パパ、どこなの、抱きしめてよ。@HOLLYWOOD LOVER
2008年1月11日 タカラヅカ 暗い舞台に少年リチャード@遼河はるひ登場、ピンスポット。短パン希望。のんちゃん@『PUCK』風味?
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
頼りなげに歌う。ボーイ・ソプラノよろしく。がんばれあひ。
「ママ、お部屋は真っ暗なんだ。目が覚めるとこわいんだ。泣いても誰も来ない。ボクはひとりぼっち」
徐々に明るくなる舞台奥に、銀髪の男@越乃リュウ登場。
坐り込む少年リチャードの後ろに立つ。
「ママには聞こえない」
「誰?」
驚いて振り返る少年リチャードに手をさしのべる。
「友だちさ。呼んでくれれば来てあげる」
「本当?」
「必ず」
少年リチャード、その手を取り、男に抱きつく。
「ボクはならない、パパのようには。昨日も一緒だった、別の女の人。ママが可哀想」
少年の母親は女優だった。銀幕の中でこそ輝いていた。
舞台奥、ホリゾントに映像。古いフィルムらしくぼやけてしまってよく見えない。どうやら女性が映っている。
「ママ、どうして旅に出るの。ボクも連れてって。お家にいるときだけでもボクをひとりにしないで」
少年リチャード、スクリーンの女性に語りかけるように歌う。
スクリーンのフィルムは空回りをし、やがて消える。
暗転。
銀髪の男は一旦背を向け、暗転中に舞台上で着替える。
リチャードのオフィス。
銀髪の男が立っていた場所に、レイ@越乃リュウが立っている。
下手から現れた青年リチャード@遼河はるひ、椅子に坐る。憔悴している。
リチャードは大映画会社の名プロデューサーであり、妻ローズを主演とした人気映画を作り続けてきた。
しかし、今。
「大女優のイメージ保ってローズ様を守り続ける。ステファーノに勝ち、生き残る。虚しい闘いですね」
部下レイの言葉に、リチャードが激しく反応する。
「妻は私を愛してくれている」
「彼女を信じてるのですか」
「もちろんだ」
「もし裏切られたらどう生きていく?」
「ありえない」
ホリゾントに映像。ザラザラの荒れた画面に、モノクロの美しい女の姿が映る。後ろ姿だったり指先だったり口元だけだったり。
決して顔は映らない。
映像の前に、女が立つ。
いかにも「女優」なファッションをした、物憂げな美女@城咲あい。
美女はなにも言わず、現れた男@大空祐飛と抱き合い、静かに踊り出す。
スクリーンには断続的に映像が流れる。
モノクロの、美しい女の姿。髪、背中、肩先……決して顔は映らない。
その前で抱き合うふたり。生身の、男と女。
「これが彼女の愛なんです」
レイの声だけがする。彼は一旦ライトの外に出ている。
デスクに両手をついたリチャードはつぶやく。
「どうすればいい。生きていけない」
「死ねばいい」
レイの声色が変わった。
再びライトの中に戻った男は、いつかの銀髪の男だった。早変わり大変。
「お前」
リチャード、驚いて立ち上がる。音楽変わり、彼を翻弄するようなものになる。ぶっちゃけ、ルドルフがトートと黒天使に弄ばれるときの音楽。
リチャード、上着を脱がされ、シャツ姿で銀髪の男の腕の中でくるくる踊る。弄ばれて踊る。
その後ろに、ザラザラとモノクロの女が映るスクリーンがある。映像は消えたり、また気まぐれに浮かび上がったりしている。
その前で踊る男と女は、銀髪の男と踊るリチャードと時にシンクロする。
また、女@城咲あいと踊る男が、別の男@磯野千尋に変わる。そのふたりのダンスも、銀髪の男とリチャードのダンスに、時にシンクロする。
音楽高まり、沈黙。
銀髪の男がリチャードを抱き寄せ、接吻するかしないかのタイミングで暗転。
スクリーンの顔の見えない女だけが、浮かび上がる。
再びライトがついたとき、そこはやはりリチャードのオフィスであり、デスクに坐るリチャードと、その傍らに立つ彼の忠実な部下レイがいた。
レイは淡々と、ローズがステファーノと逃げる計画をリチャードに報告していた。
「レイ。お前は私を卑怯だと思うか」
「貴方らしいやり方だと思います。私は貴方の作る映画が好きでした」
スクリーンにはザラザラの途切れ途切れのフィルム。微笑み続ける幻の美女。
スクリーンの前に、純白の花嫁衣装の女@城咲あいが立つ。顔にはベール。彼女は、まるでそこに新郎がいるかのように腕を伸ばす。
エスコートを求めるように。
リチャードが立ち上がり、舞台奥の花嫁の腕を取るように腕を持ち上げ……ふたりは、別々の方向へ、袖へはけていく。
残るのはスクリーンと、レイ。
ラジオ放送と、マスコミの声。
リチャードと妻ローズの飛行機事故を口々に告げる。雑音、騒音。
サウンドエフェクトのみ。
それらが治まると、同時に舞台には無数のロウソク。中央に棺。
棺にすがりつき、泣き崩れるリチャードの父@磯野千尋。
レイもその場に立ち続ける。
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
ボーイ・ソプラノの歌声が聞こえ……ライトが照らしたのは大人のリチャード。
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
大人の声で歌う。
父には彼が見えないのか、泣きながら下手へ去っていく。レイはその場に残るが無表情。
その顔は、銀髪の男のものかもしれない。
スクリーンにはもうなにもない。ただときどきザラザラした影や汚れだけが映る。
スクリーンの前に立つリチャード。
その影が、スクリーンに映る。幻の女の代わりに。
「ママ、どこなの……」
歌声が途切れ、その声が消えると同時にレイの姿が闇に消える。
暗闇の中、スクリーンとリチャードだけになる。
「パパ……」
少年の声でつぶやき、最後のライトが落ちる。
幕。
☆
越リュウのトート、見てみたいなー。
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
頼りなげに歌う。ボーイ・ソプラノよろしく。がんばれあひ。
「ママ、お部屋は真っ暗なんだ。目が覚めるとこわいんだ。泣いても誰も来ない。ボクはひとりぼっち」
徐々に明るくなる舞台奥に、銀髪の男@越乃リュウ登場。
坐り込む少年リチャードの後ろに立つ。
「ママには聞こえない」
「誰?」
驚いて振り返る少年リチャードに手をさしのべる。
「友だちさ。呼んでくれれば来てあげる」
「本当?」
「必ず」
少年リチャード、その手を取り、男に抱きつく。
「ボクはならない、パパのようには。昨日も一緒だった、別の女の人。ママが可哀想」
少年の母親は女優だった。銀幕の中でこそ輝いていた。
舞台奥、ホリゾントに映像。古いフィルムらしくぼやけてしまってよく見えない。どうやら女性が映っている。
「ママ、どうして旅に出るの。ボクも連れてって。お家にいるときだけでもボクをひとりにしないで」
少年リチャード、スクリーンの女性に語りかけるように歌う。
スクリーンのフィルムは空回りをし、やがて消える。
暗転。
銀髪の男は一旦背を向け、暗転中に舞台上で着替える。
リチャードのオフィス。
銀髪の男が立っていた場所に、レイ@越乃リュウが立っている。
下手から現れた青年リチャード@遼河はるひ、椅子に坐る。憔悴している。
リチャードは大映画会社の名プロデューサーであり、妻ローズを主演とした人気映画を作り続けてきた。
しかし、今。
「大女優のイメージ保ってローズ様を守り続ける。ステファーノに勝ち、生き残る。虚しい闘いですね」
部下レイの言葉に、リチャードが激しく反応する。
「妻は私を愛してくれている」
「彼女を信じてるのですか」
「もちろんだ」
「もし裏切られたらどう生きていく?」
「ありえない」
ホリゾントに映像。ザラザラの荒れた画面に、モノクロの美しい女の姿が映る。後ろ姿だったり指先だったり口元だけだったり。
決して顔は映らない。
映像の前に、女が立つ。
いかにも「女優」なファッションをした、物憂げな美女@城咲あい。
美女はなにも言わず、現れた男@大空祐飛と抱き合い、静かに踊り出す。
スクリーンには断続的に映像が流れる。
モノクロの、美しい女の姿。髪、背中、肩先……決して顔は映らない。
その前で抱き合うふたり。生身の、男と女。
「これが彼女の愛なんです」
レイの声だけがする。彼は一旦ライトの外に出ている。
デスクに両手をついたリチャードはつぶやく。
「どうすればいい。生きていけない」
「死ねばいい」
レイの声色が変わった。
再びライトの中に戻った男は、いつかの銀髪の男だった。早変わり大変。
「お前」
リチャード、驚いて立ち上がる。音楽変わり、彼を翻弄するようなものになる。ぶっちゃけ、ルドルフがトートと黒天使に弄ばれるときの音楽。
リチャード、上着を脱がされ、シャツ姿で銀髪の男の腕の中でくるくる踊る。弄ばれて踊る。
その後ろに、ザラザラとモノクロの女が映るスクリーンがある。映像は消えたり、また気まぐれに浮かび上がったりしている。
その前で踊る男と女は、銀髪の男と踊るリチャードと時にシンクロする。
また、女@城咲あいと踊る男が、別の男@磯野千尋に変わる。そのふたりのダンスも、銀髪の男とリチャードのダンスに、時にシンクロする。
音楽高まり、沈黙。
銀髪の男がリチャードを抱き寄せ、接吻するかしないかのタイミングで暗転。
スクリーンの顔の見えない女だけが、浮かび上がる。
再びライトがついたとき、そこはやはりリチャードのオフィスであり、デスクに坐るリチャードと、その傍らに立つ彼の忠実な部下レイがいた。
レイは淡々と、ローズがステファーノと逃げる計画をリチャードに報告していた。
「レイ。お前は私を卑怯だと思うか」
「貴方らしいやり方だと思います。私は貴方の作る映画が好きでした」
スクリーンにはザラザラの途切れ途切れのフィルム。微笑み続ける幻の美女。
スクリーンの前に、純白の花嫁衣装の女@城咲あいが立つ。顔にはベール。彼女は、まるでそこに新郎がいるかのように腕を伸ばす。
エスコートを求めるように。
リチャードが立ち上がり、舞台奥の花嫁の腕を取るように腕を持ち上げ……ふたりは、別々の方向へ、袖へはけていく。
残るのはスクリーンと、レイ。
ラジオ放送と、マスコミの声。
リチャードと妻ローズの飛行機事故を口々に告げる。雑音、騒音。
サウンドエフェクトのみ。
それらが治まると、同時に舞台には無数のロウソク。中央に棺。
棺にすがりつき、泣き崩れるリチャードの父@磯野千尋。
レイもその場に立ち続ける。
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
ボーイ・ソプラノの歌声が聞こえ……ライトが照らしたのは大人のリチャード。
「ママ、どこなの、聞こえてるの。寒いんだ、抱きしめてよ」
大人の声で歌う。
父には彼が見えないのか、泣きながら下手へ去っていく。レイはその場に残るが無表情。
その顔は、銀髪の男のものかもしれない。
スクリーンにはもうなにもない。ただときどきザラザラした影や汚れだけが映る。
スクリーンの前に立つリチャード。
その影が、スクリーンに映る。幻の女の代わりに。
「ママ、どこなの……」
歌声が途切れ、その声が消えると同時にレイの姿が闇に消える。
暗闇の中、スクリーンとリチャードだけになる。
「パパ……」
少年の声でつぶやき、最後のライトが落ちる。
幕。
☆
越リュウのトート、見てみたいなー。
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