今頃ですが、月組全国ツアー『ダル・レークの恋』初日観劇時の感想。

 なんか、わたしの知っている『ダル湖』と、1から10まで、なにもかもがあまりにちがって、大ウケした。

 10年も前に大劇場で観ただけの記憶なんだが、『ダル湖』といえばエロいというイメージ。
 エロくてきわどいラヴシーンがウリだと思いこんでいた。

 だからびっくりさ。

 あの『ダル湖』が、さらりサワヤカだ!!

 すげえ。
 まったく別物!!

 『ダル・レーク』と言えば、円形ベッド。
 欲情を表すかのよーに男は自分のターバンをむしり取る。ばさりと広がるのは野性的なチリチリロン毛。おびえる女のサリーを掴み、くるくる回して脱がせる。
 あーれー、お代官様、おやめください〜〜。

 星組版の『ダル・レーク』を観たとき、わたしはもー、笑いをこらえるのに必死だった。ツボに入っちゃって、声を殺して笑うのに腹筋を鍛えられた。

 マリコさんのラッチマンは、ひたすらエロかった。エロくてうさんくさくて、見ていて恥ずかしいやらくすぐったいやら。
 かっこいいし素敵なんだけど、その素敵さっつーのがだね、地団駄踏んで転げ回りたいよーなかっこよさなの!!
 クドい! 濃い! ネバい!
 ラヴシーンに限らない。ただ立っているだけ、ふつーの台詞を喋っているだけでもエロ胡散臭いのよー!

 だから、ラッチマンと『ダル湖』ってのは、そーゆーもんだと思いこんでいた。
 つまり、転げ回りたくなるよーな、恥ずかしいまでの濃いぃぃいエロエロなラヴシーンのある、大人の恋物語。

 それが今回、月組版を観て感心。

 エロくねえ!クドくねえ! てか、サワヤカだ!!

 そ、そうか……あれはマリコさんと星組の持ち味だったのか……。作品がどうとかゆーわけぢゃなかったのね。

 同じようにラッチマン@あさこちゃんはターバンをはずして(むしり取り、ではない)、カマラ姫@かなみちゃんをくるくる回して脱がして、円形ベッドに押し倒すんだけど。

 やっていることはけっこうアダルトできわどいはずなのに、あさこがやると、いやらしくない。
 ただ、きれいだ。
 年齢設定もチガウ? 20代前半の若者くん? 7年前がどーとかって、パリの高校に留学していたころとか?
 オトナ設定ぢゃなかったのか……。
 さわやかな青春の息吹が感じられて、コレはコレでよいと思う。
 マリコさんはパリ時代ですら、すでに胡散臭い大人の男だったので、不良高校生バージョンって感じのあさこと差別化が出来ていていいと思う。せっかくの再演だもんな。
 

 芝居が薄いのはあさこちゃんの固定スキルなんだろう、そして、この薄さや軽さが彼のきれいさやオシャレさに通じているのだろう。濃い、クドいってのは、やっぱダサさに通じるモノだから。

 なにをやってもきれいにまとまる、清潔感があるっていうのは、あさこちゃんのスターとしての特質ってもんだろう。
 それって、トップスターとして、正しいよね。

 まるで少女マンガのようだ……。
 どんなラヴシーンも点描だの花だのが飛び交っていて、肉の生々しさを持たない。いやらしさや汚さを持たない。
 きっとこれこそが、正しいタカラヅカなんだろう。

 10年前、わたしはコテコテ過ぎる『ダル湖』に大ウケはしたけれど、それ以上はナニも感じなかった。作品の古くささに辟易したのみだ。
 当時のわたしは、クドすぎるマリコさんと星組の芸風についてゆけなかったのだ。今のわたしならまた別かもしれないが、当時は硬質なトドロキと雪組の芸風をもっとも愛していたので、どーにも相容れなかったのだわ。

 あの当時のわたしを鑑みて、「あさこと月組の『ダル湖』なら」と考える。
 ……ぜんぜん、OKだったかも。ゆーひくんの二枚目ぶりに、ふつーによろこんでいたかも。

 主役の持ち味と、組のカラー。
 同じ作品をやって、ここまで別物になる愉快さ。

 そう、あさこだけのことじゃない。
 月組と星組じゃあ、持ち味正反対だもんな。

 月組は現代的でオシャレな、さらりとした芸風。だが星組は今も昔もコテコテの大仰芝居を得意とする。
 正塚芝居が似合う組と、植田芝居の似合う組。
 ……そら、ぜんぜんチガウわ。
 や、だからといって星組で植爺芝居が観たいわけではないけれど。つーかもうどの組でも観たくないけれど。

 組の持ち味を考えて、さらに納得するのは、遅れて出てくるペペル@ゆーひ。

 これがまた、星組バージョンのノルさんと、まったくチガウ。
 ふつーに、かっこいい。

 わたしは当時、ノルさんのことを「薄い」「正統派」とかゆーイメージがあったんだけど、ソレって星組比だったんだ。マリコさん比だったんだ。
 ノルさんのペペルもまた、問答無用で胡散臭かったからさぁ。大仰と言うか、存在自体嘘くさいというか。
 それがマリコさんと絡むともお、恥ずかしいやらアセるやら。や、ソレが素晴らしい「味」だったんだけど。

 ペペルってこんなに、ふつーにかっこよかったんだ……。立っているだけで笑えるよーな、くすぐったい恥ずかしさのある人ぢゃなかったんだ……。

 マリコファンで星組ファンでもあったBe-Puちゃんと月『ダル湖』初日観劇したあとお茶していたんだけど、
「当たり前でしょ、ノルさんは『パン泥棒アレクセイ』が当たり役だった人よ! 胡散臭いに決まってるじゃない! 薄いわけないじゃない!」
と、叱られました……。
 た、たしかに。あの役と某TCAのアシュレができる人だもんな……。

 ラッチマンはさわやかな少女マンガのおにーちゃんだし、ペペルはふつーに二枚目だし、他の組子たちも時代錯誤な脚本と現代的な芸風を埋め合わせずにいるし、なんか愉快なことになってます。

 この作品さあ、今の月組向きに本気で書き直すべきだったと思うよ。

 現代感覚で90分の1幕モノに短縮するべきだ。
 50年前はこれで笑えたんだろうな、と遠い目をしてしまうつまんないギャグキャラをなくして、盛り上がりに水を差す子ども騙し的かわいらしい?シーンをなくし、あくまでも本筋だけを際立たせる。
 台詞は全部書き直そうよ。もちろん、古めかしさゆえに萌えることはあるのだから、現代語訳するというのではなく、あくまでも言語センスを現代にするという意味。
 月組の持ち味が活きるように。

 タニちゃんの『不滅の恋人たち』でもそうだけど、主役がきわどいラヴシーンを演じる作品は、ソレだけで単体ファンが大喜びする。
 完全に主演ファン向け作品と割り切って、バウとかDCとかでファンだけで客席埋める勢いで上演すれば、幸福な作品になるんじゃないのかな。
 ついでに2幕はふつーにショーにして。こちらももちろん、主役のためだけにある構成で。
 それってすごく「タカラヅカ」だと思うなー。
 

 書き直さず、今の脚本演出のまま上演するなら、別の組の方が合うっちゃー合うかもなー。なにしろ作品古いし昭和時代独特の臭味があるし。
 作品の古さもこの際逆手にとって、とことん時代錯誤に昭和テイストにやっちゃうとか。

 ラッチマンはいいキャラだし。今のままでももっと芝居的に掘り下げることができたら、主役としてすごくたのしいキャラになるはず。
 てゆーか、わたしの趣味が濃ぃ〜〜い芝居の方だから、つーだけのことだが。
 マリコさんを踏襲する意味で、見ているだけで赤面させてくれる持ち味の人で、ラッチマンが見てみたいぞ。
 らんとむ希望。立っているだけ、喋っているだけなのに、クド恥ずかしい濃いぃいラッチマン(笑)。
 もしくはすごーく痛々しい慟哭型の演技がハマる人とか。
 もちろんトウコ希望。痛々しさがドラマティック、傷ついた瞳を自虐的にギラつかせるラッチマン。
 すごい見てみたいんですけど(笑)。
 

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