雪組『エリザベート』において。

 瞠目したのは、フランツ@ゆみこの群を抜いた実力と安定感。

 うまい人だというのは知っていたさ。
 そのハートフルで繊細な演技力も、貴公子系のキャラクタだということも知っていたさ。
 それにしたって、なんなのこの実力のちがい。

 トート@水とエリザベート@となみが、まず「ミュージカルであること」に苦戦しているってゆーのに、ひとり軽々「ミュージカル」してるんですけど?

 基礎力のちがいがまんまカタチになったような。

 「歌」に足を取られない分、別のことまで視野が広がっているというか。主役ふたりが足下見て歩いているなか、ゆみこひとり前を見ているというか。なんだよ、カオが見えるのゆみこだけかよ、とゆーか。

 銀橋でシシィとラヴラヴソング歌っている姿を見て、この人がいてくれてよかったと思った。
 ゆみこがいなかったら、どーなっちゃってたんだ、雪『エリザ』。主演クラスに「歌手」がいないとどれだけ大変なことになるかを実感したわ。
 「開けておくれ」の場面で、歌い出しの「♪エリザベート」を完璧に歌える人、はじめて見た。どのフランツも低すぎて声出てないのに。ゆみこってここまで低音出る人だっけ??

 彼の基本スキル「あたたかさ」が、うれしい。
 人間性への安心感。このフランツならもう、放っておいても大丈夫だ、みたいな(笑)。

 そして、中日のときは感じなかった寂しさを感じた。

 ゆみこはやはり、ゆみこなんだなと。
 ゆみこは雪の遺伝子を持っており、雪組にこそ似合うし、花にいたときはぶっちゃけいろいろ微妙だったのが、雪でならトップもOKじゃん? という人に思える。(人名を壮くん、組名を雪と花を入れ替えてもヨシ)
 それでいてなお、たしかに花組時代のキャリアを、歴史を刻んでいる。
 安定して歌う、難役フランツを堂々と演じきってしまう姿に、彼の「花組時代」「オサの相手役時代」の姿を見て、切なくなったのさ。

 彼はたしかに、キャリエールだったのに。
 花組のゆみこだったのにー。
 さみしいよお、ゆみこぉ。

 ……それと同時に、誇らしくもある。花組のゆみこが、こーんなにも実力のある人なんだぞってことが。

 ちょっと花組っぽさ、オサ様の相手役っぽさが出ていて、「雪組らしくない?」と思えるところも多々あった。
 それもいずれなくなり、どんどん「雪組」になるんだろうな。
 あー、それを思うとまた寂しいなぁ。
 いやその、雪組で花開いて欲しいと心から思ってるんですが。

 ちと心乱れつつ。
 ゆみこは躍進の時だなと思った。

 
 ゾフィー@ハマコ。
 フランツの次がゾフィーなのか(笑)。
 や、その、フランツとセットの役だし。

 初演のイメージが強いので、わたしは勝手に「初演の朱未知留」を踏襲したゾフィーになると思い込んでいた。

 だからちょっと、びっくり。
 朱未知留とは正反対の役作り。
 リアルな皇太后、生身の女性だった。

 わたしは初演のゾフィーがいちばん好き。勧善懲悪がはっきりしていて、シシィのヒロイン度が上がるから。
 朱未知留のゾフィーは「ディズニーの悪役」風だった。
 ゴキブリの触覚みたいな大袈裟な眉を描き、コミカルに大仰に演じる。
 わかりやすく悪役で、そのくせ憎めない。
 シシィに対する意地悪ぶりも、現実離れしていて心安らかに眺められる。

 タキさんのゾフィーは生々しくて苦手だった。
 現実の嫁姑関係を見せつけられるようで。日本の中流家庭と同じ人間関係の臭い。……それってやだなあ、と。

 「牝」の部分を感じさせたはっちさんだとか、タキさん系だけど弱く薄かったちずさんだとか、人によってそれぞれだけど。

 まさかハマコが、リアル路線で来るとは思わなかった。
 ひとりの、皇太后。
 シシィに対する態度も、意地悪とか嫁姑とかじゃなく、皇太后としてのものだった。

 凛として美しい、立場と使命をわきまえた女性。

 なんなんだそりゃー。ハマコなのにー。(いろいろ失礼)

 フランツとともに、リアル系の役作り。
 このふたりが「親子」であり、同じ世界で生きていることがわかる。
 てゆーか、他のキャストと比べ、フランツとゾフィーだけキャラクタがチガウ気がするんだが……いいのかな。

 『タランテラ!』での裏声は大変そうだったのに、ちゃんと美しいソプラノになってますよ! 『タランテラ!』は男役のままの裏声だったから、あんなにえらいことになってたのかな。

 ハマコって、女だったんだ。
 ハマコって、美人だったんだ。

 や、わかっていたはずのことに、今さらおどろく(笑)。
 ハマコすげー。

 あの大阪ドーム(今は別の名前)みたいな髪型で、それでも美しいんだから大したもんだ。

 でも最終答弁のときのゾンビは怖すぎ。
 ハマコだわっ、ソレでこそハマコだわ〜〜っ!!(ハマコを見ていると、うっかりトート閣下やフランツ陛下を見損ねますよ!)
 

 ルキーニ@キムは、やっぱ難しい役なんだなと、再認識させられた。
 初演トドを超えるルキーニには出会えないのか。

 なんか、声がちがって聞こえたんだが……キムってあんな声だっけ?
 2幕になると突然声の通りが良くなったから、マイクの関係もあったんだと思う。音声さんがんばれー。

 いわゆる「ルキーニ」としては弱いと思うのだけど、今回の『エリザベート』という作品の中のルキーニとしては、なんつーかこー、すごく興味深い。

 トートの設定が今までのどの『エリザ』ともチガウわけだから、ルキーニもちがってるんだよね。
 そして、キムがまた細かい演技をしている。
 舞台の隅や花道で、台詞もなく「物語」を見つめているとき、彼はときどき思いもかけない表情をしている。
 他の全部をあきらめて、最初から最後までルキーニだけを見る日、てのを作ったらおもしろそーだ。
 別の物語が見えてきそうだ。

 わたしは初演雪組ファンで、トドロキファンだったので、初演時はやりましたよ、「他の全部をあきらめて、最初から最後までルキーニだけを見る」っての。
 だからこそ、キムのルキーニがトドとまったくチガウ感性でそこにいることが感じられるのね。あれ、なんかチガウぞ、って。
 すごーく引っかかるので、ルキーニのことはちゃんと本腰入れて見てみたいな。

 キムのビジュアルは、ものごっつ好みだ。
 かーーっこいいっ。
 なんなのあのジャニーズ系(笑)。
 黒塗り+ヒゲの方がいつもにも増してジャニ系っぽいってナニごと?
 イマ風になるからかね、ラフな髪型とヒゲって。

 フィナーレはヒゲ無し、あまりの美形っぷりに釘付けです。

「男役群舞で、オヅキが一度少人数口から外れる。群舞からいなくなる」
 と、オヅキファンのチェリさんがすごい勢いで愚痴っていたのに、わたしとパクちゃんはオヅキの立ち位置をまったく理解していなかった。
「キムしか見てなかったんで、わかんない」ーー声が揃ったもんよ、わたしたち(笑)。

 キムかっこいー。
 いろいろこまるわ(笑)、あんなに美形だと。

 

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