そして地上へ。@アデュー・マルセイユ
2007年10月12日 タカラヅカ えー、ラブ・ロマンスも佳境となってきました。
『アデュー・マルセイユ』本編の穴を、わけわかんないところを、自分の想像で自分の都合よく補完していく話、の続き、ついにクライマックスです。
モーリスは追いつめられている。偽札製造を秘書の責任に押しつけたとしても、政治家としての道は閉ざされるだろう。その秘書は市民たちの前で逮捕されたのだから、事件自体を闇に葬ることは不可能だ。
愛する少女からも拒絶され、仲間だと思っていた男たちは父殺しの犯人で、自分は騙されていた。
夢を失い、愛を失い、居場所すらなくした。
それがすべて、今目の前にいる男が発端となっている。
刑事として告発した、というだけでなく。
14年間、真実を隠匿した男なのだ。
モーリスの不幸は、すべてジェラールが原因だ。
14年前の事件、そして現在の事件。
いつもいつも。
この男が、俺からすべてを奪い取る。
父親の名誉も、自身の夢も、愛する女も。
モーリスの手には、銃。凶器。人の命を奪うことの出来る武器。そう、14年前父がこの武器によって命を終わらされたように。
復讐することが出来る。
彼が過ごした14年間の、ゆがんでしまった人生の、復讐。
せっかく用意した衆人環視の舞台を捨て、関係者(と、囮として使用したマリアンヌ)だけで地下水道へ移動してきたジェラールの目的は、真実を告げ、モーリスに一旦判断を委ねること、だった。
モーリスが復讐を考えるのなら、それを受け入れるために。
彼にその機会を与えてやるために。
職務も倫理も手放した。マリアンヌの命も危険にさらした。
ただ、モーリスのために。
彼に真実と選択権を与えることで、償おうとする自分の心のために。
これは、賭けでもあった。
真実を知ったモーリスがどうするか。
ジェラールが殺されるかもしれないし、モーリスが自殺するかもしれない。
それでも判断をモーリスに任せ……そして。
タイムリミットが来た。
ICPOのフィリップ刑事がパリ警察の協力を得て、地下水道へ現れた。
「来てくれたんですね」
「舞踏会の晩には、なにか起こると思っていた」
……て、お前ら打ち合わせてなかったんかい!
と、観客が総ツッコミと化すこの展開。フィリップが独自の判断でやって来なかったら、悪党VSジェラール+オリオン組VS混乱した警官たちの大混戦の銃撃戦、屍累々になっていたところだ。巻き添えを食ってマリアンヌもジャンヌも死んでたんじゃないか?
作者がなにも考えていないだけなのは一目瞭然だが、本編は結果オーライでなし崩しにハッピーエンドになっている。
何故ジェラールは、計画をフィリップに知らせず単独で事を起こしたのか。それまであれほどマメに連絡を取り、指示を仰いでいたにもかかわらず。
彼は刑事としての任務より、自身の償いを優先させたんだ。
犯人が死のうが逃げようが、関係なし。モーリスの手にしていた偽りをすべて奪い取り、丸裸になった彼に真実を突きつけるためだけに、上司に無断でこの大イベントを行ったのだ。
これは賭けだった。
フィリップがジェラールの動きを知り、駆けつけてくるまでの間だけの。
リシャールやペランを殺すことも、ジェラールを殺すことも、自殺することもできた。
しかしモーリスはどれを選ぶことも出来ず、フィリップ登場によって逮捕された。
真実は明かされた。
ジェラールはもうなにも偽っていない。
14年間握りしめてきた罪は、告げなければならなかった相手に届いた。
それでどうするかは、モーリスの問題だ。
逮捕されたモーリスと、ジェラールはしばし見つめ合う。
殺された男の息子と、見殺しにした男が見つめ合う。
抱きしめることが出来たら、よかったのに。
彼が罪、彼が過去。
今、未来へ進むために。
抱きしめることが出来たら。
これは賭けだった。
モーリスがジェラールを殺すか、自殺するか。
だが、どちらにも針は傾かず、双方生きたまま賭けは終わった。
賭けは、3つめの結果となった。
これからも生き続けるモーリスを、支える。
ジェラールが歪めてしまった彼の14年間を、償うために。なにもかも失った彼のこれからの人生を、彼が立ち直るまで陰に日向に支え続けるのだ。
そのためには、ジェラール自身がまず、立たなければ。自分の足で。ジェラール自身として。
14年間、孤独な人生を歩んできたのは、ジェラールだけじゃない。モーリスもまた、同じように暗い道を歩いていた。
ふたりの男はそうとは知らず、同じ道を平行して歩いていたんだ。
このマルセイユでふたりの道は交わり、今、ひとつになった。
死んだ方が楽だったかもしれない。
ジェラールも、モーリスも。
それでもふたりは死ぬことなく、地下水道をあとにした。罪がはじまり、罪が終わった場所から、光射す地上へ出た。
だから生きるんだ。
彼の「美しい故郷」。
彼の「罪の結果」。
彼の「罪と罰」。
彼の「償い」。
いつかジェラールの心はモーリスに届くだろうか。
過ごした孤独な日々を、慰め合う日が来るだろうか。
「あのとき撃っておけばよかったのに」
と、この日のことを笑い話に、酒を酌み交わす日が来るだろうか。
ふたりの魂の罪人は、「こいつムカつく」とケンカしながら、それでも歩いていく。
前へ。
暗い地下水道を出て。過去と決別して。
今、「孤独と秘密」は完全に消えた。
己れの罪を隠匿し、それゆえに誰にも心を開くことが出来なかったジェラールは、自分の心を縛る鎖から解放された。
『アデュー・マルセイユ』本編の穴を、わけわかんないところを、自分の想像で自分の都合よく補完していく話、の続き、ついにクライマックスです。
モーリスは追いつめられている。偽札製造を秘書の責任に押しつけたとしても、政治家としての道は閉ざされるだろう。その秘書は市民たちの前で逮捕されたのだから、事件自体を闇に葬ることは不可能だ。
愛する少女からも拒絶され、仲間だと思っていた男たちは父殺しの犯人で、自分は騙されていた。
夢を失い、愛を失い、居場所すらなくした。
それがすべて、今目の前にいる男が発端となっている。
刑事として告発した、というだけでなく。
14年間、真実を隠匿した男なのだ。
モーリスの不幸は、すべてジェラールが原因だ。
14年前の事件、そして現在の事件。
いつもいつも。
この男が、俺からすべてを奪い取る。
父親の名誉も、自身の夢も、愛する女も。
モーリスの手には、銃。凶器。人の命を奪うことの出来る武器。そう、14年前父がこの武器によって命を終わらされたように。
復讐することが出来る。
彼が過ごした14年間の、ゆがんでしまった人生の、復讐。
せっかく用意した衆人環視の舞台を捨て、関係者(と、囮として使用したマリアンヌ)だけで地下水道へ移動してきたジェラールの目的は、真実を告げ、モーリスに一旦判断を委ねること、だった。
モーリスが復讐を考えるのなら、それを受け入れるために。
彼にその機会を与えてやるために。
職務も倫理も手放した。マリアンヌの命も危険にさらした。
ただ、モーリスのために。
彼に真実と選択権を与えることで、償おうとする自分の心のために。
これは、賭けでもあった。
真実を知ったモーリスがどうするか。
ジェラールが殺されるかもしれないし、モーリスが自殺するかもしれない。
それでも判断をモーリスに任せ……そして。
タイムリミットが来た。
ICPOのフィリップ刑事がパリ警察の協力を得て、地下水道へ現れた。
「来てくれたんですね」
「舞踏会の晩には、なにか起こると思っていた」
……て、お前ら打ち合わせてなかったんかい!
と、観客が総ツッコミと化すこの展開。フィリップが独自の判断でやって来なかったら、悪党VSジェラール+オリオン組VS混乱した警官たちの大混戦の銃撃戦、屍累々になっていたところだ。巻き添えを食ってマリアンヌもジャンヌも死んでたんじゃないか?
作者がなにも考えていないだけなのは一目瞭然だが、本編は結果オーライでなし崩しにハッピーエンドになっている。
何故ジェラールは、計画をフィリップに知らせず単独で事を起こしたのか。それまであれほどマメに連絡を取り、指示を仰いでいたにもかかわらず。
彼は刑事としての任務より、自身の償いを優先させたんだ。
犯人が死のうが逃げようが、関係なし。モーリスの手にしていた偽りをすべて奪い取り、丸裸になった彼に真実を突きつけるためだけに、上司に無断でこの大イベントを行ったのだ。
これは賭けだった。
フィリップがジェラールの動きを知り、駆けつけてくるまでの間だけの。
リシャールやペランを殺すことも、ジェラールを殺すことも、自殺することもできた。
しかしモーリスはどれを選ぶことも出来ず、フィリップ登場によって逮捕された。
真実は明かされた。
ジェラールはもうなにも偽っていない。
14年間握りしめてきた罪は、告げなければならなかった相手に届いた。
それでどうするかは、モーリスの問題だ。
逮捕されたモーリスと、ジェラールはしばし見つめ合う。
殺された男の息子と、見殺しにした男が見つめ合う。
抱きしめることが出来たら、よかったのに。
彼が罪、彼が過去。
今、未来へ進むために。
抱きしめることが出来たら。
これは賭けだった。
モーリスがジェラールを殺すか、自殺するか。
だが、どちらにも針は傾かず、双方生きたまま賭けは終わった。
賭けは、3つめの結果となった。
これからも生き続けるモーリスを、支える。
ジェラールが歪めてしまった彼の14年間を、償うために。なにもかも失った彼のこれからの人生を、彼が立ち直るまで陰に日向に支え続けるのだ。
そのためには、ジェラール自身がまず、立たなければ。自分の足で。ジェラール自身として。
14年間、孤独な人生を歩んできたのは、ジェラールだけじゃない。モーリスもまた、同じように暗い道を歩いていた。
ふたりの男はそうとは知らず、同じ道を平行して歩いていたんだ。
このマルセイユでふたりの道は交わり、今、ひとつになった。
死んだ方が楽だったかもしれない。
ジェラールも、モーリスも。
それでもふたりは死ぬことなく、地下水道をあとにした。罪がはじまり、罪が終わった場所から、光射す地上へ出た。
だから生きるんだ。
彼の「美しい故郷」。
彼の「罪の結果」。
彼の「罪と罰」。
彼の「償い」。
いつかジェラールの心はモーリスに届くだろうか。
過ごした孤独な日々を、慰め合う日が来るだろうか。
「あのとき撃っておけばよかったのに」
と、この日のことを笑い話に、酒を酌み交わす日が来るだろうか。
ふたりの魂の罪人は、「こいつムカつく」とケンカしながら、それでも歩いていく。
前へ。
暗い地下水道を出て。過去と決別して。
今、「孤独と秘密」は完全に消えた。
己れの罪を隠匿し、それゆえに誰にも心を開くことが出来なかったジェラールは、自分の心を縛る鎖から解放された。
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