逸翁デーSP『清く正しく美しく』、第2部はOGコーナー。
 あまりにイベント続き、あまりに出演続きの人たちについては、言葉はない。すごいことはわかるが、正直もうありがたみに欠ける。

 つーことで、めずらしい方の人たちについての感想。

 マミさんが、素顔だ。

 真琴つばさが、素顔で宝塚大劇場の舞台に立っている。歌っている。違和感ナイ。
 派手な衣装と、「間奏でやることがないので、手拍子お願いします」と言う、言うことがゆるされるキャラクタも、現役時代そのままに。

 マミさんだー。喋れる人だから安心だー。

 歌唱力はともかく、エンターティナーとして安心していたのに、喋り部分で彼はやってくれた。
 次の出演者ヤンさんを紹介するはずが、声高らかに「次は、安奈淳さんです!!」

「ヲイ、ちょっと待て」

 観劇中に私語などもってのほかだが、思わず声に出して突っ込んでいた。や、わたしだけじゃない。劇場中から、声が上がったって。

 安奈淳と安寿ミラ。「安」しか合ってねーっつの。

 コレは、痛い。痛すぎる失敗。
 マミさんは狼狽し、その場に崩れ落ちた。

 土下座して謝罪。

 ヤンさんがいるだろう下手花道袖に向けて。

 爆笑渦巻く舞台に登場し、何事もなかったかのように「かわらぬ想い」を歌わなければならないヤンさんに同情。客席も、気持ちを切り替えようと努力している。努力はしているんだけど……な微妙な空気。
 いい歌なんだがなあ、「かわらぬ想い」。

 ヤンさんは外部の舞台でも見る人だし、また客席でもよく見かける人なのであまりなつかしさはない。相変わらずきれいな人だ。そして、マミさんのものすげー失態についてのコメントもナシ。クールだ。
 無料配布のプログラム、OGさんのみ写真入りなんだが、他のみなさんショーの写真なのに、ヤンさんだけ芝居、しかもブラック・ジャックなの。きらきらしい羽やらスパンコールやら付けた写真の中にひとりだけ、沈み込んだ芝居写真。だって正塚芝居だし。しかも、よりによってブラック・ジャック。コスプレですがな。
 芝居の歌を歌う人たちは他にもいるのに、何故ヤンさんだけこんなマニアックなことになってるんだ……(笑)。

 びっくりしたのは、杜けあき氏。舞台でこの人を見るのはひさしぶりだったんだが、変わらぬ豊かな歌声。
 うわああ、ギャツビー大好きだったよお。名曲「朝日の昇る前に」を、カリンチョさんの声で聴けるなんて。じーん。この作品、古代みず希さんの芝居巧者ぶりも際立ってたよなあ……そしてトドの美形執事ぶりも。トドがあの彫刻のような美貌で、無表情に淡々とアドリブでなにかしらやらかすのが、ものごっつーたのしかった……。

 しかしカリンチョさん、歌い終わった後がいかんかった……もんのすげーハイテンションで、空気読まずに喋りまくる。いつまで喋るんだろう、どこまで行くんだろうと、びっくり眺めてしまったよ。

 ゲストコーナーでいちばんおどろいたのは、マミさんの失言でもカリさんのマシンガントークでもなく、一時代を築いたOGたちの歌声でも存在感でもなく、カリンチョさんの、退団学年だ。

 研13て!!

 当時カリさんといやあ、親父トップの代名詞。大人の男、おっさん役まかせろのラテン・ラヴァーだったぢゃないですか。大石内蔵助やって卒業していった人ですよ?
 それにカリさん、4年トップやったよね?
 んじゃ、トップ就任時は研9とか10とか?!
 えええ、あんなに老けてたのにぃ?!

 研9とか10って、キムやほっくんぐらいの学年だよね。
 そして、タニちゃんが今年、つーか来年度研13だよね。
 キムやほっくんが新公卒業すぐに単独2番手になって、今年トップになる、くらいの感覚。
 タニちゃんが今の学年で「トップ生活4年目ですがナニか?」くらいの感覚。まとぶでもいいよ、同期だから。

 ……ありえない、時代のズレ。

 タカラヅカに限らず、現代の若者は成長が遅いよね。昔は24歳とか「大人」だったけれど、今はまだ「若者」であって「大人」ではないものね。
 25歳で行き遅れ、30過ぎたら高年齢出産だったあの時代、20代後半でトップ、30ちょい過ぎで退団、というのは「タカラヅカのトップスターは婚期をあきらめなければならないんだな」と思わせたもんだ。

 今の時代、30半ばで退団したって人生ふつーにこれから、だもんなあ。

 世の中的に旬な年齢が上がってきているもの。前にも書いたが、数年前のドラマ『やまとなでしこ』で究極のモテ女として描かれた松嶋菜々子演じるヒロインが28歳の設定だったくらい、昔と今ではチガウもの。
 杜けあきがトップをやっていたよーな時代なら、25歳過ぎれはババア認定、28歳ならどんなに美人でも28だというだけで周囲から後ろ指さされる設定になるところだ。

 世の中がそうだから、ジェンヌの学年が上がるのも自然の成り行き。
 5年くらい若者の成熟が遅れているみたいだから、ジェンヌも+5学年でいいんだろうさ。

 
 歌はよいのだけど、逸翁デーでナニがつらいかって、逸翁存命時の思い出、のあるOGのトークほどつらいものはない。

 興味がないとか、そんな人知らないとかゆーわけではなくて。

 たんに、5W1Hを理解せずに喋る素人の繰り言を聞きたくないだけなんですよ。

 When、Where、Who、What、Why、How。
 いつどこで、誰がなにを、なんのためにどうしたか。
 この「人に伝えるための基本中の基本」を知りもしないで、だらだら垂れ流されるお喋りが苦手。

 扇千景さんとか、政治家なんだから5W1Hぐらい、わきまえて喋ってくれるだろうと勝手に思っていたんだけど、無理だったらしい
 本人のアタマの中だけで辻褄のあった話をされても、あなたのアタマの中が見えないしアナタの半生も知らないから、わかりよーがないよ。
 もちろん想像して補完するけど、んなもん、客がすることじゃない。

 逸翁イベントは、毎年同じスライド上映と、最悪な「教祖様を讃える宗教ソング」と、まともに話すことの出来ないOGのトークを長々と聞かされる、この3点がつらくてつらくてしょーがなかった。
 OGのトークも、プロの司会者がいれば彼女たちが組み立てることの出来ない5W1Hを、司会者が「それは**が**したということですね」とか「それを言ったのは誰ですか?」とかいちいち翻訳したり、文章を組み立ててくれただろーに。それすらないからなー。垂れ流しだもんなー。

 とまあ、おばあさま方のトークはとほほでしかないんだが。

 深緑夏代さんという、カケラも知らない「昭和10年初舞台」というおばーさまの、歌に涙が出た。

 「逝きし人達」というシャンソンで、いろんな「もういない人たち」の名前が歌の中に出てくる。
 朗々と、決してしめっぽくなどなく、飄々とした明るさや茶目っ気すらある歌声なんだが、泣けるのよ。

 いつか、人は死ぬ。
 いつかみんな、いなくなる。
 それがかなしみだけでなく、とてもあたたかいキモチで歌われている。
 いつかまた、会えるよ。
 生まれてきたことすべてを肯定し、生きていくすべてを肯定し、この世のすべてを肯定する。

 いやあ、ありがたい歌声だった。
 こういう人をもあったりまえに内包している、タカラヅカってのはすごいところだ。


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