相沢謙吉が好きです。

 
 青年館での『舞姫』がはじまりました。
 数日前に体調ぶっこわして寝込んだり(人生最大の高熱・笑)、未だ原因不明だったり、カラダ中痛いのが治ってくれてなかったり、旅行中に倒れた母がそのまま入院したり、緑野家がどったばったしているなか、それでも東京へ行く。

 『舞姫』はすばらしい作品です。

 それはわかっている。
 ダイスキだし、すごいとも思っている。

 ただ。
 口で絶賛するほど、1まっつファンとしてこの「作品」を好きか、「相沢謙吉」を好きかというと、それほどでもなかったり、したわけですね。

 作品を素晴らしいと思うことと、まっつファンとしてたのしいか、つーのは別問題で。

 初演時にいろいろいろいろ長々と書いていたように、ダイスキなのも感動したのも、全部本当なので、誤解されるのがこわいが。

 あまりにすばらしい作品だとなんつーんですか、「抜き」の部分がなくて、疲れるんです。
 ヘヴィ・リピート基本でご贔屓眺めてうっとりする場合、名作過ぎると疲労が激しくて。
 ここまで名作でなくても……という、おそろしく贅沢なキモチがわきあがっちゃったりするのよ。駄作だったら怒るくせに。

 楽をしたい、というと変だけど、毎回魂すり切れるくらい泣いて泣いて、終わったあとは死にそうになるよーな作品、うれしいけど、つらいですよ!

 あー、『スカウト』は作品アレだったけど、まっつは美しくてステキだったなあ。
 とか。
 海馬の帝王は客席で悶え死ぬかっつーくらい、笑ったなあ。
 とか。

 作品クオリティが低かろうとぶっちゃけ駄作だろうと、「ステキなまっつ」を眺めてどきどきする分には、作品で感動しないですむので楽だった。

 相沢役はいい役だし、ステキだけど、なにしろ作品も役の立場も重すぎて、手放しで「ステキ。どきどき」とやっていられなかった。
 アズの方が無責任にどきどきできた。ときめけた。海馬教授の方が気楽に笑ってきゃーきゃーいじることができた。

 だから『舞姫』再演はうれしいけれど、それほど手放しでよろこんでいたわけじゃない。

 またあの、つらいキモチを味わうのかー。ふー。
 ……みたいな。

 や、贅沢極まりない、ただのわがままですが。

 
 それでも9ヶ月ぶり?に『舞姫』と、相沢くんと再会して。

 
 『舞姫』は、奇跡だ。

 
 よくぞこんな作品が、存在することが出来た。

 よくできた脚本、演出。音楽、美術。そして、出演者。
 なにが欠けてもダメだ。

 奇跡だ。
 これは、奇跡の公演だ。

 バウで観ていたときは、なにしろヘヴィ・リピートで毎日疲労して、へとへとになっていた。
 毎日感動して、その感動がもう「あたりまえ」にまでなっていて、ある意味鈍感になっていた。

 冷却期間をおいて、改めて出会った『舞姫』の、素晴らしいこと。

 今のタカラヅカで、これほどのものを観ることが出来るなんて。

 今わたしは、「奇跡」を観ている。

 その事実にも、くらくらする。

 
 そして。

 「相沢謙吉」という人。
 バウで観ていたときと、微妙にチガウ人じゃないですか、あの人。
 わたしの感じ方が変わっただけ?

 初日を観て、おどろいた。

 相沢くんって、こんなにステキだっけ?

 知らない。
 こんなの、知らないよ?
 あんなに何度も何度も見ていた人なのに。

 冴えわたる歌声。
 満ちる。
 ……満ちるという言葉が、わかる。感覚として。

 
 『舞姫』再演……。
 うれしいから、というだけでなく、心のどこかに義務のようなキモチもたしかにあり、駆けつけた。
 まっつ好きだから、行かなきゃ、って。

 そんなものが、全部吹き飛んだ。

 すごい。
 『舞姫』って、すごい。

 こんなにすごい作品だから、再演されたんだ。

 
 なんてことを、改めて思い知らされた。


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