書きたいことが多すぎて、いちばん書きたいことが書けない……。って、ナニやってんだろうなあ。

 いちばん書きたいことっていえばもちろん、花組公演の感想です。
 他の組もまんべんなく観るから、先にそっちの感想を書いてしまって、肝心の花組の話が書けない。他の感想はその数回で終わることがわかっているけど、花組の感想は果てが見えない。
 だからつい、まず「語ってもせいぜい2日分(6000字程度)だな」とか、「3日(10000字弱)かかるかな」とか、見当のついているものを先に書いちゃうじゃん?

 そーやって花組の話が、ちっとも書けない……。
 そしてわたしの海馬は不良品。書きたかったことをどんどん忘れていく。
 助けてリチャード教授。わたしの海馬をサーチして花組公演の感想をバックアップしてぇ。

 
 ま、それはともかく。

 初日からずーっと書きたかったことを書こう。よーやく書こう。

 
 花組公演『明智小五郎の事件簿―黒蜥蜴』初日。

 わたしはひそかに、ものごっつー、びびったことがある。

 明智くん@オサ様と、波越くん@壮くん。

 お帰りなさい、の壮くんは、なんかものごっつー自然に花組に同化していて、雪にいたときのトホホさがウソのよう。
 まちがいなくオトコマエ度も上がっている。

 とはいえもちろん、リーマン度が下がることなどない。

 勤労者がこれほど似合う二枚目もいない、すばらしきかな壮一帆。

 なにより、オサ様との相性がいい。

 春野寿美礼はいろいろ困った人で、合わない人には合わせないし、ひとりで勝手に芝居をする。ついて来られない人は平気で置き去りにする。しかも本能、無意識に。

 壮くんは空気読めない人で雪組では盛大に浮き、これまたひとり勝手に芝居をしていた。

 そんなふたりが芝居で組んだら、どんなとんでもないことになるんだと期待危惧していたんだが。

 杞憂だった。
 合わせる気のない気ままな天才と、空気読めない天然男は、10年来の相方のよーに、あうんの呼吸で本能的な芝居をしていた。

 なんなのこの人たち。

 べつに、それぞれが変わったわけでもないのに。
 勝手にやっているだけなのに。

 相性がいいってのは、こういうことか。
 1年半も前に組替えしてきて、未だにオサ様相手に悪戦苦闘しているまとぶ氏が気の毒だ。
 ナチュラルボーンの壮一帆は、なーんにも考えずにオサ様の横に収まっている。

 明智くんと波越くんは、親友同士。
 互いに尊敬の見える、大人の男の友情。

 ふたりの関係が、やりとりがあまりに自然で、びっくりしたさ。

 なんだよなんだよ壮一帆、なんかやたらとかっこいいぞ?
 オサ様がカッコイイのは地球の常識だとしても、その横に立つのが似合うくらい、壮くんもかっこいいぞ?

 波越くんは彼特有の鈍くささとなまぬるさで、それでも心を開いて明智くんを見つめている。

 明智くんは明智くんで、妙なテンションの高さで波越くんに……甘えている?

 初日のおどろき。
 あまい。
 オサ様なんか、あまいぞ?

 心が、波越くんの方を向いている。
 銀橋でクネクネ歌っているときはチガウけれど、波越くん相手に話しているときは、ほんとーに波越くんを見ている。自分を見ていない。
 や、オサ様演じるキャラクタは、相手への関心度によって心の向け方が変わってくるから。下手すりゃ相手と話しながらも自分のことしか見てないから。

 波越くんのこと、好きなんだ。

 そう思えるキャラクタ像に、びびる。

 さらに。
 ……さらに、うろたえまくったことは。

 新婚ホヤホヤの波越くんに「おめでとう」と言いながら、明智くんは言うんだ。「ひとつ聞いてもいいか」と、改まって。

「どうして結婚した?」

 この台詞が。
 下手花道から銀橋にかけての立ち位置で、観客に背を向け本舞台上の波越くんにだけ顔を向けて言う、この台詞が。

 めちゃくちゃ、甘かったの。

 スウィートですよ。
 甘え声ですよ。

 媚態を含んだ声ですよ。

 うろたえましたとも。

 なななななんなんのアンタたち。
 これって睦言?
 恋人同士の会話?
 元カレ相手に言ってる?

 返す波越くんの台詞もすごい。

「子どもも欲しかったし」

 ……明智くんには産めないもんな、子ども!!
 別れた理由はソレか、波越よ!!

 はぁはぁ。
 初日から、無駄に消耗しました。

 初日のあと、わたしが次に観劇したのはいつだったかな。2日後?(海馬に残ってない……)
 そのときには、明智くんの「どうして結婚した?」はふつーの声音になっていました。

 やっぱマズかったんだ、初日のアレ。
 やりすぎてたんだ。

 オサ様の演技は日替わり公演替わりが基本だけど、あれほど完璧に甘え声だったのは、初日1回のみだった。や、わたしはたかだか15回しか観てないから、狭い範囲での話だけど。ん? 回数チガウ? 芝居は捨ててショーだけ観たこともあったよな?(海馬がもうあやふや……)

 
 明智くんと、波越くん。

 初日から、わたしの頭を横殴りにしてくれた、麗しきリーマンBLの図。

 萌えとか明智受とか、そーゆーことが言いたいわけでもなく、ただもう、明智くんの甘えっ子モード全開さに、オサファンとして目眩がしたのよ。

 だって壮くんは、あの通りのなまぬるさで。
 甘えっ子なオサ様のことも、同じ温度でふつーに受け止めていそうで。
 や、ソレ君、破格の扱いだから!! 君がわかっていないだけで、ものすげーことになってるんだから!!

 明智くんの媚態は初日限定だったとは思うけれど、かわりに彼は、追跡シーンでいちゃいちゃしはじめた。

 初日はまだ、ふつーだったのに、追跡シーン。

 日を追うごとに明智くんと波越くんは、密室の中で愛をはぐくむ。

 仕掛けるのが、明智くん。
 波越くんはやっぱりぬるい。でも、明智くんにかまわれるのはうれしいみたい。
 明智くんは、波越くんの木訥な反応を愉しんでいる。小悪魔的に。

 
 たぶん、このふたりが素晴らしいのは、壮くんに色気がないことだと思う。

 彼はほんとふつーの、鈍い30男なのよ。
 妻を愛し、仕事に誇りと責任を持ち、親友に心を砕く、ふつーの愛すべき日本男児。
 色っぽいことなんかぜんっぜん考えてないし、耽美とか芸術とかもまったくわからない。

 そんな、ふつーに健康的な彼の親友が、天才であり、多分に背徳的な美や快感の側に立つ耽美青年であるということ。

 波越くんは明智くんを理解できないし、明智くんもソレをわかっているけれど、それでもふたりは親友なの。
 互いを尊敬し、愛しているの。

 車の中でいちゃつく30男ふたり(公式の年齢設定なんぞ無視)に、変ないやらしさがないのは、波越くんがなにもわかっていないから。
 空気読めない男だから。
 明智くんの色っぽさをまったく理解せず、彼がデフォルトで振りまいている鱗粉のごときチャームオーラにも無感動。
 だからこそ明智くんも安心して、エロ気全開に甘えていられる。

 
 おもしろいなあ。
 明智くんと、波越くん。

 このふたりの空気感。
 美しさの相乗効果。
 耽美と健康美。
 倒錯と純粋。

 
 黒蜥蜴@彩音を失い、心が死んでしまった明智くんを救うために、波越くんが手をさしのべるのは基本でしょうね。
 明智くんの魂懸けた誘い受に、さすがの鈍感波越くんも、重い腰を上げるでしょう。
 彼はとことん健康的な思考回路の持ち主だから、「女は妻一筋」「明智くんは男だから、これは不貞ではない」とか、ふつーに思っていそうだ。
 そしてそんな波越くんの思考も言動も全部、もちろんわかっているのが明智くん。

 素敵な関係。


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