細かいことは言いません、『MIND TRAVELLER』
 なんでも聞くところによるとサスペンスらしいので、ストーリー解説はやめておきます。普段ネタバレ考慮しないわたしだけど、それにしたっていくらなんでも全部書いてしまったらまずいだろう、と思うので。
 や、誰かがネタバレする以前に、公式のあらすじ読むだけで犯人もオチもなにもかもわかるし、実際公演を最初の数十分観れば、犯人もオチもなにもかもわかるけど、なんか作者も出演者も、あの出来の悪い……いやその、子ども向けマンガ雑誌に掲載されてます的作品をサスペンスだから、ネタバレしちゃダメだと思っているようなので。
 気持ちを酌もうと思います、ハイ。

 あらすじはあえて書かないし、星の数ほどあるツッコミどころも、とりあえずはスルーして。

 リチャード@まっつの話。

 や、わたしまっつファンですから!!

 さて、海馬ヲタクで24時間白衣を着て生きる男、リチャード。

 なにしろ海馬ヲタクであり、「それって世の中的に見てマズイよな」「ヲタクって、バカにされる生物だよな」という自覚だけはある男。

 人間、コンプレックスには自分で言及しちゃうもんなんですよ。

 昔お金持ちの友人に、「あの子たちどうせ、あたしの悪口言ってたんでしょ? で、なんて言ってた? あたしのことケチだって?」と、一方的にまくしたてられて閉口したことがある。
 べつに誰もアナタの噂なんかしてなかったんだけど……しかも、どっからケチ? アナタみたいなお金持ちのお嬢さん相手に?
 ……そう、彼女は自分を「ケチ」だと劣等感を持っていたのだ。「お金持ちのくせにケチだ」と思われている、ということが、我慢ならないことだったらしい。たぶん、彼女にとってそれが図星だから。他人に知られたり、指摘されると平静でいられないくらい、恥ずかしい真実であるらしい。
 べつに彼女をケチだと思ったことは一度もなかったんで、びっくりしたさ。

 その彼女の例にとどまらず、他人から見ればどーってことない、てゆーかいちいちアンタのそんなトコ見てないし気にしてないよ!てなことを、本人はすごーく気に病んでいて、自分で言及していたりする。
 言わなければ、そんなこと気にしていたなんて、わかんないのに。

 リチャード先生も、まさにそのタイプ。

「私を海馬にしか興味のない男だと思っていたのか」
 とかなんとか。台詞はぜんぜんおぼえてないが。

 自分で言い出したときは、どーしよーかと思った。

 あー、リチャード先生、気にしてたんだ。
 自分が海馬ヲタクの研究ヲタクだって。
 ヲタクなのは真実だから飾る気も否定する気もないけど、同時にそのことに劣等感持ってたんだ。

 好きな女が、長年一緒にいた自分を無視して、いきなり現れた別の男になびいた。
 それで焦って、つい劣等感を口にする。

 俺が海馬ヲタクだからか? 海馬ヲタクだから、俺が嫌だってのか?

 ……誰もそんなこと言ってないのに。彼はひとりでテンパッている。や、実際ふつーの女の子は海馬ヲタクなんか嫌だと思うけどな(笑)。

 劣等感があるから、そこにこだわる。
 彼女が俺を選ばないのは、俺を海馬ヲタクだと思っているからだ。
 だが、俺はただのヲタクぢゃないぞ。

 海馬がどれほど素晴らしいかを、語りはじめる。ヲタクならではの熱っぽさで。
 女がドン引きしているのも、お構いなしで。

 こんなに素晴らしいモノにハマっている俺様は、すごいだろう。かっこいいだろう。
 いや、ハマっているだけじゃないぞ。
 俺は、海馬を支配しているのだ。

「海馬を支配すれば、世界をこの手に治められる。キミをその帝国のファーストレディに迎えようと言っているんだ」

 終演後、ドリーさんとさんざん「海馬の帝王ごっこ」をやっていた、その台詞(笑)。
 ファーストレディですよ、ファーストレディ!!
 リチャード先生、渾身のプロポーズ!!

 や、パメラ、ドン引き(笑)。

 こっちはなんにも言ってないのに「俺を選ばないのは、俺が海馬ヲタクだからか?」と言いだし、「海馬の素晴らしさ」を語り、「素晴らしい海馬のヲタクである俺ってすごいんだ」と正当化、「海馬を支配して、世界征服」と極論に走る。

「世界征服する予定の素晴らしい私の、妃になってくれ」

 なんてプロポーズ、されたらふつーの女は逃げ出しますよ!!

 それも、会社の上司でしかないおっさんにだよ? デートのひとつもしたことない、ほんとにふつーの仕事の上でしかつきあいのない上司にだよ?

 逃げるって。(真顔)

 リチャード先生、ほんとにヲタクなんだなあ。
 周囲がまったく見えてない。

 でもな、このどーしよーもないヲタク野郎、ヲタクゆえの視野の狭さで身を滅ぼすことになるんだけど(同じヲタク属性の者として複雑だが)、そのヲタクゆえにかわいいところもあるんだよ。

 そう、彼の思い人?パメラ@きほちゃん。

 彼の研究室の女医さんらしいが、はっきり言って、パメラの存在はかなり謎だ。 

 リチャードたちは「人間の記憶を自在に操る」「海馬を支配する」研究をしている。
 彼の片腕らしいハリー@レアにしろ、ただの助手にしか過ぎない扱いっぽいサラ@雫花ちなにしろ、ちゃんと教授がなにをやっているかわかっていて、自分の仕事をしている。

 パメラだけが、なにも知らないのだ。

 えーと?
 んじゃパメラ、なにやってんの?
 研究室にいて、教授の研究内容も知らないわけでしょ?
 なんのためにいるの?

 いかにも「女医」みたいな格好をして、本人も女医のつもりで、リチャードの研究とは関係ない仕事を「与えられるままに」しているらしい。
 助手、がしている程度の仕事もさせてもらえず、畑違いの「それらしく見える仕事」を与えられ、本人はバリバリのキャリアウーマンのつもりでいる。

 つまり彼女は、チームのマスコットなんだな。

 リチャードが、自分の趣味で置いている。

 好きな女の子を、そばに置く。
 その女の子はアタマが悪くて世間知らずだから、自分だけなにも知らされず、生暖かく見守られていることにも、まったく気づかない。
 白衣を着せるのも、リチャードの趣味。患者にやさしく語りかける役(マックスだけでなく、財閥婦人相手の態度でもわかる)をさせるのも、リチャードの趣味。
 肝心なことはなにも教えず、重要な仕事はなにもさせず、ただきれーで純真そうな外見を愛でる。

 役に立たない女をそばに置く、それだけでもう彼のアタマの中では「この女は俺のモノ」だったろう。
 パメラ本人は真面目に働き、医師としての仕事をしているつもりだったんだろうけど、実際はただの「飾り」、チームにいられるだけでも感謝しろよヲイ、てな立場だったから。
 パメラが今さら他の男になびくとは思わなかったし、それに対して憤慨するわけだ。

 で、テンパッて言うことが、「ただの海馬ヲタクぢゃないぞ、海馬で世界征服、キミがファーストレディだ!!」。

 かわいいじゃないか。

 や、はた迷惑なだけだけどな、そんなヲタク野郎。


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