彼は、ミステリ。@マジシャンの憂鬱
2007年8月10日 タカラヅカ 物語を転がしていく上で、大きく分けてふたつの軸がある。
ひとつは、物理的な出来事、アクション。
目に見えること、物語の「動」部分。
『マジシャンの憂鬱』でいうところの、皇太子妃暗殺事件。
そしてもうひとつが、精神的な出来事。
目に見えないこと、物語の「心」部分。
『マジ鬱』でいうところの、主人公の恋愛。
皇太子妃暗殺事件は、ぶっちゃけえらいことになっていた。
ガタガタ。ダメダメ。
犯人がバカだった、「火事だー、助けてー!」と叫びながら火の中に飛び込んでいくとか、「あぶない!」と言われたら逃げずに「なにが危ないの? ねえねえ、なにがなにが?」とその場で大騒ぎして道路の真ん中でトラックにはねられるとか、そーゆー類いの「ありえないバカ」だった、という以外に行動の理由がわからない。
そんな、見事にぶっこわれたアホアホ系物語。
それでも。
この作品がただのアホアホになっていないのは、「心」部分の物語が壊れていないからだ。
マジシャン・シャンドール@あさこと、ボディーガード・ヴェロニカ@かなみが出会って、恋に落ちる。これだけのシンプルな道に、ごろごろといろーんな障害が転がっている。皇太子妃が暗殺されただとか、シャンドールが狙撃されただとか、ヴェロニカがダンスが苦手だとか。
それらの障害・出来事に対して、それぞれのリアクションを取りながらも、正しい道を行く。
ふたりの恋が、成就するラストシーン向かって。
出来事自体はホレ、かなりアホアホなんだけどね。犯人バカだから。
でも、どんなにありえないよーな話であっても、「心」さえ正しくつながっていれば、関係ないんだよ。
たとえ異世界が舞台で、登場するキャラクタが人間でないとしても(妖精とか犬とか虫とか、なんでもヨシ)、その世界で生きるキャラクタたちの「心」が壊れていなければ、感情移入できる。
出来事がどんなにありえなくても、それに対するキャラクタの「心」が、人間として違和感のないものであるなら、リアルなものとして受け止められる。
古代エジプトが舞台で、神のお告げで将軍が決まったり、戦争したりってあまりに異世界でわたしたちからすりゃーありえないことばかりだけど、それでもアイーダとラダメスの恋に涙したよーに。
舞台や出来事、「動」部分がどれだけわたしたちの生きる世界とかけ離れていたって、「心」部分がまちがっていなければ、「物語」として成立するんだよ。
そーゆーことだ。
逆に、どんなに理路整然とした物理的展開の物語でも、そこに生きる人々が人間とは思えない感情形態をしていたら、気持ち悪いだけだ。
ほらたとえば、それまでふたりで仲良くダメダメ詐欺師をやって、何年も懸けてエッフェル塔を造ったのに、ラストでいきなりなんの脈絡もなく兄貴分が弟分を疑い、罵り、銃を振り回したりするの。
人の心としてありえない展開過ぎて、ぽかーんとしちゃうでしょ。
さんざん男たちに言い寄られ、ちやほやされ、一緒に愛の歌をデュエットしたりして、「すべての男はわたしを愛して当然、愛され過ぎて大変だわ」と天使の微笑みを浮かべる女が、同じ口で「誰にも愛されたことがないから」と本気で言ったりするの。
人の心としてありえない展開過ぎて、ぽかーんとしちゃうでしょ。
や、このふたつの例は、心だけでなくアクション部分もぶっ壊れまくっていけどな。溜息。
そんなふーには「心」が壊れていないから、大丈夫。
事件自体がどんなにアレなことになっていても、無問題。
シャンドールとヴェロニカ、ボルディジャール@きりやんとマレーク@あいあい、ふた組のカップルの心のなめらかな動き、正しさが気持ちいい。
もどかしく、カメの歩みで近づいていくシャンドールとヴェロニカ。
最短コースを脇目もふらず最速でぶっちぎるボル殿下と、ソレを受け止めるマレーク。
不器用なキャリアウーマン・ヴェロニカの恋に感情移入してじれじれしたりせつなくなったり、ぶっちぎりに愛一直線パッショネイト殿下にときめいてみたり。
対照的なカップルが描かれているから、二度美味しくいただきましょう、ヲトメとして!
「心」部分が正しく、シック(地味とも言う)で品のいい画面に、説明の少ないリアル系の台詞、会話のテンポで笑わせる、オシャレなラヴコメ。
贔屓組で観てみたいよねー、こーゆーの。
……と、ついついいつものよーに妄想配役を考えてしまうくらいには、よい作品だと思うよ。
ただ、シャンドールはオサ様では絶対チガウから、現花組では妄想配役できぬ(笑)。まとぶの時代ならアリだなー。
とにかくもー、ヴェロニカ@かなみちゃんが、かわいくてかわいくて。
ああいう不器用な女の子いいよねー。
真面目が過ぎて逃げ場をなくしているところが、愛しい。
惜しいのはシャンドールがなにを考えているか、わからないこと。
かっこいいんだけど、すごーくすごーくかっこいいんだけど、ソレだけになってしまっているのが惜しい。
正塚脚本は説明が極力省かれているから、行間を演技で見せてくれる人こそがハマるんだよなー。
せっかくのオイシイ役、ラストの愛の告白が唐突に見えないよーになればいいのに……。
や、演出的には唐突じゃないよ。「心」はつながっている。あ、ここで彼の心が彼女に向かって動くエピソードだな、って、いちいちセオリー通りに段階踏んで描いてあるんだもの。
エピソードを観て「計算式」がわかるだけで、シャンドールその人からは、脚本が計算している分量のキモチが伝わってこないという……。
あー、たぶんきっと、これから演技が深まっていくんだと思う。わたしは初日とその翌週に観ただけだから。未来に期待。
今のままだと、シャンドールが「なにをしたい」のかよくわからなくて、視点が見事にヴェロニカ固定、彼女が主役になってしまった……。
恋愛意外でも。
詐欺をして金儲けがしたいのか、仲間たちにいい顔がしたいだけなのか、マジシャンとして人をあやつるエクササイズを極めているのか、わたしにはシャンドールさんという人が見えてこなくてつらい。
「騙し続ける孤独」だとかなんだとか、歌っていたけれど、歌詞として歌っているだけにしか見えないっす……。
はっきり描かない正塚も悪いんだけどな。
はっきり描かないのが彼の芸風であり、長所でもあるので、役者にばしっと応えてほしいなあ。
や、演技は好みの問題なので、わたし以外の人に伝わっているのなら、それで無問題なんだがなー。
嘉月さんとか、削ぎ落とされた台詞でもちゃーんと「仕事」している人を見ると、シャンドールって、もっとなんとかできる役なんぢゃないの?とか思ってしまうのことよ。
今の段階では、主役のハズの人が、いちばんのミステリだな(笑)。
☆
愛用のミニパソが、パソコンと接続できなくなってしまって、思いっきりうろたえました。
ミニパソに書きためたテキスト全部無駄に?! てゆーか、母艦に着艦できない搭載機なんて、持ってても意味ないじゃん! 全部ネット経由かよ?!
いやあ、再インストールしたり、リセットしたりで半日潰しましたよ……。
復活できて良かった。
ひとつは、物理的な出来事、アクション。
目に見えること、物語の「動」部分。
『マジシャンの憂鬱』でいうところの、皇太子妃暗殺事件。
そしてもうひとつが、精神的な出来事。
目に見えないこと、物語の「心」部分。
『マジ鬱』でいうところの、主人公の恋愛。
皇太子妃暗殺事件は、ぶっちゃけえらいことになっていた。
ガタガタ。ダメダメ。
犯人がバカだった、「火事だー、助けてー!」と叫びながら火の中に飛び込んでいくとか、「あぶない!」と言われたら逃げずに「なにが危ないの? ねえねえ、なにがなにが?」とその場で大騒ぎして道路の真ん中でトラックにはねられるとか、そーゆー類いの「ありえないバカ」だった、という以外に行動の理由がわからない。
そんな、見事にぶっこわれたアホアホ系物語。
それでも。
この作品がただのアホアホになっていないのは、「心」部分の物語が壊れていないからだ。
マジシャン・シャンドール@あさこと、ボディーガード・ヴェロニカ@かなみが出会って、恋に落ちる。これだけのシンプルな道に、ごろごろといろーんな障害が転がっている。皇太子妃が暗殺されただとか、シャンドールが狙撃されただとか、ヴェロニカがダンスが苦手だとか。
それらの障害・出来事に対して、それぞれのリアクションを取りながらも、正しい道を行く。
ふたりの恋が、成就するラストシーン向かって。
出来事自体はホレ、かなりアホアホなんだけどね。犯人バカだから。
でも、どんなにありえないよーな話であっても、「心」さえ正しくつながっていれば、関係ないんだよ。
たとえ異世界が舞台で、登場するキャラクタが人間でないとしても(妖精とか犬とか虫とか、なんでもヨシ)、その世界で生きるキャラクタたちの「心」が壊れていなければ、感情移入できる。
出来事がどんなにありえなくても、それに対するキャラクタの「心」が、人間として違和感のないものであるなら、リアルなものとして受け止められる。
古代エジプトが舞台で、神のお告げで将軍が決まったり、戦争したりってあまりに異世界でわたしたちからすりゃーありえないことばかりだけど、それでもアイーダとラダメスの恋に涙したよーに。
舞台や出来事、「動」部分がどれだけわたしたちの生きる世界とかけ離れていたって、「心」部分がまちがっていなければ、「物語」として成立するんだよ。
そーゆーことだ。
逆に、どんなに理路整然とした物理的展開の物語でも、そこに生きる人々が人間とは思えない感情形態をしていたら、気持ち悪いだけだ。
ほらたとえば、それまでふたりで仲良くダメダメ詐欺師をやって、何年も懸けてエッフェル塔を造ったのに、ラストでいきなりなんの脈絡もなく兄貴分が弟分を疑い、罵り、銃を振り回したりするの。
人の心としてありえない展開過ぎて、ぽかーんとしちゃうでしょ。
さんざん男たちに言い寄られ、ちやほやされ、一緒に愛の歌をデュエットしたりして、「すべての男はわたしを愛して当然、愛され過ぎて大変だわ」と天使の微笑みを浮かべる女が、同じ口で「誰にも愛されたことがないから」と本気で言ったりするの。
人の心としてありえない展開過ぎて、ぽかーんとしちゃうでしょ。
や、このふたつの例は、心だけでなくアクション部分もぶっ壊れまくっていけどな。溜息。
そんなふーには「心」が壊れていないから、大丈夫。
事件自体がどんなにアレなことになっていても、無問題。
シャンドールとヴェロニカ、ボルディジャール@きりやんとマレーク@あいあい、ふた組のカップルの心のなめらかな動き、正しさが気持ちいい。
もどかしく、カメの歩みで近づいていくシャンドールとヴェロニカ。
最短コースを脇目もふらず最速でぶっちぎるボル殿下と、ソレを受け止めるマレーク。
不器用なキャリアウーマン・ヴェロニカの恋に感情移入してじれじれしたりせつなくなったり、ぶっちぎりに愛一直線パッショネイト殿下にときめいてみたり。
対照的なカップルが描かれているから、二度美味しくいただきましょう、ヲトメとして!
「心」部分が正しく、シック(地味とも言う)で品のいい画面に、説明の少ないリアル系の台詞、会話のテンポで笑わせる、オシャレなラヴコメ。
贔屓組で観てみたいよねー、こーゆーの。
……と、ついついいつものよーに妄想配役を考えてしまうくらいには、よい作品だと思うよ。
ただ、シャンドールはオサ様では絶対チガウから、現花組では妄想配役できぬ(笑)。まとぶの時代ならアリだなー。
とにかくもー、ヴェロニカ@かなみちゃんが、かわいくてかわいくて。
ああいう不器用な女の子いいよねー。
真面目が過ぎて逃げ場をなくしているところが、愛しい。
惜しいのはシャンドールがなにを考えているか、わからないこと。
かっこいいんだけど、すごーくすごーくかっこいいんだけど、ソレだけになってしまっているのが惜しい。
正塚脚本は説明が極力省かれているから、行間を演技で見せてくれる人こそがハマるんだよなー。
せっかくのオイシイ役、ラストの愛の告白が唐突に見えないよーになればいいのに……。
や、演出的には唐突じゃないよ。「心」はつながっている。あ、ここで彼の心が彼女に向かって動くエピソードだな、って、いちいちセオリー通りに段階踏んで描いてあるんだもの。
エピソードを観て「計算式」がわかるだけで、シャンドールその人からは、脚本が計算している分量のキモチが伝わってこないという……。
あー、たぶんきっと、これから演技が深まっていくんだと思う。わたしは初日とその翌週に観ただけだから。未来に期待。
今のままだと、シャンドールが「なにをしたい」のかよくわからなくて、視点が見事にヴェロニカ固定、彼女が主役になってしまった……。
恋愛意外でも。
詐欺をして金儲けがしたいのか、仲間たちにいい顔がしたいだけなのか、マジシャンとして人をあやつるエクササイズを極めているのか、わたしにはシャンドールさんという人が見えてこなくてつらい。
「騙し続ける孤独」だとかなんだとか、歌っていたけれど、歌詞として歌っているだけにしか見えないっす……。
はっきり描かない正塚も悪いんだけどな。
はっきり描かないのが彼の芸風であり、長所でもあるので、役者にばしっと応えてほしいなあ。
や、演技は好みの問題なので、わたし以外の人に伝わっているのなら、それで無問題なんだがなー。
嘉月さんとか、削ぎ落とされた台詞でもちゃーんと「仕事」している人を見ると、シャンドールって、もっとなんとかできる役なんぢゃないの?とか思ってしまうのことよ。
今の段階では、主役のハズの人が、いちばんのミステリだな(笑)。
☆
愛用のミニパソが、パソコンと接続できなくなってしまって、思いっきりうろたえました。
ミニパソに書きためたテキスト全部無駄に?! てゆーか、母艦に着艦できない搭載機なんて、持ってても意味ないじゃん! 全部ネット経由かよ?!
いやあ、再インストールしたり、リセットしたりで半日潰しましたよ……。
復活できて良かった。
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