彼の「美しい故郷」。@アデュー・マルセイユ
2007年10月3日 タカラヅカ 何故、ジェラールは故郷マルセイユに帰れなかったのか。
仕事でなら帰れた、ということは、べつに物理的に帰れない理由はなかったのよ。地下水道での事件はもう「終わった」こと、誰も気にしていない。少年院を出たあといくらでも帰ることができた。仕事でアメリカに行っていたとはいえ、何年間もフリータイムが1日たりともなかったとは思えない。
……てな、『アデュー・マルセイユ』本編の穴を、わけわかんないところを、自分の想像で自分の都合よく補完していく話、その2です。
はい、スタート。
「孤独と秘密」ゆえに少年院に長逗留していたジェラール。成人した彼の元へ、ICPOのフィリップがやってくる。
自らの罪と裏切りゆえに故郷に帰ることのできないジェラールは、フィリップのスカウトにふたつ返事。
ジェラールにとっての魅力は、「別人になれる」ことだったんじゃないのか。
正しいこと、に誇りを持っていた潔癖な少年が、自分かわいさに他人を踏みつけにした。
安全な少年院に逃げ込んで何年も過ごし、その間に無条件に味方になってくれていた母も死んだ。
過去は苦いだけでしかない。
ジェラールは過去の自分を捨てた。本名を明かさない訓練所の生活や、最初から「嘘」だとわかっているルイ・マレーという名の男として生きる方が楽だ。
ジェラールが故郷に帰れなかったのは、そこが彼の「罪の記憶」と結びついた場所だからだ。
物理的なことならいくらでも解決できる。だが、心の問題はそうはいかない。
嘘をつき、裏切り、葬った。
シモンはなにも知らず無事に暮らしているらしい。それくらいは、調べればすぐにわかる。
だが、地下水道で殺されたあの男は?
彼の人生を踏みにじった事実は、消えない。
スコルピオや悪徳刑事に殺されることが怖くて沈黙した。
マルセイユは、ジェラールの「心の闇」そのものだ。
いつも、明け方には夢に見る。愛しい故郷、マルセイユ。
二度と戻れない故郷。二度と戻れない、公明正大だった自分。「まちがったこと、卑怯なことは許せない」と胸を張っていられた少年の自分。
まちがい、卑怯になってしまった今は、決して帰ることができない……美しい場所。
14年の時を経て、仕事という名目を得てよーやく故郷の地を踏むことができたジェラール。
何故、今帰ることができたのか。
純粋だった少年時代を、粉々に打ち壊すために。
ジェラールの任務は、偽札組織の摘発。
そして、マルセイユに渡った目的は、1ヶ月前に偽札騒動があった、ギャング経営カジノの調査。
つまり。シモンを、調べることが目的。
シモンが犯人ならば逮捕する。
美しい故郷マルセイユ。愛していた親友と、誰にでも胸を張れた心の正しい自分自身。
すべてを、壊すために。
故郷を葬るために、ジェラールはマルセイユに降り立った。
訪問することは、あらかじめ手紙で知らせてあった。シモンは無邪気に旧友との再会を喜ぶ。ジェラールもそれに応えてはしゃいでみせる。……それ以降のジェラールのテンションから考えると、不自然なほどに。再会の銀橋だけ大はしゃぎ。
少年時代のジェラールが、どれほど心正しく頼りがいがあったかを、シモンは誇らしそうにたのしそうに、自分の恋人ジャンヌへ話す。
それを聞きながらジェラールは、あのころの自分が「まちがったことは許せなかった」のだと、遠い目でつぶやく。シモンにおだてられても、相好を崩すことなく。
長い時を超えて幼なじみを信用させるために、ジェラールはわざと14年前の事件の話を蒸し返した。
シモンはなにも知らなかったのに。自分がきっかけでジェラールが少年院送りになったなんて知り、この単純な男はどれほど心を痛めたろう。
傷つけることが、目的だった。
罪悪感で目がくらみ、しっぽを出せばいい。偽札組織に関わっているならば。
恩を着せ、騙すつもりで近づいたジェラール。
なにも知らず、心からの信頼を寄せるシモン。
幼なじみの親友同士の愛と裏切りの物語っつったら、これくらいやるもんだろお?
なんでシモンは「いてもいなくてもいい」「だだのバカ」に成り下がってるんだイケコ。
調べていくうちに、シモンは無関係……てゆーか、このバカにンな大それたことができるわけないとわかるのだけど。
そして、少年のまま、純粋なままのシモンの姿に、ジェラールの心は揺れるのだけど。
シモンを騙していること、利用するつもりでやって来たことは、覆しようもない。
「孤独と秘密」……歌うジェラールの絶望は深い。いつかこの孤独は報われるのだろうか。
さて。
表面上は仲良く幼なじみをやり、シモンのオリオン組を調べる傍ら、ジェラールは昔懐かしの石鹸工場へ足を踏み入れる。
そこで、マルセイユ帰郷初日に駅前で出会った「アルテミス婦人同盟」のマリアンヌと再会する。
「マルセイユを愛しているのね」……なにも知らない、見るからに世間知らずの潔癖娘は簡単に言う。肯定するジェラールの、心の闇に気づくはずもなく。
シモンに対しての疑いは薄れていたにしろ、オリオン組を張っていたのは正しい。カジノ・オリオンでの2度目の偽札騒ぎが起こった。やはり鍵はここにある。
密輸業者ルイ・マレーを名乗るジェラールに、カジノ・オリオンの常客イタリア・マフィアのジオラモが接触を図ってきた。
ジオラモの誘いに乗ることで、マルセイユに巣くう密輸組織の中枢に入り込むことに、ジェラールは成功した。
ソレは奇しくも、14年前の地下水道事件の悪党たちとの再会でもあった。
14年前の市長汚職と助役ピエール殺害については本編でなにも語られていないので、詳しいことはわからない。イケコのアタマの中ではどーなっていたのかねえ。きっと辻褄なんか存在しないんだろーけど、まあいいや。
動揺を押し隠すジェラール。「目的は復讐ではない」と自分に言い聞かせる。
復讐もなにも。過去を葬ったのは自分自身だ。できれば一生、見なかったこと、聞かなかったことにしていたいと思っていた。
だから自分に言い聞かせる。14年前の事件を調べないのは、今は別の任務中だからだ。過去の自身の罪と向き合うのがこわいわけじゃない。
いくら今は他の任務中、ったって、14年前の事件と同じ顔ぶれが揃って現れりゃ、なにかしら調べるべきだろ。偽札事件はスコルピオが怪しいと踏んでいるのだから。
だがジェラールは頑なに14年前の事件を調べない。考えない。
屈折しきり、闇の中で喘いでいるジェラールの前で、理想家のマリアンヌは「バカだろ、オマエ」と言われても気づかないほどの純粋さでキラキラしている。
色も匂いもない石鹸みたいと言われて、皮肉だとわからない、誉め言葉だと受け取ってしまうようなバカ娘。
「正しいことは、正しい」と意気をあげている、「まちがったこと、卑怯なことは許せない」と声に出して宣誓してしまえるよーな、幼さゆえのイタさを持った少女。
マリアンヌのイタさは、まるであの日のジェラール自身のようで。
彼女を無視できないのは、彼女がなんとなく、どーしても引っかかってしまうのは、仕方ないことなのかもしれない……。
……てな感じで、恋愛も同時進行してます、いちおー。
まだ続きます、以下翌日欄。
仕事でなら帰れた、ということは、べつに物理的に帰れない理由はなかったのよ。地下水道での事件はもう「終わった」こと、誰も気にしていない。少年院を出たあといくらでも帰ることができた。仕事でアメリカに行っていたとはいえ、何年間もフリータイムが1日たりともなかったとは思えない。
……てな、『アデュー・マルセイユ』本編の穴を、わけわかんないところを、自分の想像で自分の都合よく補完していく話、その2です。
はい、スタート。
「孤独と秘密」ゆえに少年院に長逗留していたジェラール。成人した彼の元へ、ICPOのフィリップがやってくる。
自らの罪と裏切りゆえに故郷に帰ることのできないジェラールは、フィリップのスカウトにふたつ返事。
ジェラールにとっての魅力は、「別人になれる」ことだったんじゃないのか。
正しいこと、に誇りを持っていた潔癖な少年が、自分かわいさに他人を踏みつけにした。
安全な少年院に逃げ込んで何年も過ごし、その間に無条件に味方になってくれていた母も死んだ。
過去は苦いだけでしかない。
ジェラールは過去の自分を捨てた。本名を明かさない訓練所の生活や、最初から「嘘」だとわかっているルイ・マレーという名の男として生きる方が楽だ。
ジェラールが故郷に帰れなかったのは、そこが彼の「罪の記憶」と結びついた場所だからだ。
物理的なことならいくらでも解決できる。だが、心の問題はそうはいかない。
嘘をつき、裏切り、葬った。
シモンはなにも知らず無事に暮らしているらしい。それくらいは、調べればすぐにわかる。
だが、地下水道で殺されたあの男は?
彼の人生を踏みにじった事実は、消えない。
スコルピオや悪徳刑事に殺されることが怖くて沈黙した。
マルセイユは、ジェラールの「心の闇」そのものだ。
いつも、明け方には夢に見る。愛しい故郷、マルセイユ。
二度と戻れない故郷。二度と戻れない、公明正大だった自分。「まちがったこと、卑怯なことは許せない」と胸を張っていられた少年の自分。
まちがい、卑怯になってしまった今は、決して帰ることができない……美しい場所。
14年の時を経て、仕事という名目を得てよーやく故郷の地を踏むことができたジェラール。
何故、今帰ることができたのか。
純粋だった少年時代を、粉々に打ち壊すために。
ジェラールの任務は、偽札組織の摘発。
そして、マルセイユに渡った目的は、1ヶ月前に偽札騒動があった、ギャング経営カジノの調査。
つまり。シモンを、調べることが目的。
シモンが犯人ならば逮捕する。
美しい故郷マルセイユ。愛していた親友と、誰にでも胸を張れた心の正しい自分自身。
すべてを、壊すために。
故郷を葬るために、ジェラールはマルセイユに降り立った。
訪問することは、あらかじめ手紙で知らせてあった。シモンは無邪気に旧友との再会を喜ぶ。ジェラールもそれに応えてはしゃいでみせる。……それ以降のジェラールのテンションから考えると、不自然なほどに。再会の銀橋だけ大はしゃぎ。
少年時代のジェラールが、どれほど心正しく頼りがいがあったかを、シモンは誇らしそうにたのしそうに、自分の恋人ジャンヌへ話す。
それを聞きながらジェラールは、あのころの自分が「まちがったことは許せなかった」のだと、遠い目でつぶやく。シモンにおだてられても、相好を崩すことなく。
長い時を超えて幼なじみを信用させるために、ジェラールはわざと14年前の事件の話を蒸し返した。
シモンはなにも知らなかったのに。自分がきっかけでジェラールが少年院送りになったなんて知り、この単純な男はどれほど心を痛めたろう。
傷つけることが、目的だった。
罪悪感で目がくらみ、しっぽを出せばいい。偽札組織に関わっているならば。
恩を着せ、騙すつもりで近づいたジェラール。
なにも知らず、心からの信頼を寄せるシモン。
幼なじみの親友同士の愛と裏切りの物語っつったら、これくらいやるもんだろお?
なんでシモンは「いてもいなくてもいい」「だだのバカ」に成り下がってるんだイケコ。
調べていくうちに、シモンは無関係……てゆーか、このバカにンな大それたことができるわけないとわかるのだけど。
そして、少年のまま、純粋なままのシモンの姿に、ジェラールの心は揺れるのだけど。
シモンを騙していること、利用するつもりでやって来たことは、覆しようもない。
「孤独と秘密」……歌うジェラールの絶望は深い。いつかこの孤独は報われるのだろうか。
さて。
表面上は仲良く幼なじみをやり、シモンのオリオン組を調べる傍ら、ジェラールは昔懐かしの石鹸工場へ足を踏み入れる。
そこで、マルセイユ帰郷初日に駅前で出会った「アルテミス婦人同盟」のマリアンヌと再会する。
「マルセイユを愛しているのね」……なにも知らない、見るからに世間知らずの潔癖娘は簡単に言う。肯定するジェラールの、心の闇に気づくはずもなく。
シモンに対しての疑いは薄れていたにしろ、オリオン組を張っていたのは正しい。カジノ・オリオンでの2度目の偽札騒ぎが起こった。やはり鍵はここにある。
密輸業者ルイ・マレーを名乗るジェラールに、カジノ・オリオンの常客イタリア・マフィアのジオラモが接触を図ってきた。
ジオラモの誘いに乗ることで、マルセイユに巣くう密輸組織の中枢に入り込むことに、ジェラールは成功した。
ソレは奇しくも、14年前の地下水道事件の悪党たちとの再会でもあった。
14年前の市長汚職と助役ピエール殺害については本編でなにも語られていないので、詳しいことはわからない。イケコのアタマの中ではどーなっていたのかねえ。きっと辻褄なんか存在しないんだろーけど、まあいいや。
動揺を押し隠すジェラール。「目的は復讐ではない」と自分に言い聞かせる。
復讐もなにも。過去を葬ったのは自分自身だ。できれば一生、見なかったこと、聞かなかったことにしていたいと思っていた。
だから自分に言い聞かせる。14年前の事件を調べないのは、今は別の任務中だからだ。過去の自身の罪と向き合うのがこわいわけじゃない。
いくら今は他の任務中、ったって、14年前の事件と同じ顔ぶれが揃って現れりゃ、なにかしら調べるべきだろ。偽札事件はスコルピオが怪しいと踏んでいるのだから。
だがジェラールは頑なに14年前の事件を調べない。考えない。
屈折しきり、闇の中で喘いでいるジェラールの前で、理想家のマリアンヌは「バカだろ、オマエ」と言われても気づかないほどの純粋さでキラキラしている。
色も匂いもない石鹸みたいと言われて、皮肉だとわからない、誉め言葉だと受け取ってしまうようなバカ娘。
「正しいことは、正しい」と意気をあげている、「まちがったこと、卑怯なことは許せない」と声に出して宣誓してしまえるよーな、幼さゆえのイタさを持った少女。
マリアンヌのイタさは、まるであの日のジェラール自身のようで。
彼女を無視できないのは、彼女がなんとなく、どーしても引っかかってしまうのは、仕方ないことなのかもしれない……。
……てな感じで、恋愛も同時進行してます、いちおー。
まだ続きます、以下翌日欄。
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