花組『ハロー!ダンシング』を考える。

 星組はあかしという「スター」を真ん中に据えた、「ふつーのタカラヅカ」だった。
 雪組はせしるを真ん中にしたかったけれど無理だと判断、座長で職人のゆめみちゃんが消去法でとりあえず、せしるができないことを代わりにやる。
 宙組は座長のすずはるきオンステージ。
 月組は固定スターなし、場面ごとに別の人がセンターで「正しいワークショップ、お勉強の場」。

 組ごとに意味合いがちがい、そのたびにわたしはいろいろいろいろ考えすぎて(笑)混乱してきた。

 それでも。
 『ハロー!ダンシング』はとりあえず「ワークショップ」で、通常のバウ公演や新人公演で主演するよーな人は出演しない、というコンセプトだけは守られていたと思う。
 どの組にも「路線ポジション」の男の子がいるが、彼らもまだこれからの存在で、今現在新公を含め主演はしていない。
 将来は主演するかもしれないけれど、現在まだ経験がないわけだから、彼らには二枚目らしいオイシイ場面はさせるけれど、「公演」を支えるのは彼らとは別の上級生だ。「職人ポジション」の生徒(男役・娘役両方あり)ががっちりとその実力で公演自体を締める。

 このラインだけは、たしかだった。

 星組は路線ポジを「スター・ポジション」に変換、あかしがスター&職人、両方のポジションを圧倒的な熱量で演じきった。
 雪組では路線ポジがせしる、職人ポジがゆめみちゃん。せしるの力不足を、ゆめみちゃんが補うカタチ。
 宙組では路線ポジが大ちゃん、職人ポジがすずはるき。大ちゃんは花として添えられる程度、すずがスターとして大活躍。
 月組では路線ポジが流輝くん、職人ポジがちわわちゃん。ただ月組は場面ごとにセンターが変わるので、路線だから職人だからとそれほど突出した役割はナシ。

 組によって配分は変わったけれど、路線ポジ、職人ポジはあった。それを基本ラインとして、同じ演目をやってきた。

 それが、花組は。

 まったく、ちがった。

 まず、路線ポジが。
 本公演2番手、新公主演、バウ主演と、トップスター街道をひた走っている生徒だった。

 ……ワークショップなのに。主演未経験者のみの舞台だったはずなのに。

 いやあ、見事にこれまでのコンセプトが崩れましたよー。
 劇団、ナニやってんだかねえ。

 花組『ハロー!ダンシング』は、とてもいびつだった。
 全組観てきて、ラストにこんなことになるのかとおどろいた。
 今までの4組の公演全部を、最後に否定しなくてもいいだろうに。

 最後の花組で主演経験スターに主役をやらせるってことはさ、それまで未経験者にやらせてきたことが「よくなかった」ってことにも取れるじゃん。
「やっぱスター以外に主演をさせる意味はないな」
 って判断したのかと思えるじゃん。
 三部会開催を謳いながら、平民議員を閉め出した『ベルサイユのばら』の有名場面みたいねー。

 はい、花組は路線ポジが、野々すみ花でした。

 ワークショップとしての『ハロー!ダンシング』の位置づけが、大きく揺らぎました。
 もちろん、すみ花ちゃんはまだまだこれから経験を積んでいくべき若手なので、そういう意味ではワークショップ出演は正しいのだけど、「主演経験スター」であるという意味では、彼女が今さらワークショップごときで主演をする必要はなかった。

 いやあ、このゆがみによる、構成と公演自体に対する影響が大きくてねえ。

 他4組と比べ、花組の構成があまりにいびつなので、いろいろいろいろ考えちゃったのよー。

 結局のところ劇団は『ハロー!ダンシング』なんて公演、どーでもいいと思っていたんじゃないか。
 だから最後にこんなことになったんじゃないか。

 つまり。
 まず、野々すみ花ありきだった。

 ワークショップだとか『ハロー!ダンシング』だとか、演目はどうでもよかった。
 野々すみ花に、「ショー」で「真ん中」経験をさせたかった。彼女は大切な大器だからだ。男役スターと同じように育てる必要があった。
 だからたまたま『ハロー!ダンシング』だった。他に手頃なモノがあれば、それでもよかったけれど、コレしかなかった。『舞姫』はフィナーレがなかったし。
 手っ取り早く、『ハロー!ダンシング』を利用することにした。

 これくらい、ナニも考えず、『ハロダン』なんかどーでもいーと思ってやったんじゃないかと思う。
 そしてそれゆえに、さらにゆがみが広がる。

 ののすみ主演にすると、『ハロー!ダンシング』的にはおかしい。
 他組とのかねあいがある。
 花組だけトップ路線スターのステージにするわけにはいかない。
 ののすみはあくまでも、「ふつうの下級生娘役」でしかないふりをした。
 表向きは他組と同じ、新公で3番手以下経験しかないだいもんを路線ポジに置く。
 さらに他組と同じように全体を締める職人が必要だ。最上級生で能力のあるみほちゃんがいるが、なにしろだいもんは「言い訳」に路線ポジとして使うだけで、真の主役は娘役のすみ花ちゃんだ、職人ポジまで娘役だと「主役−娘役、2番手−娘役」になってしまう。
 だから職人ポジは、なにがなんでも男役でなければならなかった。

 それで、かりやんになった。
 たとえかりやんにセンターを努めるだけの度量がなくても、やらせるしかなかった。
 
 ……とゆー流れだったのではないか。

 と、想像しました。

 ののすみの「主演」としての出演はワークショップ的におかしいし、だいもんが路線ポジだとすると、職人ポジがかりやんであることがおかしい。ゆめみちゃんやちわわちゃんがやっているんだから、みほちゃんでいいはずだ。

 そーなんだ。
 かりやんが職人としての任を果たしてくれていたら、ここまでは考えないんだが。
 「できない」人に何故やらせるのか? それがすっげー疑問で。

 や、かりやんがここまで「真ん中」ができない人だなんて、知らなかったよ。ふつーにできると思っていた。
 研10にもなる男役で、美形ダンサーとして組ファンに愛されてきた人だ。
 「真ん中」がダンス技術とは別の特殊スキルだとはわかっているが、ゆめみちゃん(同期)とすず(1期上)がやって見せてくれたあとだ、かりやんにもできると思い込んでいた。
 あかしと比べるのは酷としても、本公演では群舞の中のひとりに過ぎない、センター取って踊ることなんかなかった、新公で路線役をやったことだってないか、ほとんどないくらいの、ゆめみちゃんとすずができたことだよ?(月組は場面ごとにセンターがチガウので除外)

 せしるや大ちゃんだってそりゃーもーダメダメっぷりではえらいことになっていたけれど、彼らは路線ポジだ。ダメでもこういう場数を踏んで成長することを期待されている。ダメダメだとしても、それははじめから許されている。
 だが、職人ポジはチガウ。華担当のなにもできない子を助け、公演自体を支えなければならない役目なのに。

 他に誰もいないならともかく、立派に座長を務めるみほちゃんがいる。
 何故わざわざかりやんでなくてはならないのか……ののすみの主演っぷりと合わせて、花『ハロダン』のいびつさ、奇妙さなんだよなー。

 や、ののすみにもかりやんにも、生徒個人にはなんの含みもないよ。
 
 ふつうに、路線ポジだいもん、職人ポジはみほちゃん。かりやんは他の生徒と同じ、場面ごとに1回だけセンター。ののすみちゃんもすごーくオイシイ場面で1回センター、もしくはいい場面センターのオイシイ相手役、にすればよかったのに。

 なんでここまでワークショップとしてのコンセプトをぶっ壊してんだ、花『ハロダン』?

 
 とまあ、興行自体への謎はやーっぱり深まったけれど。

 花『ハロダン』が、すごくたのしかったことは、事実だ。

 たのしーたのしー、きゃー。
 みんな大好き〜〜!!

 という話は、また別欄で。


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