはよく知らないのだけど、よい挨拶だった。まっすぐに話す人だなあ。

 
 えーと。
 わたしは基本的にムラしか行かないので、東宝のことは知りません。
 わたしが知っているのは、ムラ楽ONLY。

 で。
 今回の『ファントム』楽と、前回の『パレルモ』楽と、前々回の『マラケシュ』楽を比べて……やはり、愕然とするのですよ。

 『マラケシュ』楽は、そりゃーもー、盛り上がりましたとも!
 舞台も客席もアツい!!
 鳴りやまない拍手、カテコだ、スタオベだ、と大騒ぎ。や、星組には到底かないませんが、当時まだ星担だったわたしが違和感を持たないくらいにはアツかったのですよ。
 なにしろ、樹里ちゃんサヨナラショーがありましたからね。樹里×オサによる『ファントム』再現。響き渡るすばらしー歌声。
 エンターティナー樹里ちゃんはみんなに愛され、割れんばかりの拍手で見送られていました。

 その記憶があるだけに。
 とまどってびっくりして、ついにはおびえて、日記にはなにも書けなかった『パレルモ』千秋楽。
 いやあ、わたしの花担デビュー公演だったから、「は、花組っていつもこうなのっ?!」って、びびったなー(笑)。
 いつも……というか、わたしの知る限り「乾いた」印象のある客層だったけど。星の汗くさい高温に慣れていたので、「えっ、こんなにさばさばした空気なのに、それでもスタオベってするの?」とおどろいたりしてたよな。
 だから乾いているのはべつにかまわないんだけど……『パレルモ』のときは乾くを通り越して、凍ってた……。
 あの空気。
 拍手の少なさと、まるで打ち合わせでもしていたかのよーな、少なすぎる、儀礼的なカーテンコール。
 前回の楽をおぼえている身としては、「さあ、これからまだまだカテコが続くのよねっ」と身構えていたのに、ぴたりと拍手が止み、みんな一斉に席を立って帰りはじめる、あのタイミングに置いてけぼりにされた。
 一緒に観ていたハイディさんと、おびえたなあ。「なんなんですか、この空気」って。
 ……こわかった。
 で、とても日記には書けなかった。だから、まっつの話を書いた。逃げるときはまっつの話。まっつの話ならいくらでも書けるから。
 や、半年以上経った今でも、そのものズバリには書けません。何故にあそこまでこわかったか。空気が凍っていたか。
 ただ、「さあ、この公演からは花担だ」と思って通った公演のラストがそーゆー雰囲気だったので、相当びびったんだよ、小心者のあたしは(笑)。

 そして、今回の『ファントム』。
 いい千秋楽でした。
 盛り上がっていたし、退団者や組替え者を送る空気もあたたかかった。カテコもふつうにあったし、スタオベもあった。
 よ、よかった……。ふつうだ……ふつーの組で、ふつーの千秋楽だー。
 そうだよ、『マラケシュ』楽はアツかったじゃん。前回が特殊だっただけで、ちゃんとあったかい組とファンなんだよ。
 心からほっとし、素直に拍手をすることが出来ました。

 
 でも、こうして考えると、舞台ってのはキャストだけでどうこうするものではないんだなあ。客席のムードもたしかに「舞台を作る」要因なんだ。
 タカラヅカを愛し、客席からそれを伝えて行きたいと思う。


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