まず、断言しておく。

 水夏希の沖田総司は、イイ。

 彼単体でいうなら、容姿も演技も問題ない。
 さわやかな好青年だ。
 生真面目さ、繊細さ、なによりも、魂の健全さ。
 それらが「沖田総司」として相応しい。

 沖田の持つ「陰」の部分はほとんどないが、それは脚本意図だろうから、これでかまわない。

 水夏希が美しい。
 これを前提として、最初に掲げておく。

 そのうえで。

 どーしよーもなく大きな問題がある。

 中日公演『星影の人』
 作品がアレなのは置くとして。もうひとつ、問題。

 沖田総司主人公の話を、トップスター主演でやるのは、無理がある。

 他ジャンルならかまわないが、タカラヅカという特殊な世界では、無理だ。

 考えてもみてよ。
 その作品世界でいちばん年少の、小僧っこ役がトップスターなのよ?

 正確には沖田が最年少ではないが、主要人物として存在しうるなかで、いちばん少年。そしてその少年性をアピールする作り。
 他の重要な役はみんな沖田より大人の設定。

 トップスターが最年少の少年役だと、彼より大人の役ばかりの芝居をやるためには、本専科さん総動員しなければならない。
 そーしないと、年齢バランスが、変。

 今回、「若者」沖田@水、「大人」土方@ゆみこあたりならまだなんとかなっていたが、「若者」@水と「大人」@ひろみとか、「若者」@水と「大人」@かなめとか、ありえない絵面ですよ。

 本人たちの演技がどうこうではなくてね。
 やらせること自体まちがっているだろ、という話。

 なにも無理してまでやらなきゃいけないことじゃないだろう。
 大人が大人の役をして、若者が若者の役をする。それでいいじゃないか。何故わざわざ逆にして、無理を通さなければならない?
 少年のような山南@ひろみの前で、懸命に少年の演技をする沖田@水の痛々しさときたら。水夏希への、羞恥プレイですか?!
 痛々しくも若ぶる水しぇんを見て、ハァハァしろってこと?

 そーゆー狙いなら、「魔性の美少年ジルベール@『風と木の詩』を演じる湖月わたる」とか「角兵衛獅子の子ども清太@『おーい春風さん』を演じる轟悠」とかもやるべきだったわね。彼らはプロだから、きちんと演じることでしょう。だけどその姿は、微妙にいたたまれない気恥ずかしさに満ちる。

 トップがやらなくていいから、この芝居。
 外見や技術も含めて、年齢差があまりない、若手や中堅のバウで十分。てか、駄作だから封印してくれていい。
 持ち味を考えて公演してくれよー。
 あ、タニちゃん宙組ならOKだな。主役が少年で、あとは全員大人。タニ以外はどの組でもすでにキツイだろ。トップスターはふつー、大人だから。

 水くんは、がんばって演じている。
 沖田総司を、正しく演じている。
 彼単体で見れば、なんの問題もないのだろう。たぶん。

 しかしどーしても、いたたまれない気恥ずかしさがある。

 少年・水夏希……。

 ゆみこに「女の扱い方」で演説ぶたれ、からかわれる役……。
 ひろみより年少で、かなめに子ども扱いされる役……。

 なんの罰ゲームですか?

 役者とか演技とか以前の話なので、気にならない人は気にならないだろう。
 スルーしてくれ。

 目の下にシワを刻みながらトップスターが少年役をし、お肌つるつるの若者たちが大人や年輩を演じるキャスティングに、疑問を持つだけのことだ。

 ほんとにもう、なんで今さら再演したんだ、この作品。


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