雪組中日公演。

 お祭りだから、お祝いだから、わくわく駆けつけるけれど、名古屋に通う予定はないので1回限りと覚悟して観劇。万が一作品がよかったら通うかもしれないけど、演目発表された段階でその可能性は限りなくゼロに近かった。
 柴田先生の再演物でしょ? それだけであ、こりゃダメだと思った。

 たしかに植爺作品のように下品でも無神経でもないけれど、「古い」という点では柴田作品も同じだ。

 現代に上演して、良い作品ぢゃない……。

 「30年前なら、これでよかったんだろうな」「大昔なら、これがおもしろかったんだろうな」と遠く想像するのみ。
 『あかねさす紫の花』『うたかたの恋』と最近続けて観て、しみじみ思っていたところさ。
 危惧していた通り、『星影の人』も、そうだった。

 たしかに柴田作品は美しくて上品なんだけど。
 それだけを愛でるには、作品に粗がありすぎる。

 植爺作品よりゃ、そりゃ「逆鱗ポイント」「生理的嫌悪感を持つ人間性のゆがみ」などがない。
 でもさーわたし、「古い」というのも十分「辟易ポイント」だと思うのよ。

 『星影の人』は古いだけでなく、もしも「若手の新作」として現代に発表されいたら失敗作の烙印押されてると思うよ。「構成壊れてるじゃん! 斎藤はこれだから!」とか「こだまっちってどうして辻褄の合う話つくれないの? 伏線回収しなよ」「稲葉作品ってどうしてこう浅いの? 恋愛経験ないんじゃない?」とか言われてるよ。
 柴田ブランドだから、なにも言われないけれど。

 
 さて、『星影の人』とやら。初演は知りません、31年前じゃさすがに無理。

 えーと、舞台は「新撰組」という名前になって間もないころの新撰組(それまでは壬生浪士組)、ちなみに芹沢鴨粛正後。
 沖田総司@水は、刺客数人さくっと殺したあと、芸妓・玉勇@となみに出会う。親切な玉勇が濡れて歩く沖田に傘を貸してくれたわけだ。
 その日のウチに2度目の偶然、再会したふたりはデートの約束をする。
 はじめてのデートで「アナタは素敵な人」「いいえアナタの方がすばらしい人」と謙遜し合い、誉め合うふたり。このバカップルなんとかしろ。
 ここで唐突に、新撰組副長土方歳三@ゆみこの恋バナが入る。土方がつきあっている芸妓・照葉@雪組きっての大根女優ルーシーは、許嫁の仇っつーことで土方の命を狙っていた。
 でも、土方を愛しちゃったんだって。土方も、ソレをわかってなお彼女を愛してるんだって。
 仇に抱かれて志を翻した照葉こと加代を、許嫁の妹@ちとせが激しく責めるが……。
 はい、ここでこの話は終わり。これだけ唐突に盛り上げておいて、このあと一切出てきません。ちょっと待て、なんだソレは。

 話変わって、池田屋騒動。新撰組といえば池田屋。新撰組でもっとも盛り上がる、ドラマティック・シーン。
 池田屋に集まり、火事場泥棒のノリで力づくで権力を得ようとするテロリストたちを一網打尽にする、「正義」の新撰組のもっとも華々しいエピソード。そして、沖田的にも、はじめて喀血するとゆー、わかりやすく盛り上がる場面。
 さあ、いちばんの名場面をどう描くのか、高まる期待感。

 降りてくる巨大スクリーン。

「元治元年6月5日 池田屋事件」てなテロップが、突然出る。
 
 や、今までもテロップ付きなら変じゃないけど。最初から文久3年とか、テロップが要所要所に出ていれば変じゃない。
 でも途中からいきなり出るのはおかしい。脈絡なさすぎ。第1章も第2章も表記されていなかったのに、90ページまで読んだらいきなり「第3章」と書かれてるよこの小説、誤植? 落丁? てなもん。
 なんでこんな変なことをするんだろう、と思っていたら。

 いつまでたっても、テロップが消えない。

 それどころか、録音された声だけで、芝居が進んでいる。

 なんじゃこりゃあ。

 口ぽかーん……。

 今まで見てきたテレビドラマ、いきなり音声だけになりましたよ。で、なにもない画面に「クリスマスイヴの夜」とかテロップが出てるの。
 えええっ? クリスマスイヴに告白する、恋敵になってしまった親友と決着付けるって言ってたよね? いちばんのクライマックスになる場面だよね?
 なんで音声だけ?!
 ラジオドラマ?!!

 また、長いんだ、音声だけシーン。

 音だけだから、なにもかも台詞で説明しなきゃならないの、さあ大変! 説明台詞GO!GO! 不自然にGO!GO! 戦闘シーンだから、悲鳴や叫び声いっぱい、棒読みいっぱい、寒々しさ満載♪

 …………結局、池田屋事件は音声だけでした。
 突然出てきたテロップは、その言い訳でした。

 同じことをキムシンがやったりしたら、「今すぐ演出家辞めろ」コールで2ちゃんのスレッドが一気に1000まで行きそうだな……(笑)。

 沖田主人公で、有名な沖田の最初の喀血シーンが、録音音声だけ……。
 なに考えてこんな阿呆なことを?

 暴力シーンはいけません? 他にさんざん人殺しシーンを描いておいて?
 それとも、技術的に池田屋を描くのは無理だと判断した? セットも大がかりになるし、殺陣も大変。人数も必要だから中日では無理?
 それとも、物語にこだわりをもって、池田屋をスルーした? 他に訴えたいテーマがあるから、ここに派手な場面を置くわけにいかなかった?
 それとも、音声だけ、という斬新な演出をしてみたかった?

 もちろん、池田屋をクライマックスにしなければならない、という決まりはない。
 また、絶対にじっくり描かなければならない、という決まりもない。

 ただ客観的に見て、「放っておいても盛り上がる」「アクション的にも/時代的にも/新撰組的にも/沖田的にも、盛り上がる」オイシイ話を、わざわざ使わないことが、不自然で疑問。

 しかもそうまでしてわざわざ池田屋をスルーして、あのサムいサムい音声劇って……。

 で、「労咳であとわずかな命!」とわかる沖田の苦悩の話になる。
 話というか、突然イメージ映像。
 踊って歌って表現。エピソードとかぢゃないっす。まあ、なんてミュージカル的。てゆーか、お茶濁し? 逃げ?

 心理風景を踊る沖田のために、突然土方がせり上がってきて1曲歌う。あら土方さん、ひさしぶり。存在を忘れていたよ、あんまりな描かれ方だから。
 ここで沖田とのエピソードがあるのね……と思いきや。
 セリ上で直立不動で1曲歌ったら、そのままセリ下がっていく。
 ナニしに出てきたんだよ?! あ、1曲美声を披露するためですか。そーですか。……ひでー。

 そしてさらに、とっても唐突に、沖田を愛している女たち@しなぽんとかおりが出てきて歌ったりな。や、それまでも登場していたけれど、沖田を好きなことぐらいは想像がつくけれど、わざわざ1曲歌うほどの描き方はされていない。
 なんつー比重の間違った、その場限りの演出……。

 苦悩の末、沖田は余命を、新撰組隊士として生きることを誓う。玉勇はそんな彼を支えることを誓う。純愛です。

 ……あれ?
 心を決めちゃったらもう終わりだよね? ヒロインともハッピーエンド。
 完結しちゃったのに、話まだ続けるの? イメージ映像だけでなんのストーリーもない作品だけれど、いちおーエンドマークでしょう? まだ続くの?
 てゆーか、ストーリーないのに、どうやってまだ続けるの?

 翌日欄へ続く。


コメント

日記内を検索