あいをころす。@舞姫
2008年3月15日 タカラヅカ 相沢謙吉という人。
『舞姫』をバウホールを観ていたとき、わたしは彼をどんな人だと思っていたんだろう。
原作から受ける、原作を元にいちばんわかりやすく感じるイメージとしては、クールで正しい人。正論を正しく説き、正しい人生を送る人。
それゆえにSなまっつを期待していたのに、実際の相沢くん@まっつはそーゆー「典型」としてわかりやすい人ではなく、とってもファジィにふつーの人だった。
正論を説くのも、足元ではなく進む先を見据えてものを考えるのも、ふつーだから。
正しいことを相手のためにしているのに、その相手が今傷ついていること、今傷つけていることに、傷つくこともまた、彼がふつーだから。
偉人でもかっこいいSでもクールでもなく、あくまでもわたしたちと同じ、常識の範疇にいる、ふつーにハートフルに生きている青年。
その彼のふつーぶりが好きだった。
わたしたちとかけ離れた「強い、正しい人」「Sな人」「ヒーロー」……つまり、それがなんであれ「典型」を作るのは容易い。
ふつーに学者な人を表現するより、マッド・サイエンティストの方が舞台の上で絵として描きやすいように。
ふつうという「ファジィ」なものの方が、舞台でソレを「わかりやすく」表現するのは難しい。
ハートフルでやさしい、ふつーの人、相沢くん。
親友・豊太郎くん@みわっちがダイスキで、自慢で、素直に崇拝している純粋な男の子。
や、ふつーつっても、わたしたちよりずっと強く誠実な人ではあるわけだけど。ぶっとんだ世界にいる豊太郎やエリス@ののすみよりは、わたしたち側っつーことで。
ええっと、バウではこんな感じだったかな。
そのふつーの青年ゆえに、彼の生き様が哀しくなったわけだ。
それが。
青年館ではなんか、手応えが違った。
前半、日本にいるときの相沢くんは変わらない。
相変わらず小市民的で、かわいくて、豊太郎が大好きで、ちょっとウブ(笑)で。
かわいいケンちゃんのままだったので、再演という違和感なく、そのままのキモチで観ていた。
だが後半。
2幕、ドイツで豊太郎に再会してから。
あれ?
なんか……チガウ?
政治家秘書として渡独して来た相沢くんは、1幕の「無邪気な青年」ではなくなっていた。
固い。
豊太郎を好きなことはわかる。
ベルリンにて豊太郎に宛てた手紙、最初に豊太郎がホテルに現れた瞬間の笑顔、天方大臣@星原先輩に豊太郎とのデート早退(笑)を認めてもらったときのうれしそうな顔……豊太郎に関することには、無条件でうれしそうだ。
でも。
そのホテルでの再会時、久しぶりにナマの豊太郎を目の前にした一瞬だけとろけそーに笑うんだが、次の瞬間には「仕事」の顔に戻る。
あんなことがあったあとの、ようやくの再会だ。日本にいたときに見せていた純な青年ならば、もっと他になにかありそうなものなのに……すぐに仕事の話に切り替わる。
このことに象徴されている気がする。「相沢」という人。
ベルリンの街を歩きながら豊太郎に対しエリスと別れるよう話す相沢の印象は、とても固かった。
豊太郎が「情」という、心のやわらかい部分ですがろうとするのに、取り付く島もない。
固い。どこにも緩さがない。
どんなに叩いてもびくともしない鉄の壁のように。
あ、あれ?
相沢くん、こんな人だった?
強く、固い。
親友・豊太郎ですら掴むことができず、鉄の壁の前でとまどっている。
「君にはわからない」てなことを豊太郎に言われたとき、バウではあれほど傷ついていたのに、今回は依然ぐらつくことがない。
傷ついていないわけではなく、それよりもっと別の、強いものが奥にあって、表面的になにを言われても変わらない感じ。
相沢くんの固さは揺るぐことなく、ロシア遠征後の「帰国宣告」にまでつながる。
天方大臣とのデュエット(笑)である「為さねばならないことがある」が、容赦なく強い。厳しい。
豊太郎に対し、正論をたたみかける。
非人間的な容赦のなさで。
相沢くん?
1幕でのかわいらしさとあまりに別人で。
うろたえているうちに、エリスへの説得場面になる。
やはりここでも強く固い相沢くんのまま、エリスにお金を差し出す。
エリスがソレを拒否し……。
相沢が、崩壊する。
鉄の壁が、壊れる。
ダムが決壊するみたいに、激しいものがあふれだす。
変わってない。
彼は、変わってないんだ。1幕のやわらかい心を持った純粋な青年。
それが「使命」のために鉄の固さをまとっていたんだ。
その固さは、彼自身が口にする「己を殺し心に背いても、為さねばならぬことがある」そのままで。
言動一致。
エリスに対し、わかってくれと懇願する相沢。
まさに、懇願。
大の男が、泣き出さん勢いで言い募る。
それまで冷酷なまでに固く、強かった男が、仮面をかなぐり捨て、ナマの感情で訴え続ける。
どれほどのものを超えて、ここにいるのか。
あの冷たく固い鉄の壁をまとっているのか。
使命のため、大儀のために愛を捨てろと、豊太郎に冷酷に言い渡していた。あれは、相沢自身に向けた言葉でもあるんだ。
相沢は、使命と愛をつきつけられたとき、使命を選ぶんだ。
それは彼が愛を軽んじているからでも冷酷だからでもなくて。
1幕で清さん@みほちゃん相手に可愛らしく「思春期」していたり、豊太郎を思うときに見せる愛情ダダ漏れの顔、そしてエリスを説得するための苦悶……それらから、彼が豊太郎に負けず劣らず愛に弱い……愛することを知っている人だとわかる。
それでも彼は選ぶんだ。
愛ではなく、使命を。
泣いて苦悩する親友に「愛を殺せ」と言い渡す彼は、同じことができる、んだ。
もしも国のため、使命のために愛する人を捨てなければならなくなったら、捨てるんだ。
それだけの覚悟があるからこそ、豊太郎にも「愛を殺せ」と言えるんだ。
相沢くんのクールさが上がっていたこと、そして、クライマックスの感情の爆発が大きくなっていたこと。
コレだけだけど。
コレだけで、バウのときと別人だよね?
より「大人」で、「戦士」で、かなしい人になっている……。
相沢謙吉という人。
なんて強く……かなしいひと。
なんて、いとしいひと。
『舞姫』をバウホールを観ていたとき、わたしは彼をどんな人だと思っていたんだろう。
原作から受ける、原作を元にいちばんわかりやすく感じるイメージとしては、クールで正しい人。正論を正しく説き、正しい人生を送る人。
それゆえにSなまっつを期待していたのに、実際の相沢くん@まっつはそーゆー「典型」としてわかりやすい人ではなく、とってもファジィにふつーの人だった。
正論を説くのも、足元ではなく進む先を見据えてものを考えるのも、ふつーだから。
正しいことを相手のためにしているのに、その相手が今傷ついていること、今傷つけていることに、傷つくこともまた、彼がふつーだから。
偉人でもかっこいいSでもクールでもなく、あくまでもわたしたちと同じ、常識の範疇にいる、ふつーにハートフルに生きている青年。
その彼のふつーぶりが好きだった。
わたしたちとかけ離れた「強い、正しい人」「Sな人」「ヒーロー」……つまり、それがなんであれ「典型」を作るのは容易い。
ふつーに学者な人を表現するより、マッド・サイエンティストの方が舞台の上で絵として描きやすいように。
ふつうという「ファジィ」なものの方が、舞台でソレを「わかりやすく」表現するのは難しい。
ハートフルでやさしい、ふつーの人、相沢くん。
親友・豊太郎くん@みわっちがダイスキで、自慢で、素直に崇拝している純粋な男の子。
や、ふつーつっても、わたしたちよりずっと強く誠実な人ではあるわけだけど。ぶっとんだ世界にいる豊太郎やエリス@ののすみよりは、わたしたち側っつーことで。
ええっと、バウではこんな感じだったかな。
そのふつーの青年ゆえに、彼の生き様が哀しくなったわけだ。
それが。
青年館ではなんか、手応えが違った。
前半、日本にいるときの相沢くんは変わらない。
相変わらず小市民的で、かわいくて、豊太郎が大好きで、ちょっとウブ(笑)で。
かわいいケンちゃんのままだったので、再演という違和感なく、そのままのキモチで観ていた。
だが後半。
2幕、ドイツで豊太郎に再会してから。
あれ?
なんか……チガウ?
政治家秘書として渡独して来た相沢くんは、1幕の「無邪気な青年」ではなくなっていた。
固い。
豊太郎を好きなことはわかる。
ベルリンにて豊太郎に宛てた手紙、最初に豊太郎がホテルに現れた瞬間の笑顔、天方大臣@星原先輩に豊太郎とのデート早退(笑)を認めてもらったときのうれしそうな顔……豊太郎に関することには、無条件でうれしそうだ。
でも。
そのホテルでの再会時、久しぶりにナマの豊太郎を目の前にした一瞬だけとろけそーに笑うんだが、次の瞬間には「仕事」の顔に戻る。
あんなことがあったあとの、ようやくの再会だ。日本にいたときに見せていた純な青年ならば、もっと他になにかありそうなものなのに……すぐに仕事の話に切り替わる。
このことに象徴されている気がする。「相沢」という人。
ベルリンの街を歩きながら豊太郎に対しエリスと別れるよう話す相沢の印象は、とても固かった。
豊太郎が「情」という、心のやわらかい部分ですがろうとするのに、取り付く島もない。
固い。どこにも緩さがない。
どんなに叩いてもびくともしない鉄の壁のように。
あ、あれ?
相沢くん、こんな人だった?
強く、固い。
親友・豊太郎ですら掴むことができず、鉄の壁の前でとまどっている。
「君にはわからない」てなことを豊太郎に言われたとき、バウではあれほど傷ついていたのに、今回は依然ぐらつくことがない。
傷ついていないわけではなく、それよりもっと別の、強いものが奥にあって、表面的になにを言われても変わらない感じ。
相沢くんの固さは揺るぐことなく、ロシア遠征後の「帰国宣告」にまでつながる。
天方大臣とのデュエット(笑)である「為さねばならないことがある」が、容赦なく強い。厳しい。
豊太郎に対し、正論をたたみかける。
非人間的な容赦のなさで。
相沢くん?
1幕でのかわいらしさとあまりに別人で。
うろたえているうちに、エリスへの説得場面になる。
やはりここでも強く固い相沢くんのまま、エリスにお金を差し出す。
エリスがソレを拒否し……。
相沢が、崩壊する。
鉄の壁が、壊れる。
ダムが決壊するみたいに、激しいものがあふれだす。
変わってない。
彼は、変わってないんだ。1幕のやわらかい心を持った純粋な青年。
それが「使命」のために鉄の固さをまとっていたんだ。
その固さは、彼自身が口にする「己を殺し心に背いても、為さねばならぬことがある」そのままで。
言動一致。
エリスに対し、わかってくれと懇願する相沢。
まさに、懇願。
大の男が、泣き出さん勢いで言い募る。
それまで冷酷なまでに固く、強かった男が、仮面をかなぐり捨て、ナマの感情で訴え続ける。
どれほどのものを超えて、ここにいるのか。
あの冷たく固い鉄の壁をまとっているのか。
使命のため、大儀のために愛を捨てろと、豊太郎に冷酷に言い渡していた。あれは、相沢自身に向けた言葉でもあるんだ。
相沢は、使命と愛をつきつけられたとき、使命を選ぶんだ。
それは彼が愛を軽んじているからでも冷酷だからでもなくて。
1幕で清さん@みほちゃん相手に可愛らしく「思春期」していたり、豊太郎を思うときに見せる愛情ダダ漏れの顔、そしてエリスを説得するための苦悶……それらから、彼が豊太郎に負けず劣らず愛に弱い……愛することを知っている人だとわかる。
それでも彼は選ぶんだ。
愛ではなく、使命を。
泣いて苦悩する親友に「愛を殺せ」と言い渡す彼は、同じことができる、んだ。
もしも国のため、使命のために愛する人を捨てなければならなくなったら、捨てるんだ。
それだけの覚悟があるからこそ、豊太郎にも「愛を殺せ」と言えるんだ。
相沢くんのクールさが上がっていたこと、そして、クライマックスの感情の爆発が大きくなっていたこと。
コレだけだけど。
コレだけで、バウのときと別人だよね?
より「大人」で、「戦士」で、かなしい人になっている……。
相沢謙吉という人。
なんて強く……かなしいひと。
なんて、いとしいひと。
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