初日ですから、駆けつけました、花組公演『源氏物語 あさきゆめみしII』
 チケットなかったんでサバキ待ち。あ、チケットのことでメールくれたHさん、ありがとう。メールに気づいたのが遅かったので、連絡できなかったっす。で、正攻法でサバキ待ち。
 運良く声かけてもらい、3階のいちばん後ろで観劇しました。いやあ、あのサバキ待ちの数見て、あきらめていたのでラッキーだった。

 退団発表後、はじめてのオサ様。
 あああオサ様……オサ様……。

 オサ様に限定して言えば、もちろん、すばらしいです。

 美しい姿、艶のある歌声、涙を流しての熱演。
 オサ様が登場するなり空気が変わります。

 ああ、トップスターだ。
 この人は、トップスターなんだ。
 空気を動かし、支配する力。
 カリスマ、という言葉を具現する存在。

 春野寿美礼の前に、ひれ伏したい。

 なんてすごい人なんだろう……これぞトップ……。

 ええ。
 駄作を力技でひっくり返すのが、トップの仕事ですから。

 …………。
 …………。
 …………。

 草野旦、許すまじ。

 もともとわたしは、草野せんせーは好きじゃない。てか、嫌いだ。センスが合わないのよ、わたしと。
 『火の鳥』『マンハッタン不夜城』でわたしの観劇意欲を粉砕し、『ブラックジャック』『CAN−CAN』が1回しか観られなかった(ショーがキライ過ぎて、芝居すら観られなかった)ことでまず恨み節だったんだが、その後もなにかと不快感を煽る作品を作り続けてきた。中にはまあ、ましなものもあったんだが、前回の『ザ・クラシック』で恨み骨頂、さらに株が下がり、底値を記録していたんだが。

 まだ底があったのか!

 びっくり。
 ぼーぜん。

 素朴な疑問なんですが、なんで草野が芝居の演出やってんの? この人、ショー作家でしょ? 作劇できない人に、なんで大劇場より高額な劇場の芝居を作らせるの?

 8000円っすよ。1階26列目でも、この値段よ? 大劇場よりはるかに高いのよ?
 出演者が少なく、音楽が録音なのに、8000円。同じハコで同じ条件で全ツは6500円なのに。
 去年、一昨年は海外ミュージカルだし生オケだし、で、料金が高いのもわかったんだけど。

 海外ミュージカル+生オケより、よほど特別感がなけりゃーならんのに、この大駄作。

 オサ様の男役としてカウントダウンがはじまったあとの、貴重な1作がコレかと思うと握り拳ですよ、草野め〜〜っ。

 えー、『あさきゆめみしII』は、箇条書きでした。
 話が。
 出来事を箇条書きで羅列してあるの。
 なにがあった、こんな人がいた、こんなことを言った。
 原作を横に置いて、ただ箇条書きで単語帳に書き出してあるの。
 単語帳だから、1行しか書けない。内容を深く表現することはできない。

 でもって、すごいのはこの箇条書きの単語帳を、草野氏は、一度、落としたらしい。

 リングがはずれて、ページがばらばらになっちゃったの。さあ大変。
 あわててかき集めて……あれ? 順番がわからなくなっちゃった。まあいいや、てきとーに並べ直しちゃえ。合ってる合ってる、大丈夫。……あれ? なんか微妙に枚数減ってる気がする。まあいいや、なくなっていたって数枚のことだから、誰も気にしないよ、大丈夫。

 大丈夫ぢゃねえよ。

 時系列合ってねえ、欠落と無駄な重複、キャラの人格破壊、無意味なエピソード抽出、まちがった演出、悪趣味な歪曲、なんなんだコレ。
 ただの箇条書きすら、できてねえ。

 時系列に一貫性を持たせろ。視点を統一しろ。テーマを決めて、ソレに沿ったエピソードの抽出をしろ。
 一貫した人格があるのが光源氏@オサと朱雀帝@さおたさんだけってどーゆーこと?! あとは人格ナシか多重人格ってなにごと?! しかも朱雀帝は出番ほとんどないのに、このほとんどない人が主役以外で唯一まともな人って、他がどんだけひどいことになってるんだ?

 なにがしたかったんだ?

 心からの疑問。
 これだけの原作を得て、何故ここまでひどいものを作れる?

 ただの出来事箇条書き……。
 箇条書きなのに、必要な項目が抜け、不要な捏造が有り。
 しかも描き方が悪趣味。
 演出は紙芝居。
 ありえねえ。ありえねえよおおお。

 作り直してくれ。
 草野では最初から無理だから、別の人にやらせてくれ。サイトーくんでもこだまっちでもいいよ。最低限芝居の演出経験者にやらせてくれ。素人にやらせるのはやめてくれ。

 
 とまあ、わたしの逆ツボ、逆鱗にジャストミート。
 植爺作品を「嫌いだっ」と叫ぶのとは、別の意味なの。
 『あさきゆめみしII』の草野旦の許せなさは、酒井澄夫の許せなさと同種なの。

 つまり、「物語」として、最初から機能していないものを「物語」と大嘘こいて舞台に載せていること。

 物語を作れないなら、はじめから書くな。

 情だとか文学・芸術だとかいう、ファジィな話じゃない。
 1+1=2だとかいう、計算の話なの。数学の話なの。論理の話であり、原因と結果の話なの。
 どの薬品になにを混ぜればどんな化学混合物ができるか、学校で習ったでしょう? アレと同じ。「物語」には、最低限の方程式がある。なにをどうすればどうなるって、シンプルに仕組みがあるの。

 草野せんせに説明してもらいたい。
 あの箇条書きのひとつひとつを、論理的に。

 テーマと視点を決めて、このエピソード、この台詞、この場面がどう意味を持ち、どう展開し、どう決着するのか。
 作劇の方程式で説明して欲しい。
 どういう仕掛けで、どういう意図でこの場面を作り、それがどこへつながり、どこで盛り上がり、それによってなにを表現しているのか。

 数学的な話だよ。
 プロ作品として上演しているんだから、計算の上で作られているはずだ。
 それを教えて欲しい。

 
 いやあ、幕間から梅芸ロビーの壁叩きまくっちゃったよ。あまりのありえなさに。ドリーさんと「どうしよう、コレ……」「どうするの、これ……」とつぶやきながら。

 視点のない、センスのない「箇条書き」がどれほどつらいかを、身をもって知った。
 1場面1場面、登場人物ひとつずつ、ばらばら。
 感情のつながりも、物語のつながりもない。

 そんな、とんでもない駄作だからこそ。

 春野寿美礼の偉大さを知る。

 ばらばらのぶつ切りなのに、彼が登場しているシーンだけ、いきなり持っていくんだよ。
 力尽くで。

 作品のひどさなんか関係なく、彼が歌っているその瞬間だけ、別のモノにしてしまうの。

 すごい。

 ……もっとも、それすらぶつ切りの箇条書きなんで、寿美礼サマが持っていった直後にまた紙芝居に戻ってドン引き、寿美礼サマ登場で別次元、の繰り返し。
 ははは、すげえや。

 まとぶは歌も声もすげーよくなっているし、さおたさんの気弱+病弱プレイはステキだし、アーサーがすげーがんばっていてツボだし、くまくますごすぎるし、きらりは女を上げているし、まぁくんかっこいーし、いろいろいろいろ見どころはあるんだが。

 正直、途方に暮れる。

 あああオサ様。
 オサ様。
 
 あなたの偉大さを、またひとつ思い知りました。

 あなたこそ、トップスター。
 

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