「彼女を愛した? それは君が、心弱くなっていただけに過ぎない。君は本来、こんな生活をするべき器ではない。君には君に相応しい場所がある」
まっつは彼らしい滑舌のよい話し方で、明快に語った。
「相応しい場所?」
「この異国が、彼女の元が、君の居場所なのか? 故国でもなく、その才能を活かせる仕事や地位でもなく?」
「それは……」
みわっちは、言葉を濁す。どちらとも答えられない。
「彼女とは、別れるべきだ」
まっつは断言した。言葉の力強さが、彼の指し示す道の正しさを表しているかのように。
「君は彼女を愛してなどいない。そう錯覚しているだけだ。もしここが慣れ親しんだ故国ならば、卑しい踊り子に心惹かれることなどなかったはずだ。君は孤独だった。君は君に庇護を求めるかよわき存在を得ることで、救われたかった。それだけだ」
ちがう。私は彼女を……言いかけたはずの言葉は、声として発せられることはなかった。
まっつの手が、知らずうつむいていたみわっちの頬に添えられた。のぞき込むように、親友の顔が近づいてくる。
「君は彼女を愛していない……ただ、流されただけだ。君の居場所はここじゃない。君は私と、帰るべきだ。君のいるべき場所へ」
☆
……てなやりとりを、想像して大喜びしました。
花組バウホール公演『舞姫』配役発表。
や、妄想するなら役名でするべきですね、豊太郎と相沢です、はい。
でもって、べつに注意書きするほどのこともないでしょーが、上の会話は嘘っぱちですから。勝手に書いてるだけですから。
でも『舞姫』って、こーゆー話だよね?
優柔不断のヘタレ受姫豊太郎を、計算ずくの泣き落とし女エリスと狡猾な母親が食い物にし、エリート強引攻男相沢が救い出す話、だよね?
豊太郎はなさけない男だけど、とりあえず美形でフェロモン発していて、天方伯爵をめろめろにしてパトロン志願させ、結局は相沢と一緒に日本に帰るんだよね?
や、読んだの高校のときだから海馬の記録がまちがっているかもしれないけど。
エリスと相沢、豊太郎を欲するふたりの攻が争い、相沢が勝つんだよね? で、エリスは発狂するんだよね? ん、死ぬんだっけか? 狂うのまではたしかなはず。
で、豊太郎は相沢を愛しながらも憎んで、そっから先は読者の妄想に任せます、みたいな、すごい終わり方をしてなかったか?
まっつ、相沢役キターーッ!!
みわっち受のまっつ攻!!
なんてすばらしい配役。
欲しいものを手に入れるためには、手段を選ばない冷酷な攻。クールビューティーでお願いします。まっつの容姿や持ち味を活かせるキャラクタでありますように。
相沢役って、解釈によっては木訥で人の好い無神経キャラになるからなー。豊太郎が繊細なイメージだから、その対比だか現実にモデルがいるのか知らないが、体育会系に描かれたりするもんよ。
まっつなんだから、ソレはないと思うが。きっとことさら知的エリートキャラになると思うが。
頼むから、クールビューティーで!! ついでに、さりげなく鬼畜属性で!!
わたしは攻キャラスキー、わたしに攻なまっつを見せて〜〜。
なんて勝手に言ってますが、どんな比重で景子タンが描くかわかりませんからなあ。
エリスと同棲するまでのやりとり中心なら、相沢が登場するのはほんと最後だけになっちゃうしな。1幕はプロローグのみでそのあとまったく相沢は登場しません、とか、ぜんぜんアリだろーし。
高校時代、『舞姫』という小説はわたしと周囲の女子たちに大変不評でした。
なんつっても、
「豊太郎さいてー! マザコンでスケベで優柔不断で、結局女捨てて出世を取るし! 女の敵!!」
「なにが『富貴』よっ」
「自分が全部悪いくせに、親友のせいにするし」
……ということで、女子から見て魅力的な男ではなかった。
とくに「何、富貴」という台詞が仲間内で流行ったなー。いちばんムカつく台詞として(笑)。
ヒロインのエリスにしても、
「ウザい女」
「二言目には『捨てないでね』『捨てたら化けて出るわよ』ってべそべそ泣いて、捨てられてとーぜんだっつーの」
「不幸を売り物にして、『可哀想なわたし』の宣伝ばっかして、かわいこぶるこわい女」
女がいちばん嫌うタイプの女ということで、捨てられて発狂するのは可哀想だと思う反面、かなりムカつくのもたしか、という。
そんななか、わずかな図書室仲間たち(ヲタク少女は図書室に集まっていた)だけで、
「相沢と豊太郎って萌えだよね」
と、話していた。や、当時は「萌え」という概念はなかったが。(漱石の『こころ』で「『先生』と『私』って、萌えだよね!」とか、あのころはいろんなものに萌えてましたなあ。ははは)
『舞姫』は短編小説だし、全体を通して「あらすじ」みたいな話だからこそ、いくらでも脚色も妄想も出来る。
創作者として、このネタを料理するのはたのしいだろうなと思うんだ。
豊太郎とエリスの美しくもはかない恋の物語にもできるし、魔性の女エリスがウブな留学生を手玉に取る話にも、相沢とエリスが豊太郎を取り合う話にも、フェロモン男豊太郎が出会う人すべて(老若男女問わず)をたらし込んでいく話にも、いっくらでも発展できるんだから。
景子タンのお手並み拝見。
まっつ云々を抜きにしても、たのしみだ。
みわっちはさぞや美しく豊太郎を演じてくれるだろうし。また、苦悩や慟哭もとことんクドくやりすぎなまでに表現してくれるだろうし。
ののすみちゃんは安心の実力派だし。下手をすりゃあウザいだけの泣き女を、どこまで女性の共感を得られるキャラクタに仕上げてくれるかたのしみだ。
みつるの役がどんな役なのかいまいちわかってないんだが(オリキャラだよね?)、みつるの華やかさを活かせる役っぽいのでそれもたのしみだー。
少女マンガの景子タンでなければ、相沢×豊太郎を本気で期待するんだが(笑)。景子タンだからまあ、そのへんは期待できないだろう。
サイトーくんか、大野っちならガチだったんだがな。
なんにせよ、まっつが相沢役で単純にうれしいです。
さて、チケットどうするかな……。(観劇回数、年間100回以内、月8回の誓いはどこへ行ったんだろう……)
まっつは彼らしい滑舌のよい話し方で、明快に語った。
「相応しい場所?」
「この異国が、彼女の元が、君の居場所なのか? 故国でもなく、その才能を活かせる仕事や地位でもなく?」
「それは……」
みわっちは、言葉を濁す。どちらとも答えられない。
「彼女とは、別れるべきだ」
まっつは断言した。言葉の力強さが、彼の指し示す道の正しさを表しているかのように。
「君は彼女を愛してなどいない。そう錯覚しているだけだ。もしここが慣れ親しんだ故国ならば、卑しい踊り子に心惹かれることなどなかったはずだ。君は孤独だった。君は君に庇護を求めるかよわき存在を得ることで、救われたかった。それだけだ」
ちがう。私は彼女を……言いかけたはずの言葉は、声として発せられることはなかった。
まっつの手が、知らずうつむいていたみわっちの頬に添えられた。のぞき込むように、親友の顔が近づいてくる。
「君は彼女を愛していない……ただ、流されただけだ。君の居場所はここじゃない。君は私と、帰るべきだ。君のいるべき場所へ」
☆
……てなやりとりを、想像して大喜びしました。
花組バウホール公演『舞姫』配役発表。
や、妄想するなら役名でするべきですね、豊太郎と相沢です、はい。
でもって、べつに注意書きするほどのこともないでしょーが、上の会話は嘘っぱちですから。勝手に書いてるだけですから。
でも『舞姫』って、こーゆー話だよね?
優柔不断のヘタレ受姫豊太郎を、計算ずくの泣き落とし女エリスと狡猾な母親が食い物にし、エリート強引攻男相沢が救い出す話、だよね?
豊太郎はなさけない男だけど、とりあえず美形でフェロモン発していて、天方伯爵をめろめろにしてパトロン志願させ、結局は相沢と一緒に日本に帰るんだよね?
や、読んだの高校のときだから海馬の記録がまちがっているかもしれないけど。
エリスと相沢、豊太郎を欲するふたりの攻が争い、相沢が勝つんだよね? で、エリスは発狂するんだよね? ん、死ぬんだっけか? 狂うのまではたしかなはず。
で、豊太郎は相沢を愛しながらも憎んで、そっから先は読者の妄想に任せます、みたいな、すごい終わり方をしてなかったか?
まっつ、相沢役キターーッ!!
みわっち受のまっつ攻!!
なんてすばらしい配役。
欲しいものを手に入れるためには、手段を選ばない冷酷な攻。クールビューティーでお願いします。まっつの容姿や持ち味を活かせるキャラクタでありますように。
相沢役って、解釈によっては木訥で人の好い無神経キャラになるからなー。豊太郎が繊細なイメージだから、その対比だか現実にモデルがいるのか知らないが、体育会系に描かれたりするもんよ。
まっつなんだから、ソレはないと思うが。きっとことさら知的エリートキャラになると思うが。
頼むから、クールビューティーで!! ついでに、さりげなく鬼畜属性で!!
わたしは攻キャラスキー、わたしに攻なまっつを見せて〜〜。
なんて勝手に言ってますが、どんな比重で景子タンが描くかわかりませんからなあ。
エリスと同棲するまでのやりとり中心なら、相沢が登場するのはほんと最後だけになっちゃうしな。1幕はプロローグのみでそのあとまったく相沢は登場しません、とか、ぜんぜんアリだろーし。
高校時代、『舞姫』という小説はわたしと周囲の女子たちに大変不評でした。
なんつっても、
「豊太郎さいてー! マザコンでスケベで優柔不断で、結局女捨てて出世を取るし! 女の敵!!」
「なにが『富貴』よっ」
「自分が全部悪いくせに、親友のせいにするし」
……ということで、女子から見て魅力的な男ではなかった。
とくに「何、富貴」という台詞が仲間内で流行ったなー。いちばんムカつく台詞として(笑)。
ヒロインのエリスにしても、
「ウザい女」
「二言目には『捨てないでね』『捨てたら化けて出るわよ』ってべそべそ泣いて、捨てられてとーぜんだっつーの」
「不幸を売り物にして、『可哀想なわたし』の宣伝ばっかして、かわいこぶるこわい女」
女がいちばん嫌うタイプの女ということで、捨てられて発狂するのは可哀想だと思う反面、かなりムカつくのもたしか、という。
そんななか、わずかな図書室仲間たち(ヲタク少女は図書室に集まっていた)だけで、
「相沢と豊太郎って萌えだよね」
と、話していた。や、当時は「萌え」という概念はなかったが。(漱石の『こころ』で「『先生』と『私』って、萌えだよね!」とか、あのころはいろんなものに萌えてましたなあ。ははは)
『舞姫』は短編小説だし、全体を通して「あらすじ」みたいな話だからこそ、いくらでも脚色も妄想も出来る。
創作者として、このネタを料理するのはたのしいだろうなと思うんだ。
豊太郎とエリスの美しくもはかない恋の物語にもできるし、魔性の女エリスがウブな留学生を手玉に取る話にも、相沢とエリスが豊太郎を取り合う話にも、フェロモン男豊太郎が出会う人すべて(老若男女問わず)をたらし込んでいく話にも、いっくらでも発展できるんだから。
景子タンのお手並み拝見。
まっつ云々を抜きにしても、たのしみだ。
みわっちはさぞや美しく豊太郎を演じてくれるだろうし。また、苦悩や慟哭もとことんクドくやりすぎなまでに表現してくれるだろうし。
ののすみちゃんは安心の実力派だし。下手をすりゃあウザいだけの泣き女を、どこまで女性の共感を得られるキャラクタに仕上げてくれるかたのしみだ。
みつるの役がどんな役なのかいまいちわかってないんだが(オリキャラだよね?)、みつるの華やかさを活かせる役っぽいのでそれもたのしみだー。
少女マンガの景子タンでなければ、相沢×豊太郎を本気で期待するんだが(笑)。景子タンだからまあ、そのへんは期待できないだろう。
サイトーくんか、大野っちならガチだったんだがな。
なんにせよ、まっつが相沢役で単純にうれしいです。
さて、チケットどうするかな……。(観劇回数、年間100回以内、月8回の誓いはどこへ行ったんだろう……)
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