雪組『ハロー!ダンシング』の感想を書いていない。
 てゆーか、書けなかった。
 わたしの周りは「全組観る」「タカラヅカは贔屓だけで回っているのではない」とゆー感覚の人たちが多い。だから『ハロダン』も複数組観ている人たちがちらほらいる。
 その人たちと感想を語り合うのみで、まとまった文章にすることができなかった。
 あまりにも……アレだったからだ。

 『ハロー!ダンシング』という、興行自体に、激しく疑問と反感を持った。

 なにがしたいんだ、この公演?

 星組を観たときは、素直にたのしんだ。あかしというスターを中心に、踊れるけれどナニか足りない美形のともみん、技術が足りていない分は気合いで勝負だ!のドイちゃんを2番手位置に据え(気合いのドイちゃんの方が番手が上に見えた・笑)、達者なゆいちゃんを長とし、実力に破綻無しコロちゃんでがっちり固め、「エンタメ」らしい作品になっていた。
 それでも4500円は高いけど……まあ仕方ないのか。

 それが、雪組は。

 麻樹ゆめみちゃん、初主演おめでとう!

 星組で「スター!あかし」が担っていた部分を、ゆめみ姉さんが受け持っていた。
 ゆめみちゃんはパワフルに踊る踊る、センター取って踊る! 歌も歌うし、MCもするし、孤軍奮闘、獅子奮迅の働き。

 えーと?

 わたしがヅカファンやって19年経つけれど、その間、娘役で主役張ってダンスコンサートをしたのは、ゆうこ姫のみだ。
 ダンサーとして名高い風花舞が、荻田浩一演出で、トップ娘役退団記念イベントで、同期スターの樹里ちゃん他、複数組の新公学年の路線スターを投入し、これでもかと盛りだくさんにして、それでもバウホール3日間だけのイベントだった。

 ゆめみちゃんはすばらしい娘役さんだけど、ゆうこちゃんが3日間だけしかできなかったダンスコンサートを、1週間もやるよーな立場の人でしたっけ?
 アテ書きでもなく、センスがアレな草野旦演出で、1週間。

 劇団はなにを考えて、こんな阿呆な興行を?
 それなら、ゆうこ姫のダンスコンサートを1週間やれよ! 3日間、4回だけの公演なんて、1回チケット取るだけでどれだけ大変だったと思う? チケ難で大変だったんだからね! ……と、いつの話だ。

 いや、実際のところ、ゆめみちゃんはあれほどの重責を負わされていながら、「主役」ではなかった。
 タカラヅカは男役中心、興行として成り立つには、男役スターが必要。男尊女卑とか、そんな問題ではなく純粋にビジネスとして。ジャニーズで女の子ユニットを作ったところで既存のジャニファン相手に興行が成り立たない、とゆーのと同じ。
 獅子奮迅の働きをしながら、ゆめみちゃんの立ち位置は曖昧。
 加えて、男役スターポジのせしるが、なんとも半端な仕事をしている。

 本来ならば、せしるが主役として立たなければならなかった。
 それが、彼に圧倒的に力が不足していたために、長の立場のゆめみちゃんが主役としての責まで負うことになった。

 でもソレ……「タカラヅカ」として、どうなのよ?

 バックダンサーを養成することが目的で、『ハロダン』をやっているのか?
 そうではない、「タカラヅカスター」を育てたいならば、「スター」のいる構成にしなければならない。大勢の中のひとりで踊ることと、群舞で常にセンターを取り、ソロで一場面踊りきり、デュエットダンスをすることでは、まったくチガウ。
 なんの経験も積まずに「スター」でいられる者など、存在しない。タカラヅカはそんなに甘くない。どんなダイヤの原石だって、場面を与えて育てている。
 
 ただ「若さ」「フレッシュさ」「一生懸命さ」だけを売りにして、観客もろくにいないホールで踊らせることに、なんの意味があるんだろう。
 ダンススクールの発表会ではなく、宝塚歌劇団の商業作品なのに。

 どんなに意義が謎の公演であろうと、生徒たちは一生懸命だ。そりゃあもお、せつないほどに。

 星組がなんとかなっていただけに、ここまで思うことはなかったが、雪組を観たあとでは劇団への疑問でいっぱいだ。

 「スター」を育てるつもりがあるなら、きちんと主役を立て、ピンで盛り立てるべきだった。
 せしるはたしかに力不足だが、それでもこの立場を与えられたのだから、問答無用でピンに立たせるべきだった。『エルドラード』で、タニちゃんが壊滅的歌声を披露し、伝説化しているよーに、「できなくても、必要ならばやらせる」のがタカラヅカだろう。
 たぶん、今のせしるではとても務まらなくて、さんざんな評価を受けるだろうけれど、「1公演主役を務めた」という経験は、これからの彼の財産になるはずだ。

 いや、とてもせしるにあかしと同じポジションは任せられない、というならば、そもそもせしるにする必要はなかった。誰か他に、真ん中が務まる若手を出演させればよかっただけのことだ。

 公演の考え方が、わからない。
 バックダンサー養成、ダンススクールの発表会、そんなものをやりたかったのか?
 「ダンス力向上」を謳ってのワークショップらしいが、向上するのはバックダンサー力であって、「タカラヅカ・スキル」とは別だろうよコレ。
 芯のはっきりしない、あちこちお茶を濁した構成。お飾り的にスター位置に置かれたせしる、重責だけ負わされ便利使いされるゆめみちゃん、スター力の低い、タカラヅカ力の低い下級生たち。

 彼らががんばっていることがわかるだけに、せつないやらくやしいやら。
 なんでこんな阿呆な企画で公演やってんだよぉ。

 下級生たちの育て方、使い方をまちがっているとしか思えない。
 くやしいなあ。

 
 あああ、苦言ばかりになるから、感想が書けなかったのよ。
 キャストに含みはまったくない。ゆめみちゃんのことはもっともっと好きになったし、どんなにダメダメでもせしるは好きだー。

 組ごとに変わる、後半の目玉である群舞場面は、物語がわかりやすくて好きだったかな。
 組ごとに変わるデュエットダンス場面は、ははは、やっぱこーゆー「タカラヅカ」シーンは大変なんだね、星もアレだったが雪も大変なことになっていた。
 娘役ちゃんの沙月愛奈ちゃんは健闘していたけれど、相手役のぐっちょんはもう……(笑)。

 でもわたし、このキャストの中でいちばん注目していたのは、じつはぐっちょんです(笑)。
 ケロに似てるよね、彼?

 キングはときどき美しさが目に入ってくるんだけど、概ね目立たなくてびっくりする。
 むしろ、愛輝ゆまくんの方が、やたらと目に入るなあ……『Young Bloods!! 』に引き続き。

 星組より出演者の学年が低いので、スキルが低いのは仕方がないけれど、草野の演出のサムさが栄えるつなぎ場面などは、サムさも倍増してお届け!で、えらいことに。
 いやあ、大変だ。
 彼らがこの経験を元に成長することを祈る。

 あとプログラムもさー、いい加減だよ。「ピンクのつなぎ」とか書いてあるけど、ピンクじゃないの。衣装変わっているのに、星組のプログラムからなんの修正もしてないの。
 草野からの言葉も、たぶん全組同じ原稿のコピー。各組出演者に対してのコメントや贈る言葉もなし。
 ……ほんとに、やる気も誠意もないんだね、この公演に対して。

 みんながんばれ。
 劇団のおやじたちがどんなにアレでも、みんなは負けるな。

 雪組キャストの汗の美しさを、観客は知っているのだから。


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