コレハ・ヒミツノ・コトノハ。@メランコリック・ジゴロ
2008年2月11日 タカラヅカ 言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
男は、少女を騙していた。兄の振りをしていた。
男は、自分がつまらない生き方をしてきたことを自覚している。ルックスの良さを武器に、楽に生きてきた。中身の伴わない生活をしてきた。
その結果が、少女を騙した一連の出来事につながった。
「もし恋人ができたら会わせろよ。イイ奴かどうか見極めてやる」
だから言えない。
少女に、言うことができない。
「なんでも言ってこいよ」
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
少女は、男に騙されていた。兄だと信じ頼りきっていた。
少女は、男がそのことを悔いていること、罪悪感を持っていることを察している。そして男は、一連の出来事を経て、少女の父に少女のことを頼むと託されていた。
その結果、男は少女の面倒を見、やさしくする「義務」を背負った。
「そろそろ行こうか」
「時間余らない?」
「ちょうどぐらいだ」
だから言えない。
男に、言うことができない。
「駅に長くいるの、嫌」
「ゆっくり歩こう」
男の罪の意識、後悔。
少女が受け止める、「義務」ゆえのやさしさ。
「なにかあったら、俺がついてる」
「もう会えない!」
やさしくしてくれるのは、「義務」ゆえでしょう? そんなの、苦しすぎる。もう会えない。
叫びだしたのは、少女の方。兄妹ごっこの均衡を破る。これ以上はもう無理、と。
少女に呼応して、男も叫ぶ。兄妹ごっこの均衡を壊したくなくて。その絆にすがりたくて。
でも。
別れを前に、警笛を鳴らす汽車を前にして、男は手を離せない。少女に渡すはずの鞄。
男の前から逃げ出したい少女は、渾身の力で鞄を引っ張って。消えてしまいたい思いのままに、夢中で。
鞄の引き合い、取り合いのようになって。
滑稽な姿をさらして。
まとっていたすべてのもの……嘘、罪悪感、格好付け、強がり、臆病さ……そんなもの全部吹き飛ばして、男は叫ぶんだ。
愚かにも、叫ぶんだ。
ありのままの、真実を。
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
今、言わなければならない言葉がある。
「お前が好きだ!」
で、さらにみっともなく、言葉をつらねて言い訳しようとする男に、少女が抱きつく。両腕を回して、抱きしめる。
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
今、いちばん聞きたかった言葉を得て。
愛する男の言葉を遮り、少女は彼を抱きしめる。
言葉なんか、いらない。
もう、これ以上。
☆
……いやあ、もー。
正塚芝居全開ですな、『メランコリック・ジゴロ』。
感情の流れを説明する台詞は一切なし。むしろ、感情とは無関係の日常会話をかわしながら、ふたりの感情がひとつの方向へ高まっていくのを演出する。
台詞だけ聞いている人には、すっげー唐突に映るはずだ、ダニエル@まとぶんの最後の告白(笑)。
正塚作品ってほんと、愛を語る言葉が少ないよなー。言葉じゃない部分で表現するから、演技力か温度、最低限どちらかは持ち合わせていないとつまらなくなるもんなんだが……まとぶはいいよなー。あの温度。あまくやさしい、じれったさ(笑)。
いつの観劇時だったかな。
ダニエルの「お前が好きだ!」のとき、後ろの席から声が聞こえたの。
「やっと言った」
お前ら両想いじゃん、愛し合ってんじゃん、なにしてんだよ、言うべき言葉はソレじゃないだろ? なんで反対のこと言うんだよ、バカバカバカ、このまま別れる気?!
ダニエルとフェリシア@あやねちゃんの、じれったい関係にやきもきし、言え、言うんだ、言わなきゃダメだって! と、心の中で叱咤し、応援し、切なくなって。
それでよーやく、「お前が好きだ!」……やっと言った、よく言った、よかった。よかったよおお(涙)。
とゆー心の流れがあってこそでしょう、後ろの人。
ふたりの恋に感情移入して、手に汗握って見守っていたからこその、思わず出ちゃった一言だよね?
や、その声は、男性のものでした。
男の人でも、ふたりのじれったい恋に感情移入して、一緒にじれじれしちゃうんだー(笑)。
まるで校舎裏の茂みに隠れて、親友が女の子に告白する様を見守る気持ち? なにお天気の話なんかしてんだよ、チガウだろ、ああっなんで「好きな男ができたら俺に紹介しろ」とかわけわかんねーこと言ってんだよ、お前だお前、お前がその好きな人だろーが、つかなんのためにわざわざこんなとこに彼女呼び出したんだ、本当の気持ちを伝えるためだろ、早く言えよ、このバカ、簡単だろ、たった一言だ……ひとこと、なのに……。
さんざんじらしてじらして、ダニエルの決死の……でも、「清水の舞台から飛び降りちゃった」というよりは、「あ、足すべらした」的、別れという現実を前に感情が理性を無視して暴走した結果、みたいな告白を最後に物語がぴたっと終わる、憎らしさ。
説明一切なし、蛇足一切なし、登場人物全員でご挨拶ダンス、しあわせデュエットダンスののちダニエルとフェリシアのキスシーンで幕。
……うまいよなあ。
上手前方で見たとき、最後にフェリシアを見つめるダニエルの表情が、もお、デロデロに甘くて。
いやあ、男友だちがこんな顔してたら、思わずアタマはたいてるね(笑)。や、ムカつくくらい、手放しで幸せそうで。はいはいごちそうさま、でもそのしまりのないカオなんとかしろオマエ。……てなもんで。あ、なんかオレ、男モード入ってる?
や、わたしはヲトメなんで、もちろんオンナノコモードで観てますことよ、ほほほほほ。
そのデロデロなまとぶさんにうっとりして、紗幕の向こうで「さあキスだ!」ってときになると突然キリッと男前になるまとぶさんに胸キュンっす。
ダニエルが好き、そしてダニエルをダニエルたらしめている、まとぶさんが好き。
ヲトメゴコロがピンクに染まりっぱなしよぉ。
言えない言葉がある。
男は、少女を騙していた。兄の振りをしていた。
男は、自分がつまらない生き方をしてきたことを自覚している。ルックスの良さを武器に、楽に生きてきた。中身の伴わない生活をしてきた。
その結果が、少女を騙した一連の出来事につながった。
「もし恋人ができたら会わせろよ。イイ奴かどうか見極めてやる」
だから言えない。
少女に、言うことができない。
「なんでも言ってこいよ」
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
少女は、男に騙されていた。兄だと信じ頼りきっていた。
少女は、男がそのことを悔いていること、罪悪感を持っていることを察している。そして男は、一連の出来事を経て、少女の父に少女のことを頼むと託されていた。
その結果、男は少女の面倒を見、やさしくする「義務」を背負った。
「そろそろ行こうか」
「時間余らない?」
「ちょうどぐらいだ」
だから言えない。
男に、言うことができない。
「駅に長くいるの、嫌」
「ゆっくり歩こう」
男の罪の意識、後悔。
少女が受け止める、「義務」ゆえのやさしさ。
「なにかあったら、俺がついてる」
「もう会えない!」
やさしくしてくれるのは、「義務」ゆえでしょう? そんなの、苦しすぎる。もう会えない。
叫びだしたのは、少女の方。兄妹ごっこの均衡を破る。これ以上はもう無理、と。
少女に呼応して、男も叫ぶ。兄妹ごっこの均衡を壊したくなくて。その絆にすがりたくて。
でも。
別れを前に、警笛を鳴らす汽車を前にして、男は手を離せない。少女に渡すはずの鞄。
男の前から逃げ出したい少女は、渾身の力で鞄を引っ張って。消えてしまいたい思いのままに、夢中で。
鞄の引き合い、取り合いのようになって。
滑稽な姿をさらして。
まとっていたすべてのもの……嘘、罪悪感、格好付け、強がり、臆病さ……そんなもの全部吹き飛ばして、男は叫ぶんだ。
愚かにも、叫ぶんだ。
ありのままの、真実を。
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
今、言わなければならない言葉がある。
「お前が好きだ!」
で、さらにみっともなく、言葉をつらねて言い訳しようとする男に、少女が抱きつく。両腕を回して、抱きしめる。
言いたい言葉がある。
言えない言葉がある。
今、いちばん聞きたかった言葉を得て。
愛する男の言葉を遮り、少女は彼を抱きしめる。
言葉なんか、いらない。
もう、これ以上。
☆
……いやあ、もー。
正塚芝居全開ですな、『メランコリック・ジゴロ』。
感情の流れを説明する台詞は一切なし。むしろ、感情とは無関係の日常会話をかわしながら、ふたりの感情がひとつの方向へ高まっていくのを演出する。
台詞だけ聞いている人には、すっげー唐突に映るはずだ、ダニエル@まとぶんの最後の告白(笑)。
正塚作品ってほんと、愛を語る言葉が少ないよなー。言葉じゃない部分で表現するから、演技力か温度、最低限どちらかは持ち合わせていないとつまらなくなるもんなんだが……まとぶはいいよなー。あの温度。あまくやさしい、じれったさ(笑)。
いつの観劇時だったかな。
ダニエルの「お前が好きだ!」のとき、後ろの席から声が聞こえたの。
「やっと言った」
お前ら両想いじゃん、愛し合ってんじゃん、なにしてんだよ、言うべき言葉はソレじゃないだろ? なんで反対のこと言うんだよ、バカバカバカ、このまま別れる気?!
ダニエルとフェリシア@あやねちゃんの、じれったい関係にやきもきし、言え、言うんだ、言わなきゃダメだって! と、心の中で叱咤し、応援し、切なくなって。
それでよーやく、「お前が好きだ!」……やっと言った、よく言った、よかった。よかったよおお(涙)。
とゆー心の流れがあってこそでしょう、後ろの人。
ふたりの恋に感情移入して、手に汗握って見守っていたからこその、思わず出ちゃった一言だよね?
や、その声は、男性のものでした。
男の人でも、ふたりのじれったい恋に感情移入して、一緒にじれじれしちゃうんだー(笑)。
まるで校舎裏の茂みに隠れて、親友が女の子に告白する様を見守る気持ち? なにお天気の話なんかしてんだよ、チガウだろ、ああっなんで「好きな男ができたら俺に紹介しろ」とかわけわかんねーこと言ってんだよ、お前だお前、お前がその好きな人だろーが、つかなんのためにわざわざこんなとこに彼女呼び出したんだ、本当の気持ちを伝えるためだろ、早く言えよ、このバカ、簡単だろ、たった一言だ……ひとこと、なのに……。
さんざんじらしてじらして、ダニエルの決死の……でも、「清水の舞台から飛び降りちゃった」というよりは、「あ、足すべらした」的、別れという現実を前に感情が理性を無視して暴走した結果、みたいな告白を最後に物語がぴたっと終わる、憎らしさ。
説明一切なし、蛇足一切なし、登場人物全員でご挨拶ダンス、しあわせデュエットダンスののちダニエルとフェリシアのキスシーンで幕。
……うまいよなあ。
上手前方で見たとき、最後にフェリシアを見つめるダニエルの表情が、もお、デロデロに甘くて。
いやあ、男友だちがこんな顔してたら、思わずアタマはたいてるね(笑)。や、ムカつくくらい、手放しで幸せそうで。はいはいごちそうさま、でもそのしまりのないカオなんとかしろオマエ。……てなもんで。あ、なんかオレ、男モード入ってる?
や、わたしはヲトメなんで、もちろんオンナノコモードで観てますことよ、ほほほほほ。
そのデロデロなまとぶさんにうっとりして、紗幕の向こうで「さあキスだ!」ってときになると突然キリッと男前になるまとぶさんに胸キュンっす。
ダニエルが好き、そしてダニエルをダニエルたらしめている、まとぶさんが好き。
ヲトメゴコロがピンクに染まりっぱなしよぉ。
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