「なんでこんなオレと結婚したんだろう……」

 時々むしょーに自問自答したくなる。
 不思議なキモチになる。

 バロットの妻、ルシルはあまりに言動に容赦というものがなかった。

 黒か白、無しか有り、イエスかノー。いつだって二者択一、曖昧とか微妙とか、まわりくどくとかやんわりととか歯に衣とか、とにかく言動にクッションを置くことはありえない。ルシルはいつだって「ものごと最短距離」、ややこしいことはせずにまっすぐすっぱり必要なことだけを言う。
 だからバロットにはわかりやすい。悲しいときに笑ったり、嫌っているのにおべっかを言ったり、言いたいことがあるのに別のことを言ったりという、ふつーの人たちはバロットには理解できない。
 ルシルはいつだって直球だ。飾るための言葉を使わない。
 彼女が笑っているときは本当にうれしいのであり、怒っているときは本当に怒っているのだ。バロットはソレを知っている。

 そんな彼女がどーゆーわけかバロットと結婚した。
 嫌なら絶対していないだろうから、まぎれもなく彼女の意志であり、判断である。
 だからそれは正しいことである……はずだが。

 だが。
 時々むしょーに自問自答したくなるのだ。
 不思議なキモチになるのだ。
 何故ルシルは、オレと結婚したんだろう?

「親父が美しいということについてだが……」

 以前この話題を振ったとき、ルシルには「このファザコン!!」と容赦なく罵られた。彼女は「信じられない」とぶつぶつ言いながら、しばらく怒り続けていた。

 「ファザコンって、なんだ?」と、真面目に聞き返したら、さらに怒られた。結局言葉の意味は教えてくれなかった。

 事実を口にしただけなのに、何故彼女は怒るのだろう? バロットにはわけがわからない。

「もういいわよ、わかったわよ。フォンダリは世界一美しい。これでいい?!」

 この話題になると、ルシルは聞く耳を持たない。
 父・フォンダリが美しいことは、ただの事実だ。本当のことを言って、何故怒られるのだろう?

「親父はたしかに美しいが、世界一じゃない」

 こちらを見ようともしないルシルの言葉を、バロットは真面目に訂正する。

「世界でいちばん美しいのは、お前だ」

 だから、ただの事実。本当のこと。……これもまた、ルシルは怒るのだろうか? バロットは言ったあとで、一応身構える。下手なことを言うと張り倒されるのが常だからだ。

 バロットは思ったことしか言わない。本当のことしか言わない。
 それで怒られたり叱られたりしても、どうしようもない。

 
「なんでこんなオレと結婚したんだろう……」

 自分の人生に、結果に、むしょーに、疑問を持つ一瞬。
 不思議なキモチになる一瞬。
 バロットは、盛大に溜息をつく。

「ねぇアンタ、今晩はナニが食べたい? 好きなモノ作ったげるよ」

 何故か、ルシルはご機嫌だ。
 バロットはいつも大真面目に本当のことを言っているだけなのに。
 なのに、ルシルは怒ったり笑ったり。
 バロットは変わらないのに、ルシルはしょっちゅう変わる。

 わからない。
 バロットには、ルシルがなにに怒るのか、笑うのか、どうしてなのか、なにもわからない。

 わかっていることは、ただひとつ。

 ルシルがいると、バロットがしあわせだということだ。

 がんばれバロット。
 負けるなバロット。
 ツンデレ妻にめげるな、激しいツッコミにも負けるな。

 てゆーか。

 やっぱり、がんばれルシル。
 負けるなルシル。

           ☆

 美人でこわいおねーさん、ルシル@いちかのなにがステキかって、それまでずーーっと強面で通してきて、夫バロット@まっつのことを「バカ」呼ばわりで命令口調で叱りつけてて、これ見よがしに溜息ついたりあきれたり無視したり、とにかくひっでー扱いなのに。
 ルシルへの愛ゆえに引き金を引けなかったバロットを問答無用で張り倒し、一方的に三行半叩きつけておきながら。

 いざバロットが倒れているのを見ると、取り乱してすがりつくところ。

 あのキツイ顔が、くしゃりと頼りなげになって。眉なんか八の字になって。

 あー、ほんとに好きなんだなあ。
 いつもの高飛車ぶりが愛情ゆえ、愛されているゆえだとわかると、ルシルの可愛さがどーーんとアップします。
 や、最初からすげーキュートなんだけどね。

 はい、中日公演『メランコリック・ジゴロ』、「がんばれルシル・2」です。

 ルシル@いちかちゃんでまずなにに瞠目するかって、あのスタイル。

 ミニマムなのに、そしてめーっちゃ華奢なのに、曲線がある。
 折れてしまいそうな「女」のカラダなんだよね。セクシーで「高そうな」女。豪奢な長椅子に寝そべっている、しなやかな黒猫のイメージ。
 ダニエル@まとぶんに押さえ込まれているとことか、肩の細さにきゅんきゅんきますわ。
 こんなに細いカラダ、乱暴に扱っちゃダメだよ! バロットがはらはらしてるのもわかる。壊れ物注意!!
 そしてその繊細な器の中身は、めーさ濃くて強い心。半端な男なんぞ撃退します、てな。

 強い心と、小さくて華奢な身体。
 そのアンバランスさが、彼女の魅力。
 刑事@みつるを撃退するくらいの強さは持ち合わせているものの、あれはどっちかっつーと刑事が弱すぎたってのもあるだろうし、ダニエルに押さえ込まれちゃうくらい、力はふつーに弱い女の子なわけで。
 腕力とか体力とかは別に持ち合わせていないのに、それでも強さを感じさせる気位の高い黒猫。
 もっと彼女に似合いの男はいるだろうに、何故か「一発バカ」バロットに惚れている……てのが、彼女の弱み、傷。
 完全体ではなく、そーゆーちょっとアレな部分がある方が、人はより魅力的に見えるわけだから……。

 ルシルがバロットの妻で、うれしい。たのしい。

 警察に捕まるときの「死ぬまでアンタの女房よ!」の台詞は泣かせます。
 ほんとうに、真正面から言ってるんだよ。目を見て、本気で言ってるの。

 ……まあ、永の別れだと勝手に思って盛り上がっているためで、うっかりふたりとも早々に釈放されちゃったりしたら、ルシルの方は気まずくて照れくさくて、盛大にツンツンしそーですけどね(笑)。

 バロットの愛すべきバカさ加減を、さらに「愛らしく」してくれているのが、このかわいいかわいいルシルだと思う。
 もー、ダイスキだー。
 一花かわいい。一花きれい。一花魅力的。一花巧い。

 まっつと一花のコンビを、もっともっと見たい。見ていたいっす。

 
 ところでルシルさん。
 初日近辺はそうでもなかったのに、後半戦、まっつのこと、マジで叩いてません?(笑)

 倒れているバロットに駆け寄ったあと、「アンタ?!」と言いながら頬をぴしゃりとやる、アレ……。
 ふつーに「演技」として「叩く振り」だったら、SEが入るよね。スピーカを通した「叩く音」が響くよね。
 なのにここでのルシルの立てる音はとても微妙にぺしっと小さく鳴るだけで……。
 その微妙な小さな音に、観客も笑ってますけど……アレは、「振り」だけですか? 振り……だけ、だよねえ? マジで叩かないよ、ねえ……?
 いちかちゃんならまっつ叩いてもアリだと思うけどさー(笑)。てかぶっちゃけ、叩く一花と、叩かれるまっつに萌えるけどさー(笑)。
 ヅカでマジに叩くなんてコト、ありえないよねえ??


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