作品はとってもアレだし、主人公はさいてー男だし、といろいろいろいろこまったことになっている『バレンシアの熱い花』

 でもなんかねえ、フェルナンドは主人公なのよ。

 わたしはタニちゃんの演技はよくわからないので、その是非についてなにも言う言葉を持たないが、ただ、フェルナンドをすごーく「主人公」だと思う。

 とゆーのもだ。

 フェルナンドは、非凡な存在であることがわかるからなの。

 ふつーぢゃない。
 やってることひでーんだけど、ひどいにしても、ふつーの人がひどいことをしているんじゃなく、なんか「ひとつ上の次元」にいる気がする。

 この男を理解することはわたしには不可能なんだけど、否定することは絶対にないというか。

 これはタニちゃんの持ち味なんだろうなあ。
 演じる人によっては、すっげーイヤナヤツになるだろうに。
 なんかこー「お手上げ」っていうか、「コレも有りでしょ」な感じがする。

 作品のアラを補うよーな「真ん中」ぶりとも、トップスターの力業ともまたチガウんだが。
 それでも、「仕方ない」と思わせるだけの光とカラーを持っている。

 
 ラモン@らんとむはそれまでけっこーふつーなのに、女が絡むなり、オトコマエ度が跳ね上がる(笑)。

 イサベラ@ウメとのカーテン前がすげー熱量。
「つらいわ」と言って抱きついてくるイサベラを、抱きしめ返したくて、でもできなくて。
 そっから、「愛してる」の歌までが、すっげーいい男。

 らんとむは、女と絡むと、愛を表現するところにくると、どーんと前へ出てくるね。

 昨今貴重な、ダダ漏れに相手を愛する男。

 ワタさんの遺伝子を感じるんだよなあ……。
 あの包容力、男臭さ、そして愛。

 彼が熱量放出して愛を表現していると、ヲトメモードにスイッチ入るよ。
 彼の腕の中にいる、華奢な美しい女性になったよーな錯覚を起こす。
 彼がわたしに愛を語りかけているよーなドリームに包まれる。

 『NEVER SLEEP』に引き続き妹役のアリスちゃんに対しての、でろでろなおにーちゃんぶりとかさー。
 見ていてきゅんきゅんするなあ。
 まったく得難い色男だわ。

 三枚目はもういいから、マジで色男役が見たいっす。

 
 ロドリーゴ@みっちゃんは……期待したモノと、ちがったかなと。
 なんか、余裕のないつまんない男にしか見えなかった……。もちろん、脚本も大概なんだけど。
 シルヴィア@まちゃみとの映りが悪いのも気になった。なんでふたりしてあんなにイ……いやその、あか抜けないんだ。

 みっちゃんの実力、舞台の上での見せ方に信頼を置いているので、期待値が高すぎたのかも。
 てゆーか、彼があんまりうまくて堂々としているから忘れてたけど、ほんのこの間まで彼、何番手だった? 最近どーんと上がってきただけで、まだまだこれからキャリアを積んでいくべき立場の子だよな。
 大人の二枚目も貴公子も、恋愛をする役も、ろくに演じたことなんかないもんな……。

 ここからどう変わっていくのか、たのしみだ。

 
 イサベラ@ウメちゃんは、いい女だ……。

 フェルナンドがナニ考えてるのかさっぱりわかんないし、「別の次元」にいるよーな男だから、なんかすごーく大変なことになっているのに、ウメちゃんが力業で「恋愛」をしている。

 駄作を力業で「なんかいいもん見たかも?」にするのは、トップスターの仕事。

 ウメちゃんは、トップスターだ。

 彼女の「いい女」ぶりで、その「恋愛トップテンション」ぶりで、アレな脚本を力尽くで盛り上げている。

 イサベラが本気で恋愛モード戦闘開始!の場面は、舞台の濃度変わるよ。
 ラモンとイサベラの場面と、ラストのフェルナンドに別れを告げてひとり去っていくところ。
 このふたつの場面がすごい。

 
 でもって。

 ルカノール@ともち!!

 ともち! ともち!

 かっこいい〜〜!!

 ヒゲですよ、悪役ですよ! おっさんですよ!!
 物語がはじまるなりいきなり登場で、油断していたんで強烈でした、やーんかっこいー。

 でもって現れたフェルナンド母@邦なつきさんへの「昔惚れていた」発言で、一瞬、アタマが空白になりましたが……い、いや、いいんだ、負けるなオレ。

 いくつの設定なんだろうな、ルカノール。
 あの、孫娘@たっちんのいるレオン将軍@まりえったより年上に見えるフェルナンド母に惚れていたって……?
 そ、そうか、昔の話だわ。
 フェルナンド母がまだ若かったころ、母を慕うかのよーに少年ルカノールが恋をしたのよ。藤壺を愛する光源氏のやうに。
 15才のルカノールが30才のフェルナンド母に恋をしたっちゅーことなら、辻褄が合うのかな?
 おねーさまに弄ばれるのではなく、少年の方が主導権を握ってガンガン攻めたとしたら、それはそれで萌えな物語だわ。おねーさまと恋をする、少年ともち……うっとり。

 ルカノールの館がまた、すっげー安っぽさでねえ……あのぴらぴらの柱とかなんとかなんねーのかと嘆いたもんだが、それでもルカノールをはじめとして、悪役なみなさんが美しくて、かっこよくて。
 
 全編通してみんなすげー「時代劇」な喋り方と演技なんで、嘘くささもすごいんだけど、そのへんは割り切って楽しみましょう。
 ルカノールのわっかりやすい悪役ぶりを堪能しましょう。

 あのはるかに年上のフェルナンド母に「昔惚れていた」で、現在甥の恋人シルヴィアを妻にしているあたり、ルカノール、守備範囲広すぎ!!

 年増から少女まで、なんでもござれ、好き嫌い無し、おいしくいただけます、な素敵なおじさまなのね。
 これでロドリーゴに色気があれば、また別の物語も展開できるんだが……らんとむ版に期待かな。

 ともちの「肉厚さ」がときめきです。
 悪役として、老け役として、まだまだ足りていないとは思うのだけど、それとは別に「役者」としての資質を感じてたのしくなる。
 いいなあ、ともち。
 こーやって悪役が回ってくる人になったのか。番手とか気にしだしたらキリがないけど、悪役のできるいい男として華開いてくれたら、それはそれでたのしみだよなー。

 はあぁ。ショーでもともちステキだしなー。
 次の観劇がたのしみだー。


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