書きはじめてもう何日も経つし、恋愛アドベンチャーゲームで誰それシナリオとか脱線しつつ進んでいるので忘れがちだが、そもそもジェラール×モーリスの物語のつもりで書いてるんだからね!の、『アデュー・マルセイユ』本編の穴を、わけわかんないところを、自分の想像で自分の都合よく補完していく話、の続き、誰も読んでなくても続ける(笑)、連載6回目です。

 公演も半ばを迎え、ジェラールとモーリスの意地の張り合いっつーか仲の悪さはどんどんひどくなってきてます。
 バザー会場の場面、たのしーよー。ふたりが台詞もないままゼスチャーや目線だけでケンカしてしてて(笑)。
 ジェラール、モーリスを騙すのは「仕事」でしょう? ケンカしてどーするよヲイ。
 優秀な捜査官であるはずが、モーリスの前では本音が出てしまうジェラール。
 ただでさえモーリスのことは「特別(にキライ)」だったのに、彼のアホさ加減が自分の犯した罪の結果かもしれない、とわかってしまったジェラール。

 ピエールを殺したのはリシャールとペランだ。
 リシャールたちは、自分たちが殺した男の息子に近づき、仲間面していいように利用しているのだ。

 悪党たちの間で、なにも知らずインテリぶっているモーリス。
 彼のアホさを痛々しいと感じてしまったら、もうOUTだ。

 偽札組織の犯罪を暴くためには、衆人環視のもとでなくてはならない。
 そのためにジェラールは、アルテミスのダンス・コンテスト優勝賞品を偽札とすり替え、市長をはじめとする大勢の前で暴いて見せた。
 ペランがジェラールに罪をなすりつけ、逮捕しようとするのは計算のうち。なにが正しくてなにがまちがっているのかを、警察署の中の隔離された取調室で訴えるのではなく、一般市民の前で。
 モーリスが偽札に関わっていること、なのに駆けつけたペラン警部は不自然にモーリスをかばおうとしていること。
 それらのやりとりを、観客の前で。

 だがそののち何故かジェラールは、せっかく用意した衆人環視の舞台を捨てて、地下水道に移動する。
 本来ならば、観客たちの前ですべてを明らかにしなければならない。ICPOの刑事であることを証し、悪党たちがなにか画策したとしても「一般市民」たちが一部始終を目撃している状況で、真実を突き詰める。
 そのためにお膳立てをしたのに、何故なにもかも捨てて地下水道へ行く? しかも、民間人の少女マリアンヌを連れて。刑事がしていいことではない。

 や、本編はこのへんぐちゃぐちゃだから。
 地下水道に行く理由も、マリアンヌを連れて行く理由もない。
 ダンス・コンテストで鑑定人まで連れてきて偽札を暴いた意味が何処にもない。
 話途中でいなくなるから、市民たちは「どっちが正しいの?」とコーラスするはめに。
 彼らの前で、きちんと決着をつけなければならないのに。
 作者の都合だけで、舞台は一般人の目の届かない地下水道へ。
 百歩譲って14年前の「はじまりの場所」である地下水道に行くことに意義を認めても、マリアンヌを連れて行くことだけはありえない。事件と無関係だとわかっている民間人の少女を、刑事がわざわざ銃撃戦必死の戦場に拉致していくなんて。
 作者がなにも考えていないだけなんだろうけど。

 マリアンヌを愛しているなら、命の危険のある場所へ連れ出したりしない。
 ジェラールはここですでに彼女を利用するつもりだった。

 すべては、モーリスのために。

 市長をはじめとする一般市民の前でモーリスへ疑惑を投げつけ、彼が愛する少女を連れ去り、地下水道へ逃げる。彼が追って来られるように、行き先まで告げて。

 14年前、すべてがはじまった場所。
 ジェラールが罪を犯した場所。
 ピエールを見殺しにしたことから、ジェラールの「孤独と秘密」ははじまっている。
 今、すべてを解き放つときだ。

 マリアンヌを囮にすることで、モーリスを釣ることができた。
 この期に及んでまだ彼女に対し「善人」のカオを貫こうとするモーリスには隙が出来、ジェラールがつけ込むことが出来る。

 モーリスと対峙したあとはマリアンヌのことはどーでもいいので放置、ジェラールはついに真実を口にする。

 14年前この場所で、リシャールとペランがピエールを殺したことを。
 自分がその場にいたことを。

「リシャール本当か?!」
 モーリスはジェラールに銃口を向けることも忘れて、仲間だった年長の男に詰め寄る。

 モーリスの小さなアタマの中は、この瞬間父殺しの実行犯リシャールたちのことでいっぱいだ。
 ここは地下水道。一般人はいない。いるのは、事件関係者とギャングと警官。市民に迷惑はかからない。

 モーリスが、なにをしても。

 何故今この場所で、真実を明らかにするのか。
 せっかく用意した衆人環視の舞台を捨てて、関係者しかいない状況を作ったのか。
 ジェラールの目的は、真実を告げ、モーリスに一旦判断を委ねること、だ。
 
 浅はかな彼が激昂し、リシャールを殺すならば、殺させる。ペランを殺すならば、殺させる。
 どちらかに向かって発砲すれば、まちがいなく彼は「仲間」だと思っていた者たちに射殺されるだろう。悪党たちは自分の身を守るためにはなんでもする。
 そのときは、モーリスを守って闘う。楯にもなる。彼に好きなだけ復讐をさせてやる。

 モーリスは真実を知らされずにいたために、道化となった。ジェラールが真実を隠匿したために。
 モーリスは知る権利がある。真実を得て、自分自身で行動する権利がある。
 彼の決断が、行動が、どれだけまちがっていようと関係ない。真実の上に、自身で選んだのなら、ジェラールはそれを支持する。守る。
 モーリスは14年間、真実を与えられずにいたのだから。

 マリアンヌを連れてこの地下水道に入ったときから、ジェラールは法も職業も、倫理も良心も捨てている。刑事ならばはじめからこんなところに舞台を移していない。

 すべては、モーリスのために。

 この一瞬リシャールたちだけが憎しみの対象となったとしても、事実を整理できるようになればわかるはずだ。
 14年前、ピエールがリシャールたちに殺されるところを目撃していたジェラールは、今までナニをしていたのかと。
 ジェラールが真実を話していれば、こんなことにはなっていないのだと。

 口封じがこわくてジェラール少年が沈黙を通したために、ピエールの命を懸けた告発は闇に葬られた。ピエールを犬死にさせた。
 そのためにモーリスは道をゆがめ、父殺しの犯人だとも知らずにリシャールたちに尻尾を振った。

 モーリスの憎悪を発端とする14年間は、ジェラールが原因だった。

 真実を告げることで、モーリスの銃口はリシャールたちだけでなく、ジェラールにも向けられるかもしれない。
 それでもよかった。
 「真実」を得て、モーリスが自分で選んだことならば。

 撃たれてやる。殺されてやる。
 彼の父親のように。

 この場所で。すべての「罪」が、「孤独と秘密」がはじまった場所で。


コメント

日記内を検索