で、ほんとのとこバロットって、強いんですか?

 わからないんですよ。
 『メランコリック・ジゴロ』本来のバロットというキャラクタは、のーみそまで筋肉の、なんでもぶん殴ればそれでカタが付くと思っているバカ男。
 実際、腕っ節は強く、ソレ以外取り柄がないんだろうな、ということは、わかる。初演のマミさん演じるバロットは、素直にそう信じることができる。
 しかしこの再演のバロット@まっつは……わからない。

 ほんとうに強いの? それとも、強い、とカンチガイしているだけ?

「スタンは凄んでるだけだけど、バロットはほんとに強いんでしょ?」

 ノルベール@さおたさんが酒ボトルを取り返そうとするとき、バロットが握っているソレをなかなか取れなくなっていたことを証拠として、友人のドリーさんは言う。
 初日近辺はやっていなかった小芝居をあとからやるよーになっていたのは、そーゆーことか?

「ソレで結局、バロットってどうなのよ?」
 と、多くの人が言うもんだから、新たな演出が加わったとか?(笑)

 バロットが「強い」というか、あーんなに小柄で、あーんなに華奢でも、本当は力持ちであるという小芝居は、たしかに他でもしてるんだよね。

 たとえば、カフェでスタン@壮くんの肩を抱くバロット。
 スタンの方がでかいのに、バロットにたじたじ。バロットの腕を振り払いたいのに、それができない。
 壮くんはとーーっても嫌そうに、まっつの手をつついたり振ったりしているが、振り払うことはできない。
 そればかりか、どんどん膝を折り、小さくなっていっている。

 あれって、バロットの力が強くて、スタンがぺしゃんこになっていってる、って小芝居だよねえ?
 重しを載せられた人が、膝を折って小さくなっていく、あれだよねえ?

 そーゆー演技をされてもなお、「ソレで結局、バロットってどうなのよ?」と思えてしまうあたり、まっつバロットって、どうなのかと(笑)。
 もちろん、そのギャップ、「どうなのよ?」と思わせること自体を笑えってことなんだろうけど。

 やー、あのか細さとアホさが萌えですよ、バロット(笑)。

 ルシルに怒鳴られるたび、「かなしいワンコ」の顔をする。
 眉を下げてなさけなーい、かなしーい顔をする。

 可憐だ。実に可憐だ。

 筋肉バカなのに、可憐。
 それってどうなのよ(笑)。

 
 バロットが愉快なのは、彼が一貫して「頭の回転が遅い」ことにあると思う。
 なにか言われるたび、返答がワンテンポ遅れる。
 恐竜が、痛みが脳に届くまでに時間がかかるように、バロットもいろーんなことが脳に届くまでに時間がかかるんだと思う。

 ふつーの人にはない「タイムラグ」が、すごーくおかしい。

 罵られたり叱られたりするとたしかに怒ったり落ち込んだりするんだけれど、それすらもすぐに忘れる。
 あの小さなアタマの小さなのーみそには、余分なメモリが入ってないから、いつも上書きされていくのね。

 いつもまっさらな感覚。
 まっさらな怒り、まっさらな哀しみ。
 ……まっさらな歓びと、まっさらな感動。

 可憐で凶暴で小柄な肉食獣は、今日もまた、まっさらな幸福を得られるんだね。

 ずーっとコメディでキておきながら、ルシルに離婚を言い渡されたあとのバロットは、油断するとシリアスになるので注意。
 落ち込みワンコが背中丸めてしっぽ垂らして、「きゅいーん……」と鳴いている姿が、笑えるとゆーよりマジで切なく見える。
 つか、ルシルに殴られた頬を撫でながら、マイク無しの肉声で「痛ぇ……」とかつぶやかれると、コメディから別のモノになりそーだから。
 見ていてとまどうから。
 えーとコレ、笑うところ? 切なくなるところ?

 まっつがやたらと可憐で薄幸で可哀想オーラ出すもんだから。や、そーゆー持ち味の人だから。
 小さくて華奢で、怪力自慢の筋肉男、という、わけわかんない設定にとまどうのと同じ。

 最初から最後までつきまとうギャップ。
 「ソレで結局、バロットってどうなのよ?」という、わけわからなさ。

 それが作者の狙いだとは思う。
 まっつがまた、狙い通りのいい仕事しているから。

 まー、とにかく。

「ソレで結局、バロットってどうなのよ?」

 強いってことにしておきましょうよ。
 そのつもりで演技してるんだと思うし。初演バロットがほんとに強いみたいだし。

 可憐で薄幸でヘタレワンコだけどさ。
 ほんとのとこは、恐竜だからね。回転が遅いのは、そのせいだからね。

 バカだからスタン(凄んでみせるほど強くない優男)に殴られたり、ノルベール(枯れ気味のおっさん)に殴り倒されたりしてるけど。なんかすげー「チョロい」って感じだけど(笑)。
 ほんとは、強いんだってば。
 「オレにまかしゃあ一発だ」は、伊達じゃないんだってば。

 細い白い腕がいかつい革ジャンからのぞいていて、カラダに厚みなくてぺらぺらだったりして、ときどきフェリシアより小さく見えちゃったりもするけど。(ヲイヲイ)
 それでも、強いんだってば。

 小さくて華奢な女房に頭ごなしに叱られても罵られても、張り倒されても、それでもなんらゆらぐことなく彼女を愛している……大きな心を持った男なんだってば。

 とゆーことで。

 
 いやあ、殴られてずーっと倒れたままのバロットの、おなかが上下にけっこーハゲシク動いているのを眺めるのが、なんか好きです。
 はい。
 

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