「舞台に、水くんがいる」

 みんな口を揃えてそう言うんだ。
 新人公演『エル・アルコン−鷹−』にて。

 キャプテン・ブラック@真風涼帆。
 入団前から水くんに似ているとかオサ様に似ているとか噂になっていた彼。わたしは文化祭から「水くん似」と書き続けてるなー。にしても今回はまんまバラク@『鳳凰伝』。

「似てるよねー」
「水そのまんまだよねー」

 ちょっと待ってよ。たしかに顔はそっくりだし雰囲気もいい感じだったけど、真風くんダメダメだったじゃん。水くんはあんなにヘタじゃないわっ。

「え? うまくないからこそ、水に似てるんでしょ?」
「うまくないとこが似てる」

 ちょっと待ったMyフレンズ!! 聞き捨てならないわ、水くんはうまいわよっ。男の中の男よ!

「男なのは認めるけど、うまくはないよね」
「かっこいいとは思うけど、うまくはないよね」

 ……複数の友人に聞いても、誰も水しぇんが「うまい」とは言ってくれない……。
 かくいうわたしも、『銀の狼』まで、彼が演技うまいかどうかなんて考えたことなかったしな。んなこととは関係なく「かっこいい!」とか「ステキ!」とかで舞い上がっていたし。

 今は、巧い人だと思っているのよ。心のある演技を、完成された男役芸とともに見せてくれる人だと。
 でもそれは、ファン視点なんでせうか。一般認識としては、水しぇんってアレな人なの??

 まあ、それはともかく。

 友人たちはひとくくりにしてくれた、ブラック@真風。
 いやあ、演技も発声もまだまだ、ダメダメレベルです。
 でも。
 かっこいいっす。
 そこにいるだけで、「おっ」と思えるのは、強みです。長所です。や、「水くんに似ている=好み」だっつーことも大いにあるけど。
 まだ研2だもんよ。ヘタで当然、ダメダメで当然。『Kean』のときも台詞がうわずっていて、ついでに滑舌も良くなくて大変だったが、この新公ブラックもそれ以上に大抜擢、そりゃー大変だったろう。

 薔薇の花くわえてせり上がり登場だもんな。研2でな(笑)。
 大変やな〜〜。
 イロモノキャラなんで、演技力云々よりも必要なのはハッタリ力。まずソレを磨かせようということかな、期待の新人くん。

 まだまだ幼くて拙さが目につくけれど、足りない分をこれからどう埋めていくのか、最初から完成していないところが期待感を煽る。
 ビッグに育って欲しい。長身の水しぇんだもんなー。たのしみだなー。
 

 反対に、若いけれど「うまい!」と話題をさらったのが研3の大輝真琴。
 小ティリアン役。

 本役のティリアン@トウコにつながる演技だった。

 本役の小ティリアン@ミッキーは、悪くない。ヘタでもなく、まあうまいんじゃないかなと思われているのだろう、だから話題にものぼらない。や、わたしの周囲では。
 うまければ『落陽のパレルモ』や『ファントム』のののすみみたいに「アレ誰?!」と噂になるし、ヘタすぎても「誰よアレ!」と言及せずにはいられないだろうから。ソレが一切ない、誰もナニも言わない、興味がない、つーのは、ふつーに及第点なんだろう。

 でも新公の小ティリアンは、巧かった。ふつうに演技が出来ていたということに加え「黒さ」があった。

 父親を手に掛け、剣を握り強い意志を解放する。
 「悪魔」とののしられながら、七つの海七つの空へ思いを馳せる。

 「ティリアン」という人間の遡源がここにある。

 小ティリアン@弟くん(『Hallelujah GO!GO!』の、主役の弟役)……もしくはいとーさん(本名まんま・笑)と呼んでいたが、周囲が「まいける」と呼びはじめているので、ソレに倣いますわ、まいけるくん。

 純粋な少年として、母と敬愛する男と「オレンジの夢」を語るときも端正に巧いのだけど、やっぱ冒頭の「黒さ」と「強さ」に注目。
 なにしろ物語の最初、プロローグだから、ここが弱いと作品がつまずくのよね。
 残念ながらジェラード役がいろいろと足りていないのですごーくぼやけてしまったプロローグを、小ティリアンが力尽くで「真ん中」へ話を引き戻した。

 彼は、「ティリアン」だ。

 幼いけれど、まちがいなく「ティリアン」だった。
 その黒さと強さがまっすぐに光を放っていた。

 ……ティリアンなのよ、彼。
 だから、彼が成長して新公ティリアン@ともみんになるのは、変なの。

 新公のティリアンは、正義のヒトだから(笑)。
 あの白いティリアンには、残念ながらまいける小ティリアンはチガウの。

 まいけるの小ティリアンがつながっているのは、トウコのティリアン。
 まいけるが成長してトウコになるなら、わかる。
 てゆーか、そっちを見たい。そっちが、正しい。

 本公演の小ティリアンを見ても、うまいもヘタも思わなかったし、正しいとかチガウとかも思わなかった。
 ただ、新公の小ティリアンを見て、「この子からトウコにつながる芝居を見たい」と思った。

 や、ソレだけだ。
 本役のミッキーに対して含みがあるわけではない。

 まいけるはうまい子だと思う。
 前回の『シークレット・ハンター』新公でも演技力を高く評価されていたはず。台詞もなかったのなー(笑)。
 ただ、子役限定であることを危うく思う。
 『Hallelujah GO!GO!』にしろ、新公にしろ、まともに役がついているのが全部子役、少年役だもんよ。
 若くて小柄だからどうしてもそうなっちゃうんだろうけど、ヅカで必要なのは「大人の男」だから、子役がどれだけうまくても男役としてのスキルにはならない。
 まいけるに、大人の男の役を。
 大人役をやるとどーなるのか見てみたいっす。本公演では金髪ロン毛で耽美風(笑)にがんばってるけどさー。群舞ばっかだもんよー。芝居が見たいのよー。

 
 まいけると同期の初ヒロイン、ギルダ@キトリは、ふつーにうまかった。
 本役あすかちゃんのコピー。
 表情、声、話し方のイントネーションまで、まるまるコピってた。

 これだけきれーに模倣できるんだから、うまい子なんだろうと思う。

 あすかのコピーというと花組のきほちゃんを思い出すけど、きほちゃんが技術的には完璧にコピーしていながらも情感や華の面で劣化コピーになっていたことを思うと、キトリは十分内面もコピーしていたと思う。
 ただ、「コピー」止まりである、という点ではやはりインパクトに欠けるなー。

 彼女の本役であるジュリエット役の方が魅力も破壊力(笑)もはるかに上だ。
 新公のジュリエットは「ふつー」だった。おバカ度もトンデモなさも、本公には及ばなかった。
 てことは役がバカであるという以上に、演じているキトリがすごいんだなと思い知らされた(笑)。

 ギルダは特殊な役だし、ジュリエットもトンデモないしで、彼女の娘役としての力はまださーっぱりわかんないっす。
 彼女にも、ふつーの役をプリーズ。


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