『MIND TRAVELLER』は、どこへ向かうのか。

 リチャード@まっつを見ることで、作品の迷走ぶりを語ってみよう。

 『MIND TRAVELLER』は、凡作である。駄作というほど壊れてもいないが、駄作といってしまっていいくらい、つまらない。センスが悪い。
 てゆーかぶっちゃけ失敗だろコレと思う。

 もちろん、脚本が悪いことがいちばんの原因だが。

 今回に限っては、演出も悪いと思う。

 小池修一郎の演出力は高く評価しているつもりだが……自作の演出は脚本に引きずられて下手になるんだよなあ。客観性に欠けるためか?

 一言一句同じ脚本で、まったく別の話、作れるんだけどな。料理方法変えるだけで。

 『MIND TRAVELLER』は、記憶喪失モノである。

 はい、ここですでに「お笑い要素」がある。
 記憶喪失というのは、「ネタに詰まったときにすがる、禁じ手のひとつ」だ。わたしはヲタクで同人誌を山ほど読んで生きてきたが、同人の世界で「記憶喪失ネタ」というのはソレだけで「プッ」と笑われる「定番ネタ」だ。主役が記憶喪失になる、つーだけで発想の安易さゆえに駄作認定されても仕方ないくらいのな。同人ではそれをわかったうえで、開き直って使うもんなんだよ。
 「記憶喪失ネタ」は恥ずかしい。ソレを前提としたうえで、お約束に則って遊ぶ。
 設定からすでに「お笑い」なのだから、これでお客を感動させたり泣かせたりするには、相当な覚悟と力量がいる。
 はたしてこの作品は、それだけの覚悟を持ってこのとんてもないネタにのぞんだのだろうか。

 『MIND TRAVELLER』は、SF要素がある。

 人の記憶を操作する、という都合のいい「科学(医学?)」が登場する。
 はい、これもまた「お笑い要素」だ。
 ひと目で「ありえねー(笑)」と両断されてしまうよーな、『ドラえもん』のひみつ道具レベルの設定。
 もちろんフィクションなのだから、ありえないことが起こってもいい。だがそれは、その世界観でリアリティを発してこそのものだ。
 「ありえないこと」をリアルに描くには、相当の覚悟と力量が必要なんだが、この作品は以下略。

 『MIND TRAVELLER』には、世界征服をたくらむ男が登場する。

 はい、これはもう誰がどう見ても「お笑い要素」でしょう。しかも言っていることが「海馬帝国」ですよ、言語センスもお笑い一直線。
 昭和中期の特撮ヒーロー物かロボットアニメならともかく、現代の大人が観るフィクションで「世界征服」が出てきたら、それはまちがいなくギャグでしょう。
 「男はみんな王になりたい」ってことで、「俺が一番」願望は持っていると思ってるが、ソレを「世界征服」とは言わんやろふつー。あえて言うときは、シチュエーションや言葉を選ぶわな。

 さて。
 これだけ物語の中核部分が「お笑い要素」であふれているのに。

 『MIND TRAVELLER』は、シリアス物なんですよ。

 世界征服をたくらむ「海馬の帝王」リチャード博士はマッド・サイエンティストではなく、信念のある研究者なのですよ。

 リチャードというキャラクタの作り方に、すべてが現れていると思うんだが、どうよ?
 つまり、『MIND TRAVELLER』という作品の失敗ぶりが。

長くなったのでふたつに分ける。


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