まず、「千秋楽」とアドリブについて私見を書く。

 大野拓史作品『フェット・アンペリアル』千秋楽がものすげえことになっていた。
 5分に1回アドリブ? 爆笑コント、本編との間違い探しになっていて本末転倒、元の話がわからなくなった。作品への緊張感がしょっちゅうぶった切られた。
 千秋楽のお遊びは、複数回生で観る場合にはたのしいし、実際観ていたときは大笑いしてウケまくっていたのだけれど、あとになって複雑な気持ちになった。
 だって『フェット・アンペリアル』はDVD発売がない。千秋楽1回きりの映像が、スカステで放送されるのみ。
 本来の『フェット・アンペリアル』はデータ化されず、「リピート観劇したファンのための番外編」である千秋楽のみが残った。

 じゃあ、本来の『フェット・アンペリアル』は? もう二度と正しい姿では見られないの? せっかくスカステ放送があったのに?

 好きだったんだよ、『フェット…』。「作品」を愛し「保存版」として大切にしたい場合には「番外編」になってしまった楽映像1本きり、つーのはつらい……。
 販売DVDがある場合は、「作品」をストイックに残した中日録画のソフトがあるわけだから、べつに楽でどれだけめちゃくちゃにしてくれても、2種類の映像が残るのでぜんぜんいいんだが。
 残す映像が1回きりのときは、楽だからといって遊びすぎずに「作品」を追求して欲しいな。

 と、前振りをしているのは、もちろん『ヘイズ・コード』のためだ。

 販売DVDはドラマシティ録画なんですか? ふつーにカメラが入っていたと聞いてますが。
 だとしたら、演出変更版が発売されるわけで、トウコの声も演出も完璧なバージョンはスカステ放送の青年館楽のみになる。……そのたった1本が、一発ギャグ命、本編がわからなくなるほどのリピータ向けお遊び尽くしになっていたら、つらいわ。
 きちんと「作品」を残して欲しい……や、もちろん適度なお遊びなら、せっかくの千秋楽だから入れてくれていいんだけど。『フェット…』の二の舞だけは勘弁してね、大野先生。

 や、販売DVDが青年館で撮り直した、トウコの声と演出が元に戻っているものなら、青年館楽にどれだけめちゃくちゃやってくれてもいいのよ。2本映像が残るなら、片方はなにをしたってかまわない。
 1本きりのときだけは、「作品」を守って欲しい……「作品」がよいときは。(『天使の季節』のよーなどーでもいい駄作なら、撮影が1回きりでもなにやってもいい。いやむしろがんばれ出演者、元の作品なんかわからなくなるまで壊してしまえ。その方がマシなものが映像に残る!)

 『ヘイズ・コード』は、素敵な作品だから。
 残して欲しい。映像に。
 映像は映像でしかなく、ライヴ命ライヴ中心であることが正しいとわかっているけれど。それでも、貪欲に思うよ。

 ……てのが、まことにわがままな、「千秋楽」とアドリブについての私見です。
 繰り返すけれど、適度なお遊びなら歓迎なのよ。元の作品がわからなくなるようなお遊び合戦は勘弁、と言っているだけで。

 舞台は舞台がいちばん大切で、映像を気にして舞台の変化を縛るなんて馬鹿げていると思うけどね。

 
 つーことで、『ヘイズ・コード』ドラマシティ千秋楽。

 同じ大野作品でしかも罪のないゴチャゴチャコメディである『ヘイズ・コード』楽は、どれほどえらいことになるかと、 期待半分 危惧していたんだが。
 やっぱ『フェット・アンペリアル』はやりすぎだったんだよな。『ヘイズ・コード』はそんなことにはならず、みんな節度を保って芝居してました。演出変更になったままで遊ぶのは不謹慎だとか思ったのかしら。青年館楽はぐたぐたになるのかな?

 カメラの入らないドラマシティ千秋楽は、ナニをやってくれてもよかったんだけどなぁ(笑)。

 トウコちゃんの声は、かなりよくなってました。
 中日頃に観たときとは、音も抑揚もちがっている。中日のレイモンドはほんとにクールだった……(笑)。
 
 大きなアドリブはレイモンド@トウコが、ミルドレット@コトコトを追い払うために犬がいるふりをするところ。
 いつもは布だけで犬を表現していたけれど、今回は犬のパペット付き。布を取るとレイモンドの手にまぬけな顔の犬パペット……すましたままのレイ様とのギャップが素晴らしい。

 それくらいで、あとは台詞がささやかに変わっていたくらい? わたしは記憶力ないんでもうおぼえてないけど。

 そうそう、ヘンリー@すずみんの日替わりの鼻歌、この日はアイーダの信念@『王家に捧ぐ歌』でした。しかも、長い。
 長々とちゃんと女の子の声で歌うアイーダちゃんに、拍手が起こる。
 そこに愛があるのがいいよね。なにも言わなくても、トウコの持ち歌をチョイスすることで、気持ちが伝わる。

 
 最後の挨拶で、トウコが必死に涙をこらえながら話している後ろで、みんな泣いてるし。しいちゃんとか、顔はにこやかに笑っているのに、涙がこぼれてるし。

 愛されてるね。
 信頼が感じられる、その熱量とブレのないベクトルが、濃密な舞台を作り上げた。

 そう、トウコはここで泣くべきじゃない。主役であり作品の看板を背負う身だから泣いちゃダメだ。きちんと挨拶をしなければならない。タカラヅカはあたたかいところで、「仕事」や「責任」を忘れ素の顔で泣き出す姿に拍手を送ったりするけれど。
 「プロ」であるトウコには、踏ん張って欲しい。馴れ合って欲しくない。
 決壊しそうな涙腺と戦いながら、それでも挨拶を終えたトウコに、力一杯拍手をした。
 まだ、終わってないからね。青年館があるから。まだ、完璧版じゃないから。
 泣くのは青年館楽まで取っておいて。

 なんだかわたし、トウコには他の誰にも求めないものを求めてしまうわ。
 そして、信じている。
 トウコなら、応えてくれると。

 これほど尊敬し、信頼している役者は他にない。
 あああ、トウコちゃん好きだー。

 『ヘイズ・コード』は、すばらしい作品だった。
 アクシデントも含め、感動させてくれる舞台だった。

 観られて、よかった……。

 青年館も行きたかったよ。


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