ののすみ、ひとり勝ち。

 花組新人公演『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』観劇。

 本公演の主役は明智だけど、新公では黒蜥蜴だった。
 ののすみ、巧すぎ。

「野々すみ花ってさ、顔はチガウけど実は花總まりなんじゃない?」
「ののすみちゃんをふたつに割ると、中からお花様が出てくるとか」
 そんな会話をドリーさんとしたところだ。
 研2であの実力はありえない。

 なもんで、おかみさんコスプレの割烹着姿が着こなし失敗しているあたり、実はかなり緊張していたんだなーとわかり、かえってほっとしたわ。
 割烹着が片方肩から落ちてるんだよ? ふつーなら着心地悪くて気づくだろ。それに気が回らないくらい、いっぱいいっぱいだったんだねえ……演技はふつーに堂々とやっているのに。
 そのギャップがすごいわ。

 
 さて、主役の明智@まぁくんは、『マラケシュ』以来2度目の新公主演。
 今回つくづく、おもしろい子だと思った。

 「火事場の馬鹿力?」でやり遂げた『マラケシュ』とちがい、それ以降の新公ではダメっぷりばかりが目に付いていた。
 それがこの間の『MIND TRAVELLER』で、目を見張るほどの輝きっぷりを披露。わたしの中で、若き日の和央ようかを彷彿とさせる期待のルーキー位置へ昇格。
 実力がどうとかゆー以前のところで「ナニか」を感じさせる子。

 いやあ、今回の新公も、技術的にはかなりキツイだろヲイ。
 ののすみちゃんに全部持っていかれ、どーすんだコレ、状態なのに。

 なのに、ダメぢゃないの。

 基本ダメっ子なんだけど、時折ものすげー輝き出す。

 小さく薄くまとまってんなあ、安定した実力の前には半端な華なんか太刀打ちできないか。と、思っていたら。

 突然、キラキラしはじめる。

 ののすみやめぐむの実力を凌駕し、「主役」としての仕事をはじめる。

 なにコレ。ナニこれ。
 バイオリズムの曲線みたいに、上がったり下がったり。
 くすんでいたり、光ったり。
 輝き出すときのギャップがすごいの。
 まるでテレビや映画みたいに、彼がぐーんとUPになるのがわかるのよ。
 ズーム機能付き?! ありえねー(笑)。

 最初にキタのが、おじさん変装銀橋の直後。
 なにか吹っ切れたのか、変装を解いて明智に戻ったときに一気に輝きだした。
 そのあとの車での追跡。どどどどーしたんだ明智。背景にお花とばして、キラキラしまくってますがな。どこの少女マンガだヲイ!! 花がとんでるよ、意味なくキラキラしてるよ!!

 おもしろい。おもしろいよ、この子!!

 輝度が変わるなんて、その時々で吸引力がチガウなんて、わけわかんねー。
 クライマックスで場が盛り上がるから輝く、ぢゃなくて、そーゆーのとは無関係に発光するのよ?!
 変。
 すごく変で、おもしろい。目が離せない。

 
 雨宮@めぐむは、とりあえず「プロポーズ」の歌で、すべての粗を覆い隠している。

 出番最後が彼の役のクライマックスで、しかもソレが歌だけにかかっているとなると、歌えるめぐむには幸いしたよな。
 いやあ、いい声だ。

 雨宮はタカラヅカではめずらしい、ドM男だ。

「いぢめられれば、いぢめられるほど萌える……!!」

 てな台詞を真顔で言うよーな役だ。(ん? 台詞まちがってる?)

 ふつー健全な女子はM男には引くもんなので、んなアヴノな設定でも負けずに「潤ちゃん、素敵(はぁと)」と思わせるには、役者が力業でなんとかしなきゃならない。

 本役のまとぶ氏は、最近ワイルド受キャラまっしぐらのせいか、今回のM男も違和感がない。
 M男が許されるのは、彼が美形でセクシーな場合のみだ。とゆーことを、身をもって実践してくれている。

 美女の足元にひざまずき、いたぶられる様がセクシーであること……それが絶対条件。

 ところが、めぐむさんてば。

 美形……では、ないよな?
 体格は逞しくて素敵なんだけど。

 ヒゲに期待していたんだけど、最初の登場シーンは、丸顔をぐるりと囲むヒゲが、ポンデライオンみたいだし。
 酔っぱらいヒゲ姿は、違和感がなくてかえってなんの感慨にもつながらなかったし。

 苦悩していても、セクシーぢゃないし。
 無骨で鈍くさいだけに見えるし。

 そうか……M男が「セクシー」に見えないと、ただのヘタレ男になっちゃうんだわ……。

 女の尻に引かれているだけの、ヘタレ男。……そんなの、べつにめずらしくもない。せっかく、タカラヅカではめずらしい役のはずなのに、雨宮……。Mとゆーよりヘタレぢゃダメだよー。

 ふつーにうまいんだけどな、めぐむ。
 なんで色気がないんだろう。
 色気を必要としないバーバリアンを演じた方が、色気の出る人なんだろうな。ニコラ@『落陽のパレルモ』がそうだったように。

 こちらもののすみちゃんに食われまくって終了かと思ったら、最後の最後、「プロポーズ」の歌でかっとばしてくれたので、なんか気持ちよく終わってくれた。
 いいなー、あの歌。うっとり。

 
 早苗@きらりちゃんは、めちゃくちゃかわええ。
 あのやぼったいワンピースを着てなお、かわいらしいってどーゆーこっちゃそりゃ。

 「昭和中期のお金持ちのお嬢様」ではなく、「現代のふつーの女の子」だった気がする。実は庶民の葉子が演じているから、というわけではなく。早苗としてふるまっているときも、表情その他がいちいち現代的。
 それが正しいかどうかは、別として。その分、活き活きとしていて、かわいく見えた。

 早苗(葉子)ってのは「前髪ぱっつん」でなくてはならないのかと思っていたんだが、そうでもなかったんだね。きらりちゃんはラスト、ふつーの髪型していたよ。
 ののすみちゃんも髪型、自分に似合うものに変えられたらいいのにね。

 
 本公演でいちいち「あ、まっつに似てる」とわたしの目を奪う、白鳥かすがくんは、波越警部。

 ふつーにうまくて、ふつーに……地味。

 本役の壮くんが、どれだけ無駄にキラキラしているか、よーっくわかった。
 波越って、こんなに地味な役なんだ……。

 地味だろーがトレンチコート姿がおっさん臭かろうが、かすがくん、誠実な人柄の見える波越でした。

 
 いやあ、今回の新公はやたらたのしかったよ。いろいろと。
 つーことで、翌日欄に続く。


コメント

日記内を検索