兄妹オチが出てくると、お笑い度が跳ね上がるのは、何故だろう。

 それまで多少アラのある物語でも、とりあえずシリアスに恋愛してきたとして。
 クライマックスに「愛し合うふたりは、生き別れの兄妹?!」てなネタが出てくると、途端爆笑作認定となる。

 やっぱアレですか。
 昭和中期のトンデモナイドラマだの映画だの少女マンガだのの定番ネタだったからですか。
 記憶喪失と兄妹オチ。
 どっちかひとつでもお笑いなのに、両方使って大暴れしていた某韓国ドラマとか、腹を抱えて笑ったよなあ。「記憶喪失キターーッ!!」「兄妹疑惑キターーッ!!」つって。
 いちばん簡単プーに「ドラマチック!!」(縦ロールの睫毛びしばし下唇に縦線の古い少女漫画絵で白目ヨロシク)にできるからですか。
 その簡単プーさが、かっこわるい。時代遅れ感が際立つからかな。「この現代にこのネタ?!」みたいな。
 かっこわるくて、すでにお笑い世界。

 作品のアホアホ度が高くなるアイテム、ソレが「兄妹オチ」。

 それまでいちおーまともに見てきたのに、「記憶喪失」とか「兄妹オチ」とかが突然出てきたら、「なんだ、アホドラマだったのか。真面目に見て損した」って気分になる。
 そーゆー場合は、作品紹介に入れておかなきゃダメっすよ。「アホドラマ・キーワード」を。そしたら、最初からアホアホ設定を笑って楽しむつもりで見るのに。または、そーゆードラマを好きな人だけが見て、ふつーの恋愛物を見たい人はスルーするだろうに。

 『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』の兄妹オチは、脱力でした。
 ベタベタの伏線を繰り返していたので予想がついていた分、腹は立たないが、相当トホホな気分になった。
 かっこわるいなぁ。ただでさえかっこわるい話なのに、さらにアホアホネタを使って作品知能指数を下げるか、キムシンよ。
 笑わせることが目的なら、ソレもいいけどさー。

 
 まあ、ソレはともかく。

 兄妹だから、ひとつの事象の裏と表として描いているのはわかるし、ソレを面白いとも思う。

 アホアホ系としての「兄妹オチ」に萎えるのと同時にね(笑)。後出しされると駄作感が大幅アップするので、最初から「兄妹モノ」と宣伝してくれてりゃー良かったのになー。あ、それぢゃ『黒蜥蜴』にならないのか。つまりそもそも、『黒蜥蜴』を原作に使わなければ良かったんぢゃ……ゲフンゲフン。

 や、アホアホ話は置いておいて。

 明智@オサと黒蜥蜴@彩音は、互いを「自分に似ている」つーことで恍惚となる。

 ここで「恍惚」となるあたり、「似ている」だろう。ふつーの人はあんなにうっとりせん。ヤヴァイ感性を持つナルシーちゃんならではの感激ぶり。

 実際、ふたりがやっていることは同じだ。

 妹は犯罪を犯して金を稼ぎ、兄は犯罪を暴いて金を稼ぐ。
 妹は戦災孤児の少女たち(同性)を拾って養育する。
 兄は戦災孤児の少年たち(同性)を拾って養育する。
 妹は少女たちを甘やかし、遊ばせることで尊敬を集め、「女王」として君臨する。
 兄は少年たちに仕事を与え、自立心を促すことで尊敬を集め、「先生」として君臨する。
 ふたりとも、自分の王国で年若い取り巻きを集めて愉快に生活。同性に限るのは、性的な欲望を満たすための王国ではないから。
 精神的な充足(ちやほやされる、敬愛される)を求めた結果。

 同じ感性と方法論で生きるふたりの方向がちがっているのは、性別の差が大きいだろう。
 女は「そばにいて与え続ける」愛のカタチを取りがちだし、男は「外に出て戦う」愛のカタチを取りがちだ。
 生物としての役割分担からくる傾向なので、男女差別とか偏見ではなく、大雑把に「男と女」ゆえの方向性の違いから、すべてはじまったんだろーな、と思える。
 妹の方は精神が幼いままなので、ソレがさらに極端になった、とゆー感じ。

 ここまで「同じ魂の裏と表」であるふたりだから、「同じ血を引く」とすること、「兄妹」とゆーことが設定として絶対であることも理解できる。

 だからなあ。
 突然のプロポーズが、さらにアホアホ感を煽るんだよなあ。

 「魂の半身」と出会った! =「結婚」!!
 「兄妹だから結婚できない!」=「自殺」!!

 そんなアホな。

 せっかくの「兄妹」=「同じ魂の裏と表」をそれまで積み重ねて描いてきたのに、全部ぶちこわしですよ。

「プロポーズのあと自殺させるためだけに、兄妹ってことにしたのね」

 とゆー、ものすげー安い結論に堕ちてしまう。

 冒頭で語った「アホアホ設定」ですよ。
 魂の類似、とかそーゆーナイーヴなところからかけ離れた、いちばんアバウトで失笑される展開に着地してしまいますよ。

 なにやってんだかなあ。
 「兄妹オチ」なんて、指さされて笑われるよーな危険なネタを使うときこそ、細心の注意が必要なのに。

 明智の安いプロポーズと、黒蜥蜴の安い改心、コレがなければどんなによかったろう。
 大劇場だから、とおもねったんだろうか。
 背徳と悪のままでよかったんだよ。
 なんにせよ、黒蜥蜴は死ぬべきだけどね。

 タイトルが『明智小五郎の事件簿』なので、最後明智が立ち直るところで終わるのは正しい。
 彼が「黒蜥蜴事件」を乗り越えることで、「事件簿」のなかのひとつの出来事だとわかる。

 どーせ明智が立ち直って終わりなんだから、プロポーズや改心は不要だった。どんなにそこが暗くても、倒錯的でも、最後は前向きになるんだから。

 や、贅沢は言わない。
 明日からでも、「コマがなんだーっ!!」の台詞を無くしてくれればイイ。
 いやその。
 作品が、とか、流れとかテーマがとか、理屈以前におかしいから。台詞として、行動として。
 明智くん真剣だけど、爆笑ポイントだから。

 半年経ってから押し花の裏のメッセージに気づかなくていいから。「押し花がなんだーっ!!」も無くしてくれていいから。

  
 いろいろ言ってますが。

 あちこちイッちゃってる明智くん@オサ様は、大変好物です。

 たのしそーだなー、オサ様。
 らぶ。


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