とゆーことで、『ザ・クラシック』のことは忘れて、わたしがいじれるのは『維新回天・竜馬伝!』のみ。
 『維新回天・竜馬伝!』の話、行ってみよー。

 この作品は、しみじみお披露目作品だと思う。竜馬暗殺まで描いているが、だからといってかなしいだけの物語じゃない。制作発表で演出の石田昌也自身が語っていたように、新生宙組のお披露目公演的意味のある作品だと思う。
 ……あくまでも、お披露目、な。これから何本も主演作があること前提の話な。そーでないからいろいろこまるんだが、ソレは置いておいて。

 物語は竜馬の千葉道場破門から禁門の変、海援隊設立、薩長同盟、大政奉還、暗殺まで描かれている。
 歴史の細々したことをいちいち描いてられないし説明してもいられないから、名場面集としてつないでいくのは仕方ないと思う。
 石田作品が場面場面がぶつ切りで全体の流れが悪いのはデフォルトだが、今回は派手なシーン、わかりやすいシーンをチョイスしてあっていいと思う。

 ただ不思議なのは、中岡慎太郎の描き方だ。
 初演は知らないが、再演のミキさん主演バージョンの2番手役は桂小五郎だったはずだ。だからわたしはこの作品をやると知ったとき「タニちゃんが桂?! ありえねー!」と、幕末ファンならではの危惧を感じた。いやその、桂にはしっかりキャラクタのイメージがあるからさ……タモさんならわかるけれど、タニちゃんはどう考えてもちがったのよ。
 それがフタを開けてみれば2番手のタニの役が中岡だという。なるほど、誰が考えてもタニちゃんと桂はイメージちがいすぎるんだ、とほっとした。
 中岡に対して、固定したイメージをわたしは持っていない。中岡慎太郎とゆーのは、わたし的にとても地味な存在で、「竜馬と一緒に暗殺されなかったら、ここまで有名にはなっていないだろう」的手応えの人。竜馬とそれほどいつも一緒に行動していた人でもないしなー。親友ってほどのイメージもないしなー。
 実際、わたしの周囲にも「中岡って誰? なにした人?」という声を上げる人がいたり、中岡の知名度のなさを実感したさ。
 有名でない分、いろいろ自由に作れるんだろう。歴史を元にしたエンタメなんだから、それくらいのフリースペースは必要だ。うまく書けば中岡はすごーくおいしい役になるよなー。
 竜馬主役で中岡が準主役というからには、ふたりの友情メインで、いちばんの盛り上がりは暗殺シーンだな。再演とはチガウ切り口で書くんだな、と思い込んでいた。

 だから、顎が落ちた。
 実際の中岡の描き方に。

 えーと。
 いてもいなくてもいい役、ですか。
 クライマックスは薩長同盟と大政奉還ですか。
 暗殺シーンは舞台の後ろでイメージ映像のみ、てなもんですか。メインであるお竜@るいちゃんの背景扱いですか。せめて上手と下手で同列にすることもなく、紗幕の後ろでなしくずし、ですか。
 再演時の中岡と同じくらい、ただの脇役だった。なんのためにタニちゃんにこの役をやらせているんだ?

 本公演を観ることなく新公を観たチェリさんは、中岡役をただの脇役だと信じて観終わってしまったぞ?
 脚本上ではほんとーにただの脇役で、とってつけたような銀橋が1回あるだけ(ストーリー上必要ナシ)で、「タニちゃんの役だから2番手の役」だという先入観がないと、存在価値が見えない描かれ方をしていたんだ。

 なんのために中岡を2番手役にしたんだ。それがわからない。
 タニちゃんに重要な役をさせたくなかったのか? 慶喜@らんとむも桂@ほっくんも適役でいい仕事をしているだけに、中岡の自爆っぷりがイタイ。
 タニちゃんならではの、意味のある中岡を見たかったよ。

 あと疑問なのは、冒頭の明治場面なんだが。
 プロローグとして置くからには、エピローグもつけよーよー。なんのために出てきたんだ、あの人たちは。
 てゆーか、いらないよなぁ。
 竜馬母の声のあと竜馬本人登場でええやん。竜馬のマンセー説明は他ですればいい。どうせ何度も何度もマンセーされるんだから。
 登場人物紹介は、ショー部分でやっちゃえばいいじゃん。群舞の中でひとりずつスポットライトと見せ場もらって、キャラクタを売ればいいじゃん。台詞ナシでも扮装が「役」なら「あ、なにか意味のある人なんだな」ってわかるって。
 本編と関係ない群舞に時間を割くのはもったいないよ……。時代的に華やかなものにはなりっこないんだしさ。

 あとは土方歳三いらないと思う。
 薩摩藩邸に新撰組がやってくるくだりね。なんのためにあるのかわからん。
 や、八雲氏の土方が悪いわけじゃないんだよ。ただ、場面が不要だと思う、つー話。
 けがを押して竜馬が桂・西郷両名を説得する、という美しいエピソードは、それだけで完結している。追ってきた新撰組なんか出す必要はない。
 出すなら腹を据えて出さないと、なんとも意味のない描き方になってしまっている。
 竜馬・お竜の前に通りすがりで現れたときの沖田@ちぎの描き方は露出的にも「あんなもんだろ」って感じだったのに、この場面ではひたすらかっこわるい。アタマの弱いにーちゃん的描き方をして、前の場面の「沖田らしいかっこよさ」をぶっ壊している。
 第一、互いの強さを認め合った達人同士として描かれたあとなんだ、再会し、斬り合ったのならそれなりのエピソードを入れなければならないだろう。
「誰も見たことないんだから、あんなの嘘ですよ! 嘘ですよ! 嘘ですよ!」と、駄々っ子沖田。
 かっこつけて出てきたけど、権力の前に尻尾を巻いて退散する土方。
 たかが数人の小物を追い払うためだけに、もったいつけて錦の御旗を振りかざす“ガキ大将を「先生に言いつけるからな!」と言って追い払って悦に入る嫌味な学級委員”程度に見える西郷。
 ……なんのためにあるんだ、このシーン。
 西郷に「ひじかた」を「どかた」と読ませて笑いを取る、くだらないギャグをやりたいがためだけに存在したのかもしれない、と思えてしまうあたり絶望的。

 神戸まで男装して竜馬を追ってきた佐那子@たっちんも、なんのために再登場したのかわからん……。
 映画版『ガンダム』のイセリナのやうだ……(ヲタクなたとえを)。
 そうまでして出すからには、彼女のエピソードを入れるべきだ。
 男装させてキィキイ言わせる、くだらないギャグをやりたいがためだけに存在したのかもしれない、と思えてしまうあたり絶望的。

 ラストの「ヨサコイサッサ」にも、物申したいことはあるんだが、それはもーいいや……。

 あきらかに「いらない」と思えるのは明治と土方、男装佐那子だけだから、それを削って他のシーンを書き足してくれりゃーいいのになぁと思う。
 てゆーか、竜馬と中岡の友情シーン描こうよ。
 中岡を2番手の役として、ちゃんと描こうよ。
 そうすれば、暗殺シーンもきちんと盛り上がるし、盛り上げるべく演出を変えるべきだし。

 「銀橋を渡っていいのはスターだけ」というお約束だとか番手だかを知らない団体の一見さん向けだから、いいのかしら。
 タニちゃんを2番手だと知らない人たちには、中岡がいてもいなくてもいい役でもなんの問題もなく物語は進んで終わるからなー。
 中岡が準主役だと思って観るから、バランス悪く見えちゃうんだよなー。ふつーに、慶喜や桂を準主役だと思って観れば、まとまった話なんだよなー。

 あ、そんでもってわたし、この話では桂@みっちゃんに萌えてます(笑)。


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